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二度目の転生は砂の冒険者~ステータスがチート過ぎてヤバい~  作者: 秋華(秋山 華道)
本編知里ちゃんと共に
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二人目の転生者は万能魔法使い

二度目の転生で、俺がこの世界へ来てから1年が経った。

色々と無駄な苦労もしてきたが、ようやく落ち着いた日々が送れるようになってきた。

勇者が魔王討伐を果たし、この大陸を統べるルシフェル帝国が安定して、世界は平和になったのだ。

まあ本当の事を言えば、魔王を討伐したのは当時のルシフェル皇帝だったし、その後世界は一瞬混乱もした。

でもなんとかかんとか乗り切って、俺の懸念は一応収まったと言えるだろう。

これでようやく当初の目的としていた事に取り掛かれる。

俺と同じように転生してきた者がいないのか探す事。

この世界をより住み良く変えていく事。

後は世話になっている妖精の為に、囚われの妖精を開放していく事。

ただ、この1年この大陸を飛び回ったけれど、他に転生した知り合いに出会う事はなかった。

だからもう転生仲間を探すミッションは、積極的に行っても無意味に思う。

となると次は『住み良い世界にする』事だ。

主に食べ物とか娯楽系をなんとかしたいと考えている。

アベルが勇者になり、その後この大陸の皇帝になったのだから、世界はゆっくりといい方向に進むはずなのだ。

一応勇者だし、アマテラスも『良いヤツだよー!』って言ってたからね。

そんなわけで、統治に関しては心配がなくなったのだ。

となると次は社会ではなく文化だ。

そっち方面で楽しい事をこの世界に広めていきたいと思うわけで。

そういうアニメも最近多いよね。

でも俺、そっち系の知識がまるでないからかなり難関ミッションになりそうだけど、時間は割と無限にあるから、気長にやって行こうと思う。

醤油とか味噌とか、それくらいは作れる知識が欲しかった所だけれど。

そんな事を考えながら、魔王討伐から1ヶ月ほどゴロゴロしていた俺は、とりあえず冒険の旅に出る事に決めた。

行先は決めていない。

とりあえず今度は、急ぎ足ではなくじっくりこの大陸を旅してみよう。

そう思って俺は準備をした。


準備も整い、いよいよ出発しようとした時の事だった。

今や家族同然となっている妖精人間の一人、一応執事という肩書の『セバスチャン』に声をかけられた。

「どうかしたのか?」

「ああ。魔王城から、他の大陸に行く事ができる魔法転送装置が発見されたらしいぞ」

なるほどね。

この世界は一応、転生前にプレイしていた『マジックソード』というMMORPGの世界と深くつながっている。

魔王が現れる事は、転生前の情報から予想できたのだ。

だから関係を否定する事はできない。

つまりだ。

そのゲームではそろそろ新マップの追加が予定されていたわけで、別の大陸の出現は想定の範囲内というわけだ。

「そっか。じゃあ次の冒険はその大陸だな」

「冒険者がギルド経由で依頼を受け、その新大陸に渡った者が結構いるようだが、まだ誰も帰ってこられてはいないらしいぞ」

「ふむ‥‥」

俺には瞬間移動魔法もあるし、おそらく帰ってくる事はできるだろう。

仮にそう簡単に帰っては来れないにしても、俺のチート能力なら生きていく事はできるはずだ。

「あれ?戻ってこられないのに、なんで別の大陸だって分かるんだ?」

「ギルド水晶による通信で情報をやり取りできているらしい」

それなら瞬間移動魔法で戻ってくる事は可能そうだな。

「それで向こうへ行った者が、海の向こうに魔王城が見えると伝えてきた」

「割と近いんだな!」

思わずツッコミをいれてしまった。

この大陸は、当然海に囲まれている。

しかし海はある程度沖に出ると、白い霧に包まれていてそれ以上進めなくなる。

挑戦した者が過去に大勢いたらしいが、霧に入った者は誰も戻ってこなかったらしい。

だから霧がかかる海に出る者は、今では誰もいないという話だ。

「魔王城は魔王の山の頂上にあって、この大陸の西の端にある。その西の海から霧が消え、こちら側からもその大陸が確認できたみたいだぞ」

それを先にいってよセバスチャン。

「だったら何も問題はないな。よし!行ってくる!」

俺はセバスチャンにそう言うと、瞬間移動で魔王城へ移動した。

上空に上がると、西の方角に確かに大陸が見えた。

「さて、魔法転送装置を使わせては‥‥もらえないか。しかし飛翔して渡るのもリスクゼロとは言えないし‥‥」

俺は2秒ほど考えた。

