episode7
「今日の放課後ちょっといい?」
そう類に聞かれたのはさっき。
用事がわからなくて気まずくてとりあえずうんって答えたけど、内心ドキドキしている。
そしてついに放課後。
先に蒼太には言ってあるみたいでその日は久しぶりに類と帰った。
2人とも沈黙のまま。
先に耐えられなくなったのは私の方で口を開いた。
「あのさ、どうしたの?」
「未紘」
おもむろに立ち止まった類が私を呼んだ。
「未紘、好きだよ」
私は一瞬、思考が止まった。
「す、き?私を?類が?」
「うん。俺と、付き合って欲しい」
そういう彼はずっと私を見ている。
その目はどこか、結末を分かった上で答えを待ってるように見えた。
ついこの間まで類が好きだった。
けれど今は蒼太が好き。
だから。
「ごめん、他に好きな人がいる」
「うん、知ってる」
なぜだか類はどこかすっきりした顔をした。
「だから、ごめん。ありがとう」
「うん」
やっぱり類も優しくて、それが身に沁みた。
「未紘。未紘もちゃんと言いなよ」
「え?」
「きっと、待ってる」
どうやら、私が誰を好きなのか、類は知っているようだった。
「…うんっ!」
「頑張れよ」
類のエールを背中に受けながら、私は蒼太の元に走った。
とりあえず、家の方面。
ひたすら走って、1秒でも早く蒼太の元に。
愛しい後ろ姿が見えた時、私は叫んだ。
「蒼太!!」
彼はびくっとして振り向く。
そのまま走って蒼太の目の前に立つ。
「あのね、わたし、蒼太に、言いたいことが、あるの」
全速力で走った私はなかなか息が整わない。
「ゆっくりでいいよ」
そう言われたけど、気合いで落ち着かせる。
「蒼太のことが好きです!私と付き合ってください!」
勢いよく言って頭を下げた私だけど、内心ビクビクで顔を上げるのが怖い。
「…」
しかし蒼太からはなんの返事も返ってこない。
不思議に思って、ゆっくり顔を上げる。
そこには、顔を真っ赤にしている蒼太がいた。
目線がうろちょろしている。
「蒼太?」
「嬉しい…」
「え?」
「未紘はずっと類のことが好きだと思ってたから。僕はそれをずっと見守るだけだったから」
蒼太は相変わらず赤く染まった顔で私を正面から見据えた。
「僕も好きだよ。僕と付き合ってください」
息を呑むようだった。
「よろしくお願いしますっ!」
テンションの上がった私は蒼太に抱きついた。
蒼太はそれを笑って許す。
私の背中に力が加わった。
しばらく、幸せを噛み締めていた時。
急に蒼太が離れる。
そして、私よりももっと奥に目線を向ける。
不意に笑顔になった。
私が後ろを振り向くと、そこには類の姿。
「おめでと」
そう笑顔で言う。
「蒼太、未紘泣かしたら今度はマジで行くぞ」
「僕絶対泣かせないから大丈夫」
蒼太が私にチラリと目線をよこす。
それにドキドキして狼狽える私を類は面白そうに見ていた。
「仲良くしろよ」
「うん」
私は笑顔で頷く。
一方、蒼太は複雑そうな顔。
「それはお前もだろ類」
途端に笑顔に戻る。
「僕たちは、3人で一緒なんだろ。なあ未紘」
私はこくんと頷いた。
「だな」
そう言った類はどこか嬉しそうだ。
「じゃあ帰るかー。今日は赤飯だろうな、蒼太の家は」
「ちょ、やめろって」
「なんで赤飯?」
急に慌てる蒼太。
「こいつさ、むっかしから未紘のこと好きだったからさ、もう悲願みたいになってんの」
私の体温が一気に上がる。
「やめろって」
「ほんとだよ、ねえ」
今度ばかりは私も止めたい。
これ以上は恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。
「なんてな。俺も赤飯食いに行くかなー」
そんなことを言って類はずんずん先に進む。
私と蒼太はそれを見て笑った。
そして類に並ぶ。
3人の矢印が収まった瞬間。
私たちは幸せに包まれた。




