~残念無念~
この世は20XX年。犯罪はすこぶる重い罪と見なされ、人を殺せる物は持っているだけでも罪になる時代となった。食料はすべて加工されており、包丁など持った暁には、家にピーポーさんが来て、近所から軽蔑の目で見られる。そんな時代だった。
こうなったのは、一昔前のとある事件からである。
そのときの首相は、平和を第一としており、人望も厚く、支持率も右肩上がりだった。
調子に乗った日本は、どんどん成長し、他国から敬われる存在になりつつあった。
しかし、その裏で、なぜか犯罪はどんどん増えていったのである。
ここまで成長した日本に、犯罪があるのは大きな痛手だと言うことで、警察は大々的に調査した。
すると、1つのテロ組織が浮かび上がったのである。
一見何のつながりもないような沢山の殺人事件が、実はすべてその組織による物だと言うことが判明し、捜査は熾烈を極めた。
それなのに、間抜けな警察は、いつになっても捕まえられないばかりか、突然調査をやめてしまったのである。
相変わらず犯罪はすごいスピードで増えていくというのに、警察どもは何もしない。
自分たちは殺されるのを黙って待っておけと言うことか?
理不尽だと感じた国民達は、独自の調査を始めた。
そして、2年後。
何とも間抜けな結果でその事件は幕を閉じた。
黒幕は、首相だった。
世紀の笑いぐさである。
もちろん辞任だ。もちろん死刑だ。
そして、前首相の失態の後、就いた首相は、前みたいな事が起こらないようにと、こんな直接的な方法で、犯罪を撲滅したのである。
おかげで今の日本は平和そのもの。
しかし、前首相に家族や友人を傷つけられた国民達は、復讐することが一切出来なかった。
僕の妹は、殺された。
もしかしたら、そのテロ組織の一員だったのかもしれない。
しかし、犯人は・・・
「せーしんいじょうしゃ」だった。
裁判の判決は無罪。
責任能力どーチャラこーチャラで、僕の妹はただ殺されただけ。
今の日本なら絶対有罪だったはずだ。
しかし恨む相手は病院の中。
しかももうすぐ出てくるらしい。
許せるはずなどない。
絶対に、復讐してやる。
しかし、殺すと言ったって、無理なのだ。
素手でボコボコにしない限り、無理なのだ。
残念ながら僕にはそんな能力はない。
残念無念。
脳裏に殺しやがったあいつのせせら笑っている顔が浮かぶ。
このまま終わるのか?
この気持ちを抱えたまま?
そんな僕の所に、悪魔がやってきた。