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二度目の転生は砂の冒険者~ステータスがチート過ぎてヤバい~  作者: 秋華(秋山 華道)
本編知里ちゃんと共に
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ドラゴンの来襲とクエスト達成?

止まっていたものが、急に動き出す事がある。

そしてそれは往々にして怖い。

止まっているゴキブリを殺そうと近づくと、急にこちらに向かって飛んできたりする。

アレマジで怖いよね。

もしもゴキブリがカブトムシみたいにゆっくり動く虫だったら、きっと今ほどは嫌われていなかったと思う。

なんの話やねん。


さて俺と知里ちゃんはガンマ国にある町を全て回り、コッソリ山を越えてベータ国にも入り町を廻った。

しかし全くなんの情報も得られないまま1ヶ月が過ぎた。

そんなある日、三龍イベントが急に動き出した。

沢山のドラゴンが、各王国で町を襲い始めたのである。

時々町を悪魔が襲う事がある大陸だから、ドラゴンが襲ってきたとしても対処できるだけの備えはある。

しかし数が多すぎて、襲われた町は何処も悲惨な状態となっているようだった。

「ドラゴンがいきなり町を襲い出すとか、どんなイベントだよ」

「ねー。でもまだイベント開始時期には早いよねぇ」

確かにそうなのだ。

襲われている町は確かにあるのだが、当然その時に1頭や2頭のドラゴンは誰かが倒したりしているわけで。

だったらもしも3種の魔石を集めルシフェル皇帝から剣を貰うのがイベント目的と考えると、直ぐにでも達成は可能である。

少なくとも俺たちならね。

実際は各国が国境を封鎖しているから、どれか1種しか手に入れられない状況にはなっている。

何故かそれぞれの国に1種類のドラゴンしか現れないからね。

なのでまだ、このミッションが完全にメインクエストである事を否定はできないけれど、俺たちが可能な以上、このミッションはメインクエストではないと言える。

転生前の世界とこちらの世界で、クリアタイミングは一致するはずなのだから。

尤も、前回が偶々の可能性もあるから、あくまで可能性の高さの話となるわけだが。

「襲われている町の傾向を考えると、国境付近が多いかな」

「軍事拠点となっている町に集中しているような気がするよ」

「おお!確かに‥‥」

各国それぞれ国境に一番近い町は襲われている。

そしてそれ以外だと、強力な魔獣が出やすい地域など、戦力が集中している町だ。

ドラゴンはわざわざ親切にそんな町を襲っているのだろうか。

賢いという設定のドラゴンがそんな事をするわけがない。

となると最初から軍を狙っての襲撃か。

町が酷い事になっているという話は聞くが、俺はまだ実際に自分の目で見たわけではない。

これは一度確認する必要があると思った。

「ちょっくら見に行くか」

「見ればハッキリすると思うよ」

「そうだなぁ‥‥テンゲンの町に行ってみるか」

「うん」

俺達はスプリットの港町にある魚料理店で食事を終えると、人目のつかない所へ移動してからテンゲンの町へと瞬間移動した。

前に来たのは半月ほど前だったが、その頃とは明らかに様子が違っていた。

町の城壁がほとんど壊されていたのだ。

「こりゃ凄いな。流石ドラゴン」

「今他国に攻め込まれたら、どうなっちゃうんだろう」

知里ちゃんの言う通り、此処はガンマ王国との国境に一番近い最前線の町だ。

前に来た時は要塞というイメージがあった。

しかし今では、何処の町でも見かける城壁よりも低く崩れていた。

「まあ城壁があったから町は守られたという所かな」

「ん~‥‥城壁もドラゴンの攻撃対象って気がする。目的は戦力、或いは防衛力の破壊」

確かに、町の中はほとんど被害が無いように見える。

町を少し歩いていて見ても、町に入ってしまえば大きくは違わない。

「ギルドも攻撃対象だったのかな」

「戦力と言えば軍人と冒険者だもんね」

戦力を削ぐ事が目的とするなら、攻撃されて当然の場所か。

「あそこの建物も攻撃されているな。あそこは偶々被害にあったのかな」

「あそこは武器屋だった所だよ」

「となると攻撃ヶ所としては間違いじゃないと‥‥」

しかしこれが本当にドラゴンの狙い通りだとしたら、ドラゴンってのは本当に強く賢いのだと思う。

何故攻撃する必要があったのかは分からないが、これほど見事に作戦通りなんてよっぽど力がないと難しい。

転生前の世界でも大国が戦争をしていたりするが、誤爆もあってかなり一般人が被害に巻き込まれる。

今回全く巻き込まれた人がいないとは思わないが、少なくとも建物だけを見る限り凄いと感じた。

町を一回りした後、俺と知里ちゃんは別の町にも行ってみた。

でも受けた印象は全く同じだった。

「どこも同じだな」

「違うのはドラゴンの種類だけだね」

そうなのだ。

