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1、楽しい高校生活の始まりだ!


 高校生、それはなんという甘美な響きだろうか。


 義務教育を修了し受験という荒波を乗り越え、桜が咲いたその先に待つ人生最大の青春。

 それこそが、高校生なのである。

 中学生の頃と違って、部活やその大会も気合が入っているし、勉強が難しくなるのはさておき、アルバイトができたり、放課後にカフェやカラオケに寄ったりなど、その自由度はかなり高い。

 誰もが胸をときめかせ、高校の門をくぐるであろう。


 かく言う俺もその一人。

 星川 夏月(ほしかわ なつき)、十五歳。この春、晴れて高校一年生に進級した健全な男子高校生である。


 俺が進学したこの津沼高校は、自然豊かな緑と干潟に囲まれ、見渡す限り住宅街に包みこまれた立地。近所にはコンビニが一つしかないTHE田舎感溢れる高校ではあるのだが、駅に出てしまえば商業施設やレジャー施設なんかもあって、放課後は遊び放題である。

 都会のようにごみごみしていないし、俺としては落ち着いた雰囲気でまぁまぁ気に入っている。

 偏差値もそこそこ高く、生徒もそれなりに勉強ができるので真面目な生徒も多いらしい。



「いよいよ始まるな!俺の青春☆高校ライフ!」


 入学初日、校門の前で大きく手を広げながらそんなことを叫んでいると、容赦なく頭に手刀を落とされる。

「いたっ!」

「ちょっと!こんなところで変なこと叫ばないでよねっ!一緒にいるこっちが恥ずかしい!」


 そう眉をつり上げて俺に手刀を叩き込んだ女子、織原 花桜梨(おりはら かおり)は、顔を真っ赤にして叫ぶ。

 お前も十分声がでかいし恥ずかしいぞ、とは言わないでおく。また手刀が飛んできそうだから。


 花桜梨とは所謂、幼馴染である。

 生まれたときから家が隣で、ベランダを挟んで部屋も隣同士。どっかの少女漫画みたいなベタな関係である。

 花桜梨は美人ではあるのだが、どうにも口調がきついというか、暴力的というか、可愛げのない女子である。

 そんなわけなので、俺と花桜梨はもちろん恋愛関係になることなく、幼馴染として、友人として、今の今までなんだかんだ一緒に過ごしている。


「暴力反対~!俺はか弱い無抵抗の男子である、これ以上の攻撃は息絶えるものとする」

「ふざけてないでささっと行くわよ。まったく、私がいないとほんとなにもできないんだから」


 花桜梨は何故か自分がしっかり者だと思っており、逐一お姉さんぶってくる。

 誕生日は俺の方が早いのに、小さい頃からずっと弟かなにかだと思われているらしい。

 せっかくの高校初日だぞ?もっと楽しませてくれてもいいのに。そう文句を零しながらも、俺は花桜梨に引きずられ、俺達が一年間過ごす、一年A組へとやってきた。


「A組ってことは、成績が上位のやつが集められるんだよな?なんかのラノベで読んだ!」

「この高校そういうのないから。ただのたまたまだから。そもそもあんた上位に入るほど成績よくないでしょう」

「夢くらい見させろよ……」

「夢ばっかり見てる男は嫌いなの。現実を見て堅実に生きた方がいいでしょ?」

「うわあ、華の女子高生とは思えねえ……」

 花桜梨とはいつもこんな感じで、まったく意見が合わない。

 目の前の楽しいことを優先する俺と、将来を見据えてこつこつ真面目に物事に取り組んでいく花桜梨。

「花桜梨って、なんで俺と一緒にいてくれるんだ?」

「は?なによ、急に」

「だって花桜梨って、なんかいつも怒ってね?眉間に皺ばっか寄せてさぁ」

 俺がそういうと慌ててスカートのポケットから手鏡を取り出した花桜梨は、優しく自身の眉間を解す。

「別に、怒ってないし。ただ夏月がだらしないっていうか、いい加減すぎて心配になるだけ」

 少し口調を柔らかくした花桜梨は、照れくさそうにそっぽを向いた。

 なんですかこいつ?時代錯誤のツンデレさんかなにかですか?

 やれやれ、と俺はどこぞのラノベのやれやれ系主人公のように肩を竦める。


 入学式のあと、何故か新入生の俺達がパイプ椅子等の片付けをやらされ、入学おめでとうと言うわりに人使いが荒いなと思いながら、その日は解散となった。


 あっという間に友人ができた俺と花桜梨だが、今日も今日とて結局一緒に帰るのである。

「クラスの女子と一緒に帰れよ」

「あんたこそ、友達できたでしょ?なんでそっちと帰らないわけ?」

 そう言われても、小中とこの流れが当たり前になってしまった俺達には、高校になってそれをすぐに変えるのは難しいことのようであった。

「またクラスの男子にからかわれるわよ」

「あー、それなー」

 小中とずっと一緒に登下校していた俺達は、当然クラスの連中からからかわれていた。

「お前ら付き合ってんのー?」

「うわぁ!やらしーことしてるんだぁー!」

 などと、しょうもないからかいはよくあることで。

 花桜梨は言われる度に顔を真っ赤にしていたが、顔を真っ赤にするくらいなら俺と一緒にいなきゃいいのにと思いつつ、俺が言うことはいつも一緒だった。

「ま、勘違いさせとけばいいんじゃね?」

「え?」

「俺はなんだかんだ花桜梨と一緒にいるのが楽しいし、花桜梨が本格的に彼氏作りたいっていうなら、俺はちゃんと誤解解くけど?」

 俺の言葉に、花桜梨はぷいっとそっぽを向く。

「別に、今は彼氏作りたいとか思ってないし。しばらくはまぁ、このままでもいいけど?」

「承知いたしました、お嬢様」

「ちょっと!なんか馬鹿にしてる!?」

「まさかまさか!してませんよ~、ただ今日も花桜梨ちゃんはツンデレさんだな、と」

 花桜梨がまた俺に手刀をお見舞いしてきそうだったので、それを華麗に避け、俺は先を歩く。

「ほら、遊んでねーでさっさと帰るぞー」

「はぁ!?どっちが!?元はと言えば夏月のせいだからね!?」

 俺は笑いながら、花桜梨の攻撃を避け続ける。

 これも所謂、青春の一ページ。

 でも俺の青春は、明日から始まるのだ。



 翌日、部活動説明会&体験入部期間の始まり。

 俺はこの高校にある、とある部活動に入部するためにこの高校への進学を決めたのだ。

 それは―――。


「え?天文部、廃部になったんですか?」


 俺の入りたい部活動は、廃部の危機に瀕していた。






お読みいただきありがとうございます✿

ネトコン用に書いていた作品なのですが、もう少し整えたいと思い、途中までの更新を予定しています。


明るすぎる主人公と学園の美少女たちが織り成すほんわかわいわいラブコメです。

のんびり楽しんでいただけたら嬉しいです。



2025.7.16  四条 葵


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