すると俺の頭に魔法通信が入ってきた。

「タツヤ?スター誕生の場所に瞬間移動魔法でやってきた人がいるよー」

その声は妖精姫だった。

妖精の城は、ゲームをしていた頃俺達のギルド砦があった場所に建てた。

俺がこちらに転生してきた時、瞬間移動魔法で真っ先に訪れた場所でもある。

もしも仲間たちが転生してきているとしたら、おそらくここを訪れる者がいると考え、俺はその場に『スター誕生』と書いておいたのだ。

ちなみに『スター』とは、俺のゲームキャラクター名である。

今でもギルドカードにはこの名前が記されているわけで、本当の名前を問われたら、俺は『スター』と答えなければならないのだ。

少し恥ずかしいのでもっとマシな名前にしておけば良かったと思わなくもないが、昔から使っている名前で愛着もあるし、変えられずにいた。

そんな話は今はどうでも良かった。

妖精たちには、此処に誰かが瞬間移動魔法でやってきた者がいた時、とにかく最速で連絡が欲しいと頼んでおいたのだ。

行かねばならない。

俺は瞬間移動魔法でその場所へ移動した。

するとそこには、まぎれもなく仲間の一人が立っていた。

「知里ちゃん!あっ!俺達也ね!」

俺は見た目が6歳だし仮面もしているから、頬の辺りを指でカリカリしながら一応名前を名乗った。

知里ちゃんはすぐに分かった。

ゲームのアバターと同じ、若かりし日の知里ちゃんと同じ見た目だから。

「お兄ちゃん!」

知里ちゃんは俺が小さいのも関係なく、俺にタックルするように抱き着いてきた。

俺は芝生に押し倒されるような形になった。

「久しぶりだね」

俺は知里ちゃんの頭を撫でた。

ちなみに知里ちゃんが俺の事を『お兄ちゃん』と言ったが、実の妹ではない。

お兄ちゃんみたいな存在という事で、ある時から俺をそう呼ぶようになっていた。

尤も最近は会社の仲間であるから、『社長』とか『達也』とか、偶に『たっちゃん』とか色々と呼ばれている。

ただ二人の時や、仲の良いメンバーが集まる中では決まって『お兄ちゃん』だった。

知里ちゃんは少し泣いているようで、俺の胸に顔をうずめたままだった。

「お兄ちゃん、死んだと思っていたよ」

「えっ?どういう事?」

そういえば一度目の転生をした時は、元の自分は死んだ事になっていた。

死体は見つからなかったんだけどね。

「ギルド対抗バトル覚えてる?」

「ああ。それで優勝を決めた時、俺はなにか分からないけど光に包まれたんだ」

一度目の転生の時もそうだった。

いきなり光に包まれた。

「そうだったんだ。何が起こったのか分からないんだけど、あの時社長室が爆発したらしいよ」

「なんだか一回目の転生をした時と似ているかもな‥‥って、知里ちゃんはその時転生したんじゃないの?」

仲間も一緒に転生している可能性は考えていた。

しかしそれは同じ時、あのギルド対抗バトルで優勝を決めた瞬間だと思っていた。

「うん。私が転生してきたのは、魔王討伐イベントで魔王を倒した瞬間だよ。私が倒したんだ」

そういう知里ちゃんの声は、少し嬉しそうにも聞こえた。

これはもしかしたら、イベントクリアを決めた者が転生するパターンだろうか。

もしそうなら、他に転生してきている者はいないはずだ。

或いは過去に全く知らない誰かが転生してきている可能性はある。

「夢とかカズミンとか今日子は現世にいたんだよね?」

「うん。ちゃんとお兄ちゃんのお葬式に来てたから‥‥」

また少し知里ちゃんの声が涙声になった。

「そっか‥‥」

それから俺達は、しばらく何も喋らずそのままの体制でいた。

それにしても、一緒に転生してきた者がいるかもしれないと思っていた頃には出会えず、多分自分だけなんだろうなと思ったらいきなりコレだ。

知里ちゃんには悪いけど、正直俺は嬉しかった。

自分一人だった世界が、そうではなくなったのだから。

気が付いたら知里ちゃんはそのままの体制で寝ていた。

顔を覗き込むと、出会った頃の知里ちゃんの顔だった。

現実は三十云歳の人妻なんだけど、俺にとっての知里ちゃんは、出会った頃のままだった。

「疲れてたみたいだな」

魔王討伐の時に転生してきたとしたら、1ヶ月ほどこちらの世界で一人でいた事になる。

俺みたいに二度目の転生じゃない。

初の転生だ。

辛かったに違いない。

俺は知里ちゃんが起きるまで芝生の上で知里ちゃんに押し倒されたままでいた。

「知里ちゃんはこの世界では大魔王クラスの万能魔法使いみたいだね」

知里ちゃんから伝わる魔力を感じながら、俺はそんな事を思った。

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