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異界と竜の逆ハーもの  作者: 夢山 暮葉
第六章・忌まわしき遺産
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第三十六話・旧き無形の泥裡


 何故エルフは、ここまでに高い魔法適性を持っているのか。エルフの始祖アールヴの証言によると、「元の世界では、魔法の使えない種は絶滅していた」等と有り、彼の故郷がエルフレベルに魔法が使えなければ生きていけない厳しい環境だったからだろう、とされている。

 彼らの専売特許たる魔法は、何もRレイヤーに渉る物だけではない。Bレイヤーを利用した思念同期・情報共有の魔法や、Jレイヤーに干渉し時空間をどうこうする魔法だって存在する。何故それらを操る事が出来るのかといえば、エルフのNレイヤーとの親和性の高さが挙げられる。

 普通のアルシード人が、精神や肉体を有る程度自由に操れるのと同じ様に、エルフは魔力を使う事が出来る。わざわざS、W、Fレイヤーから入力せずとも、Nレイヤーを操作し直接目的のレイヤーへ出力する事が出来るのだ。とはいえ、補助的な意味で道具を使用したり、呪文を唱えたりする者は多いのだが。

 赤ん坊が誰に教わるでもなく手の挙げ方を知る様に、エルフも生まれながらに魔力の扱い方を知っている。エルフというのは、本当に魔法と共に在る種族なのだ。

 この現代にて、魔法という技術が完全に途絶えきっていないのは、エルフという人種の存在が大きい。どんなに人間が魔法を不要としても、エルフは魔法を使い続けるのだろうから。




 “禍神”復活を知った竜たちは、まずアルシード上に存在する全ての竜に対し召集をかけた。方上市に集え、と。

 同時に、素早く駆けつけた旧竜“ネームレス”が、方上市周辺を覆い尽くす様に半球状の結界を展開した。“禍神”がその泥をまき散らしても、その結界の外には広がらない様に。

 そして、高速で方上市市街へ移動をし始めてていた、巨大な“禍神”の本体たる塊を、ラァが即席の封印結界陣にて捕縛し、ギリギリ市街に差し掛かる前で閉じ込める事に成功した。しかしそこまでも全く人家のない場所というわけではなく、いくつもの田畑が駄目になり、何十人もの犠牲が出ただろうが、最悪の事態は免れた。

 ラァを含めた十数名程の竜で、“禍神”の動きを封じる陣を維持しつつ、残りの竜たちで飛び散った“禍神”の泥を回収し、本体の元へ送り込む。そして全ての“禍神”を回収し終えた所で、竜たち全員の力を合わせて“異触”を発生させ、これを世界の外へ放り出す。それが、今回の作戦だ。

 そう、竜は、人知の及ばぬレイヤーを操る事で、“異触”を故意に発生させる事が出来る。一人だけで発生させられる“異触”の規模はたかが知れているが、現在アルシードに存在する全ての竜を集めれば、弱っている“禍神”を呑み込む程度の規模の“異触”を起こせるのだ。

 幾千年前に“禍神”を封印した時には、相手があまりにも強大で巨大過ぎて、それをどうにかする規模の“異触”を引き起こす事は出来なかった。故に封印し弱らせ、いつか簡単に潰せる程度にまで弱った所で、世界の外にポイ捨てする予定だったのだ。

 その予定は少し早まってしまったが、解き放たれた“禍神”は随分と弱っている。この程度であれば、全ての竜が力を合わせれば何とかこの世から追放出来る──それが、ラァの計算結果であった。


挿絵(By みてみん)




 方上市の人々は、大混乱に陥っていた。

 黒い鎖を巻かれた正体不明の白い泥たちが空から降って来て、運悪く下敷きになった者を踏み潰し呑み込んでしまい、その上この落ちて来た泥が、近くに居た人へと飛びかかり始めたのだから、無理もない。そのさまは、十全に人々を錯乱させた。

