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二度目の転生は砂の冒険者~ステータスがチート過ぎてヤバい~  作者: 秋華(秋山 華道)
魔王討伐イベント編
3/33

勇者を探せ

前に生きていた世界の1ヶ月は、この世界では約1年である。

2時間で1日進むから、1日が12日だ。

つまり30日で360日、約1年という事になる。

となると、魔王との戦いが始まるのは約1年後として、誕生はそれ以前になるかもしれない。

俺の強さがあれば、きっと魔王なんて楽勝で屠れるのだろうが、正直目立ちたくはない。

ほら、あるでしょ。

英雄になったは良いけど、その強さ故に恐れられ、勇者が人間から避けられる存在になってしまうって話。

実際にこの世界では、能力の高い魔人は排除される存在になっている。

だから俺はとにかく静かに暮らしたいわけだ。

既に妖精王国を作ったりしてヤバい事もしているような気がするけれど、これ以上は避けたい。

そこで必要なのが、勇者の存在だ。

魔王が現れても、その時はおそらく倒してくれる勇者も現れるはずなのだ。

そもそもレイド戦を想定していたという話もあるから、一人で対抗できる勇者が現れるのかどうかは分からないが、俺みたいなチートもいるのだから可能性は十分にある。

無ければ育てるのも良い。

もちろん、そこに直接かかわるつもりはないけどね。

何にせよ、勇者が現れるはずなのだ。

だから俺は、妖精王国がある程度出来上がるまで妖精たちを手伝ってから、とりあえず勇者を探す事にした。

子供の姿でウロウロしていたら厄介ごとに巻き込まれる可能性もあるし、俺は砂に魔石を砕いた魔砂を混ぜて18歳の俺の形をしたゴーレムを作った。

俺は普段はその陰に隠れたり透明化して、ゴーレムが俺自身のつもりで振る舞う事に決めた。

魔法により思考を八つにしているわけで、その一つを使えば一人で八役まで可能である。

とりあえず今は複数は不要なので、自分の分身だけ動かす事にした。

「さてしかし、勇者は何処に現れるかだが‥‥」

普通に考えれば始まりの町辺りだろうか。

距離的にはそんなに遠い場所ではない。

俺が転生した時に降り立った荒野は、実装済みで知っている大陸の西の端だ。

妖精の森はそこから東に一つ町を超えた所にある。

そこから更に南東に向かった先にその町はあった。

名はイニシオ。

俺は自分の屋敷内の自室の横にある隠し部屋にチェックを入れてから、イニシオへと向かった。

チェックとは、瞬間移動魔法用ね。

これでいつでもこの屋敷に帰ってくる事が可能である。

現在チェックは、西の端の荒野、自室横の部屋、妖精王城の庭である。

イニシオに着いたらチェックを増やすつもりだ。

俺は家の者に出かける事を告げ、飛翔してイニシオに向かった。

ちなみにお金やアイテムなんかは、ゲームをしていた頃のモノが、異次元アイテムボックス内に存在していた。

ゲームでの俺の職業は万能の勇者に近いが、やや魔法寄りの賢者である。

尤もこのチートステータスなら、ただの肉弾戦でも魔王に負ける気はしない。

あらゆる武器も使いこなせるだろうし、もっと色々な武器やアイテムを持っていたら良かったと思った。

金やアイテム、装備品以外にも、ギルドカードを所持していた。

ランクはBだ。

普通のゲームプレイヤーがあげられる最高ランクと言っていい。

これ以上は、特殊なイベントクエストを攻略し、貴族、領主、王族、皇族から勲章をもらう必要があった。

ランクは、上はSSSから、SS、S、A、B、C、D、E、F、Gの10段階ある。

ギルドでは、ランクよりも一つ上のクエストレベルまで仕事を請け負う事ができる。

NPCギルドには3種あり、レッドギルド、ブルーギルド、グリーンギルドとなっている。

規模が一番大きいのがレッドギルドで、仕事量も多い。

