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森の賢者は精霊と戯れる。

 アキヒサが出て行ってから5年が経過した。

 何だかたった5年なのに少し長く感じてしまった。50年間もアキヒサと一緒にいたからかもしれない。

 いつも通り私は森の中に引きこもっている。

 このアウグスヌスの森のモンスター達はきっちりと強化してある。だから、此処には滅多なことじゃ人が好き好んで入ろうとなどしない。だからこそ、私はのんびりと此処で暮らせる。

 自分の家の中で、私は森でとれた新鮮な果実を口に含む。甘味が口内に広がって、思わず笑みが零れた。そして食しながらも、周りで飛び回る可愛らしい精霊達を見つめる。

 精霊は可愛い。可愛らしく私に問いかけてくる。

 『セイナ様、それおいしー?』

 「ええ、おいしいわよ」

 『そっかぁ。僕らご飯いらないからおいしいとかわからないんだよなぁ』

 精霊がそういいながら真っ赤な果実を見据えている。

 精霊という存在はこの世界にとっても不思議な存在だ。まず、食事をとる必要がない。

 精霊達が食べるのは、空気中に満ちている魔力だ。私は食事をとるけれども、沢山のまりょくを所持しているせいなのか、三食毎日食べる必要性はほとんどない。

 ためした事はないが、しばらく食事をとらなくても私はきっと空腹にならない事だろう。

 もぐもぐと果実を食べながらも、思う。

 5年か、と。

 あの子は私と違って上手くいっているのだろうか。それともたまたま騙すような人間が周りにいないだけ? などと考える。

 とはいってもまだ5年だ。そろそろ周りだってあの子の外見が変わらない事実に気付いてくるはずである。老いていくことがない事は異常だ。アキヒサを好いている方からすれば、自分だけが老いていきアキヒサがそのまんまというのは不気味だと思う。

 実際に私も不気味がられた経験があるからわかる。そもそも人は自分とは異なるものや不可解なものには恐怖するものだと思っている。未知の生物とかって、その生態を知るまでは誰も触れたがらないだろう。きっとそれと一緒だ。

 魔力総量の多い人間とは既に人間という枠を超えているといっても過言ではない。そう、私もアキヒサも人間とは異なってるんだ。既に。

 一般的に言う普通の人間は魔力量が多くても百十数年~二百年生きる程度だ。寧ろそんな魔術師でさえ、気味悪がる人間もいるぐらい。魔力が普通な人間は地球と変わらないぐらいの寿命しか生きられない。

 そもそも長い時をいきる生物ってのは、色々と人間と違う考えを持つものだと思う。

 私の中では、自分より先に人間が死ぬのは当たり前になっている。

 地球ではまだ違った。この世界に来た当初の頃は違った。人の死になじんでいなかったから、恐れてた。誰かが死ぬのは嫌だと思っていた。

 でも今は人と関わりを持つのも嫌いであるし、正直王国の人間がどうなろうと知った事じゃない。どうでもいい人間が死ぬだけとしか私は思わない。

 経験することが一番の、人の変化の方法なのだと思う。

 アキヒサはまだ60年ちょっとしか生きていない。裏切りも何も経験せずに50年近く私と二人っきりだった。アキヒサは裏切りを知らないのだ。だから心配になる。裏切られるって行為はかなりのダメージを与える。そういう経験がなかった人間にとっては。

 そう、長く生きているだけでアキヒサは何も経験はしていない。本当に暮らしていただけなのだ。

 『セイナ様ー、どうしたのー?』

 少し考え込んでいた私に、精霊が優しく笑いかけてくれる。

 それでも心は何処かはれない。気がかりなのだ。結局、放っておこうって思ってもちゃんと人間と仲良くできているんだろうかとかそういう事が。

 本当に自分にこんな感情がまだ残ってた事に驚く。人間なんて生きようが死のうがどうでもいいと思っていたのに。弟の孫でもあるし、50年近く一緒に暮らしていて情でもわいてしまったのかもしれない。

 「………ま、うまくいってるなら別に構わないけれど」

 私はそんな言葉を発しながらも、精霊に向かって手を伸ばす。

 その後はのんびりと気にしても仕方がないと精霊と戯れていた。




 ―――森の賢者は精霊と戯れる。

 (彼女は彼を心配している)

セイナさんが動くのはもう少し後です。

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