森の賢者は『救世主(メシア)』と対峙する。
外に出ると同時に、家を隠していた幻影の魔術が解除される。
家の存在が周りに知覚できる状態となり、一気に周りが騒がしくなるのがわかる。
高く伸びた木々が茂り、色とりどりの花々が咲き乱れている。自然豊かなこの森のモンスター達もちらほら視界に映る。
「行くわよ、フランツ」
「はい…」
色んな人間達が、歩きだした私達を見た。
髪や目の色、服装、考え方、宗教―――それらが異なる様々な国の人間達が、アキヒサをどうにかしようと思って一丸となって此処にいる。もちろん、モンスターの集う森だから、そいつらを倒せる程度の力を持っている人間達ばかりだ。
「―――賢者様!!」
私とフランツを見て、固まっていた面々の中の一人が声をあげた。
そちらにちらりと視線を向ければ、一人の少女が居る。太陽の光に反射して、その艶やかな金色の髪が輝いていた。赤い宝石で飾り立てられたドレスを着ているのは、王国の王女だ。
嬉しそうにこちらに駆けよってくる様に、いら立った。
「―――フランツ」
そうしてかけよってくるのは、白髪の老人だ。こっちが、あのフランツに魔術を教えてたっていうお爺ちゃん。
フランツに友好的な印象が見られる。服従の魔術具をつけられる前にいなくなったって事だから、もしかしたらフランツを服従させることに反対でもして追放されたのかもしれない。
警戒心もなく、私が何かをすると思ってない目。あーあ、馬鹿みたい。
「賢者様。私達の願いが届いたのですね。どうかあの―――」
「フランツ、よかった。君は賢者様に―――」
「煩いわ」
邪魔なの。全部。ウザイの。全員。うっとしいのよ。全てが。
私はその場で口封じの魔術を行使して、二人を黙らせる。周りがそれで騒がしくなったけど、どうでもいい。
「私はあんたたちが鬱陶しすぎるから、アキヒサを、『救世主』をシメに行くの。それをあなたたちの願いが届いただのふざけた事言わないでくれないかしら」
ああ、苛々するわ。王女が私に感謝しようと、フランツと魔術師の感動の再会とか、どうでもいいの。私ははやくシメに行きたいの。
「―――珍しく苛立ってるのよ。本気で。ふふ、丁度よいわ。私をうっとおしがらせたあなたたち全員に、私の怒りを見てもらうわ」
私に願いを請うて森の中で祈りちらす周りの連中も。
馬鹿みたいに貢物を献上して願いを叶えてもらおうとする連中も。
私が願いをかなえるために出てきてくれた何て勘違いしてる馬鹿王女も。
『救世主』をどうにかしてほしいときながらも、フランツみて感動の再会しようとしてる魔術師も。
自分の力でもないのに調子にのっている国王も。
もう処刑されているけど偉そうに喚き散らしていた皇帝も。
こんな厄介な状況にしたアキヒサ―――『救世主』も。
私を仲間にしようとアキヒサとフランツをこちらにやった王国と今は亡き帝国も。
全部、全部、うっとおしいの。
だから、これを機に誰も私にちょっかいだしたくなくなるようにしたら丁度良じゃない。
「空間を掌握し、法則を無視せよ。
一刻も時を刻む事なく、一歩も歩を進める事なく」
関わりたくないって、思わせるほどの力を見せてあげる。脅しじゃないってのを教えてあげる。そう考えると今までも生ぬるかったのかもしれないわね、私は。そんな風に思う。
「わが身と彼の人を移動させよ」
その言葉だけで、魔術は完成する。
次の瞬間、もう森の中に人間は一人もいなくなっていた。
****************
「なっ――」
「この人数を、転移!?」
驚きの声が上がる中、私は気にもとめずに前にある建物を見上げる。それは壮麗な雰囲気を醸し出している真っ白な城。ナシトア王国の王宮。
巨大な塀に囲まれたこの城は、私が落ちてきた当初から変わらない。はじめてこの城を見た時、その大きさに驚いた。昔の私は、こういう王宮なんて実際にきちんと目にした事なんてなかった。
幼かったまだ高校生だった私。勉強になんて興味なくて、ただ生きていた私。地球でのんびりと過ごしていくことを疑いもしなかった私。
此処は、子供だった私の魔術師としての、はじまりの場所。人のしたたかさを知って、苦しさとか悲しさとか色々なものを沢山知った場所。
裏切りにあって、自分が一人で生きていく事に嘆いて、此処にはもうこないと誓って私は森で暮らすようになった。
