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二度目の転生は砂の冒険者~ステータスがチート過ぎてヤバい~  作者: 秋華(秋山 華道)
本編知里ちゃんと共に
28/33

マスター青木

オーガ王国にいるカールオジ他4名の護衛はガザの側近たちに任せて、ツクヨミは残したまま俺と知里ちゃんは一度妖精王国へと帰ってきていた。

戻ってきた時には既にガブリエル王国とアルファ王国の間で、船が行き来する話は公のものとなっていた。

ツノギルドとレッドギルドの連携も可能となり、つまりツノギルド、レッドギルド、ブルーギルド、グリーンギルドは横並びの連携となる。

ちなみに妖精ギルドは、今まで通り3ギルドとの提携であり、管理しているのは妖精のみだ。

ただし妖精ギルドで他の3種のギルドカードとツノギルドカードを使用する事はできる。

そもそも妖精ギルドで扱っている仕事は、3ギルドの難関クエストな訳だしね。

妖精王国での3ギルドの共同ギルドみたいなものだと言える。

当然妖精ギルドカードを、3ギルドやツノギルドで使用する事も可能という事になる。

分かりやすくまとめると、この5種のギルドカードは、何処でもランク通りの仕事が受けられて、カードが発行されたギルドのみ1ランク上の仕事が受けられる。

妖精ギルドだけは、3ギルドでも1ランク上の仕事が受けられるが、妖精しかカード発行はできない、という事になる。

アルファ王国の国王がガブリエル王国を訪問する話も具体的に話が進められ、新大陸の話題は天使の大陸全土に広がってきていた。

そうなると、魔法転送装置の情報を隠しておくのもあまり意味が無くなってくる。

アベル改めルシフェル皇帝がレッドギルドに依頼し、一部の者たちだけで調べてきたこれも、方針を転換する事になった。


「私は今、天使の大陸から新大陸へ、新大陸から天使の大陸へ瞬時に移動できる『魔法転送装置』を手にしている。そしてその技術があれば、町から町へ瞬時に移動できる装置を作る事ができると分かってきた」

この日帝都では、ルシフェル皇帝の演説が行われていた。

俺と知里ちゃんはその話を知り、帝都に来てそれを聞いていた。

「しかしその為には足りないものがある。それは三龍と呼ばれるものの魔石だ。三種の龍が落とす魔石と考えられているが、その詳細は明らかではない。見事その謎を解明し三種の魔石を手に入れてくれたものには、ここにあるルークが作りし魔剣を褒美としよう!」

何やら盛り上がっていた。

観衆が声を上げていた。

「私はレッドギルドマスター『タクト』です。ギルドからもクエスト達成報酬として300万ゴールドを出します。3種の魔石1セットで300万ゴールドです。何セットでもオッケーです」

再び歓声が上がった。

転生前の世界の価値に換算すると三千万円か。

命がけで苦労して手に入れた物としては安い気もするが、強い者にとっては割と美味しい仕事になるかもしれない。

「どうする知里ちゃん?」

「イベントクエストにも繋がると思うし、あそこまで探したんだから、やっぱり見つけたくなっちゃうよね」

「あれだけ苦労して達成感無しじゃ、スッキリもしないか」

正直俺はどうでも良かった。

自分がやらなくてもこれはきっと誰かが達成してくれる。

そして手伝うにしても最後まで自分がやるつもりもない。

アマテラス辺りがクエストクリアした方が本人も喜ぶだろうし、知里ちゃんがやりたいというのならそれに付き合うのも悪くないかと、その程度の気持ちだった。

「じゃあまずは行ってないベータ王国とガンマ王国から行く事になるのかなぁ‥‥」

「ガンマ王国ならワイロの町にチェックがあるし、そこからスタートしようか」

「ん~‥‥そうしたいんだけど、今はオーガ王国の事もあるから、私たちがあそこから出ている事がバレるとまずいよねぇ。分かりやすくしばらくスーパーシティに滞在しておいた方がいいのかも」

