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頼むお酒と酔った照乃

「「乾杯!!」」


 照乃が選んだ居酒屋に入り、カウンター席に座って各々が注文したお酒を持って飲みがスタートした。テーブルには、今日まだ消化していないご当地グルメが並んでいる。幸いこの店で未消化分のグルメはすべて消化できそうだ。


「うーん、美味しいですね♪ 日中に名所巡りした時も飲みましたけど、今回は格別と言いますか」

「疲れた身体に沁みるからだろうな。あとは達成感もある、巡っている途中に飲むのと完遂した後に飲むのでは心の充実度が違う」

「仕事終わりのビールが美味しいのと同じ理屈ですね。そういえば、的矢さんは日本酒頼んだんですね、てっきりワインかなと思ったんですが」

「確かに俺はワイン派だが、日本酒も飲めるからな。旅行の夜に居酒屋で飲む酒を選ぶ基準は俺的にはたった一つ、『その地特有のお酒を選べ』だ」

「確かにそういう意味では、日本酒や焼酎は適していますからね」

「ワインもその地のワイナリーが作った特有のモノがあることもあるが、確実性に欠ける。そもそも俺の場合、あってもお土産屋で買ってしまう場合が多いしな」


 あくまで俺の趣味でしかないが、ワインはボトルで買って一度は自宅のワインセラー(12本程しか入らない小さなモノだが)に収納したいのだ。居酒屋で少し飲んで終わり、にはしたくないというこだわりがある。


「うーん、となるとビールは避けた方が良かったんでしょうか、既に注文してしまいましたが」

「いや、決してそんなことはない。さっきのはあくまで俺のやり方だ、どの酒を飲むかはあくまで個人の好みで良い。俺みたいにその地特有のお酒を楽しみたいなら真似すれば良いし、そこまでこだわりがないのなら好きなお酒を頼めばいい」

「ビールやハイボールって、店ごとの種類の違いがあまりない印象がありますが」

「別にそれでも問題ない。お酒は普段飲み慣れているモノにしてフードでその地のオリジナリティを楽しむ、これも立派なやり方の一つだ。日本酒や焼酎が苦手ならサワーでもいい、その地の有名な果物があればそれ関連のサワーを楽しむのも良いモノだぞ」

「良いですね、それ。私、次はサワー注文します」


 飲みっぷりを見たところ、本人が言うように照乃はそれなりにお酒に強いようだ。飲む度に弾けるような笑顔を見せてくれるのもポイントが高い、こういう感情豊かで無邪気なところが照乃の最大の魅力なんじゃないかと俺は思う。


「そういえば、的矢さんはカウンター席派なんですか? テーブル席を選ぶことも出来ましたけど」

「俺の場合はな、これもあくまで好みの違いでしかない。俺としては、店の人と話しやすい方が良いからな」

「それなら確かにカウンター席の方が適していますね」

「普段とは違う地の居酒屋で、普段接することのない地の人達と話す、これもなかなか乙なものだぞ。お勧めメニューとかを教えてもらうこともできるしな」

「ノーチェックだったご当地グルメを教えてもらえる可能性もありますね!!」

「そういうことだ、何だかんだでその地に住んでいる人達の生の情報は侮れない」


 そんなこんなで照乃との話は盛り上がり、お酒も進んだ。一人旅で一人で居酒屋で飲む酒も確かに美味しいし楽しい、一人には一人の良さがある。だが……誰かと一緒に飲むというのもやはり魅力的だ。話し相手がいて一緒に盛り上がれる、喜びや楽しさを共有できる、というのは根源的な人の願いなのかもしれない。


***


「ふふふ、楽しいですねえ的矢さん」

「あ、ああ……」


 それなりに時間が経ったが、何と言うか……照乃の様子がおかしい気がする。いや、別に陽気になって暴れたりとか脱いだりとかはしていないのだが、何と言うか……どこか子供っぽくなっているような気がする。甘えん坊というか。


「うーん……もう我慢出来ません」

「て、照乃!?」


 照乃が急に抱き着いてきた。いや、嬉しいんだけどさ……居酒屋とはいえ公衆の面前であって。カウンターなので、店員さんのニヤニヤした表情が痛いというか。


「て、照乃さん……ちょっと飲みすぎじゃないですか?」

「飲みすぎじゃないですう……充電です、充電」

「た、確かにスマホの電池がまた減ってきてるけど……もう今日の名所巡りは終わったんだし、そこそこ残量もあるんだから無理してしなくても」

「ダメですよお……残量は常に余裕持っておかないと」

「それは間違いじゃないんだが……今はスマホいじってないんだから照乃が俺のスマホ持つだけで良いわけだし、くっつくにしても昼みたいに肩寄せるくらいで良いんじゃない?」

「今日一日歩いて疲れたんで、ご褒美に甘え……身体貸してください」


 いや、今甘えさせてって言おうとしたよね? 『我慢出来ない』ってそういう意味かよ……つまり、充電は口実ってことだ。まあ……嬉しいから良いけどさ、柔らかい感触と良い匂いで理性が吹っ飛びそうというか。


「いやあ、ラブラブですねえ、お客さん」

「あ、あははは……」

「いつもそうやって甘えてくるんですか? 彼氏成分補充って」

「いつもってわけじゃないんですが……初めての一緒の旅行なんで、浮かれているのかもしれないです」

「素敵ですねえ。可愛い彼女さんと初めての旅行の夜、お酒と一緒に存分に堪能してください」


 まあ、充電って普通はそういう風に解釈するよなあ……照乃がモバイルバッテリーだってことがバレてないのは安心したが、俺の理性の残量はまるで安心出来ない気がする。

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