都市部に展開するギルドである。

ブルーギルドは港町を中心に、多くの町に存在する。

グリーンギルドは地方の小さな町にもある、小さなギルドである。

俺のギルドカードはブルーギルドで発行したもので、他のギルドでも使えるが、上のランクの仕事は請け負えない。

ただしランク通りの仕事を10回以上こなせば受けられるようになり、俺は既に全ギルドでAランククエストまで請け負える状態だった。

まあゲームを進める上で必要だったから自然とそうなっていただけなんだけどね。

なんにせよ、どのNPCギルドに所属しているかは、現在はあまり仕事には関係がないという事だ。


飛翔して2時間経った頃だろうか。

ようやくイニシオの町に到着した。

俺は地上に降りると、とりあえずそこにチェックを入れておいた。

それから砂のゴーレムを作って共に町への入口へと向かった。

この町は、領主である貴族はいるが、城は存在しない小さめの町だ。

人口は約五千人である。

塀が町を囲っているだけに過ぎない、出入り自由の町だ。

軽く門番に挨拶をして、俺は町へと入って行った。

さて、これから勇者を探すわけだが、方法はいくつかある。

例えば勇者というのは、ギルドで因縁をつけられる対象になりやすい。

ちなみに先日、妖精を捕まえようとしていてふんじばった奴らを引き渡しに行ったギルドでは、初顔の俺たちは嫌味を言われたりもしていた。

まあアマテラスがちょっとかわいこぶって見せたら去っていったけどね。

勇者ならそこで軽く反撃し、その強さをギルドにいる者たちに認識させるわけだ。

当然見つける為にはギルドで張り込むというのが一つの方法となる。

或いは町で獣人の子供が貴族なんかにいじめられている所を助けたりするのが勇者。

そういう場面に出くわせば、当然監視だ。

或いは可愛い子が盗賊紛いの悪いヤツに絡まれている所を助けたりもする。

とにかくトラブルがあれば様子を窺う。

こうしてこの町で勇者を見つける事になる。

とりあえず、俺はこの町のギルドへと向かった。

この町のギルド施設は小さかった。

中に飲み場も無い、ただ仕事を斡旋するだけの場だ。

この町にはグリーンギルドしかない。

これではギルド施設内でのトラブルはなかなか起こり得ないだろう。

俺は挨拶だけして、町を歩く事にした。

町には駆け出しの冒険者らしき人が何人か歩いていたが、どうもトラブルが起こりそうな気配はなかった。

獣人の姿もなく、冒険者以外は人間だけが住まう町のようだった。

「ここじゃ駄目かな」

そもそもこの町は、ゲームを始めたばかりの人が、ほんの一時を過ごすだけの場所だ。

基本的には平和な町なのである。

周りに魔物が現れる場所も無いし、ゲームとしてはチュートリアルを消化する為の町だったはずだ。

本格的な活動は、此処から南東に少し行った所にある、ウリエル王都からだろう。

ウリエル王都は、ゲーム実装されている大陸の中では、帝都と3つの王都に次いで5番目に大きな町だ。

人口は約八万人という設定だったと思う。

「王都に行ってみるか」

俺は町の中で人目につかない所へ移動した後、町の外のチェックヶ所へと瞬間移動し、そこから飛翔してウリエル王都へと向かった。

間もなく王都は見えてくる。

間に小さな森があり、そこを超えるとすぐだ。

俺は森の端辺りに降り立つと、そこから徒歩で城門へと向かった。

当然砂の俺を前にしてだ。

城門では身分証明書の提示を求められた。

確かゲームでは、ギルドカードを持たない場合通行料金を支払う事になっていた。

俺はゲームを始めたばかりの頃、支払わされた記憶がある。

イニシオでグリーンギルドへ登録していたら支払う必要は無いが、ゲーム序盤グリーンギルドカードだと色々と不便なので、攻略サイトには此処でレッドギルドかブルーギルドに入る事が推奨されていた。