確かに今俺達がワイロの町に行ったとして、それがスーパーシティの領主の耳に入れば、俺達が三龍騒ぎを引き起こしたと思われる可能性がある。

領主が納得するまで、俺達は何もしていないとアピールできる所にいた方が良いかもしれない。

「すぐにスーパーシティに行くのもまずいな。まだネムも戻ってないのに、俺達が先に行くわけにもいかない」

「だったらしばらく私の家でゆっくりしようよ。誰かに見られる心配もないしオーガ領内だからね」

「そうだな」

という訳で、俺達はしばらく知里ちゃんの家でゆっくりと過ごす事にした。

オーガたちを手伝ってあげてもいいのだけれど、別に焦る必要もない。

できるだけ手伝わず、この世界の者たちだけで上手くやれるならその方が良い。

俺はチート能力でこの世界にきた。

それはそれで悪くはない。

駄目なヤツよりもよっぽどいいのだ。

でも、チート過ぎて自分がこの世界の住人ではない気もしてくる。

神とか言うつもりはないけれど、一言でいうとそんな気分だ。

きっともうこの世界が退屈に思い始めているのかもしれない。

もしも知里ちゃんがいなかったら、その気持ちはもっと大きくなっていただろう。

なんとかこの世界が自分の住む世界だと思えているのは、知里ちゃんのおかげかもしれないと思った。


知里ちゃんと二人の生活は1ヶ月以上続いた。

二人でマッタリと過ごす生活は、とても心地の良いものだった。

俺は気が付いてしまった。

自分が知里ちゃんを女性として好きになっている事に。

しかし相手は人妻である。

そして旦那は割とよく知っている人物だ。

転生前の世界では、『ゴッドブレス』というプロゲーマーチームのリーダーをしていた人。

うちの会社とはライバルでもあり仲間でもある。

この世界に繋がるゲーム、マジックソードでは協力関係でやっていた。

知里ちゃんが惚れるのも納得できる良いヤツだ。

当然知里ちゃんはそんな旦那を裏切る事はしないし、できない子だと知っている。

たとえもう元の世界に戻れないとしても、俺と知里ちゃんが結ばれる事はあり得ないと確信していた。

「元の世界に戻る、か‥‥」

今まで考えてこなかったけれど、この世界から元の世界に戻る事は可能なのだろうか。

俺にも妻はいたし、お互い戻る事が正しい道なのではないだろうか。

しかし今の俺は、例え戻る事が出来たとしても、もう戻れない。

俺の愛はもう失われてしまったのだから。

「お兄ちゃんは元の世界に戻りたいの?」

俺の独り言を知里ちゃんは聞いていたようだった。

「考えた事も無かったな。俺自身前に一度転生しているし、結局元には戻れなかった。考えるだけ無駄だと思うよ」

知里ちゃんは戻りたいのだろうか。

そりゃ戻りたいだろうな。

だったら知里ちゃんの為に、戻る方法を探してみるのも良いかもね。

ただ今しばらくは今の生活が続けばと思った。

まあでもだいたいこういう事を考えたらフラグが立つわけで、俺と知里ちゃんのマッタリ生活も終わの時を告げた。

スーパーシティ領主が、正式にオーガ王国を認めて交流を宣言したのだ。

一応スーパーシティはほぼ独立した町ではあるが、ガンマ王国に属している。

当然ガンマ王国からは問題視する声が上がった。

しかしガンマ王国と関係が良くなかったアルファ王国とベータ王国が、スーパーシティの決定に賛成し後押ししたのだ。

領内にいるオーガやオーク、ゴブリンの移動も手助けし始めた。

別にオーガたちと人類が仲良くするべきだとは思っていなかっただろう。

そこから問題が大きくなるのを望んだのかもしれないし、領内のオーガたちを排除できるのを喜んだのかもしれない。

ただそれは結果的に、オーガ王国にとって最高の方向へと進んだ。

「これで俺達も、心おきなくクエストに挑戦できるな」

別にクエストに挑戦したい気持ちなんてない。

でも知里ちゃんが望むなら、俺はそれを助ける。

俺は知里ちゃんと一緒に旅行気分が味わえればそれで良かった。

「そうだねぇ。じゃあまずはワイロの町から冒険を再開だねぇ」

俺達は初めに魔人の大陸を冒険した時の続きを始めた。


ワイロの町は、前に来た時と変わりはなかった。

時々悪魔が襲撃してくるとあって人口は少ないが、冒険者は多かった。

一応ツノギルドで三龍について尋ねてはみたが、めぼしい情報は得られなかった。

「とりあえずこの町にはもう用はないな。次の町に行くか」

「そうだね」

俺は地図を広げた。

「普通に考えて攻略ルートがあるとしたらアルファ王国だとは思う。でも今ではおそらく多くがそちらから挑戦しているだろうし、こちらのガンマ王国に入ってから攻略ルートが明らかになる可能性もある」

