第22話:ヒロイン覚醒②
「ルールを作ります」
その宣言から、数日。
街は、目に見えて変わっていた。
配分は整理され、
仕事は割り振られ、
揉め事は減っている。
完全ではない。
だが、確実に“回り始めている”。
【人口:増加】
【配分:安定】
【労働:最適化進行】
数字も、それを示していた。
そして――
「問題が出てる」
執務室に入るなり、エリシアが言った。
「どこです?」
「資材」
机に書類を置く。
「建築用の木材が足りない」
「需要が一気に増えてる」
街が広がれば当然だ。
「供給は?」
「追いついてない」
「外からの仕入れも、今は不安定」
商会の影響が、まだ残っている。
「なるほど」
俺は軽く頷いた。
「じゃあ――」
「待って」
言いかけたところで、止められた。
エリシアがまっすぐこちらを見ている。
「今回は、私がやる」
その一言に、空気が変わる。
「……いいですよ」
俺はあっさり引いた。
「任せます」
「……ほんとに?」
「ええ」
肩をすくめる。
「そのためにいるんでしょう」
沈黙。
エリシアは一瞬だけ考えた。
だが、すぐに視線を戻す。
迷いはない。
「分かった」
書類を手に取り、広げる。
「まず、現状」
「木材の需要が急増」
「供給は既存ルートのみ」
「だから足りない」
整理はできている。
いい。
「対策は三つ」
指を立てる。
「一つ目、使用制限」
「無駄な建築は止める」
「二つ目、優先順位」
「生活と生産を優先」
「三つ目」
一拍置く。
「供給を増やす」
「具体的には?」
俺はあえて聞く。
試すわけじゃない。
確認だ。
「近隣の森」
即答だった。
「管理して、計画的に伐採する」
「……乱伐になりませんか?」
「ならないようにする」
迷いなく言う。
「量を決める」
「再生も考える」
いい判断だ。
短期だけじゃない。
ちゃんと“維持”を見ている。
「運搬は?」
「人を回す」
「今、手が空いてる層がいる」
そこまで見えているか。
「価格は?」
「上げる」
即答。
「足りないものは高くする」
「抑制と供給、両方に効く」
完璧だな。
俺は何も言わなかった。
言う必要がない。
すでに“判断”は終わっている。
「……これでいく」
エリシアが書類を閉じる。
そして、そのまま立ち上がる。
扉へ向かいかけて――
ふと、足を止めた。
「……一応、聞くけど」
振り返る。
「問題ある?」
ほんの少しだけ。
不安が残っている。
だが――
「ありません」
俺は即答した。
「完璧です」
「……そっか」
小さく息を吐く。
その顔に、迷いは消えていた。
もう確認はいらない。
判断できる。
責任も取れる。
それが“管理する側”だ。
扉に手をかける。
そして――
振り返らずに、言い切る。
「これは、私が決めます」