「そんなわけで俺はブルーギルドカードなんだけどね」

俺はギルドカードを提示した。

しかし砂の俺は通ってもいいとされたが、本体である子供の俺は金の支払いが求められた。

王都や帝都はこの辺り不便である。

とりあえず町中にチェックを入れておく必要があるだろう。

なんにせよ金を払えば無事王都に入る事ができた。

次から新たな王都に入る場合は、本体は透明になっておこう。

「さて、まずはギルドだが、此処にはレッドギルドとブルーギルドがあるな」

俺はとりあえず自分が所属するブルーギルドへと向かった。

中は小さな酒場が入っており、飲み屋の中にギルド受付カウンターがあると言った感じだった。

このスタイルは、多くのアニメ作品などで出てくるギルドそのままだった。

俺は勇者らしき者がいないか辺りを見渡した。

どうもしっくりくるいで立ちの者はいなかった。

割と魔力の高いBからCランク程度の冒険者もいたが、ビジュアル的に勇者とは思えなかった。

俺は一応受付嬢に挨拶だけして、ブルーギルドを出た。

そのままレッドギルドへ向かう。

この辺りの配置は、ゲーム時そのままだった。

この王都には最近来る事はほとんど無かったが、割とマップは覚えていた。

まあ常に発動している探索とマッピングの魔法があるからかもしれないけれどね。

レッドギルドに到着した俺は、再び中に入って見渡した。

ブルーギルドと似たような所ではあったが、規模が倍以上だった。

冒険者レベルもおそらくこちらの方が少し高いだろう。

それでも、勇者らしき人物を見つける事はできなかった。

俺はとりあえず勇者探しは中断し、どこか人目につかないチェックできる場所を探す事にした。

最悪透明化して瞬間移動してくれば問題ないわけだが、出来ればそのまま移動できる方がいい。

「とは言え人がほとんど来ない場所となると‥‥町中では存在しないだろうな」

となるとどこかの建物の中という事になる。

俺は空を見上げた。

教会の時計塔が目に入った。

「あそこなら人がほとんど入らないだろうし、大丈夫じゃね?」

俺は姿を消して、飛翔で時計塔へ向かった。

思った通り、中は人が入るような場所では無かった。

俺はそこにチェックを入れた。


しばらく俺は町を歩いたが、特にトラブルらしいトラブルには出会わなかった。

この辺り、俺が勇者ではないという事だろうと思う事にした。

勇者なら、必ず何かが起こるはずなのだ。

俺は適当な宿屋で部屋を借りると、今日はそこで休む事にした。

自分の屋敷に瞬間移動魔法で帰る事も可能だけど、夜中に何かが起こるかもしれない。

だから泊まる事にした。

食事は宿屋の食堂でとった。

正直俺はどんなものでも食べる事ができるわけで、節約したいなら毒のあるものでもなんでも食えばOKだ。

全状態異常耐性もあるし、金もそんなにある訳じゃないからね。

勇者が見つかったら、まずは金を稼ぐ必要があるなと思った。

結局この日は何もなかった。


次の日もその次の日も、俺はギルドを見て回り、町で何かトラブルが起こらないか探していた。

そして結局何もないまま、3日が過ぎていた。

そんな日の夕方前だった。

町で何やらもめごとが起こっていた。

どうやら貴族らしき者の前を阻むように、獣人の子供が何か粗相をしたようで、その貴族らしきものが怒っているようだった。

この町は比較的亜人種の多い町である。

王都でもあるし、王であるウリエルは差別に良くも悪くも興味のない王だと、ギルドで飲んでいる連中が話しているのを聞いていた。

ただ、貴族の中にはそれを良しとしない者も当然いるだろうし、お決まりのイベントは時々起こるのだろう。

さあ勇者よ。

今こそ助けに来い。

此処で助けに入る者こそきっと勇者だ。

そしてこの獣人の子供が、勇者のパーティーに入る者に違いない。

子供なのに割と魔力を持っているし、将来有望そうだ。

