チート過ぎてヤバすぎる件
このファンタージ世界へ来て、俺の頭の中には色々な情報が一気に飛び込んできた。
魔法の事、この世界の事、言葉の事、自分の能力にあったあらゆる情報が当たり前のように俺の頭の中にはあった。
だから転生した事を確信できた。
「転生も二度目なら~♪少しは上手に~♪」
俺は歌を歌えるほど落ち着いていた。
転生も二回目となると、『またか』としか思えなかった。
またこの世界で楽しくやるしかないのだと悟っていた。
「しかしだ‥‥この俺の強さはちょっとヤバすぎるレベルじゃね?」
そうなのだ。
とにかく自分がとんでもなく強い存在としてここに転生した事がハッキリと分かる。
ぶっちゃけ、神様が100柱一斉に襲ってきたとしても負ける気がしない。
とはいえ、此処はだだっ広い荒野のど真ん中で、遠くに1つ山が見えるだけの地。
敵が出てきて戦うなんて事もなさそうな場所だし、探索魔法を使っても辺り一帯にネズミ一匹存在を感じられない。
「とりあえず‥‥瞬間移動魔法で自分のギルド砦に戻ってみるか」
魔法だなんだは全て俺の頭の中にあった。
調べるまでもなく、何ができて何ができないかは分かっていた。
瞬間移動魔法で行ける場所は、自分のギルド砦だけのようだった。
「砦に行く前に、一応この場所にもチェックをいれておくか」
チェックを入れておけば、再び瞬間移動魔法でこの場所に来る事ができる。
ゲームでは瞬間移動できる場所のチェックは5ヵ所と制限があったが、今の俺は無数にチェックを付けられる事が分かっていた。
だから無駄にチェックをする事も問題にはならない。
俺はチェックを付けてから、ギルド砦へと瞬間移動魔法を発動した。
瞬時に俺は移動した。
しかしその先に、ギルド砦は存在しなかった。
確かにこの場所で間違いはなさそうだったが、砦の建物だけが無くなっているようだった。
「ん~‥‥一応転生者が俺以外にもいるかもしれないから来てみたが‥‥俺だけだったのかもなぁ」
俺は仕方なく、その場に魔法で『スター誕生!』と書いておいた。
「もしも仲間の誰かがこっちに転生していたら、きっとこの場所を訪れるはずだ。これを見れば一人じゃないって安心してくれるだろう」
俺は再び先ほどの荒野へと戻る事にした。
この荒野に戻ってきたのには理由があった。
一つは、最初に転生してきた場所だから、何か意味があるかもしれないという事。
そしてもう一つは、この場所なら魔法を試す事ができるだろうという事だ。
ハッキリ言って、自分がとんでもない化け物チートキャラになっている事が分かるわけで、本気で魔法を放ったりしたらどんな事が起こるか分からない。
だから此処でどんなものなのか試しておこうというわけだ。
今の俺なら最弱魔法から最強魔法まで何でも魔法は使えるし、新たな魔法を簡単に作る事もできてしまうくらいチートである事も認識している。
もしもこの地、この星を吹き飛ばそうと思えば簡単にできてしまうと思えるほどだ。
だから最弱魔法でどの程度が試しておく必要があるのだ。
俺は最弱魔法の『ファイヤーボール』を、魔力出力最少で放つ事にした。
ファイヤーボールは、ファイヤ系魔法では初歩の初歩に覚えるもので、エネルギーブラストやマジックミサイルと並んでよく使われる基礎魔法の一つである。
普通魔力を抑えたコレをくらっても、一般人でさえ死ぬことはほとんどないだろう。
でも今の俺は、抑えきれないくらい膨大な魔力を持っているようなのだ。
俺は魔力を最少に抑える事を考えながら、山の方へ向けて左手をかざした。
そしてファイヤーボールを放った。
一瞬の出来事だった。
辺りは高熱に包まれ、次の瞬間には遠くにあった山が消えていた。
予想以上にヤバいと感じる結果だった。
「うわー!これヤバくね?多分最上級魔法なんて放ったら、間違いなくこの星、或いは近くの惑星まで一気に破壊してしまうぞ?」
俺はドキドキしながら、喜びと恐怖が入り混じる変な感情に包まれていた。
「これではファンタジー世界で冒険者すらまともにできない。魔物と戦っただけで辺りが焦土と化すぞ‥‥」
戦いというか、一方的な殺戮なわけだが、同時に世界も破壊してしまいかねない力だった。
これではまずい。
MPという概念がこの世界でも存在するなら、魔法を使ってもそれは即時回復してしまうようだった。
自分の魔力を消費してから戦闘を行うなどの手も使えそうにない。
とにかく自分の魔力の最大量をなんとか減らさなければ、ちょっとしたミスで星ごと消滅させてゲームオーバーだ。
