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転生したらラヴニカだった件 その②


 僕――こと、宇賀神勇将(うがじんゆうしょう)、17歳が異世界転移した理由は、特に詳細に書かなくてもいいだろう。ありがちなヤツだ。トラックでドーン。次の瞬間、この世界にいた。


 ……トラックに轢かれたのが晴れる屋に行く途中だった、ってところはちょっと変わってるかもしれないけど……同級生が遊戯王やらデュエマやらポケカやらに熱中しているところ『オイオイ高校生にもなって、そんなガキ臭いカードゲームとかマジ勘弁してくれよ! …………さ、家に帰って霊気紛争のスポイラー見よっと!』なんて思ってた、どこにでもいるMTG好きな高校生だ。そもそもMTG好きの高校生はあんまいねえよ、って点はさておくとして。あと上のセリフは実際に言ったわけじゃないよ。


 で、晴れる屋へ行く途中、高田馬場駅前で暴走したトラックの前に立ち尽くしてしまった僕は、ここで死ぬのかー、と思う間もなくただ怯えて目を瞑り、衝撃に襲われ、体が宙を飛び――気がつくと見知らぬ場所にいた。


「…………へ?」


 体にはなんの怪我もない、痛みもない。いつもの黒パーカーにいつものジーンズにいつものスニーカー、中に突っ込んだストレージボックスの角が突っぱってカクカクしてる重たい黒リュック。ガリガリの体にメガネ。何も変わらない。


 変わってたのは周囲の光景だ。


 高田馬場駅前なのに、コスプレイヤーだらけだった。ここは基本学生街で、そういう街じゃないのに。


 耳の尖ったエルフのコスプレがいるかと思ったら、ライオンの顔をした着ぐるみケモナーがいて、リザードマン的なトカゲ人間の隣に、体に蓄光塗料でなんか部族的な模様を描いてる気合いの入った人もいた。


 けど、服装はみんな普通で、それがおかしかった。ギャップがすごい。


 さらさら金髪のエルフは高そうなイタリアンっぽいスーツをかっちり着こなしてるし、ケモナーはダボッとしたパーカーにチノパンで首にはゴールドのチェーンでヒップホップな感じ、リザードマン的なのはセーラー服着てたからリザードウーマンってことなんだろうし……でも、蓄光塗料の人はいかにも部族のシャーマンみたいにローブ風の服で、血のこびりついた牙や爪をジャラジャラ、アクセサリーにして体にぶら下げ、宝石のはまった長い杖を持ってる。


 周囲の風景も……妙、だった。


 コンクリの四角いビルがあったかと思ったら、ハリポタ風……っていうか、ディズニー映画で魔女が住んでそうな木造一軒家が隣にあって、なのに横にはスタバみたいなカフェで、テラス席でエルフのレイヤーさんたちがお茶してる。遠くの方にはランドマークになってそうな、乳白色に輝いてるツインタワー式の高層ビルがあるのに、その手前には奈良の大仏とか目じゃないサイズの巨像。そして辺りには道路がない。歩行者天国ってわけでもなさそうで、そもそも道路標識的なやつや、白線とかがない。道はアスファルトなのに。




 ……異世界転生……にしても…………なんだ……?




 たっぷり数分間その場で固まってしまった僕は、革ジャンサングラスの巨人が向こうからやってきてようやく我に返り、歩道の真ん中からシャッターの降りている店の前に避け、その巨人を眺める。


 どうやってコスプレしてるのかまったくわからない、身長がどう見ても3メートル以上あるそいつを、周囲の誰も、気にしている様子はまったくない。


 目の前を通り過ぎていく巨人の膝、少し破れてるジーンズをはいた、古い新幹線のさきっちょの丸い部分ぐらいある膝を呆然と眺め、僕は異常さを噛み締め、受け入れ――




 そして、狂喜した。




 これは異世界転生だ!

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