 腐臭を放つその泥の出現だけでも十分に異常なのに、その上、空に薄いシャボンの様な膜が張られたり、何処からともなく無数の竜族が現れて来たのだから、もうたまったものではない。世界の終わりだ、と誰かが呟く。

 そうして恐慌状態になり、とにかく屋内へと殺到したり、車の中で鍵を閉めて震えたりする人々でごった返す市街にて、一人の少年と一頭の獣がビルの上に佇んでいた。

 少年は、その晴天の空のような色の髪を、長めのおかっぱ頭にしていた。ただ、左側の鬢の髪だけが胸の辺りまで長く伸ばされ、緑色のリボンを編み込む様に結われている。その装いは至ってシンプルな物で、淡い紫の無地のTシャツに、下ろしたてらしい新品のジーパンだ。

 その濃いエメラルドグリーンの双眸がやや上げられると同時に、エルフのそれに良く似た高い耳がぴくりと動く。そうして、彼は口を開いた。


「随分と大惨事だね、キュゥちゃん。……や、五十年前の方の“大惨事”よりは、まだずうっとマシだけど」


 驚く程ハキハキとした声で、彼は左手側に佇む獣に話しかけた。キュゥ、と呼ばれたそいつは、頭の右側に有る三つの蒼玉の瞳を少年に向け、その厳つい見た目からは予想も出来ない程可愛らしい、まさに美少女のような声で返答する。


「無理もないよ、ヤァちゃん。いきなりあんな物が降って来たら、例え歴戦の戦士でもああなるって。

 はーあ、やっと仕事が一段落して、のんびり創作が出来ると思ったのにな。積んでるゲームも消化したいのに……」


 キュゥのその姿は、おおよそは巨大な灰色の狐と言える物であった。しかし彼女の姿には、いくつもの異形の特徴が現れている。

 まず、額に生えた一本の角と、背に負った一対の小さな翼。頭に角と背に翼を持つ生き物は、アルシードにはたった一種しか居ない。そう、竜だ。

 モフモフの毛に覆われた尻尾は三本も有り、その内の一本でヤァの頭をわしゃわしゃと撫でている。少年の姿に向けられた後、再び地上を見下ろし始めた三つの右目と対になる様に、左にも三つの目玉が付いていた。

 しかし左目の方は右目とは違い、くすんだ若草色をしていた。同時にその左目たちは、それぞれあらぬ方向を向いている。そう、斜視になっているのだ。


「ぼくも久々にキュゥちゃんとネトゲしたかったし、冬に向けての打ち合わせもしたかったし……本当に、間が悪いよ」

「そうね……ま、ぐちぐち言ってても仕方ないし、ぼちぼち作業を始めましょ。ほら、あの辺、三つも集まってるわよ」

「あ……本当だ。分かった、行こう」


 キュゥが尻尾の一つで指し示した先には、数人の人間が三つの白い塊に追いつめられている場面が有った。ヤァもそれを認識し、軽やかな動作で狐の背に跨がる。そうして彼がふわふわの毛皮に掴まると、キュゥは軽く翼をはためかせつつ、床を蹴って宙へと駆け出した。

 彼女も竜の端くれであるだけ有って、その速度は異様にに速い。ほんの一度瞬きする間に現場にたどり着くと、キュゥはその左右で色の違う六つの瞳を見開き、真っ白な牙を剥き出しにしながら雄叫びを上げた。


「ひぃっ……!?」

「な、何なんだよ、また竜なのかよっ!!」


 追いつめられていた人間たちは、彼女の叫びに恐れをなしたのか、そんな悲鳴混じりの声を上げた。同時に、その雄叫びに込められた力により、“禍神”の破片たちがビリビリと振るえ、その姿を縮ませていく。

 だが、それだけでは決定打には至らない。ターゲットをキュゥたちに移した破片たちは、まだ元気に蠢いている。故に、ヤァは片手を天へと突き上げ、威勢のいい声を上げた。


「同調するよ、キュゥちゃん!」

「オーケー、受け入れるわ!」


 ヤァのその掛け声と共に、二人の姿が光に包まれ、そして一時的に境界線の一部を失い同化した。特別な絆を持った竜同士のみが可能とする奥義、『同調』。肉体を始め、精神、魔力などをも共有し、共鳴させ、増幅する術だ。