アルファ王国にはグリーンドラゴン、ベータ王国にはブルードラゴン、そしてガンマ王国にはレッドドラゴンしか出現していない。

それがもしも場所によって決まっているのなら、グリーンドラゴンの巣はアルファ王国内に、他もそれぞれの国内に存在する可能性が高くなる。

「でも俺、北山、天山、南山にそれぞれのドラゴンが住んでいるんだと予想していたんだけどな」

「それだとわざわざ遠い町を攻撃した事になるね」

「いくら何でもそこまでしないよな」

俺が言う北山、天山、南山は、大陸の中央やや東よりに、縦に並ぶ3つの山である。

三龍と聞いて最初から怪しいと思っていた山だが、今まで特に怪しいと思う所は見つけられていない。

仮にそこにそれぞれのドラゴンが住んでいたとして、今回の襲撃個所は腑に落ちなかった。

「遠くてもわざわざ襲撃する理由があったのかなぁ‥‥」

知里ちゃんの言う通り、理由があればその可能性もなくはない。

でも一体どんな理由があるというのだろうか。

「考えても分からない事は、とりあえず結論だけ見て考えよう」

推測は推測で可能性として考えるが、物事はハッキリと分かっている事を基本に判断するべきなのだ。

そんなわけで俺と知里ちゃんは、事実情報を積み重ねる為に、実際にドラゴンが襲撃する所を見る事にした。

俺たちは砂の分身をフル稼働し、次にドラゴンが襲撃しそうな町を張り込んだ。

流石に俺でも大陸全部をサーチはできないからね。

さて、ドラゴンが襲撃する所を見て、果たしてその意図が分かるのだろうか。

しかしそれ以降、ドラゴンの襲撃はピタリと止まってしまった。

結局襲撃理由は分からないまま、しばらく月日は流れた。


もう襲撃は起こらないと考えた俺たちは、張り込みを諦め、各王国内でドラゴンがひそめそうな所を探索していた。

探索というか、もう魔獣狩りを楽しんでいただけかもしれない。

そんなある日の事だった。

久しぶりにセバスチャンからビッグニュースが飛び込んできた。

なんと三龍の魔石を手に入れ、ルシフェル皇帝にそれを献上した者が現れたのだ。

その者は、魔人の大陸であらゆる物の流通を仕切っている大商会のボス『アコギ』だった。

しかも魔石は10セットというのだ。

間違いなく流通には裏ルートが存在し、それを使って集めたのだろう。

国境封鎖もなんのそのだ。

アベル、元いルシフェル皇帝は、流石に褒賞が剣1本ではメンツが保てないと思ったのか、剣、鎧、盾の全てを与えた。

おいおい、それは俺が上げたものだろ。

あの時点では伝説級のアイテムだったけれど、今ではそうではないかもしれない。

でも魔王討伐イベントの時に勇者が身に着けていたというだけで、当然価値は上がるわけで、このアコギというヤツは間違いなく大儲けだった。

まあそんな事はどうでも‥‥良くはないけれど、これでこの辺りの事がイベントのメインクエストではなかったと確定したと言えるだろう。

しかし三龍が表に出てこなくなり、このイベントは終わったようにも見える。

後2ヶ月強で何かがまだ起こるのだろうか。

「アコギとやらは上手く儲けたなぁ。名前からして儲けそうだしなぁ」

「うん。それでやっぱりアコギな事しているのかなぁ」

「どういう事?」

「ドラゴンが町を襲撃しなければ、魔石は手に入れられないかったよね。襲撃によって国境付近の封鎖が甘くなったから魔石が集められたのかもしれない。誰かの陰謀によって今回の事が起こったとしたら、最も利益を得たのはこのアコギさんという事」

知里ちゃんの言う通りだ。

そこで最も利益を得た者が事件の犯人という事はよくある話。

だいたいドラゴンがいきなり群れで町を襲うなんて、普通はあり得ない事だろう。

そしてその攻撃ヶ所の中に、関所となる全ての町が含まれている。

誰かがこの関所の機能を壊す為に仕向けたと考えれば納得はいく。

ただ、そんな事をこのアコギができるのだろうか。

或いは他にできる者がいるのだろうか。

俺みたいなチートもいるし、この世界はマスター青木のようなヤツの都合で作られた世界でもある。

イベントの為にはどんなストーリーだってこじつける事はできるのだ。

「仮にアコギが何かしらの方法でドラゴンを仕向け、このミッションを成し遂げたとしよう。だとしたら次に起こる事はなんだろうか」

「騙された、或いは言う事を聞かされたドラゴンが反撃する?」

此処だけみると当然そうなるのだが、ドラゴンに攻撃された人類はどうするだろうか。

「人類も、ドラゴンにやられっぱなしでは納得いかないだろうなぁ」

その辺りに今回のイベントに繋がるヒントが隠されているのではないだろうか。


思った通り各国の王は、ドラゴンの巣を探すよう既に動き出していた。

人属同士の対立は、共通の敵であるドラゴンが現れた事により関係改善へと向かい、三国の国境は解放されていった。

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