10 リオン様との決別
リオン様に引き摺られて、私は校庭から教室に連れてこられた。
リオン様は何度も私の名を呼んだけど、無視した。
そして、なるべく心ここにあらずの感じで、
「殿下、あの方は誰なんですか?」
と、聞いた。リオン様が真顔になる。
「……殿下?」
リオン様の口からぼそりと、落ちた声は重く暗い。
「ほら、ミアさんと一緒にいた方です」
「……あれは、ミアの新しい婚約者だ」
戸惑うように、それでもリオン様は答えてくれる。
「婚約者って、ミアさんには殿下がいるのに! いいんですか?」
「ミアとは婚約を解消した。準備が整えば、カレン、君と婚約する」
「え?」
婚約の話が出てしまった。
知らないことになっているから……私は上手く演技できているだろうか?
「え、あの……私……」
「私の父にも、カレンの父君にも話は通っている」
「そんな、あの、私」
「君も私と結婚したいと言ってくれたろう? ……カレン?」
「ごめんなさい、私……」
フルフルと頭を振って、私はリオン様の手を振り払う。
「カレン?」
「殿下、申し訳ありません。少し考えさせて下さい!」
私はそう叫ぶと、リオン様に背を向けて逃げ出した。
「え?」
リオン様の小さな声が聞こえて、私は心の中で謝る。
ごめんなさい、リオン様。
本当はもっと早くこうするべきでした。