1年で強くなるかと言われると疑問もあるけれど、上手くやれば魔王を倒す手助け程度はできるようになるだろう。

勇者は一人で魔王を倒すわけではない。

仲間の力を合わせて倒すはずなのだ。

そもそもレイド戦想定なわけだしね。

仲間以外も集まってくるかもしれないから、仲間にこだわる必要もないかもしれないけれど、冒険して強くなるなら、当然強い仲間を持っている方が強くなる可能性は高い。

実は既に本人の了承もとっている作戦がある。

勇者を見つけたら、アマテラスを勇者パーティーに入れて勇者が強くなるように導いてもらうのだ。

最初からべらぼうに強い勇者ならその必要は無いが、おそらく強い仲間はいた方がいいだろう。

アマテラスは人間の体を手に入れた事で、とにかく冒険がしたいようなのだ。

あまり派手にされるとそこから人型ゴーレムの情報が洩れて俺の話が出て来てしまう可能性もあるから、正直あまり目立って欲しくはない。

だが勇者のパーティーの一員程度なら、勇者の影に隠れる事もできる。

そんなわけで、勇者パーティーで冒険に出るという事で話はついていた。

「よく考えると逆に目立ちそうだが‥‥まあ約束だしな‥‥」

とにかく俺は勇者が現れるのを人混みの中で待っていた。

こない。

ちっとも来ない。

貴族の坊ちゃんにいじめられる獣人の子供を見ているのが辛い。

直ぐに助けてあげたい。

しかし我慢だ。

此処で俺が乗り込んでいったらめだってしまう。

それに俺が勇者フラグを立ててしまいかねない。

我慢だ。

我慢なんだ。

でもこのままでは、もう間もなくこの獣人の子供は殺されてしまうだろう。

仕方がない。

少しだけだ。

俺の石ころで少し助けるだけだ。

貴族の従者らしき者が剣で子供を斬りつけようとしていた。

俺は石をはじき、斬りつける剣をフッ飛ばした。

本体である子供の俺は姿を消していた。

一応砂の分身はその場にいるが、本人とは少し離れた位置にいるので疑われる事はないだろう。

「だれだ!?一体何をした?!」

従者らしき者が声を上げていた。

野次馬に集まっていた人達が、関わりたくないと言った感じで徐々にその場を去り始めた。

おいおい、本当に誰も助けに入らないのかよ。

俺がそう思った時だった。

ようやく勇者らしき者が現れた。

「これこれ子供相手に流石に剣で斬りつけるのは大人げないだろう」

「なんだ貴様?獣人ごときが私に泥を付けたのだ。命をもって詫びるのが当然だろう!」

「この国にそんな差別はないと聞いていたが?」

貴族らしき者と勇者らしき者のやり取りが始まった。

勇者らしき者は、俺が見た所勇者の素質は十分だった。

潜在魔力は大きく、将来魔王を倒す事も可能に感じる。

しかし装備や現状の能力を見る限り、この貴族についている従者の足元にも及ばない弱さだ。

さてどうしたものか。

しかも穏便に事を済ませる様子はなく、貴族らしき者と従者の顔がドンドン赤く変わって行くのが見えた。

明らかに爆発寸前だ。

このままだとあの勇者らしき者もここでゲームオーバーになるに違いない。

仕方なく俺は助ける事にした。

砂の分身である俺は、砂をコントロールし砂煙を巻き起こした。

「勇者さん!逃げよう!」

俺は獣人の子を勇者の手に持たせると、勇者を押すようにしてその場を離れた。

ちなみに勇者を誘導したのも何もかも砂の分身の方で、俺自身は姿を消して屋根の上に上り、全体の様子を見ていた。


「ここまで逃げれば大丈夫だろう」

俺はそういうと走るのをやめ、砂の分身だから別に疲れたりもしていないのだが、ハアハアと息をしているフリをした。

一緒に逃げた勇者、らきし者は獣人の子供を抱えているのもあるが、かなり荒い息をしていていたからね。

「どうして逃げなきゃならなかったんだ?はぁ、はぁ‥‥悪いヤツは懲らしめてやるつもりだったのだが‥‥」

流石勇者、らしき男だ。

これはおそらく間違いないだろう。