それでも、今久方ぶりに、此処に来ている。古くなっている所以外は、昔と変わらないこの王宮に。
私は王宮の前に、森の中にいた人間全員を転移させたのだ。森にいられるのも面倒だし、こうした方が手っ取り早いから。
門番とか見張りの兵達も煩いけど、そんなもの放置。
「セ、セイナさん。どうするんですか。こんな派手な登場して」
隣に立つフランツが、声をあげる。シメにいくとはいってもこんなに派手にだとは思わなかったらしい。でも怒ってるんだもの、私。
だから、にっこりと笑ってフランツに答えた。
「そんなもの決まってるでしょう。正面突破よ」
私はそういってただ歩きだす。私が一歩ずつ門に近づく度に門番が私を化け物を見るような目で見ているのが滑稽だった。
「ねぇ、失せなさい。私はアキヒサに――――『救世主』に会いに来ただけなの。殺されたいの?」
これは警告。一度しか、警告はしない。
門番の兵士たちは脅えながらも、私を見て、それでも逃げない。
私はそんな彼らにただ、手を振りかざした。
そうすれば、兵士たちは爆発してはじけとんだ。一瞬の出来事。
バラバラになった胴体と切り離された頭部、見に着けていた鎧、そして真っ赤な血。それが宙を舞った。
鮮血が飛び散って、地面を濡らす。
それと同時に、悲鳴が上がった。
どいつもこいつも、化け物を見るような目で私を見る。
私を化け物にしたのは、長い年月とこの王宮で暮らした日々だ。人が面倒だと思うようになったのは、長い月日の中で見てきたからだ。人を殺す事に躊躇いもなくなったのは、この王宮で沢山の事を経験したからだ。
そのまま私は中へと入る。
そんな私に顔色を少し悪くしながらもついてくるのはフランツだけだ。他は固まったまま。
入ったと同時に私は声をあげた。
「死にたくなかったら、道をあけなさい。私は『救世主』に用があるの」
そういったけれども、切りかかってきた壮年の騎士が居た。信念でも何でももって王国に仕えているのだろうけれども、そんなの関係ないもの。決意を持った目で私を見ているとしても、それは私には何の影響もない。
振りかざした剣は、溶けた。向かってきた騎士は、風の刃にバラバラに切り裂かれた。
どろどろとした液体へとなりはて、騎士はバラバラの状態で落ちていく。
勝負なんて一瞬で付く。
魔術公式を構築する速度は人によって違うけど、私はこれぐらいなら一秒もおかずに構築出来る。
詠唱はいらない。そんなものなくても魔術は行使できる。最も、百年も生きられない普通の人間じゃ詠唱なしで魔術を行使できる人間なんてほぼゼロに近い。誰かに教えてもらうわけではなく、自力で魔術を理解する事。それが一番重要なのだ。
結局人に教えられて暗記しているだけならば、臨機応変に魔術を行使する事など出来ない。
見せしめのように残虐に殺す。もうこれ以上向かってこないように。私に迷惑をかける気がなくなるように。
コツ、コツと音をたてて私は歩く。
周りはほぼ全員が道をあける。ただ、脅えたような目を私に見せて。声にならない悲鳴を上げて。
アキヒサはどうせ逃げない。国王を親友だと思ってるなら、絶対に。
ただ上を目指した。向かってくる少数の人間を、一瞬で殺しながら。
歩く私。脅えてるのに付いてきているフランツ。
フランツが『悪魔』だと知っているからか、強張った顔の人間も多い。
邪魔者が少ない中で、私がたどり着いたのは王座だ。
絨毯のひかれたまっすぐに扉から王座まで続く道。
王座には一人の金色の髪を持つ男が座っていた。歳は30代後半ぐらいだろう。国王であるその男の目には不安はない。馬鹿みたいに変な自信でもあるのかもしれない。アキヒサが、私に負けないって自信。
それは国王と私との間に居るアキヒサにも言える事だけど。
「何で、『悪魔』と一緒に!!」
アキヒサは覚悟をしたかのように、私を見てた。前にいった、私を殺す覚悟を持ったのだろう。それにきっとアキヒサにとってフランツは許せない存在だろう。
その目が、私を映し出す。
前にあった時は茫然としていたアキヒサを私が追い返した。だからアキヒサは自分は強いんだ、あの時はいきなりだったからとでもいいわけしてるのかもしれない。
「アキヒサ。私あなたをシメに来たの」
さて、とりあえずシメた後生きていたらアキヒサをどうするか考えましょう。だから、一先ず思いっきり遊んであげるわ。