「とりあえず、永続魔法を自分にかけて、常に魔力を使い続ける事で魔力の絶対量を抑えてみるか‥‥」
俺は思いつく限り、あらゆる常態魔法を自分にかける事にした。
死んだら即蘇生、傷を負ったら即治癒、肉体の老化成長をストップ、あらゆる状態異常耐性、各種レジスト、物理攻撃、魔法攻撃へのマジックプロテクション、水中呼吸、過剰な気圧水圧の無効化、魔法無効の無効化、自分の力を悟られないよう隠蔽魔法、索敵魔法、思考も8個まで増やし、認識阻害や透明化、飛翔などが瞬時に発動できるようにもした。
トイレに行くのが面倒なので、自動で排泄し排泄物は深海へと送る魔法も付けてみた。
視野も全方位、千里眼や邪眼も付与できた。
マジックソードというゲームは、あらゆる魔法を創造できる世界が舞台だったので、思いつけば色々とできるようだった。
尤も、それができるのは俺がチートステータスだからであろうが、できない事もあった。
この世界の詳細を瞬時に知ろうとしたが、それはできなかった。
結局200以上の魔法を自分にかけていた。
常に魔力を必要とする魔法によって、とりあえず魔力量は8割ほどに抑えられていた。
「しかし、たかが2割減らした所で、星の消滅が星の粉砕に変わる程度のレベルだ。これではまだまともに魔法を放つ事もできない」
俺は考えた。
他に魔力を抑える方法はないかと‥‥
「そうだ。もっと若くなったらどうだろうか。どうやら今の俺は18歳、魔力が最大に達する年齢だ。つまり若い体にすれば魔力が減らせるはずだ」
俺は若返る魔法で、12歳へと変化してみた。
「おっ!結構魔力が減らせているぞ!よし、出来る限り減らすなら‥‥」
俺は一気に6歳の体へと変化してみた。
「おお!!かなり減らせたみたいだ。これなら星は破壊しなくて済みそうだ」
6歳にまで小さくなる事で、俺はなんとか魔法を使えるレベルまで自分の力を抑える事に成功した。
「しかし、これでもまだヤバいよな」
例えばこのままギルドに行くとする。
小さな子供が仕事をするとして、きっといちゃもんを付けてくるヤツがいるはずだ。
こういう異世界ものの定番だ。
その時軽くあしらってやるつもりでファイヤボールをうっかり放ってしまったら、その相手を殺すどころか、ギルドの建物すらフッ飛ばしてしまうだろう。
「さて、他に魔力を減らす方法はないだろうか‥‥」
思いついた。
ゴーレムだ。
常にコントロールするゴーレムを作り、そのゴーレムに魔力を分けてやればいい。
俺は早速魔法でゴーレムを作る事にした。
素材や何かは、ゲームをしていた頃の持ち物を全て異次元アイテムボックスに入れてあるので大丈夫だ。
「どうせ作るのなら、可愛い女の子がいいな」
俺は好みの女の子を想像しながら、ゴーレムを創造していった。
「できた。メチャメチャ可愛くていいできだ」
しかしよくよく考えたら、こんなに可愛い女の子を自分で動かして自分で喋らせるのもおかしな話だ。
それに1体だけ作った所で、魔力を理想量まで減らす事はできない。
「さてどうしたものか‥‥」
少し考えて俺はひらめいた。
この世界には妖精が存在する。
妖精は世界の表と裏、直ぐそこに存在するが認識できない世界の住人だ。
この妖精を憑依させて動かしてもらえれば、このゴーレムは人間となんら変わらない存在にできるのではないだろうか。
ならば人型のゴーレムを沢山作って魔力を分け与え、妖精たちに憑依してもらえれば、強力な仲間を一気に作る事もできる。
「とりあえず住む場所も欲しいし、そこで世話をしてくれる執事やメイドを妖精ゴーレムに任せられたら、メッチャ良い感じじゃね?」
俺は嬉しくなって、執事ゴーレム、メイド長ゴーレム、メイドゴーレム4体を一気に作った。
「よし!後は妖精だが‥‥」
此処で一つ問題に気が付いた。
そもそも妖精を捕まえて『世話係をやってくれ』と言っても、普通やってはくれないはずだ。
何か交換条件というか、妖精にとってもメリットがないと難しいだろう。
もちろん妖精を捕まえ、眷属にして召喚し言う事を聞かせるという手もあるが、なんとなく気が引ける。
「何か妖精側にもメリットを与えられないだろうか‥‥」
そこで思い出した。
このゲームのクエストの一つに、妖精救出というのがあった。
妖精狩りをしている人間をやっつけて、妖精を開放するのだ。
そこで得られるのは妖精の加護。
妖精は『妖精の森』という場所にいるのだが、その森での活動が色々とやりやすくなるようになる。
