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税は未来のために ― 崩壊国家を再構築する経済戦記 ―  作者: 南蛇井


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第24話:静かな対立

 リディアが去って、数日。


 街は変わらず回っていた。


 エリシアが現場を仕切り、

 ルールは機能し、

 小さな商売は増え続けている。


 表面上は、順調だ。


 だが――


「来ましたか」


 俺は、差し出された書状に目を落とした。


 封蝋には見覚えのある紋章。


 商会のものだ。


「……また?」


 エリシアが眉をひそめる。


「ええ」


 封を切る。


 中身を一読し、軽く息を吐いた。


「ずいぶんと“丁寧”ですね」


「何て書いてあるの?」


「簡単に言えば」


 紙を軽く振る。


「協力しましょう、です」


「は?」


 エリシアが露骨に顔をしかめた。


「今さら?」


「ええ、今さらです」


 だが――


(自然な流れだな)


 こちらが流通を握り始めた。


 利益も出ている。


 なら、無視はできない。


「でも、信用できないでしょ」


「もちろん」


 即答する。


「裏があります」


「だよね」


 エリシアがため息をつく。


「じゃあ断る?」


「いえ」


 俺は首を振った。


「受けます」


「……は?」


「表向きは」


 一歩、踏み込む。


「向こうも同じです」


「表では協力、裏では牽制」


「それが狙いです」


 エリシアが腕を組む。


「つまり、様子見ってこと?」


「それもありますが」


 軽く笑う。


「もう少し積極的ですよ」


「どういう意味?」


「こちらの情報を取りに来てます」


「……ああ」


「どれだけ利益が出ているか」


「どこまで広がっているか」


「弱点はどこか」


 一つずつ並べる。


「全部、探ってくる」


「じゃあ危ないじゃん」


「ええ」


 だが。


「同時に、こちらも見れます」


「……向こうを?」


「はい」


 視線を上げる。


「内部の動き」


「どこに余裕があるか」


「どこが焦っているか」


「全部、分かる」


 沈黙。


 そして、エリシアが小さく頷いた。


「……なるほど」


「情報戦か」


「そうです」


 これは、もう“取引”じゃない。


 “戦い”だ。


 ただし――


 静かな戦い。


「条件は?」


「こちらに有利な形で提示します」


 机に紙を広げる。


「最低価格の保証」


「取引量の確約」


「そして」


 一拍置く。


「独占禁止」


「……それ、通るの?」


「通させます」


 即答する。


「向こうは、こちらを無視できない」


 それだけの位置に来ている。


「でも、強気すぎると」


「引く可能性はあります」


「だからギリギリを攻める」


 線を引く。


「越えたら壊れる」


「でも、引けば損をする」


「その境界です」


 エリシアが苦笑した。


「相変わらず、えぐいね」


「普通ですよ」


 利益の最大化。


 それだけだ。


「……分かった」


 エリシアは頷いた。


「じゃあ、やろう」


「ええ」


 俺も頷く。


 舞台は整った。


 相手は、経験豊富な商会。


 だが――


(主導権は、こちらにある)


 それだけの材料は揃っている。


 書状を机に置く。


 静かな戦いの始まりだ。


 そして、口元にわずかな笑みを浮かべながら言った。


「面白いことになってきましたね」

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