「決定的な攻略はまだもう少し後の可能性が高いよね。1年後攻略が今回も生きているなら、もしもガンマ国で何かが始まるなら数ヶ月後かなぁ」

「でも前回の魔王討伐イベントは、かなり早い段階からその兆候はあったんだよ。本来魔獣が出る場所が何もない場所に変わっていた」

「今回は今までと違う所は見つけられないよね。でも怪しい所はもしかしたら違和感を覚えるかもしれないね」

「とにかく片っ端から見て回るという結論に至るかな」

これがまだゲームとしての要素を残す世界であれば、今はイベント情報が徐々に出てきて準備をする段階だ。

例えば倒すドラゴンがどの程度の強さなのか、どんな属性なのか、どうやったら倒せるのかを見つけ出し、装備を整えたりレベル上げをしたり、パーティーを集めたりする。

俺はあまり攻略に関わりたいと思わないから、クエストのクリアを目指すなら知里ちゃんだけど、知里ちゃんも現状チートレベルに近いわけで、おそらく楽に攻略できる域にある。

ならば準備は不要なわけで、クエストの為の冒険は正直意味が無いとも言える。

もしも意味があるとするなら、挑戦権第一号の為と言った所だろう。

結局俺達は、ガンマ王国を西の方がしらみつぶしに見ていく事に決めた。


最初に訪れたのは、ワイロの町から北へ飛翔で1時間と少し、マルシェの港町だった。

この町はベータ王国と海で繋がる港町だ。

しかし今は関係が悪く、貿易は止まっている。

「こういう状況も、普通ではないと言えば普通ではないのだろうな」

「きっと何かしら意味はあると思う」

もしも三国の仲が悪く国境封鎖されいる事に何か意味があるのだとしたら、今回のイベントはアルファ王国内だけで完結する気もする。

ただアルファ王国にはアマテラスもいるだろうし、本気で攻略を目指すなら情報を聞くなり合流するなりすればいいわけで。

俺は知里ちゃんとの旅を楽しみたいので、あまり考えず町を見て回ろうと思った。

ギルドに寄り、冒険者に話を聞き、町で買い物しながらそれとなく三龍について訊ねたが、ほとんどが『アルファ王国での話』といった感じで興味はなさそうだった。

「結局何も情報は得られなかったな」

「うん。でも‥‥お兄ちゃんも気が付いてるよね。私たちが監視されている事」

知里ちゃんの言う通り、ギルドで話を聞いた後くらいからだろうか。

誰かに見られてる感じがずっとしていた。

「ただ、探索魔法に引っかからないんだよなぁ。つまり姿も気配も全て消している事になる」

「この魔人の大陸ならそれほどの使い手がいても不思議じゃないけれど、もしかしたら私たち同様転生者かもしれないね」

転生者が俺達以外にいるとは思えない。

何故なら、俺が転生する前、或いは知里ちゃんが転生する前でもいい。

ゲーム中に光に包まれ爆発する、なんてニュースは無かったからだ。

もしもそんなニュースがあったら、知里ちゃんは俺がそうなった時に間違いなくそのニュースをみつけているはず。

「転生者じゃないにしても、この世界のバグ的人間である可能性はあるな」

そもそも何でもありの世界。

俺みたいなチートもいるのだから、本物の神が降臨する事だってあり得るだろう。

深く考えても仕方がなかった。

「会って話してみたいね。もしかしたら三龍について何か知っているかもしれないしね」

「ああ。とは言え今の所何も分からない相手だ。油断せずに行こう」

俺達は視線を意識しつつも、次の町へ向かうのだった。


俺達はいくつかの町を転々と移動したが、どの町に行っても視線は離れなかった。

近づけばきっと存在を確認できると思うが、何時も遠くから見ているようだった。

「なかなか姿を現さないな」

「うん。とりあえず今日はこのピエモンテの町で一泊しよう」

安全を確保するのなら、一旦どちらかの家に帰るべきなのだろう。

しかし知里ちゃんは、あえてこの町の宿で泊まって行く事を提案してきた。

これはもちろん、誘い出す為の作戦だ。

今まで付いてきたのに姿を現さないのは、機会を待っているからだと考えられる。

その機会をあえて作ろうというのだ。

「飛翔で移動しても付いてきた相手だ。或いは目的地が分かりやすいから瞬間移動で先回りしていたのかもしれない。十分注意していこう」

「多分大丈夫だよ。お兄ちゃんチートだし」