 この二人は、たまたま趣味が合致した事から、何十年も連れ添い家族の様に過ごして来た仲である。それ故に、同調を可能とする程に仲良くなったのだ。現状アルシードには、真っ当な手段による同調が出来る竜は、この二名しか存在しない。

 同調状態となったヤァは、キュゥの持つ膨大な魔力を利用し、三つの魔法陣を展開する。思念と身振りのみによって発動されたその術は、単純な『貫く』という現象を操る、俗には『魔力の槍』と呼ばれる魔法だ。


「喰らえっ! 吹っ飛ばしてやる!」


 放たれた槍は、“禍神”を戒める鎖を器用に避けながら、白い泥を深々と貫いた。ダメージを受けて動きを鈍らせる泥目がけて、ヤァはすかさず更なる魔法を発動させる。

 次に展開された魔法陣は、真っ黒な円陣。それを三つ形成し、泥の塊たちにそれぞれぶつけた。すると円陣は瞬く間に塊を覆い、そのまま自身の影へと沈み込ませてゆく。これで、ラァの形成した即席封印陣の中へ転送された筈だ。


「よしっ、終わり……」

「お疲れ様、ヤァちゃん。ううう、死体臭い……鼻が曲がりそう……」

「少しの辛抱だよ、キュゥちゃん。さっさと終わらせて、帰って夕食だ」


 三つの塊が完全に影の中に沈んだのを見送ると、二人は同調状態を解いた。ここまで深い同調をずっと続けるのは、色々と負担が大き過ぎるのだ。そうしてヤァはキュゥの背から降り、“禍神”の破片たちに追いつめられていた人間たちへ歩み寄る。そして、意を決して声をかけた。


「あ……ア……あの……大丈夫、ですか……」


 ヤァが他人に話しかける時は、どうしても声が小さくなってしまう。身内であるキュゥ相手なら何ともないのに、それ以外は例え育ての親であるシィでも無理なのだ。

 そんな彼を見守りながら、キュゥは震える人間たちを観察する。総勢四名、それなりに体つきは良いようだが、顔はまぁましといった程度だ。内三名が自然の髪色をしておらず、また全員がどこかしらにピアス穴を空けている事から、所謂チンピラといった人種なのだろう、と彼女にも理解が出来た。


「な、何なんだよ……お、おれたちを取って喰おうってのか!?」

「ア……違……」

「竜族とかもう沢山なんだよ、なんでおれたちばかり竜族と出くわすんだよ……今年に入ってもう二度目だぞ!? おかしいだろ!?」

「し、知らな……」

「どっか行きやがれ! この化け物どもめ!!」


 そんな罵声を浴びせながら、四人のチンピラはボスらしい奴を先頭に逃げ出してしまった。その背を見送りながら、ヤァはやや眉尻を下げ、キュゥは全ての目を悲しげに瞑って悲痛な鳴き声を漏らす。


「……ヤァちゃん」

「気にしちゃ駄目だよ、キュゥちゃん。恩を仇でしか返せない奴は、いつか惨めな死に方をするもんだ」


 狐耳をぺたりとへならせながら、キュゥは少し喉を鳴らした。そんな彼女の鼻先を撫でながら、ヤァは元気づける言葉をかける。

 数秒程キュゥは目を閉じたままにしていたが、割と近くから聞こえて来た叫び声に、耳をピンと立てて六つ目を見開いた。ヤァもその声を捉えたようで、エルフに良く似た耳を弾く様に上げる。


「た、たずげっ、でぇァ……ゔぅっ……」

「あっちだ、ヤァちゃん」


 キビキビとした動作で尻尾を振り、キュゥはある路地裏の方を指し示す。そちらの方へ二人で歩いて向かうと、そこには随分と重々しい動作でにじる“禍神”の破片が転がっていた。


