第5話 学内の異変!そして謎の占い師!
登場人物が多いですね。
まあ当たり前ですね。
俺が道場で特訓している間、レンは学校で情報収集をしていた。
俺も行きたいのだが、今は我慢。
「司、お前はスクールなんちゃらに何で出ているかレンから聞いたか?」
「はい。俺には勝つ意志が薄いかららしいです」
「その通りだな。ところで寧々はどうした?」
「あー…」
最近寧々は俺の道場に来ない。こういうことは良くあるので、気にはしないんだけど。
「またいつものようにさぼってるんじゃないですか?」
「全く…だから強くなれんのだ…」
父はため息を吐く。しかし、わが父は寧々に甘いところがある。
俺だったら通常稽古をサボったら家を追い出されかねない。
「失礼します。あ、司ちゃん!」
「トモ姉…」
そのとき、トモ姉が道場にやって来た。
「おお。巴かどうした?」
「いえ、晩御飯作りにやってきちゃった〜」
「おお!!」
父が目をキラキラさせる。
アンタ達が料理作れないのが全て悪い。
俺は少し嘆息して、トモ姉に近づいた。
「それで、俺も手伝おうか?」
「ううん。司ちゃんは練習してていいよ。私がやっておくから」
「いや、別に大した練習じゃ…」
「何じゃと?」
し、しまった…!!また説教を食らう!
「司!!そこに座れ!!」
「は、はひぃぃぃ!!」
「…取り込み中みたいだから私は行くね」
トモ姉は俺を見捨てて道場を出た。
そしてそれと同時に父の説教タイムが始まった。…俺のバカ。
「いやぁ…みんなで食べるご飯は美味しいわねぇ…」
俺達はみんなで食事をしていた。
「ってオイ寧々!何で平然とウチでメシを食ってるんだ?!稽古もサボって!!」
「あー。細かいことは気にしない気にしない。あ、巴お姉ちゃん、これおいしいね」
「話聞け!」
寧々はトモ姉に話をふって俺との会話から逃げた。
こいつは本当に…
「若様。頬にご飯粒がついております」
「え?」
俺はレンに言われたので、頬を触ってみる。
だがしかし、よく分からなかった。
「もう…ジッとしていて下さい」
そういうとレンは俺の頬をペロリと一舐めした。
「!!」
俺はびっくりして硬直した。
「な、なななななななな何してんだよ?!」
「ご飯粒を取っただけですが」
「うう〜…」
俺は顔を赤らめながら俯く。こいつは本当に天然だ…
そしてその光景を顔を真っ赤にして寧々とトモ姉が見ている。
「見ました奥さん」
「ええ。本当にいやらしいですわね〜」
「コラそこ!俺は何も悪くない!」
俺はお箸で二人を指差した。
ペシン
しかしその手は横から誰かにはたかれた。
「コラ若様。箸で人を指してはいけません」
「あああ!俺がいけないのか?!この流れに乗れない俺が悪いのか?!」
俺達は久しぶりに楽しい食卓の時間を過ごせた。
最近はSFのおかげで切羽詰っていたからな。
今日は少し俺もはしゃいでしまったな…
少し自省しつつ、俺は楽しいひと時を過ごした。
夜中、俺は部屋でレンと二人っきりになった。
言っておくが、男女でも甘い雰囲気などこれっぽっちもない。
むしろ空気が張り詰めている。
「さて、今日の報告をいたします」
レンが真剣な顔で俺に言った。見たところ、怪我もしてないようで、戦いすらしていないかもしれない。
「ああ」
俺は真顔で頷いた。
「今日、私は戦っていないのですが、少し不自然なことを発見しました」
「不自然なこと?」
俺はレンの話に耳を傾ける。
「はい、放課後、バッジをつけていない男子生徒が校内を妙にうろついていました」
「バッジを付けていない生徒…つまり一般生徒か戦う意志のないSF参加者か」
「はい」
俺は少し考える。おかしい点といえばおかしいかもしれないが…
「それって何人くらいだ?」
「SF参加者よりも多いです」
「はぁ?!」
俺はつい大声をあげてしまった。レンの言ったことが正しければ、参加者じゃない奴らが学校をうろうろしていることになる。
俺にはその理由が分からなかった。そもそもSFで残っているのか?