知里ちゃんには余裕が見て取れた。

こういう時に知里ちゃんが失敗する事はまず考えられない。

俺も張り詰めた意識を少しリラックスさせた。

宿には風呂があったが、1つしかなくて先に俺が使わせてもらった。

30分ほど風呂を堪能して出てくると、部屋に知里ちゃんの姿が無かった。

「さて、追いかけるか」

探索魔法で、既に知里ちゃんが宿から出て行ったのは察知していた。

テーブルを見ると、手紙が置いてあった。

手紙には『三龍の情報を持っている、必要なら教会まで一人で来い。マスター青木』と書かれていた。

この世界に似つかわしくない名前だった。

「マスターか‥‥ギルマスかな。となるとツノギルドのマスターという事になるか」

俺はすぐに後を追った。

俺に対しての視線は既に感じない。

呼びだしたのは視線の主という事だろう。

知里ちゃんは既に教会に到着している。

俺は話の邪魔だけはしないよう、ある程度離れた所から様子を窺う事にした。

姿と気配は既に消している。

相手に感づかれないよう最大限距離を取って千里眼で様子を窺った。

既に教会の神官長らしきマスター青木と思われる人物と、向かい会って何かを話しているようだ。

いかにも悪そうな悪役面をしている。

いや、本当のなら相当美形なのだが、知里ちゃんに対しての敵意が顔に表れていた。

「何もんだあいつ‥‥」

俺がそうつぶやいた次の瞬間、教会は結界に包まれた。

千里眼は塞がれ、中の様子も分からなくなった。

「そんな事したって、チートの俺なら入れるんだよ!」

知里ちゃんが危険と判断し、俺は迷わず教会へと入っていった。

「ネズミが一匹入ってきたな。まあそんな事はどうでもいい。チサトくんには、ここで死んでもらう。ネズミも一緒にな」

「どうして私なの?恨みがあるように言っていたけど」

マスター青木は、知里ちゃんの事をチサトと言い、そして殺すと宣言した。

やはりプレイヤーだろうか。

俺たち以前に転生者がいたとは思えないが、もしかしたらそれ以外のタイミングで転生してきた可能性はある。

「恨みは数えきれないくらいある!俺の作った世界で何時も想定以上の事しやがって‥‥」

何を言っているのだろうかこいつは。

「しかしまさかチサトがこの世界にいたとはな。死んだとか失踪したとかニュースでは言っていたのにな」

「もしかしてリアル世界の人なの?」

「さっきから言っているだろう。俺はこの世界の創造主で神だってな!」

つまりはゲームマスター青木って事か。

確かにそれは神ではあるな。

運営ならこの世界をどうにでもできるわけで。

「俺の本当の力を見せてやる!」

そういった青木は、魔力を全開放したようだった。

確かにこれは凄い魔力だ。

この世界に来てこれほどの魔力を持つ者に会った事はない。

神クラスでも上位、大神クラスだ。

知里ちゃんよりもかなり力が上に見える。

「俺のステータスはオールカンストだ。そして全ての魔法も使える!普通のプレイヤーが勝てる相手ではないぞ!」

そういう青木に対して、知里ちゃんは特に臆しているようには見えなかった。

この差を見せられて『殺す』と言われても、知里ちゃんはなんとかできると思っているのだろうか。

「どう見ても勝てそうにないね。私だけ‥‥なら無理かなぁ。でも、そういう相手の方が楽しそう」

この力の差を見せられても、知里ちゃんは楽しそうと言った。

尤も、俺がかけた常態魔法があるから死ぬこともないだろうし、その辺も余裕に繋がっているのだろう。

「その余裕がむかつくんだよ!」

確かに、ゲーム運営から見れば、何時も予想を超える攻略をしてくるプレイヤーってのは気に入らない相手なんだろうな。

運営が『プレイヤーに負けないゲームを作る』とか『クリアされて悔しい』なんていう事も時々聞く。

それが本心なら、知里ちゃんみたいなプレイヤーは最悪なんだろう。

少し同情もした。

青木は知里ちゃんへと襲い掛かった。

持っている武器や防具もかなり良い物に見える。

これもおそらく最高クラスの物ばかりなのだろう。

知里ちゃんとの力の差は歴然だった。

しかし知里ちゃんも並のゲーマーではない。

強い相手との戦い方も慣れたものだ。

