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2日目のコツと有終の美

 目的の駅に電車が付き、俺と照乃はホームに降り立った。初めて訪れる県の初めての地に降り立った時の心の高揚振りは、何度経験しても良いモノだ。


「さて、今回の旅行は1泊2日だから、今日の夕方には新幹線に乗って家に向かわないといけないわけだが……まず確認することは、帰りの新幹線に乗る駅をはっきりさせることだ」

「それが分からないことには、乗る新幹線も調べられませんからね」

「ああ。だからまずその駅を確認し、そこから逆算して予定を立てる。最終日は夜にゆっくり飲んでいる暇はない、だから基本的には新幹線に乗る駅に16:00~17:00くらいには着いて最後の飲みをしたいところだな」

「やっぱり最後は飲んで終わりたいですもんね」


 まあ、その辺りは俺が酒豪であり、照乃もそれなりに飲めるからではあるが、そうでなくてもやはり旅行は飲んで食べてが醍醐味だから、旅の終わりにはやはり飲みは入れたいところだ。


「で、ここで気を付けるべきなのは……早めに帰りの新幹線の切符を買うことだ。遅くとも発車2時間前、いっそのことその日の午前中に買ってしまうのも手だ」

「そ、そんなに早くですか?」

「甘く見ると痛い目を見るぞ。誰だって旅行最終日はギリギリまで粘りたい、だから19:00台や20:00台の新幹線は普通に混む。2時間前に買っても窓側が取れないなんて普通だし、満席もあり得る」

「こ、怖いですね……」

「下手すれば、午前中に買っても窓側が取れないなんてこともあるからな。特に人気の観光地は要注意だ」

「……この後買っておきましょう」


 俺と照乃はすぐに新幹線の窓口に行き、帰りの新幹線の切符を買った。これだけでも帰りが保証されるので、精神的には楽になる。


「で、2日目なんだが、基本的には昨日と同じやり方で良い。だが、さっきも言ったが夜にゆっくり飲むことは出来ないから、それを考慮に入れて早め早めの行動を心がけたい」

「初日と違って、朝起きた時点で次に行く県の隣の県にいることが多いですから、スタートダッシュという意味では有利ですね」

「ああ。ただ、荷物は初日に比べて当然多くなっているから、リュックやキャリーケースの残り容量も考えて物は買っていきたいところだな」

「昨日ホテルで整理整頓した甲斐がありますね!!」

「そういうことだ。あと、隣の県であれば昨日食べ損ねたご当地グルメを食べれる可能性がある。今は隣の県のグルメやお土産を扱ってる店は珍しくないからな」

「そこは絶対に見落とさないでいきましょう!!」


***


 あっという間に時はすぎ、帰りの新幹線に乗る時刻の2時間前になった。俺と照乃は駅ナカの飲食店で飲んでいる。


「いやー、帰りの切符を既に確保している安心感は素晴らしいですね、心置きなく飲めます!!」

「だろ? 帰りの新幹線に乗る時はかなり疲れているから、さすがに座れないという事態だけは避けたい。想像してみ、疲労困憊で何時間も立った状態で新幹線に乗るのを」

「お、恐ろしい……」

「帰りの新幹線は酒とつまみを頂きながら思い出に浸り、ゆっくり寝て帰るのが理想だ。てか、疲れていて自然とそうなる」

「はしゃぐ体力は残ってないでしょうからね……」


 特に俺の旅行はハードだから、体力自慢の俺でもそうなってしまう。何だかんだで最後まで付いてこれた照乃は、体力がある方なのかもしれない。体はこんなに華奢なのだが。


「でも、今の駅ナカの飲食店の充実度は凄いですね。これなら本当にギリギリまで新幹線の発車時刻まで粘れます」

「まあ、新幹線が停まる駅ってのはまず大きいからな。もちろん駅ナカの店の充実度は駅によって違うが、基本は信頼していい」

「本当に名所とグルメを、この2日間はたくさん効率よく味わえましたね。的矢さんの……おかげです」

「そ、そっか」


 照乃の頬を赤らめた表情に、妙にドギマギしてしまう。本当、照乃レベルの美少女のこういう表情は反則だよなあ……


「今まで私って傍で黙って支える立場でしたけど……隣に寄り添って一緒に楽しむのがこんなに楽しいって、驚きました」

「……俺もだよ」

「的矢さんも?」

「一人旅も確かに楽しかったけど……気の合う仲間との旅行がこんなに楽しいなんて、驚いたよ」

「そうですね。でも、それは……的矢さんとだから、ですよ」

「……俺も照乃とだから、だな」


 ちょっと仲が良いから、ではここまで楽しくはならなかったと思う。特別だから……だろう。俺と照乃はギリギリまで駅ナカの店で飲みを楽しみ、帰りの新幹線に乗り込んだ。これで今回の旅路は終わりだ、本当に楽しい時間はあっという間に終わってしまう。新幹線が発車し、

俺は思いにふけりながら窓から夜景を眺めていた。


「本当に楽しかったな、今回の旅行。次はどこが良いと思う、照乃……照乃?」

「むにゃむにゃ……」

「……よく最後まで付いてこれたよ」


 照乃は隣でぐっすり眠っていた。その寝顔はどこまでも無邪気で楽しそうで……他の誰にも見せたくないくらい可愛かった。初めての二人っきりの旅行、俺と照乃の絆は確かに強くなったと俺は感じたのだった。

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