もしかしたら妖精を助ける事で、こちらの願いを聞いてもらえるかもしれない。
俺は早速作ったゴーレムを異次元アイテムボックスへと収納し、妖精の森へと向かう事にした。
ちなみに妖精の森は、我がギルドの砦があった場所のすぐ近くである。
むしろ我がギルドの砦は、妖精の森の中にあると言ってもいいくらいだ。
森の北側には断崖絶壁の岩山があるのだが、森と山の間に小さな荒野が広がり、そこに砦はあった。
砦に行くには山沿いの道を進むようになっていて、普通はその道を通って砦に行く事になる。
我が砦を攻めようとするなら、その道を行くのが普通だ。
しかし森の中を通って行く事もできるわけで、その時この妖精クエストをクリアしていたら、簡単に森を抜けられるという事になる。
もちろん今更このクエストをクリアして砦を攻めようというプレイヤーはいないんだけどね。
ギルド戦は終わり、砦はもうそこにはないわけだし。
そもそもこの世界がそういった状況を引き継いでいるのかどうかも分からない。
ギルドはそもそもゲームを続けていたら無くなるものでもなかったからね。
転生した時から、この世界は別路線へと進み始めているのかもしれない。
俺は妖精の森へと来ていた。
都合よく妖精狩りをしている人間を見つけられるかどうかは分からなかったが、森を探索する魔法はすぐにその存在をとらえた。
俺はその場所へと向かった。
見つけた時は、既に妖精を捕まえて帰る所のようだった。
妖精の捕まえ方は簡単だ。
魔法の檻を置いて、そこに誘い込んだり追い込んだりして捕まえる。
普段は存在していない妖精も、檻の中に入ればこちらの世界で実体化する。
と言っても妖精がこちらに干渉する事はできないよう檻には魔法がかけられているけどね。
それを鳥を飼うように手に入れたい者も多い、というゲーム設定だ。
当然この世界でもそういう事になっていると思われる。
馬車の中には、沢山の檻というか鳥かごのようなものがあり、その中には沢山の妖精の姿が見えた。
さてしかし、助けるにしてもこのまま人間との戦闘に入ってうっかり魔法でも放ってしまったら、この辺り結構ヤバい事になるのは明らかだ。
俺は近くにある小石を集め、異次元アイテムボックスに収納した。
これを一つずつ取り出し、親指ではじいて攻撃する事にした。
おそらく手加減してはじけば、拳銃の玉程度の威力ではじき出す事が可能だろう。
或いはもっと弱い威力も可能そうだ。
俺は念のために、木の陰から妖精を捕まえて帰ろうとする人たちの足へ向けて小石を飛ばした。
思った通り、拳銃の玉程度の威力の小石が足を撃ちぬいていた。
人間は3人。
全員がその場に倒れた。
さてこの後どうしようか。
子供の姿の俺が出て行って顔を見られるのもなんか嫌だし、とりあえず目の部分だけマスクをしていく事にした。
「なんだてめぇ!」
「ガキか?」
「何しやがる!」
そんな事を言っていたようだが、俺は無視して素早く3人の手を後ろでに縛って木に括り付けた。
一応血を止める為の処置もしておいてやった。
捕まえた奴らはその後も何か言っていたが、無視しておいた。
素早く馬車を持ち上げ、その場を離れた。
少し離れた所で、俺は馬車の中へと入った。
全部で20匹?ほどの妖精が捕まっていた。
「助けにきたよ」
「人間が助けてくれるのか?」
男の妖精だった。
「ああ。で、その前に少し話をしたいんだけどいい?」
俺はマスクをしたままだが笑顔を作った。
「うむ。かまわない」
そう言ってくれたその男の妖精に、俺は俺の要望を伝えた。
人型のゴーレムを作ったので、これに憑依し、俺が作る家で働いてくれないかという話だ。
「その家というのは何処にあるのだ?」
「えっと、これから建てる。森の奥に荒野があるでしょ?あそこに建てるつもりだよ」
「ふむ。そのゴーレム、憑依して自在に人間界で活動できるというのは、我々にとっても魅力的だ。何故なら、この森で妖精を捕まえる人間どもを追っ払う事もできるからな」
なるほど。
俺が人型ゴーレムを妖精たちに与えてやれば、自力で妖精や森を守る事ができるようになるわけか。
そもそも干渉し合えないから妖精たちは何もできないが、同じフィールドに立てれば、大きな魔力を持っている妖精たちは並の人間には負けず自力で身を守れるわけだ。
「なんなら好きなだけゴーレムを作ってあげてもいいよ。妖精型のものも作れる。それで妖精の町を作ってこちら側の世界で暮らすのもいいだろう。その代わり誰か7人は、俺の元で働くってのはどうだ?」