攻撃を上手く受け流しながら対応していた。

勝負は互角に見えた。

ただ、この状況を続けて行けば、まず間違いなく知里ちゃんんが勝つだろう。

知里ちゃんが戦いになれ、相手を知った時、負ける確率は限りなくゼロに近づく。

戦いが長引けば長引くほど知里ちゃんが有利なのだ。

徐々に知里ちゃんが押し始めた。

青木がこの戦い初めて受け手に回る。

知里ちゃんの必勝パターンに入った。

もう大丈夫だろう。

思った通り、知里ちゃんの攻撃が青木の右手にクリティカルヒットし、右手が胴体から切り離された。

「勝ったな!」

俺はそう思い声をだした。

しかし次の瞬間、切られたと思った右手は元に戻っており、逆に知里ちゃんの心臓が剣によって貫かれていた。

「ははは!この剣で刺されたものは回復系魔法を受け付けなくなる!ざまあみろチサト!」

そんな事を言う青木の心臓辺りを、今度は知里ちゃんがスタッフで貫いた。

「私には強力な加護が付いてるの。残念だったねぇ」

知里ちゃんは俺の常態魔法によって即時復活していた。

対する青木も即時復活し、知里ちゃんと距離を取った。

「まさかお前にもそんな魔法がかけられているとはな」

「これだと決着がつきそうにないよね」

普通に相手にダメージを与える戦いでは、これでは決着がつかないだろう。

ブラックホールにぶち込んだりでもしない限りお互い倒せない。

そしていくらチートな大神のゲームマスターでも、そんな膨大なエネルギーは生み出せないはずだ。

ステータスオールカンストだしね。

つまり能力の限界値って事。

「何を言っている。俺はこの世界を創った神。理も全て想像する者。この世界では最強なんだよ!」

再び青木が知里ちゃんに襲い掛かった。

知里ちゃんが動揺して動きがおかしい。

それもそのはず、俺のかけた常態魔法が全て解除されていた。

つまりもしも知里ちゃんが次殺されたら、それ即ち本当の死だ。

或いはそれをきっかけに元の世界に戻るという可能性もあるが、そんな不確定な可能性にかける事なんてできない。

このままではもうすぐ知里ちゃんは殺される。

俺が青木を倒さないと。

でも青木は少なくともこの世界では人だ。

殺せば人殺しになる。

それに俺がこの青木を倒せるだけの魔法を放てば、この町も知里ちゃんもろとも消し炭になるだろう。

俺ならそれでおそらく倒す事はできる。

俺はこの世界の理を壊すバグなのだから。

どうする。

もう考えている猶予もない。

俺は覚悟を決めた。

「デススペル!」

この魔法は本来、圧倒的に力の差がある時に、上位のものが下位の者を即死させる事が出来る魔法だ。

しかし青木は神であり、本来はこの世界で最上位の存在である。

この魔法で殺されるなんて考える必要がない。

でも俺は『理の外の存在』或いは『理を壊す存在』だ。

青木くんには申し訳ないが、デススペルが100%発動するだけの力を俺は持っていた。

「ステータスがカンストって言っても、全て999だよね。俺のステータスは、多分桁が5つ以上違うんだよなぁ」

俺の魔法による黒い魔力は、青木を食らうように包み込み、その体だけをこの世界から消した。

殺したというよりは、食って消滅させたといった感じだろうか。

「ふぅ‥‥知里ちゃん、大丈夫か?」

「うん。ありがとう。お兄ちゃんがチートで良かったね」

「これで色々苦労もしたけど、やっぱチートなんだよなぁ」

それにしても、ゲームマスターの青木か。

殺してしまったけど大丈夫だろうか。

何故、どうやってこの世界に存在したのだろうか。

彼もやはり実は転生者だったのだろうか。

「青木を殺した事で、この世界が崩壊するとかって無いよね?」

「ん~‥‥そうなったら仕方がないよ。今死ぬよりは長生きだね」

まあやっちまったものは仕方がない。

とりあえず疲れたので宿に帰ってもう一度風呂に入ろう。

俺達はのんびりと歩きながら宿へと戻った。

青木の話はこれ以上する事はなかった。

寝る前には改めて、知里ちゃんに常態魔法をかけ直しておいた。

常態魔法の蘇生が役に立つ事がこんなにアッサリ訪れるとは、本当に思っていなかったよ。

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