表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
税は未来のために ― 崩壊国家を再構築する経済戦記 ―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/30

第14話:改革開始

 「……想像以上に、ひどいですね」


 その結論から、一夜。


 貴族家の屋敷の一室。


 机の上には、再び帳簿が広げられていた。


 ただし――


 今回は“見る”ためではない。


 “切る”ためだ。


「始めます」


 俺が言うと、室内の空気が張り詰めた。


 リディアは正面に座り、無言で頷く。

 エリシアはその隣で腕を組んでいた。


「優先順位は単純です」


 帳簿を指で叩く。


「“出ていく金”を止める」


「……収入じゃなくて?」


 エリシアが聞く。


「収入は時間がかかる」


 即答する。


「でも支出は、今この瞬間に止められる」


「だから先に切る」


 理屈は明快だ。


 そして、残酷でもある。


「では、一つ目」


 俺は一冊の帳簿を引き寄せた。


「外部委託契約」


 ページを開く。


 数字が浮かぶ。


【契約数:過剰】

【単価:相場の3倍】

【依存度:高】


「これ、全部見直します」


「全部……?」


 リディアがわずかに反応する。


「はい」


 迷いなく言い切る。


「不要なものは即解除。必要なものも再交渉」


「ですが、急に切れば――」


「困るのは向こうです」


 遮るように言う。


「今までが異常だっただけで、適正に戻すだけです」


「……」


 リディアは言葉を飲み込んだ。


 分かっているのだ。


 “正しい”ことを言われていると。


「次」


 別の帳簿を開く。


「人件費」


 空気がさらに重くなる。


「ここが一番効きます」


「……人を、切るんですか」


 エリシアが低く聞く。


「はい」


 俺は即答した。


 躊躇はない。


「働いていない人間に金を払う余裕はありません」


「ですが……彼らは」


 リディアが言いかけて、止まる。


 “身内”だ。


 言葉にしなくても分かる。


「関係ないですね」


 俺は淡々と言う。


「仕事をしているか、していないか。それだけです」


「……っ」


 リディアの指が、ぎゅっと握られる。


 分かる。


 それが一番、切りにくい部分だ。


 だが――


「ここを切らないと終わります」


 一歩も引かない。


「情で残せば、その分だけ全体が沈む」


 静かに、確実に言い切る。


 沈黙。


 長い沈黙。


 やがて。


「……分かりました」


 リディアが、絞り出すように言った。


「必要なら、切ってください」


 その声は震えていたが、逃げてはいない。


 ……いい。


 これなら進める。


「では決定です」


 俺は次のページを開く。


「不要人員、整理」


「契約、再構築」


 淡々と項目を並べていく。


「さらに」


 もう一つ、帳簿を叩く。


「備品購入」


「これも全見直し。相場基準を導入します」


「……基準?」


「価格の上限を決める」


 シンプルだ。


「それを超えるものは買わない」


「そんなことで変わるの?」


「変わりますよ」


 即答する。


「今までが無法地帯だっただけです」


 事実だ。


 ルールがないから、好き放題やられていた。


 なら――


 作ればいい。


「まとめます」


 俺は立ち上がった。


「無駄な契約は切る」


「働かない人間は排除」


「支出は基準で管理」


 一歩前に出る。


「これだけで、流出は止まる」


 室内は完全な沈黙だった。


 だが、それは拒絶ではない。


 覚悟の沈黙だ。


 もう戻れないと、全員が理解している。


 だから――


 俺は最後に、帳簿の一点を指で叩いた。


 ここが始まりだ。


 この腐った構造を壊す、最初の一手。


 そして、はっきりと言い切る。


「まず、ここから切ります」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