金髪の髪に整った顔立ち、レベルは低いが鍛え抜かれた体が見て取れる。

装備も一応整っているし、潜在魔力も並のレベルではない。

ただ‥‥

「今の勇者さんでは、あの従者には勝てなかった。あの従者はかなりの使い手だったからな」

「そ、そうなのか。ところでさっきから俺の事を勇者とか言っているが、それはどういう事だ」

まだ少し荒い息の中、勇者らしきそいつは俺に聞いてきた。

「俺は勇者を探して旅をしていた。それで今日、あるモノの予言であの場所で出会うから助けるようお告げがあったんだ」

でまかせで適当に俺は答えた。

「ほう。つまり俺が勇者であるというのか」

「ああ。これも予言者の予言なのだが、これから1年の間に魔王がこの世界に現れる。だからそれを勇者に伝えようと探していたわけだ」

「なるほどな。つまり俺が強くなって、その魔王を倒さねばならない、そういう事か」

「そういう事だな」

どうやらこの男、自分が勇者であるという事を受け入れ、前向きに考えてくれているようだった。

やはり間違いない。

この男が勇者になる者だ。

「俺はアベルだ。お前の名前を教えてくれ」

「俺は達也だ‥‥」

そこまで言ってハッとした。

偽名でも良かったのではないかと。

或いはゲームのプレイヤーネームの方が良かっただろうか。

でも転生してしまったわけだし、プレイヤーネームの『スター』では何となく抵抗がある。

スターだしね。

まあ妖精たちにも『星崎達也』と言っているわけで、この世界での名前はこれで良いかと思った。

「タツヤか。所で、俺が勇者で魔王と戦う存在だというのなら、達也は俺に力を貸してはくれないのだろうか」

「それは勇者アベルのパーティーに俺を誘ってくれているという事か?」

いやいやいや、俺はおとなしくしていたいのだ。

しかしこのままこの勇者だけで冒険させるのは不安だし、予定通りにこの弱い勇者をアマテラスに押し付けるのも少し罪悪感を感じる。

本当に勇者になる者なら放っておいても大丈夫だとは思うが、俺が助ける事前提で勇者の可能性もある。

「ああ。さっきの砂煙、魔法だったのだろう?結構な使い手と見たのだが」

「いや、俺はそんなに大した事はできない。そ、そうだ!俺の知り合いに俺以上に強い奴がいる。そいつをパーティーに入れてはくれないだろうか?」

俺は結局アマテラスに押し付ける事にした。。

「そんな知り合いがいるのか?是非お願いしたい」

「分かった。では‥‥そうだな。明日イニシオの町にあるギルドで待つように伝えておく。名前はアマテラスだ」

「何故イニシオの町なんだ。今日そこからこの王都に来たばかりなんだが」

「さっきの一件で、もうこの町にいるのは問題があるだろ?」

俺はアベルの腕に抱えられている獣人の子供を指さした。

「とは言え、1日でイニシオの町に戻れるかどうか‥‥」

確かに今の勇者の能力では間に合わないかもしれない。

「では明後日でも構わない。一応アマテラスには、明日には行っておくように伝えておく」

「了解した」

「ではこれで!」

俺はそう言うと、何かを言おうとしているアベルを無視してその場から一目散に離れた。

直ぐに本体と合流し、俺は自宅へと瞬間移動魔法で戻った。

アマテラスに話すと、喜んでアベルについていくと返事をした。

その顔は楽しみで仕方がないと言った感じだった。

少し罪悪感を覚えた。

俺はアマテラスに魔法通信用の耳飾りを渡した。

何かあったら直ぐに俺と通信できるというものだ。

これで定期的にアベルの様子だったり、パーティーの状況も知る事ができる。

できるだけ自分の強い力は見せないように釘を刺して、俺はアマテラスをイニシオの近くまで送った。

瞬間移動魔法でね。

これでとりあえず勇者アベルの事は大丈夫だろう。

ようやく自分のやりたい事ができると思った。

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