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SF  作者: 霞川悠
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第7話 圧倒的強さと、姑息な戦法と

誤解題名です。



父と初めて本気で戦ったとき、俺は初めて恐怖を味わった。

圧倒的強さと言う恐怖を。

小さい頃は全然本気で戦ってくれなかった父親。

そんな俺が12歳の頃、初めて父は俺に本気の一部を出した。

その恐怖が忘れられない。本当にあれは狼が首元に噛み付いてきた感じだ。

そうだ、まるで父親を相手にしているかのような圧倒的な威圧感が彼女にあった。

人間は恐怖で体が動けなくなるというが、それは事実だったようだ。


「若様…」


俺の隣で息絶え絶えのレンが俺を呼ぶ。


「逃げ…て…」


「くっ…」


俺は目の前の宮島先輩という名の鬼神を睨む。

睨んでどうにかなるものではない。だが、心が臆してしまえばそれまでである。


「与那国司。お前に訊きたいことがある」


「…訊きたいこと?」


しかし、宮島先輩の次の行動は、攻撃ではなく、会話であった。

まさかの行動に俺は少し拍子抜けをする。が、すぐに気を引き締める。


「最近放課後になると、妙な男子生徒達がうろうろしている。それは…お前の仕業か?」


「若様はそんなこと!!」


「お前は黙れ」


「…!!」


レンの体が震え上がった。レンでも恐怖は感じるらしい。


「与那国司!質問に答えろ」


「…俺じゃない。俺もそれが誰だか気になる」


「…そうか」


しかし、宮島先輩は俺達から視線を外さなかった。


「ならお前、その男子生徒達に襲われたことは無いか?」


「襲われる?!そいつらは参加者を襲うのか?!」


「…本当に知らないみたいだな。良かろう。行け」


「え?」


宮島先輩は俺達に帰れのサインを出した。

どういう風の吹き回し?というか俺達とは戦う気が無いのか?


「どうした?行かないのか?それとも私と戦うのか?」


「い、いや…どうして見逃してくれるのかな?って思ったので…」


俺は疑問に思ったことを口にした。

この人のことだ、俺達が帰っている間に、後ろから攻撃することも無いだろう。

というかこの人ならそんなことをせずとも勝てるか…


「お前らより優先すべき相手がいる。それだけだ」


「分かりました。若様。行きましょう」


「あ、ああ…」


俺とレンはその場から立ち去った。

残された彼女は一人、夜の闇に飲み込まれていった…






















命からがら逃げ延びた俺達は、道場に帰り、今日の復習をした。


「危なかったな、レン」


「はい」


レンが心底安心したような顔をした。

多分レンですらあのときは活路を見出せなかったのかもしれない。


「ですが、情報は得ました」


「あ、あのうろうろしている奴らのこと?」


「はい」


確か宮島先輩の話しによれば、その男子生徒達はやっぱりSF関係であったこと、そいつらが俺達を襲う可能性があるということ、つまりその中の何人かは参加者である可能性が非常に高い。

すると一つの結論に至る。


「何者かが裏で奴らを率いているかもしれない…そういうことか?」


「はい」


やっぱり…どこの誰だか知らないが、随分とすごい作戦を考えるものだ。

戦うにしても、ほとんどは一般生徒だから戦うことが出来ない。

面倒な連中である。


「そしてもう一つ。あの宮島先輩のエントリーナンバーは3番でした」


「お前、そこを見ていたのか?!」


「はい」


レンは俺と目をつけるところが違う。

きちんと情報を収集出来る。確かに、パートナーとしてなら心強いことこの上ない。


「なので、またおさらいしましょう」


3 宮島先輩

6 鎖使い(厳島真理恵)

17 司

20 レン

25 歯舞


「↑のようになるわけだな、今は」


「はい」


こうして見ると、まだ状況は全然分かっていない。

すでに脱落者がいるかもしれないし…


「やはり情報不足。しかし、あの新ルール…大変すぎますね」


「ああ」


俺達は1週間以内に誰かに勝ってバッジを手に入れなくてはならない。

これからは激戦になるだろう。


「ですが…」


「分かってる」


俺達はその中でも勝ちを見出さなくてはいけない。

それは絶対である。


「じゃあ俺は寝るけど…」


「あ、若様。私と添い寝したいときは言って下さい」


「い、いや別にいいから!」


「そうですか?」


こういうときに変なことを言うんじゃない!

レンはやっぱり常人とはネジが違う。

違いすぎる気がする。


「ではおやすみなさい」


「ああ…」


俺はそんなマイペースなレンに挨拶して寝ることにした。

明日も…早い。



















「よーし司!飯を食いに行こうぜ!」


「ジョージ…お前はいつも元気だな」


俺は昼休み、ジョージを連れて食堂に向かう。


「昨日は女子にフラれたショックで昼飯を食べられなかったが、今日は大丈夫だ!」


「…」


ジョージっていつも思うけど、変な奴だよな。

何でコイツと俺が友達なんだろ?


