売れないコンビ オーディションを受ける
久しぶりに書きました、会話が長すぎるかもと反省
「陽ちゃん…ここ何処になるの…」
「しらんがな…まさかあの女神さんちゅうのが本物やったちゅう事なんか…」
暫し、その場で呆然とする二人であった
「ま…しゃあないか!あの話がほんまの話やったら、俺らはもう豚さんまみれで死んでんねや、まだコンビでお笑いできるちゅうんやったら悪うわないで」
「陽ちゃんとまだお笑いできるんやったら…」
「せや!とりあえず前に進もや!夢でもないみたいやしな」
そういって頬をつねる
「いたた…やっぱ夢やない、いこうやないか!笑かしにな!」
「うん」
てくてく二人は街にむかって歩きだした
【エルドリア帝国】第三の都市 ミネルバーグ
大きな街道沿いに栄える貿易都市として発展してきた街である
十年程前までは…
帝国で王位継承を巡る内乱が起き、この都市も戦火に包まれた
1年前に戦争は終わり、復興がはじまった
だが内乱を起こした第三王子は未だ捕まらず
いつまた戦火が起こるか、人々は不安をぬぐいきれなかった…
「でっかいまちやなー」
「ロケでいったヨーロッパを思い出すね!」
「せやな!海外ロケいけてたあの頃はよかったなあ…」
「ねえ陽ちゃん、お笑いするっていってもどこですればいいのかな?」
「うーん、広場とか酒場か?」
某大御所も昔キャバレーやストリップの合間に漫才をやっていたらしいし
「よし!ほなまず酒場や!酒場探すで!」
道行く人にたずねながら歩く
どうやら、ショーのものをやっているのは劇場になるらしく
酒場で歌とかこまごましたのをやっているのはこの街では
【ゲインの酒場】しかないようだ
「うわっ…でっかいな、雰囲気も凄いな…」
「凄いね、大きなお屋敷みたい」
たどり付いたのはこのあたりの街の一角で一番大きな三階建の屋敷だった
入口には大きなジョッキの看板が掲げられていて壮観である
入口をみつけて開ける
「たのもー!ここで出し物したいんやけど」
「はいはい、どなたですかね?」
奥からてきたのは、40代半ばの小太りのおっさんだった
「うちら、とれじゃあはんたあっていうコンビで、俺が陽一、相方が純一ゆうねん!ここでコントとかやらしてくれへんかな?」
「トレジャーハンター?宝探し屋がなぜこんな所に?」
「職業やないねん、職業は芸人や!それはコンビ名」
「ああ…芸人さんですか…うちで出番をもらいたいという事かね?」
「そうです、なんとかなりませんか?」
おっさんは少し考え込む
「本来なら、定期的なオーディションから採用してるのだけど、自信があるというなら今聞いてみてもいいよ!」
「よし!まかしとき!今からわらかしたるで!」
二人は何のネタでいくか、打ち合わせを始める
(どうする?あの通勤電車コントか?コンビニバイトネタでいくか?)
(ねえ、陽ちゃんちょっと疑問なんだけど)
(なんやっ?ゆうてみ)
(ここって電車とかコンビニってあるのかな?)
(あっ!)
そう此処は中世ヨーロッパ風、もちろんコンビニもないし電車もない
現代に生きて来た自分達とは文化も流行も違う
(あかん…舐めてたわ…まず文化しらなあかんわ…)
「おっちゃんごめん!俺ら田舎から出て来たばっかでこっちとは流行りがちゃうみたいや…何日かまってくれへんかな?」
「ならば一週間あとに正規のオーディションがあるのでそれを受けてください、申し込みしますか?」
「わるい!頼むわ、ごめんおっちゃん、ついでに泊まれる所紹介してくれへんかな?」
「一応私も、ギリムって名前ですよ、宿はこの5軒ほど先にありますよ」
ギリムさんは苦笑しながら教えてくれた、ええ人や
「ありがと!ギリムさん、ほなまたくるわ!」
「ありがとうございました、ギリムさん、また」
二人は紹介してもらった宿屋に入り、食堂で話し込む
「どうするよ、純ちゃん、うちらの今の持ちネタやと苦しいで」
「新ネタを作るにも、流行がわからないしね」
「せやな…お笑いにしたらいかんタブーもわからんしな…」
日本なら政治ネタも大丈夫だが、中世なら一発処刑もありうる
普通の感覚で話したら、差別に当たる事もある
文化が違いすぎるのだ
「うーん、こらきっついな、一週間じゃ調べた上でネタなんてかけんで」
「陽ちゃん、言葉なしで一発ギャグとかは?」
「それもきついな、それだけで何分ももたんで」
「言葉は通じるけど文化が違うって意外ときついね」
「せやな…音楽なら演奏で世界回れるんやけどな」
「あ…純ちゃん、アレならどうかな…」
「ん?なんや…ああ…それならいけるかもな」
「お笑いじゃないけど、笑顔にはできるだろうし」
「せやな、それでまず合格して、文化を学びつつネタ作りやな!」
「じゃあ僕は準備してくる」
「せやな!ちょっと店まわろか!」
一週間後
ゲインの酒場オーディション
ここのオーナーのギリムは不機嫌だった
(どの子も決めてがありませんね、真新しさもないし、はぁ困りましたね、次はこの前、売り込みに来た子達ですね…)
ステージには、5cm程の厚さの大きな木の板が何枚か運び込まれていた
(はて…なにをするつもりでしょうか…)
ステージの両端から、タキシードで決めた二人がでてきた
(おやおや…マジックでしょうか…それにしてはあの木の板は)
二人は深くお辞儀をする
そして二人はリズムを刻み始める
軽快なタップのリズムに合わせて踊られるその姿
今まで聞いた事のないリズムの良い音楽
踊りもダイナミックかつ洗練されている
(こ…これは……なんという…)
芸人と聞いたから奇術とか大道芸だと思っていた
これはそんなレベルではない今すぐにでも劇場で公開できるレベルだ
しかもきっとその公演は大成功するだろう
この日、この酒場から新たなスターが生まれたのだった