「これは……」

「随分とまぁ、沢山の人間を呑んだようだねぇ……」


 そう冷静に分析しつつ、ヤァはその泥の塊を見上げた。その表面からは無数の人間の手足が伸びており、まだ意識を保っているらしく、苦しそうにもがいては鎖に触れて痛い思いをしている。

 中には頭が外に出ている者も有るようで、先ほどの叫びはそいつが上げたものらしかった。あまりに多くの人間を取り込んだため、いまいち自由に動けないらしい“禍神”を見回し、その頭を探す。

 間もなく、その頭は見つかった。顔以外は全て呑み込まれてしまっているが、ヤァたちの姿をみとめて俄に血の気が蘇る。


「ああっ、ゔ……だ、たすげに、ぎでっ……くれだ、のが……?」

「……どうしよ、キュゥちゃん」


 その巨体では路地裏に入るのは難しいので、入り口の方で座って待っているキュゥに対し、ヤァが問いかける。今の彼らに課せられた任務は“禍神”の回収であり、人間の救助は含まれていない。先ほどチンピラたちを助けたのも、結果的にそうなった、というだけだ。

 問われたキュゥは、焦点の合う右目たちだけをやや細めながら考え、そして彼へと返答した。


「ヤァちゃんの好きにすれば良いと思うよ。こういう時の判断力に関しては、わたしよりヤァちゃんの方が有るし」

「そっか。じゃ、好きにするよ」


 彼女の返答を得たヤァは、“禍神”に呑まれかけている顔の額に指を触れた。希望に満ちあふれたような表情になる顔へ、少年はニッコリと笑いかける。


「エエト、その……今、楽にしてあげます、から……」


 ぶつぶつと呪文を唱え、その指先に“死”の現象を呼び出す。すると、見る見るうちに顔の瞳から生気が失われ、がくりと力なく項垂れた。そのままずぶずぶと呑み込まれていくそいつを見送りながら、ヤァは一旦距離を取る。


「ヤァちゃん、やっさしー」

「えへへ、そうかな。ま、こいつはこのままでも十分転送出来るよね、動きトロいし」


 キュゥと笑い合いながら、ヤァは黒い転送魔法陣を組み上げ、“禍神”へと投げつける。そして影の中へ沈んでいくのを見送りつつ、路地裏から出て辺りを見回した。


「さて、次は何処かなー……っと」


 地上からはよく見えないから、またビルの上に上って展望しようか、と思った瞬間、彼らの足元に巨大な影が現れた。弾かれる様にして空を見上げると、どうやら建物の上に居たらしい“禍神”の破片が、彼ら二人の元に落ちて来るのを捉える事が出来た。


「あ──」

「ヤァちゃ──」


 回避は間に合わない。押し潰される──と、ヤァが目を閉じ歯を食いしばる。しかし、予想されていた衝撃はいつまでも訪れない。それに疑問符を浮かべながら、恐る恐る目を開けると、目の前に片手を突き出した格好をしたナイスミドルが立っていた。

 その手の向く方を見れば、落ちて来た“禍神”が弾き飛ばされ、びくびくと震えながら転がっているのが目に入った。おおよそ衝撃波か何かで吹き飛ばしたのだろうが──と、再びナイスミドルの方へ視線を戻す。


「間一髪、か。やれやれ……俺は四段アイスクリームを食べに来ただけだったんだがなぁ」


 溜め息混じりにぼやいて、どこかで買って来たらしいバウムクーヘンの包み袋を破りつつ、あの転送の魔法陣を形成し、弾き飛ばした“禍神”へと投げる。そうして美味しそうにその洋菓子を頬張りながら、彼はヤァたちの方へ目を向けた。