「げっ!」


そんなとき、ジョージが声を上げた。

どうやら食堂の様子についてのようだ。


「…今日も混み混みだな」


「昨日も混んでたのかよ?!」


「ああ」


このままじゃ埒が明かない。

早めに別れてみるか…


「ジョージ、別れて座るか?」


「えー。でもまあしょうがねぇか」


ジョージは少し不服そうに言いながらも、俺の提案を受け入れた。


「じゃあ帰りに合流だな」


俺達は食券を買って、並んだ。

ちなみに今日はきつねうどんである。

…俺は和食が大好きだ。特にうどんと餅。


「はい、きつねうどん」


「どうも」


俺は食堂のおばちゃんに挨拶し、空席を探す。


ドン


「おっと!」


「あ、ごめんなさい」


俺は横の人とぶつかってしまった。


「いえ、平気です」


「そうですか」


俺とぶつかった人はにこっと笑って立ち去った。

少女のような顔立ちなのに、男子の制服を着ていたのが印象的だった。


「ま、いいや」


そして俺は空席を見つけ座る。


「げ…」


「ん?…ああ!!」


幸か不幸か、俺の向かいに座っている奴は、あの鎖使い、厳島真理恵だった。


「何あんた、狙ってるの?」


「違うよ!たまたまこの席が空いたから座って…」


「どうだか」


「…」


何か俺に対して随分と刺々しくなったな…とは言いつつ結構しゃべっているけど。


「ふん…私達は敵同士よ。分かってるの?」


「いや、そうだけど…」


私生活の彼女は結構かわいいな、とか思っちゃったり。

ちょっとだけだぞ?あんなにおっかない出会い方したから余計にそう思うんだな…


「むかつくわね…ん?」


すると彼女は俺のうどんを凝視した。


「どうした?食べたいのか?」


「違うわよ!」


彼女は俺の方をキッと睨むが、すぐさまうどんに視線を戻す。

一体なんだ?彼女は何がしたいんだ?


「あの…そろそろ食べて良いか?」


「え…」


そういうと彼女は何か複雑な顔をした。

何かを言いたそうで言えないみたいな、そんな感じ。


「まあいいや。いただき…」


「待って!」


「へ?」


彼女は俺に食べさせてくれなかった。

もう腹減ってるんだけど…

俺は彼女を怪訝そうに見る。

まさか…俺に食わせない気なのでは?!…いや、彼女はそんな姑息なことはしなさそうだ。


「このうどんは私が食べていい?」


「は?やっぱりお前が食べたかったんじゃねえかよ。でもダメだ。俺は腹減ってるからな」


「待ちなさい!!」


「うおっ!!」


そして彼女はとうとう俺から箸を取り上げた。


「何するんだよ」


「も、もう一度うどんを頼みなさい。私がお金を出すから」


「いや、意味がよく…」


俺は混乱する。こいつはここまでして一体何がしたいんだ?


「いいから!このうどんはとにかく食べちゃダメ!」


「ええ?!」


彼女の理不尽な発言に俺は混乱するばかり。


「お願い!!いい?!」


「わ、分かったよ…」


俺が彼女の要求を呑むと、彼女は妙にホッとしていた。

何でだよ?俺にはさっぱり分からない。

で、俺は食券のきつねうどんを買い直し、もう一度頼みに行った。


「…」


彼女は俺がいなくなったことを確認すると、うどんの中に箸を突っ込んだ。

そして捕まえたのは一匹の小さな虫。


「…姑息な手段ね」


彼女はその虫を箸で潰した。




















オーダー後、「鎖使い」の前の席が空いていたので、また俺はそこに座る。

ちなみにうどんはもう無かった。


「あれ?うどんは?」


「人にあげた」


「はぁ?!」


俺には彼女の行動の意味が分からなかった。


「ていうか俺のことを待っててくれたの?」


そう、彼女の前にある皿は全て空である。つまり食後。


「な…そ、そんなわけないでしょ!食後の休みよ休み!単なる休み!そんなことも分からないの?!」


「え?あ、そうだったんだ。すまん…」


「ふん。分かればいいのよ!」


彼女は結局俺が食べ終わるまで目の前にいた。

…なんか監視されてるみたいだったな。つまり、俺のことを監視していたのか?

その後、ジョージとの約束も忘れ、二人で戻っていった。

珍しいものだ。




















―某所―


「戦いは以前より激化しています」


「そうか」


暗い部屋で男達が話している。


「特に…風紀委員長の宮島はかなりの強さです」


「ふ…強さだけで生き残れるほどSFは甘くない」


男達はクックッと笑い、喜んだ。

彼らは監視する存在。楽しいはずである。


「まあ現在優勢なのは宮島と…佐渡というところか…」


彼らは窓の外の月を見上げた。

満月になるにはあと少しぐらいの月が彼らを照らしていた…



戦いは未遂に終わりました。

まあ「まだ」これでいいですよね。



登場人物紹介


宮島(みやじま)麗華(れいか)


ペロポネソス学園の風紀委員長で、3年生。

身長は170センチで、長い髪を後ろで束ねている。

かなりの薙刀の使い手で、SF優勝候補。




次回は「習得せよ!与那国流第一奥義、神速!」

どうやら特訓編…というか説明編みたいのようですね。

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