政策について (一九四〇年十二月二十五日)
これは、毛沢東同志が中国共産党中央のために書いた党内指示である。
反共の高まりという当面の情勢のもとでは、われわれの政策が決定的な意義をもっている。だが、党の当面の時期の政策は、土地革命の時期の政策とは重大な区別がなければならないことを理解していないものが、われわれの幹部のなかにまだ数多くいる。抗日戦争の時期全体をつうじて、いかなる状況のもとでも、わが党の抗日民族統一戦線の政策はけっして変わらないこと、過去十年にわたった土地革命の時期の多くの政策は、現在、安易にとり入れるべきではないことを理解しなければならない。わけても、土地革命の後期に、中国革命が半植民地のブルジョア民主主義革命であり、長期的なものであるという二つの基本的特徴を認識しないことからうまれた多くの極左的な政策は、みなこんにちの抗日の時期にとり入れてはならないばかりでなく、過去においてもあやまりであった。たとえば五回目の「包囲討伐」と五回目の反「包囲討伐」との闘争を、いわゆる革命と反革命の二つの道の決戦であるとする考え、経済面でのブルジョア階級の消滅(極左的な労働政策と徴税政策)と富農の消滅(わるい土地を分配する)、肉体面での地主の消滅(土地を分配しない)、知識人にたいする打撃、反革命粛清における「左」翼的な偏向、共産党員による政権の仕事の完全な独占、共産主義的な国民教育の方針、極左的な軍事政策(大都市の攻撃と遊撃戦争の否定)、白色地区の活動での盲動政策、党内の組織の面での打撃政策などがそれであった。こうした極左的な政策は、第一次大革命の後期における陳独秀の右翼日和見主義とは正反対に、「左」翼日和見主義のあやまりとなってあらわれた。第一次大革命の後期には、すべてのものと連合し、闘争を否定したが、土地革命の後期には、すべてのものと闘争し、連合を否定した(農民の基本層をのぞいて)。これは二つの極端な政策を代表するきわめてあきらかな例証にほかならない。この二つの極端な政策は、いずれも党と革命に非常に大きな損失をこうむらせた。
現在の抗日民族統一戦線政策は、すべてのものと連合し、闘争を否定することでもなければ、すべてのものと闘争し、連合を否定することでもなく、連合と闘争の両側面を総合した政策である。具体的にいえばつぎのとおりである。
(一)すべての抗日の人民が連合して(あるいは、すべての抗日の労働者、農民、兵士、知識層、商工業者が連合して)、抗日民族統一戦線を結成する。
(二)統一戦線のもとでの独立自主の政策である。統一も必要であるし、独立も必要である。
(三)軍事戦略の面では、統一した戦略のもとでの独立自主の遊撃戦争である。基本的には遊撃戦であるが、有利な条件のもとでの運動戦もゆるがせにしない。
(四)反共頑迷派と闘争するときには、矛盾を利用し、多数を獲得し、少数に反対し、各個に撃破する。道理があり、有利であり、節度があるようにする。
(五)敵占領区と国民党支配区での政策としては、できるだけ統一戦線の活動を発展させる一方、隠蔽と精鋭化をはかる政策をとる。また組織形態と闘争形態のうえでは、隠蔽と精鋭化をはかり、長期にわたってひそみ、力をたくわえ、時機を待つ政策をとるのである。
(六)国内の各階級の相互関係にたいする基本政策は、進歩勢力を発展させ、中間勢力を獲得し、反共頑迷勢力を孤立させることである。
(七)反共頑迷派にたいしては、革命的二面政策をとる。すなわち、まだ抗日できる側面にたいしては、連合する政策をとり、あくまで反共をする側面にたいしては、孤立させる政策をとる。抗日の側面で、頑迷派はまた二面性をもっているので、われわれは、そのまだ抗日できる側面にたいしては、連合する政策をとり、その動揺する側面(たとえば、日本侵略者とひそかに結託したり、汪精衛や民族裏切り者反対に積極的でない)にたいしては、闘争し、孤立させる政策をとる。頑迷派は、反共の側面でも二面性をもっているので、われわれの政策にも二面性がある。すなわち、かれらが国共合作の根本的な分裂をまだのぞんでいない側面については、連合する政策をとり、かれらがわが党と人民にたいして高圧政策や軍事進攻をおこなう側面については、闘争し、孤立させる政策をとる。こうした二面派分子を民族裏切り者、親日派と区別する。
(八)民族裏切り者や親日派のなかにも二面分子がいるので、われわれも革命的二面政策でこれに対処すべきである。すなわち、親日的な側面にたいしては、打撃をくわえ、孤立させる政策をとり、一動揺する側面にたいしては、これを籠絶し、獲得する政策をとる。こうした二面分子を、徹底した民族裏切り者、たとえば汪精衛、王揖唐〔1〕、石友三〔2〕などと区別する。