「詳しくは分かりません。しかし、妙に物々しい雰囲気でした」
「そいつらは…何をしてるんだ?」
「さすがにそこまでは…しかし、SFと無関係では無いような気がします」
レンが芯の通った声で告げる。
「そうか…それで、参加者とかの情報なんだけど…」
「はい。鎖使いが誰だか分かりました」
「?!」
鎖使いといえば、俺が最初に対戦した相手で、とてつもなくおっかない女だ。
元々ウチの学校はマンモス校なので、同じ学年でも顔が分からないやつがいる。
ちなみに俺とレン、寧々、ジョージのクラスは5組で、全クラス合わせて20組ある。
「隣のクラス…4組の厳島真理恵という普段大人しめの女子生徒です」
厳島…真理恵…俺は心の中で呟いてみる。
残念だが分からない。それに大人しい?あれが?
「どうやら普段の生活では猫を被っているみたいですね」
「そういうことか?」
化け物みたいな奴がいっぱいいるとは聞いていたが、彼女もその一人か。
普段は大人しく目立たない女子生徒。だが、戦いになると…寒気がするな…
「他にも意外な奴が出ているかもな」
歯舞も意外と好戦的な性格だったり…やめよう。何もかも信じられなくなりそうだ。
俺は一度考えるのを止め、深呼吸をする。
「そうですね…」
レンが一度顔を伏せ、すぐに上げる。
どうかしたのか?
今の行動はレンらしくなかった。俺の前では目線を逸らすことなどせず、ただ見据えるのに。
「どうか…したのか?」
「いえ、少し疲れているようです。私はこれで寝かせていただきます。おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
レンは多少目を擦りながら立ち上がる。
「夜更かしはダメですからね」
「分かってる」
「…では、また明日」
「おう」
レンは少し含みを持たせながら去っていった。
あいつって結構母親みたいだよな…
俺は布団を被ってそんなことを考える。
そういえばあいつって親とかいないよな…どうかしたのだろうか…?
俺はそのまま眠りに落ちていった。
「与那国!」
「あ。種貸主将」
次の日、俺は学校で剣道部主将の種貸先輩に呼び止められた。
多分用事は一つだろう。
「お前、剣道部入らないか?」
「その勧誘はすでに74回目です」
「え?俺的には73だと…」
そうなのだ。俺は道場があるから剣道部には入っていない。
いや、入っていたという方が正しいか。
道場の師範代となってから、俺は道場稽古を毎日やらなくてはいけないために、部活を辞めざるをえなかった。
しかし、個人的には、剣道が出来ればどこでもいいので、悲観はしていない。
「あなたも数えてるんですか?」
「まあな」
…この人は変人だ。でも俺も結構変人だ…
「それで、ダメか?!大会出てくれるだけでもいいから!!」
「いや…それは…」
SFが忙しいだなんて言えないな…
俺はいつものようにはぐらかして去ることにする。
「まあ考えておきます」
「おい!まだ話は…」
俺は急いでその場から立ち去り、教室に帰る。
もういつものことだが、いい加減に諦めてほしいものだ。
俺はポケットに手を入れるが、その拍子に、ポケットの中の財布を落としてしまった。
「あ」
俺は拾おうとするが、先にそれに手を伸ばした人がいた。
「え?」
「はい」
そして俺に差し出す。
しかし、俺的にはその人の外見にびっくりした。
「あ、あの…」
「ああ。これ、キミのでしょ?」
「あ、はい…」
その人は金髪で蒼眼の外国人であった。こんな人いたっけな?
「受け取らないのカイ?」
「あ、ありがとうございます…」
俺はその外国人の男子生徒から財布を受け取った。
それにしてもこの人、日本語上手いな…ちょっとおかしいところはあるけど。
「どういたしましテ」
彼は微笑みながら俺の前から去った。
さすがはマンモス校。留学生とかもいるのかもしれない。
俺は再び歩みを進める。
しかし、俺は急にどこかに体が飛ばされる感覚を味わった。
「な、何だ…?」
そして俺が瞬きすると、周りの景色が変わっていた。
「え…?」
さっきまで俺は学校の廊下にいたはずなのだが、今は違う。
妙に薄暗い部屋の中に俺はいた。
明かりは蝋燭か?