「ふむ。我ら家族の6人が世話係をしよう。後1人は‥‥約束はできないが‥‥」
そこまで男の妖精が話した所で、別の妖精が声を上げた。
「私もいいよー!」
小さくて可愛い妖精だった。
「じゃあ決まりだな」
俺は既に作ってある7体のゴーレムを異次元アイテムボックスから取り出した。
丁度男性が1人、女性が6人だった。
憑依は上手く行った。
「じゃあ一応名前を付けさせてもらっていいか?妖精の名前でなく、俺が覚えやすい方がいいからね」
「分かった」
俺は男の妖精が憑依した執事をセバスチャン、メイド長をツキ、メイドをそれぞれヒナタ、ヒカゲ、アサヒ、ユウヒ、最初に作った可愛い子をアマテラスと名付けた。
ゴーレムにはそれぞれ、私の魔力を分け与えた。
なるべく自分の魔力を減らしたい事もあり、結構な魔力を分け与えた。
そしたら全員ドラゴンにも負けない魔力を秘めた妖精人間になってしまった。
セバスチャンに至っては、大魔王クラス以上かもしれない。
ツキとアマテラスも近いレベルだ。
これだけ強ければ、何が有っても森や仲間は守られるだろう。
でもこのメンバーは、私の家というか屋敷を守る為、世話をする為のメンバーだ。
アマテラスに関しては、一緒に冒険に出る仲間にしようかと考えているが、何にしても無駄に強い。
そもそも妖精は高い魔力を持っているわけで、魔力を与える必要も無かったかもしれない。
何にせよ、俺は全ての妖精を開放した後、7人を連れて森の奥の荒野へと向かった。
荒野に着くと、俺は素早く魔法で屋敷を建てた。
4階建ての屋敷で、地下もある。
それを大きく柵で囲って、自分の瞬間移動魔法以外では門からしか入れないよう結界も張った。
「4階は俺と仲間たちの居住スペース、1階は食堂や台所、風呂や応接間などね。2階と3階にある部屋はそれぞれ好きに使ってくれていい」
「凄い‥‥このゴーレムもそうだが、人間とはこれほどの事ができるものなのか‥‥」
セバスチャンも他の者も皆驚いていた。
なんせチートだからね。
これが人間と思われても困るわけだけど。
「いやいや、俺が特別なだけで人間は本来妖精よりも魔力は弱いよ。それじゃ約束のゴーレムだけど、何体くらい必要だ?この森全ての妖精分でも良いよ」
「そこまでしてもらえるのか?だったら頼んでいいか?」
「OK!ついでにこの場所、まだまだ土地は余っているし、妖精の町にしてしまうか?壁で囲って、妖精王の王城でも立てて、妖精王国にするとか」
「この場所は森の外だから、我々の管轄外だし、とりあえずそんな事ができるのなら見せてもらいたいが‥‥」
そんなわけで、俺はセバスチャンの望むがまま、人間界で暮らしたい妖精総勢約1000人分のゴーレムを作り、町としての基盤となる城や壁、宿泊施設やギルド施設的なものも造った。
流石にそれだけを行うには時間もかかり、昼過ぎから始めた作業が終わった時には、既に陽は沈んでいた。
町の体制を簡単に説明しておこう。
まず、妖精王と妃、姫の3人が城に住む。
適当に世話係にもメイド型の人型を作った。
王、妃、姫のゴーレムには、それぞれ魔力を分け与えた。
城の庭の隅には『スター誕生』の文字が書いてあり、此処が元ギルド砦の入り口があった場所だ。
城に住む者には、ここに瞬間移動してくる者がいたらすぐに報告してほしい旨伝えてある。
他にも森や町の治安を守る部隊の長や、近衛兵長用ゴーレムにも魔力を与えた。
流石にそれだけ魔力を与えれば、俺自身の魔力量も理想のところまで減らす事ができた。
最初は神が100柱でも、いやむしろどれだけ襲って来ても負ける気がしなかったわけだが、今ではせいぜい10柱くらいしか相手にできないくらいにまでは収まってきた。
魔法も最低レベルまで魔力を抑えられるようになった。
ようやくこの世界で普通に生きていけるレベルに近づいてきたと言えるだろう。
「これでようやくこの世界で普通に活動できそうだ」
沈みそうな月を見ながら、俺は屋敷の窓から外を眺めつつ落ち着いた気持ちて色々とこれからの事を考えていた。
ちなみに、その日は忘れていたけど、次の日アマテラスと共に近くの町のギルドへ行き、木に縛り付けた奴らの事を報告しておいた。
誰か知らない人が捕らえている所を見たって話でね。
妖精狩りは一応『災いが降りかかる』とかで禁止されているから、その者たちは無事にお縄につきましたとさ。