(九)抗日に反対する親日派の大地主・大ブルジョア階級を、抗日を主張する英米派の大地主・大ブルジョア階級と区別しなければならないし、また抗日を主張しながらも動揺し、団結を主張しながらも反共的である二面派の大地主・大ブルジョア階級を、二面性の比較的すくない民族ブルジョア階級、中小地主、開明紳士と区別しなければならない。われわれの政策はこれらの区別のうえにたてられる。上述のそれぞれ異なった政策は、これらの階級関係の区別からきている。
(十)帝国主義に対処するばあいも同様である。共産党は、いかなる帝国主義にも反対するものではあるが、中国を侵略している日本帝国主義を、現在侵略をおこなっていない他の帝国主義と区別しなければならない。また、日本と同盟を結び、「満州国」を承認しているドイツ、イタリアの帝国主義を、日本と対立の立場にあるイギリス、アメリカの帝国主義と区別しなければならない。さらに、かつて極東ミュンヘン政策をとって中国の抗日に危害をくわえていたときのイギリス、アメリカを、いまはこの政策を放棄して中国の抗日支持にあらためているイギリス、アメリカと区別しなければならない。われわれの戦術の原則は、やはり、矛盾を利用し、多数を獲得し、少数に反対し、各個に撃破することである。われわれは、外交政策の面で、国民党とは区別がある。国民党は、「敵はただ一つで、そのほかはみな友である」などといっており、表面では日本以外の国をみな平等にみているが、、実際には親英、親米である。われわれは、第一にソ連と資本主義諸国との区別、第二にイギリス、アメリカと、ドイツ、イタリアとの区別、第三にイギリス、アメリ力の人民とイギリス、アメリカの帝国主義政府との区別、第四に極東ミュンヘンの時期のイギリス、アメリカの政策と当面の時期のそれとの区別、といった区別をすべきである。われわれの政策はこれらの区別のうえにたてられる。われわれの根本方針は、国民党とは反対に、独立した戦争と自力更生を堅持する原則のもとで、可能なかぎり外国の援助を利用するのであり、国民党のように、独立した戦争と自力更生を放棄して、外国の援助にたよったり、いずれかの帝国主義集団に身をよせたりするのではない。
党内の多くの幹部には、戦術問題にたいする一面的な観点とそこから生じる左より、右よりの動揺があり、歴史上および当面の党の政策の変化と発展の面から、かれらに全面的、統一的な理解をもたせなければ、それを克服できるものではない。当面、党内の主要な危険な偏向は、やはり、極左的な観点がわざわいしていることである。国民党支配区では、多くの人が国民党の反共政策の重大さをみてとっていないため、隠蔽と精鋭化をはかり、長期にわたってひそみ、力をたくわえ、時機を待つという政策を、真剣に実行できないでいる。同時にまた、多くの人が、単純に国民党を黒一色とみなし、手のつけようがないとして、統一戦線の活動を発展させる政策を美行できないでいる。似たような状態は、日本占領区でもみられる。
国民党支配区と各抗日根拠地では、連合を知っているだけで、闘争を知らす、また国民党の抗日性を過大に評価したために、国共両党の原則的なちがいをあいまいにし、統一戦線のもとでの独立自主の政策を否定し、大地主・大ブルジョア階級に迎合し、国民党に迎合し、自分で自分の手足をしばり、思いきって抗日革命勢力を発展させようとはせず、国民党の共産党反対、共産党制限の政策と断固たたかおうとしないこうした右翼的な観点が、過去にはひどかったが、現在では基本的に克服された。だが、一九三九年の冬以来、国民党の反共の摩擦とわれわれの自衛闘争によってひきおこされた極左的な偏向が、いたるところにあらわれた。それは、いくらかは是正されたが、まだ完全には是正されておらず、まだ多くの地方の多くの具体的政策にみられる。したがって、当面、それぞれの具体的政策を検討し、解決することが、きわめて必要である。
それぞれの具体的政策については、党中央はこれまでつぎつぎと指示をだしているので、ここでは、ただいくつかの点を総合的に指摘しておく。
政権の組織について。「三三制」を断固実行しなければならないい共産党員は政権機関のなかで三分の一をしめるにとどめ、広範な非党員を政権に参加させるようにする。江蘇省北部など、抗日民主政権を樹立しはじめたところでは、三分の一より少なくてもよい。政府機関、民意機関をとわず、反共に積極的でない小プルジョア階級、民族ブルジョア階級、開明紳士の代表を参加させるべきであり、反共をしない国民党員の参加をゆるさなければならない。民意機関では、少数の右派分子の参加をゆるしてもよい。わが党の一手請負はぜひともさげるべきである。われわれは、買弁大ブルジョア階級と大地主階級の独裁をうちこわすだけであって、共産党の一党独裁でそれにとってかえるのではない。
