12 卒業式までの……
ミア様たちが、今まで通り突撃してきなさい、と言うので私はやりたい放題させてもらった。
知っていると演技できないから好きにやっていいとも言われた。
流石に最初は遠慮していたけど、だんだん本気になっていた。
毎日上手く隙を作ってくれたところに突撃し、ヒューイ様にしがみついたり、ミア様に言いがかりや飲み物をかけたりと、必死でやった。
子供のように暴れたり、泣きわめいたり、やり過ぎて家に帰って動けない時もあった。
だって、ミア様も、ヒューイ様も、学園のみんなも、あれが演技なら絶対役者になれると思う。
流石腹芸の貴族様だと思った瞬間だ。
生徒たちはだんだんと慣れてきて、私を突撃させた後は見事な連携でミア様たちから私を遠ざけ捕まえ、警備員に渡された。
警備員は、困った顔をしながら学園の外へほうり投げる。
というのが一連の流れになった。
そして、リオン様が動くのを待った。
リオン様は未だにあの裏庭に通っているらしい。
リオン様に聞こえるように、学園からは接近禁止命令を出してもらったり、苦情が行くようにしてもリオン様はボケたままだ。
私もミア様も、リオン様は思ったより女々しい男だったとため息を漏らした。
「カレン様、わたくし、リオン様のところへ行ってきますわ」
ミア様がそう言ったのは、卒業式が一ヶ月後に迫ったころだった。
ミア様のおかげで、ようやくリオン様が動き始めた。
卒業式はすぐそこだ。
ミア様が何をリオン様に言ったのかは知らないけれど、私の家にはリオン様からドレス一式が届いた。
父とリオン様が接触したことも分かってる。
でも、リオン様の動きは分かっても、リオン様の心は分からない。
私はただ願うだけだ。
―――リオン様が、皆の知るリオン様に戻ることを。
そして、卒業式を迎えた。