この前あった時はあまりにも腑抜けていた事もあって呆れて追い返したけど、私は今凄く怒ってるの。だから、
「本気で来なさい。自信もプライドも何もかもへし折ってあげるから」
私はそういって、アキヒサに向かって笑った。
もっとうまく人間と関われば疎まれることもなかったんでしょうに。そう思いながらも、怒ったように向かってくるアキヒサに向かってただ私は手を振りかざした。
それと同時に突如アキヒサの頭上に現れるのは、巨大な氷の塊。アキヒサよりも大きなそれが振り落ちる。それを勇者として授かった身体能力でアキヒサは避けた。
それだけで安心している時点で、甘い。
私は何かを詠唱しようとしているアキヒサにそんな隙は与えない。
また、私は魔術を行使した。
そうして現れるのは、大きな風。それが、渦巻いていき竜巻となる。現れた竜巻はアキヒサをあっという間に飲み込んだ。
竜巻に飲まれたアキヒサは声にもならない声をあげながらもがき、そして竜巻の移動するままに壁にぶち当たってく。
ぶつかると同時に、亀裂音がその場に響く。そのわれた亀裂から徐々にひび割れが広がっていき、壁が崩れ落ちていった。
そして竜巻に飲まれたまま、アキヒサは外へと放り出された。
私はその大きく空いた穴に近づき、落ちていくアキヒサを視界にとらえる。そのまま、それを追いかけるように私は穴から飛び降りた。
もちろん、自分が何も被害を受けないように空中を移動する魔術を行使する。行使された魔術により私の背中に現れるのは、真っ白なふわりとした羽毛の鳥の翼だった。
私はその翼を使って、下降していく。そんな中で、竜巻の中から何かが現れた。
それは、私に狙いを定められた炎。地球で言う東洋のドラゴン――龍というべき存在の形をしたそれが真っすぐに私の方へと向かってくる。どうやらアキヒサは竜巻の中でも頑張って詠唱をしていたらしかった。
真っすぐに向かってくるそれを見ても、私は顔色さえも変えない。ただ、同じ魔術を瞬時に行使した。互いにぶつかりあうドラゴンの形をした炎。
それは、私のそれにおしのけられた。竜巻の中かあの詠唱だったために、きちんと魔力を練れなかったのだろう。私のそれが、竜巻の方へと向かっていく。
大きな音を立てて、炎と竜巻がぶつかりあった。そして、風と炎が混ざり合って、炎は勢いをます。竜巻の中で、一気に燃え上がった。
竜巻を中心として燃え上がる炎。もしかしたらアキヒサはこれで死ぬかもしれない。まぁ、それならそれでもいい。
地面に炎を纏った竜巻がぶち当たる。衝撃で、砂埃が舞い散る中で、竜巻と炎は大体消えた。まだ炎は所々火花をまきちらしている。
そこは、王宮の庭だった。
私はまだ空に浮いたままだ。
砂埃の中から、雷の魔術が飛んでくる。飛んできたそれを作りだした結界で弾き飛ばす。はじき返されたそれはアキヒサの方へ向かっていく。
砂埃がなくなる中で、アキヒサが私の方に向かって飛びかかってくる。脚力も補正されているアキヒサにとってそれは簡単な事だったのだろう。
そのまま振り下ろされる長剣。
私が魔術しか使わないから、接近戦が苦手とでも思ってるのかもしれない。駄目ね。甘いわ。
私は長剣を避けると体の動きを活性化させる魔術を行使する。難しいけれど、やり方さえ理解すれば身体強化だって魔術で可能だ。少し制御間違ったりしたら、体が壊れちゃうんだけどね。
そしてそのまま、私はアキヒサの背後に軽い転移をして思いっきり背中から蹴りをいれた。
地面に叩きつけられそうになったアキヒサは慌てて態勢を整えて、ぼろぼろになった服で私を見上げた。
「くそっ」
「何を悔しがってるの。当たり前なのよ。この結果は。英雄だのなんだの言われていても、あんたは弱い」
魔術を使えるだけで満足している様では強くなんてなれないもの。現状に満足してる人間が、もっと強くなんてなれないもの。
悔しがる方がおかしいのに。自分の力が通じない相手なんて、今まで居なかったのでしょうけれども。だからって自惚れるのは間違ってるわ。
「アキヒサ。私、怒ってるの」
私はそういいながらも、魔術を構築する。
空中に現れるのは全てをもやしつくそうとばかりに赤く燃える炎と鋭く尖っている氷。
数えきれないほどのそれらが、空に浮かんでいる。空中を埋め尽くすように存在するそれらに、アキヒサはこわばった目を向けて居た。