「ようこそ」
「?!」
俺は後ろから聞こえた女性の声に振り向いた。
まさか人がいるとは…そして咄嗟に身構えた。
「ふふふ。別に警戒しなくていいわ」
「…」
そんなこと言われたら余計に警戒するでしょうよ。
「あなたはここに来るの初めてでしょう?」
「ここって…どこですか?」
「ここは悩み多きものが来ることが出来る場所」
「は?」
俺は目の前のミステリアスなフードとローブを装着している女性を見つめる。
何でこんな格好をしているのだろう?
「あなたに悩みはあるのかしら?」
何を言っているんだこの人は?
「ふふふ。私が誰だか分からないから怖いのかしら?」
俺はこの人の笑いに不思議と寒気はしなかった。
むしろ、悪い感じではないみたいだ。
「私はね、占い師。占い師ドレミというのよ」
そんな名前はおかしすぎる。多分偽名だろう。
「それ、本名じゃないですよね?」
「そうよ」
「…」
この人は何をしたいのだろう。
というか今、疑問が何一つとして解決していないことに気がついた。
ここにどうして、どうやって来たのかも不明である。
「えーと、俺はどうやってこんな場所に来たんですか?」
「言ったでしょ?ここは悩みがある者が来る場所だと」
そんな曖昧な答えで理解できるほど、俺は頭が良くない。
「…俺に悩みがある、と言いたいんですか?」
「そういうことよ」
女…ドレミがふふふと笑いながら告げる。
本当にミステリアスな人だ。
「でも俺に悩みなんて…」
「悩みがないのが悩み?フフフ…あなたは気がついていないのね」
「え?」
すると女が立ち上がり、俺の後方に指を指した。
俺はその指先を辿るように振り向いた。
「え?!」
そこにはいつの間にか扉があった。
全然俺は気がつかなかったぞ…
「今日は帰った方がいいわ。また来たいのならば、思い浮かべなさい。悩みと…私を。いつでも歓迎しているから」
ドレミはそれだけ言うと、席に座る。
「帰るならその扉から早く出るのよ。次のお客が入れないわ」
俺はその扉のノブに手を掛ける。
「あ、言い忘れていたわ。上に…気をつけなさい」
「え?上?」
俺は不思議に思いながらもその扉を開けた。
先は真っ白だ。本当に帰れるのか?と思いながら一歩を踏み出す。
すると…今までの景色が一新し、先ほどまで俺がいた廊下に変わっていた。
「…なんなんだ?」
俺は不思議に思いながら教室へと戻った。
その間に俺の頭上の蛍光灯が落っこちてきた。
何とか避けたものの、危なかった。
上に注意ってこういうことか?
ー某所ー
「戦いの経過は?」
「また一人脱落し、23人に減ったものの、依然として滞っている」
男達の低い声が狭い部屋に響いた。
まるで秘密組織のアジトみたいである。
「ただ…」
「どうした?」
「一人、すでに全員に仕掛けている人がいます」
「全員?」
男達の声に初めて感情が篭った。
それまでは事務的であったはずが、今は随分と感情を含んでいる。
「そうです。彼は…すでにゲームを支配していますよ」
「ふっ…楽しみだ」
男達は机上の資料に目を落とす。
その中に司の資料もあったのは言うまでもない。
登場人物紹介
厳島真理恵
司の隣のクラスの女子生徒。
普段は目立たず、大人しい生徒であるが、戦いになると豹変する。
鎖を武器にしており、一度に複数の鎖を操ることが可能。
結構強気で、好戦的な性格をしている。
身長は161センチくらいで、地味なヘアバンドをしている。ただ、SFのときは派手なヘアバンドをしている。
占い師ドレミ
ミステリアスなフードを被り、ローブを着ている怪しい女性。
司に意味深な言葉を残すが…