「無事かい? 若き同胞」

「あ……あ……あ、あなたは……」

「ゾォさん! 旧竜のゾォさんじゃない! キャー、この目で実際に見れるだなんて、今日は良い日だわ!」


 旧竜が一柱、全てを喰らう竜、ゾォ。思わぬ大物の出現に、キュゥは尻尾や翼をパタパタとさせながら六つの目を輝かさせた。ヤァは暫し呆然としていたものの、やがて我に返りぺこりと頭を下げる。


「たっ、助けて頂き、本当にありがとうございましたっ!」

「ん、どーも。とりあえず、俺と“ネームレス”も回収に参加する事になったから。……とはいえ、ここら辺の“禍神”は、アレが最後みたいだな」


 顎を片手で撫でながら、ゾォは辺りをぐるりと見回す。そして他の所へ向かおうとする前に、キュゥの黄色い声がそれを遮った。


「ま、待ってください、ゾォさん! 少しお時間良いですか? 良いですよね?」

「あ、あの、ぼくも……ちょっと、お話したい……」

「……まぁ、予想はしてた展開だけどさ……手短に頼むよ」


 そう、竜たちにとっては憧れの的である旧竜の一柱が、目の前に現れたのだ。中でも、ゾォは一番性格が良いと知られており、竜としては珍しいその容姿も相まって、若い竜の間では半ばアイドルのような扱いをされている。そんな人物と直接話すチャンスをみすみす逃せる程、二人はストイックではない。

 立ち止まったゾォに対し、まずヤァが問いかける。質問の内容が内容なので、使用言語を臼木語ではない物に切り替えて。


「エト……ぞ、ゾォさんって、“旧時代”から生きてる、ですよね……? なら、“禍神”誕生の瞬間、とか……知ってる、ですか……?」

「い、いきなりヘヴィな質問だなぁ。ま、確かに“禍神”誕生に居合わせたり、封印に協力したりしたけど……皆が求めるような情報は無いよ」

「……そ、ですか」

「ま、アレの全盛期とかは見た事が有るからね、言っておくけど……今回の作戦を成功させなければ、本当にアルシードも、“シードディア”もおしまいだ。覚悟をするんだぞ」

「は……はいっ!」


 ヤァの質問に答え終えた彼は、残ったバウムクーヘンを丸ごと口に突っ込みながら、今度はキュゥの方へ視線を向ける。それを受けた彼女は、ラァの封印結界、つまり“禍神”の本体が有る方をちらりと見やった後、全ての目を半目にさせながら口を開いた。


「ちょっと気になっちゃった事なんですけど、さ……ええと、あの“禍神”を封印するのに、人柱が居た筈ですよね? その子、無事なのかなーって」

「んー……と、だな。ラァによると、無事じゃあないらしい。このままだと多分、“禍神”ごとこの世の外行きだってさ」

「えっ、ちょっとそれ、可哀想過ぎじゃないですか? これまでずーっと“禍神”の為に人生削られて来て、最期は丸ごとポイ捨てだなんて」


 キュゥの声には、僅かばかりの憤りが滲んでいた。彼女たちは“大惨事”の折、僅かばかりではあったが、“御柱”だった女性と接触した事が有る。今もその女性なのかは分からないが、“御柱”に課せられた過酷な宿命をシィに聞かされていたキュゥは、もっと良い結果を用意出来ないのか、と眉間に皺を寄せた。

 そんな彼女に対し、ゾォは頭を掻きながら、バウムクーヘンを嚥下した。そうして、彼は言葉を続ける。


「まぁ、俺とて哀れだと思わないわけじゃない。だけど、シィ曰く、心配は要らないそうだ。

 『捨てる神あれば拾う神あり、って事さ』って言ってたけど……どういう意味だろ」


 ううんと唸りながら首を傾げるゾォと一緒になって、ヤァとキュゥの二人も疑問符を浮かべる。暫く三人の竜たちは首を捻っていたが、やがて自分たちが今やるべき事を思い出し、銘々に駆け出した。

 ゾォは最も多くの“禍神”の反応がある場所へ、ヤァとキュゥはそれとはまた別の場所へ。気になる事は多々あれど、今は竜という種に課せられた使命を果たす時だから。

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