「アキヒサ。これで死ななかったら選択肢をあげる」
詠唱を唱える暇など与えなどしない。
私はそのまま手を振りかざす。そうすれば、それらが一斉にアキヒサに向かっていく。
とぐろを巻いて燃え盛る炎が、冷気を纏う氷が、アキヒサへと飛びかった。
それらは、アキヒサに向かって落ちていく。
それらが落ちると同時に、砂埃が舞った。
私は空中に留まったまま、炎と氷がアキヒサに襲い掛かった様子を見届けていた。
シールド系の魔術を行使する暇は与えていない。だから悪くて死んでいて、よくて何処か欠陥して生きているって所かしら。
そして、砂埃が消えたその後には――、
「あら? 生きてるかしらこれ」
私がそういってしまうほどにボロボロで倒れたアキヒサが居た。
体の所々は凍傷している。
尋常ではないスピードの氷をよけられなかったからか、片腕が切断されている。
燃えてしまったのか、大事な部分は隠してあるけれどもあとはほぼ裸状態。
焼け焦げたような箇所がいくつもある。
皮膚が燃えたせいか骨が見え隠れしてる場所がある。
見るからになんというか、これ生きてる? と思うような感じだった。
動けないアキヒサの隣に降り立てば、幽かにうめき声が聞こえた。
ギリギリ生きているらしい。私はそんなアキヒサに治癒魔術を行使する。このままじゃ直に死んで選択肢も与えられない。
「欠落した体はつなぎとめよ」
その言葉でまず、欠落した腕がつながる。治癒系は難しい。だからわざわざ詠唱して、攻撃系の魔術を使う時より強くイメージする。
「燃え尽きた肉塊をとりもどさせよ」
その言葉で、見え隠れしていた骨が皮膚に隠れる。体に異常が出ないように明確にイメージする。人間の体について。
「凍傷し、火傷した皮膚をもとの姿へと戻せ」
その言葉で、それらが消える。治癒系の魔術はそもそも人の体について明確にイメージできなければ失敗する。魔力もかなり食う。構築式だって細かいものをきちんと正しく組み立てなきゃいけない。
それが終われば最後に、詠唱も唱えずに私はボロボロの衣服を元の姿へと戻す。
「うん。これでいいわね。アキヒサ。聞きなさい」
「………」
アキヒサはむくっと体を起こす。そして下を向いたまま、私の声を聞いていた。何もアキヒサは言わない。すっかり戦意喪失しているのだろう。
「私がどうして此処にきたかわかってる?」
「……いや」
「周りが煩くて、うっとおしかったの。あなたのせいで」
「……俺の、せい?」
「そう。他の国に国王が威張り倒してるらしいわよ。あなたがいるからって調子にのって。それも含めて周りの国からすればアキヒサは立派な化け物なの。だから、皆あなたに恐怖してる」
きっと理解していないだろうから、わざわざ教える。知った上で選択すればいい。
「私やアキヒサやフランツ――『悪魔』みたいな存在は普通の人間にとって化け物よ」
「………そうだ。何で、『悪魔』と」
『悪魔』という言葉に、座りこんだままのアキヒサは反応を示して顔をあげた。
ちなみにフランツは王座の間から飛び降りては来なかったから、上から私とアキヒサを見下ろしている。
「『悪魔』は、服従の魔術具で無理やり従わされていた子供よ。自分の意志を帝国に殺されて、そして戦わされていた。丁度、帝国が私をひきいれようと『悪魔』をよこしたから魔術具はずしてあげたの。
あなたは『悪魔』が憎いでしょうけど、それと同じだけあなたも元帝国民には憎まれてるわ」
「………それは」
「あなたは関わり方を間違った。だから今周りに恐怖されているし、国王に利用されていた」
「イルマは…」
利用されてたって言葉に、アキヒサはイルマと国王の名を口にする。利用されてなどいないはずと思いこんでいる目。
本当に馬鹿だ。アキヒサは。
「国王がそんな事しないって思ってる? 実際にしてるからこそ、周りが迷惑してるの。アキヒサがいるって事で周りが大きく出れないのをいいことに色々やってたのよ。先日、国を滅ぼしたのも。はむかう奴を殺したかっただけ。あなたも関わっているのでしょう?」
「…………あの国が、王国民を殺したってイルマは」
信じたくないと縋った目を向けるアキヒサに私は残酷に告げる。
「それは嘘ね。あなたは王国民に愛着があるのか、英雄だからなのか知らないけど贔屓してるわ。でも敵だろうと命は平等だから。あなたは滅ぼした国にとっては憎い敵でしかない。だから常にあなたはそういう奪われた人間に殺される覚悟ぐらいもってなきゃだめなのよ。利用されることも想像しなきゃいけないの。
