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05 父親と母たちのこと




 私は庶子だ。

 ゲスな父と、どうしようもない母から生まれた。


 父は小さな領地を持つ男爵家の長男だ。

 小心者で、たいして頭もよくなくて、腹違いの弟に自分の居場所をとられるのではないかといつもびくびくしている。

 見てくれも態度も悪いが絶対に捕まるような悪事には手を出さないし、近付かない。そのくせ、一丁前に野心はあるようだった。

 外面は良いが、家に帰ると兄以外のすべての人に当たり散らす。殴ったりはしないが、食事を抜かれたり、給料が減ったり、延々と嫌みを言ったりと、微妙な嫌がらせをするそんな男だ。


 母は祖父が一代男爵の家の娘だった。

 子供のころからの婚約者に逃げられ、婚期を逃し家庭教師をしながらお相手を探していた。

 そんな母が父に出会った時、すでに父には恋人がいたと言う。

 母と同じような男爵家の女だった。

 これを逃すともう後がなかった母は、浮気男の常套句に乗り二人目の恋人となった。


 父と半年ほど付き合ったころ、母は妊娠した。

 捨てられたくなかった母は、これで結婚できるだろうとすぐに父へと伝えた。

 ところが、すぐには結婚できないと言われた。

 何故なら、恋人も妊娠したのだと言う。

 どう言うことだと二人の女に迫られた父は、二人の女を呼び出して言った。


 先に男を産んだ方と結婚する、と。


 二人の女は父の邸に住み、産み月を迎えた。

 先に陣痛が来たのは恋人の方だった。生まれた子供は男。

 この時点で、母は負けた。


 それから三日後、ようやく母にも陣痛が来た。

 そして私が産まれた。

 母は、ここでも負けてしまった。


 母は父の子を産むことを決めた時に祖父から縁を切られていた。

 お手つきになった女など、行きつくところなど決まっている。

 家にも帰れず、まともな行くあてもない。

 途方に暮れた母に父は、子供を置いて出て行くか、侍女として屋敷にいるか、どちらか選べと言った。


 母は、侍女になることを選んだ。


 妊婦として邸に住むうちにライバルの女―――――奥様とも、邸の使用人たちともゲスい父のおかげで仲良くなっていた。

 だから、最初から出て行くという選択肢はなかったのかもしれない。


 母はいつも言っている。

 私が男じゃなくてよかった。

 父に似なくてよかった、と。


 そして、いつも奥様に感謝していた。

 あの人がいい人だったから、私はここに入られる、と。


 母はどうしようもないが、悪い人ではない。

 すこし馬鹿なだけだ。




 言いたくないが、父はゲスだが、人を見る目はあるらしい。




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