労働政策について。労働者の抗日への積極性を発揮させるには、労働者の生活を改善しなければならない。だが、極左はぜひともさげるべきで、賃金の引き上げも労働時間の短縮も度をすぎてはならない。中国の当面の状況では、まだ八時間労働制の普遍的実施はむずかしく、一部の生産部門では十時間労働制の実施をゆるさなければならない。他の生産部門は、状況に応じて時間をきめるべきである。労資間の契約成立後は、労働者は労働規律をまもらなければならず、資本家にも利益を保証してやらなければならない。そうでないと、工場が閉鎖されて抗日に不利となり、労働者自身も損をする。農村労働者の生活や待遇の改善は、なおさら、度をすぎるべきではなく、そうでないと、農民の反対、労働者の失業、生産の縮小をまねくことになる。
土地政策について。当面は徹底した土地革命をおこなう時期ではなく、過去の土地革命の時期の一連のやり方は現在に適用できないことを、党員や農民に説明しなければならない。現在の政策として、一方では、基本的な農民大衆の抗日への積極性を発揮させるため、地主の小作料、利子の引き下げを規定すべきである。だが、引き下げすぎてもいけない。小作料は、ふつう二割五分の引き下げを原則とする。大衆の要求が高まれば、農民六割、地主四割、あるいは農民七割、地主三割にしてもよいが、この限度をこえてはならない。利子は、社会経済の貸借関係でゆるされる限度をこえて、引き下げてはならない。他方では、農民が小作料と利子を支払うこと、土地所有権と財産所有権が依然として地主に属することを規定する必要がある。利子の引き下げによって、農民の借金するところがなくなったり、旧債の清算①によって、農民が抵当にいれた土地を無償で回収したりすることがあってはならない。
徴税政策について。収入額におうじて納税額をきめなければならない。免税を規定される極貧者をのぞいて、収入のあるすべての人民、すなわち八〇パーセント以上の住民は、労働者、農民をとわず、すべて国家の税金を負担しなければなちず、地主、資本家に全部を負担させるべきではない。軍隊の給養を解決するために人を逮捕して罰金をかけるやり方は、禁止すべきである。徴税の方法は、われわれがより適切な新しい方法をきめるまで、国民党のふるい方法を適宜に改めて利用してさしつかえない。
奸徒粛清の政策について。徹底した民族裏切り者と徹底した反共分子は断固として弾圧すべきであり、そうしなければ、抗日の革命勢力をまもることはできない。だが、けっして、人を多く殺してはならないし、罪のないものをひとりでも巻きぞえにしてはならない。反動派のなかの動揺分子と、強迫されてしたがっているものは、寛大に処置すべきである。どのような犯人にたいしても、体刑は断固廃止し、供述を軽々しく信じないで、証拠を重んずるべきである。日本侵略軍、かいらい軍、反共軍の捕虜にたいしては、大衆からひどく憎悪されていて、どうしても殺す必要があり、しかも上級の許可をえているもの以外は、一律に釈放する政策をとるべきである。そのうち、強制的に入隊させられ、いくらか革命性をもっているものは、大量に獲得してわが軍のために働かせ、その他は一律に釈放すべきである。もし、ふたたびくれは、ふたたび捕え、ふたたび釈放する。侮辱をくわえたり、金品をとりあげたり、転向を強要したりせず、一律に、心のこもったおだやかな態度で接する。かれらがいかに反動的でも、こうした政策をとる。これは、反動陣営を孤立させるうえで非常に効果的である。裏切り者にたいしては、罪がとくに大きなもの以外、反共をつづけないことを条件に、更生の道をあたえる。もしも改心して革命をやるならば、うけいれてよいが、再入党はゆるさない。国民党の一般の情報要員を日本のスパイや民族裏切り者と混同してはならず、両者の性質をはっきり区別して、処置すべきである。どのような機関や団体でも人を逮捕できるという、混乱した現象をなくさなければならない。抗日の革命的秩序を樹立するために、犯人逮捕の権限は、戦闘中の軍隊をのぞけば、政府の司法機関と治安機関にかぎることを規定すべきである。
人民の権利について。抗日に反対しないすべての地主や資本家は、労働者、農民とおなじ人権、財産権、選挙権および言論、集会、結社、思想、信教の自由の権利をもつことを規定すべきである。政府は、わが根拠地内で破壊活動を組織したり、暴動をおこしたりするものに干渉するだけで、その他のものには干渉せず、一律に保護する。