周りが幾ら優しかったとしても、それに甘えて、その優しさを信じ切って、疑わないのは駄目なのよ。私達は利用価値のある人間なんだから」
馬鹿みたいに信じ切ってたアキヒサに、昔の愚かな自分が重なった。
この王宮で、成果をあげて居場所を作ろうと必死だった私。当時の王子みたいな仲良くしてくれてる人を全体的に信じ切ってた私。
裏切りなんて想像もしなかった、愚かだった私。
「それに王女と結婚するって話、国王に聞いたでしょうけど…。それは王女は嫌がってるわ。他に好きな人がいるのに、国王があなたを国に取り込むために結婚させようとしてたの。それにも馬鹿なアキヒサは気付いてなかったでしょう?」
私の言葉に信じられないかのように私を見るアキヒサ。
「強い力を持ってる存在は恐れられ、排除されようとするものよ。あなたは国に関わりすぎた。不老にも近い状態じゃなければ、普通の人間で100年もたたずに死ぬなら関わりすぎてもよかったかもしれない。でも私たちはずっと生き続けなきゃいけない。そんな存在が一つの国にとどまってるなんて、周りの国からすればその国がどんどん力を付けるわけだから邪魔者でしかないの」
ひとつの国に不老の化け物が味方をしている。周りから見ればそんな最悪の状況だろう。
その化け物次第ですぐに国も滅ぶのだ。王国の意志で化け物が動かされる。それは恐ろしいだろう。
「利用されないようにうまく動いてればもう少しは長く英雄が出来たでしょうけど、そんな器用さはアキヒサはなかったわ。最も、うまく動いていたとしてもタイムリミットはやってきたでしょうけど。ずっと英雄で居られる人間なんていないの」
英雄活動なんていう遊びに、終止符を打ってあげる。
「それで選択肢をあげる。
一つ目は私にこの場で殺されて、永遠の眠りにつく事。
二つ目は永遠にカエルとして生きていくこと。
三つめは今すぐ王国と関わる事をやめて、私に迷惑をかけたって事で罰を受けること。どれがいい?」
どれでもいいのよ。私は。どれを選択しようと躊躇いなくやってあげるから。そんな意志を込めて、言いきった言葉に、アキヒサは少し青ざめる。
アキヒサが生きるも死ぬも、その選択次第であり、私が本気だという事が十二分に理解しているのだろう。
アキヒサは体を一瞬震わせて、声を発した。
「……さ、3で」
「うん。よろしい。それなら生かしてあげる」
私はそういって笑って、私は魔術を行使し、アキヒサを眠らせる。その後、アキヒサから視線をそらす。
視線を向ける先は、遠巻きに私とアキヒサの事を見ていたあの王女達。誰もが青ざめている姿を見ながらも、私はそういえば解いてなかったと口封じの魔術をまずとく。
そして恐怖に動けない彼らに近づいて、ただ告げる。
「ねぇ、私は人間に関わりたくないの。面倒な事したくないの。何処にも関わりたくないの。だから、もう私を不愉快にさせないでくれるかしら?
何度も何度も王国だの帝国だの、今回は色んな国の人間達が、森に来るだけでうっとおしくて仕方ないの。あの森は私が長年住んでる場所だから、うっとおしい事したら殺すし、国単位なら国事滅ぼしてあげるから」
そういえば、その場にいる何人もがびくついた。
「種族毎滅亡においやられたくなかったら、関わらないで。関わらないでくれたら私は何もしないから」
それは脅しだ。もう面倒な事がないように念入りに脅しておく必要がある。
だって時が経てば人は忘れていくものだから。ずっと関わって来ないようにするのは難しい。
「お願いね。この世界中に伝えてね。伝わってなくてもうっとおしかったら殺すから」
笑って告げて、真っ青に顔を染めて今にもたおれそうな王女達を見て、もういいかと私は踵を返す。
眠りに落ちたアキヒサの体を浮かせて、上から私たちを見ているフランツに呼びかける。
「フランツ、帰るわよ」
私がそう声をかければ、フランツも慌てたように飛び降りてくる。風をおこして衝撃をおさえて、そのまま着地する。
そして私はそのまま転移の魔術を行使して、その場から消えた。多くの青ざめた人間をその場に放置して。
―――――森の賢者は『救世主』と対峙する。
(彼女は圧倒的な力を見せつけた)




