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となりの君へ  作者: 深織
2/8

episode2

今日はとうとう高校の入学式。


真新しい制服を纏った自分を鏡に映す。


中学はセーラーだったから高校のブレザーがかっこよく見える。


昨日完璧に準備した荷物を持ってまずは左隣の蒼太の家。


今回はちゃんと待ち合わせの時間を決めていたからすんなり出てきた。


「おはよう」


「おはよっ蒼太」


私は蒼太を見た。


長身の蒼太は中学の学ランよりブレザーが似合っていた。


「あ、いたいた!おはよ!」


後ろから声がして振り返る。


蒼太とお揃いのブレザーを着た類が笑顔で手を振っている。


私も顔が綻ぶのを感じながら夢中で手を振った。


側から見たら3mくらいの距離で手を振り合っている謎の人たちだっただろう。


だが、そんなことを今は気にしない。


「そろそろ行くよ」


頃合いを見たように蒼太が言う。


その言葉をきっかけに私たちは歩き出した。



道中は「同じクラスかなぁ」とか「先生どんな人かなぁ」とかそんな話をしていた。


そのうちに高校の前に着く。


昇降口の前に貼られたクラス表を見つめる。


まずは自分の名前。


私は3組だった。


次に類と蒼太の名前を探した。


「類!蒼太!3人、同じクラスだよ!」


私が声を上げるその瞬間、他の2人も互いに顔を見合わせた。


そして、笑みをこぼしながら昇降口に入った。


「ね、あの人イケメンじゃない?」


「背、高い人?」


「うん。てか、隣のちょっと日焼けした人もかっこいい」


そんな会話が背後から聞こえてきた。


初めはそれが蒼太と類を指しているとは思わなかった。


けど、特徴と彼女たちの視線からそれが2人のことを言っていると気づいた。


私は2人がイケメンとかいうように意識したことはない。


だけど、世間的にはそうなのかもしれない。


自分のことを言われているとは全く自覚していない類と蒼太は気にせず進んで行く。


私は少し寂しくなった気持ちを振り切って彼らに追いついた。



教室に着いてから、私はさっきの彼女たちが言っていることが類と蒼太を言っていると確信した。


私たちが教室に入った瞬間、教室内の空気が変わった。


それまでおしゃべりしていた人たちが何気なくこっちを向いて固まった。


その後好奇に満ちた視線に変わる。


それでも相変わらず自覚のない2人は席につく。


私は噂話と私にも向けられる視線と闘いながら席についた。



入学式とその後のホームルームを終えた後、類と蒼太の周りには早速人が群がった。


主に女子が。


「私、結奈ゆなっていうの。よろしくね!」

「2人は知り合いなの?」

「中学部活何やってた?」

「どこ中?」


次から次へと発せられる質問に蒼太はもちろん類でさえも困っていた。


私は同じクラスで見つけた中学の友達の土屋菜緒つちやなおと話しながらその様子を見ていた。


「未紘、蒼太くんの隣の男の子、誰?」


「あぁ、原田類。私と蒼太と幼馴染」


「未紘の幼馴染、顔面強すぎ」


「そうなのかなぁ。見慣れすぎてわかんない」


「幸せなやつ。でも大丈夫?」


「え?」


「さっきから心配で仕方ないって顔してる。それにちょっと寂しそう」


自覚がなかった。


心配は心配だからいいんだけど、寂しそうな顔をしてただろうか。


なんとなく類と蒼太の方に目を向ける。


2人はまだ質問責めの最中だったが、ペースが落ち着いてきて笑顔で話している。


その様子を見て少し心が痛む。


その時ふと類の視線がこっちに向いた。


私はなんとなく作り笑いを浮かべて目を逸らした。



「ねー、一緒に帰らない?」


さっき結奈とか名乗ってた人が類の机に手をついて誘っている。


「蒼太くんも!」


(今日は一緒に帰れないかなぁ…)


そんなことを思いながら私は見守っていた。


「あ、別にい…」


「帰るよ、未紘」


きっといいよって答えようとした類を遮って蒼太が私に声をかけた。


その声はいつもより少し冷たい気がした。


「あ、俺も!ごめん、じゃあね」


焦ったように類が行ってこっちに走ってくる。


類ごしにこっちを睨む結奈と目が合った。


しかし、次の瞬間には私の腕をつかんだ蒼太に引きずられていた。


引きずられていると言っても、私の腕をつかむ蒼太の手は優しい。


「蒼太、未紘!ちょっと待てって」


類が走って追いかけてくる。


そのまま、私の空いているほうの腕をつかんだ。


そのまま止められて、蒼太も止まる。


「蒼太、何怒ってるんだよ」


類が私の腕を掴んだまま聞いた。


「…別に、怒ってないよ」


「でも今日の蒼太、冷たいよ」


私も思わず蒼太に聞く。


私の声に反応して咄嗟にこっちを向いた蒼太はそのまま顔を逸らした。


「そんなことないよ」


でも私は見てしまったんだ。


一瞬私に向けた悲しそうに笑う顔を。


それで気づいた。


多分蒼太は私が傷つかないようにしてくれてる。


私はもう何も言えなかった。


そんなことを知らない類はまだ蒼太に突っかかっている。


「とりあえず、帰ろ?」


私にできることは類を一回止めることだけだった。

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