経済政策について。工業、農業と商品の流通を積極的に発展させなければならない。地区外の資本家でわが抗日根拠地にきて事業をおこす意思のあるものは、ひきよせるべきである。政府の経営する国営企業はたんに企業全体の一部分とみなし、民営企業を奨励すべきである。すべてこれらは自給自足の目的を達成するためである。有益な企業はすべて破壊をさけるべきである。関税政策と貨幣政策は、農業、工業、商業を発展させる基本方針にそむかず、これに適応したものでなければならない。各根拠地の経済を、大ざっぱにではなく、真剣かつ綿密に組織して、自給自足の目的を達成することは、根拠地を長期にささえる基本的な環である。
文化教育政策について。人民大衆の抗日についての知識、技能および民族の自尊心の向上と普及を中心とすべきである。ブルジョア自由主義的な教育家、文化人、記者、学者、技術者が根拠地にきて、われわれと協力して学校をおこし、新聞をだし、仕事をするのをゆるすべきである。抗日の積極性を比較的もっているすべての知識人をわれわれの学校にいれ、短期間の訓練をほどこしたうえで、軍隊、政府、社会の仕事に参加させるべきであり、かれらを大胆に吸収し、大胆に任用し、大胆に抜擢すべきである。反動分子がまぎれこむのをおそれて、あれこれと用心しすぎるのはよくない。そうした連中が多少まぎれこむのはさげられないが、学習と仕事をつうじてそれを排除してもおそくはない。どの根拠地でも、印刷工場をたて、新聞、書籍を刊行し、その発行と配付の機構をつくるべきである。どの根拠地でも、大規模な幹部学校をできるだけ開設する必要があり、それは大きいほどよく、多いほどよい。
軍事政策について。八路軍と新四軍は、中国人民が民族の抗戦を堅持するうえでもっともたよりになる武装力であるから、できるかぎり拡大すべきである。国民党軍にたいしては、相手が侵してこなければ、こちらも侵さないという政策をつづけ、できるかぎり友だちづきあいの活動を発展させるべきである。われわれに共鳴する国民党の将校と無党派の将校を、可能なかぎり八路軍と新四軍に参加させ、わが軍の軍事建設を強めるべきである。わが軍のなかで共産党員が数のうえですべてを独占している状態も、いまでは、あらためるべき点がある。もちろん、われわれの主力軍のなかで「三三制」を実行すべきではないが、軍隊の指導権をわが党の手ににぎっているかぎり(これはぜひとも必要で、ゆるがしえないことである)、大量の共鳴者を軍事部門や技術部門の建設に参加させても、おそれることはない。わが党、わが軍の思想的基礎と組織的基礎の堅固な建設に成功している現在の時期には、共鳴者(もちろん破壊分子ではない)を大量に吸収しても危険でないばかりか、そうしなければ、全国的な共鳴をかちとることも、革命勢力を拡大することもできない。したがってこれは必要な政策である。
以上のべた統一戦線のなかでのそれぞれの戦術的原則と、これらの原則にもとづいて規定された多くの具体的政策は、全党が断固として実行しなければならない。日本侵略者が中国にたいする侵略を強め、国内の大地主・大ブルジョア階級が反共、反人民の高圧政策と軍事進攻をおこなっているときに、上述のそれぞれの戦術的原則と具体的政策を実行しなければ、抗日を堅持し、統一戦線を発展させ、全国人民の共鳴をえて、時局の好転をかちとることはできない。だが、あやまりをただすときは、段どりをおってやるべきで、ことを急ぐあまりに、幹部の不満、大衆の疑惑、地主の反撃などのこのましくない現象をひきおこすようなことがあってはならない。
〔 ##注## 〕
〔1〕 王揖唐は北洋軍閥時代の大官僚であり、親日派の民族裏切り者である。一九三五年、華北事変ののち、蒋介石に起用された。一九三八年、華北で日本侵略者のかいらいになり、かいらい「華北政務委員会」の委員長になった。
〔2〕 石友三は向背つねなき国民党軍閥のひとりである。抗日戦争勃発後、国民党第十軍団総司令官になり、河北省南部で、もっぱら日本軍と連合して、八路軍を攻撃し、抗日民主政権を破壊し、共産党員や進歩的な人びとを虐殺した。
〔 ##訳注## 〕
① 中国語の「清算」とは、敵にたいする闘争の面でつかわれるばあいには、人民大衆が党の指導のもとで、民族裏切り者、地主、悪質ボス、およびその他の悪質分子の、政治や経済の面での犯罪行為を暴露し、その罪状にもとづいて処置することである。ここでいう「旧債を清算する」とは、一抗日戦争の時期、これまで地主から借金して搾取された利子のうち、規定をこえた高すぎる分を人民政府の政策にもとづいて、農民がとりもどすことをさす。




