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SF  作者: 霞川悠
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第3話 司の初戦!恐ろしい鎖使い!

バトルスタートです。


しかしバトル描写は初めてなので、すごく不安であります…

もし、何かアドバイスがありましたら、教えてください。

「は〜〜〜〜い!みなさん注目〜〜〜〜!」


朝の全校朝礼で生徒会長が朝礼台で叫んでいた。


「分かっていると思いますが、今日からSF始まりま〜〜〜す!というか始まっちゃってま〜〜〜す!!」


一応開始時刻は今日の0時から。つまり今より9時間前からスタートしている。

そんな時間に学校来る奴なんているのだろうか。


「とりあえず、参加者の皆さんは、頑張ってね〜〜〜!」


生徒会長は笑顔でそれを告げ、段を降りた。

妙に軽やかなステップで、壇を降り、彼女はトテトテと生徒会のみんながいる場所に戻っていった。


「始まったんだな…」


残念ながら俺にそんな実感は湧かない。

一応木刀を竹刀入れに入れて持ってきているものの、使うのかどうかすら不明。

それに、剣を向けるのは武器を持っている相手のみ。

さすがに武器を持たぬ者に刃を向けることは出来ない。

これは父の教えの一つでもある。


「若様。これからは私と一緒に行動してください」


「…そうなるよな」


どうやら口うるさいレンと一緒にいなければならないらしいな。

まあ一人になれば狙われてしまうだろう。


「お願いしますよ」


「ああ」


俺は念入りに聞かれた質問も適当に流してしまった。

まあなるようになるだろ…

俺はポケットの中のバッジをぎゅっと握り締めた。

しかし痛かったので、すぐにポケットから手を抜いた。














そんな朝礼は終わり、いつもと同じ日常が始まった。

何かSFのことなど誰も気にしていないし、俺には戸惑いばかりだ。

寧々もトモ姉もジョージもいつも通りなのだ。


「よっ!司!メシ食いに行こうぜぇ!」


「そうだな…」


俺はジョージに連れられ、外に出た。


「お待ちください若様」


しかし、俺はレンに服の袖を掴まれた。


「何だ?」


「若様、今日は私とお昼を食べる約束をしていました」


「え?」


そんなことあったかな?

俺は記憶の中を漁り始める。

しかし一向に思い浮かばない。


「なあそんな約束…」


「していました。お忘れですか?」


「何だ、お前レンちゃんと約束してたのかよ〜。それなら早く言えって」


「…」


ジョージが俺から離れていく。

というか本当にそんな約束してたっけか?


「では若様、食堂に行きましょう」


「ジョージと行くところ一緒かよ!」


まあここで「私が作った弁当です。どうぞお召し上がりください」なんて言われるよりはマシだ。

これは命に関わる致命的な問題になりかねん。


「では参りましょう」


「…」


俺は結局レンに引っ張られて食堂へと連れて行かれた。

そして俺は最後まで「約束」を思い出せなかったのであった。














いつもと同じ帰りの風景。

クラスの奴らみんなもいつもどおり騒がしくおしゃべりなんかしている。


「…」


幼馴染の寧々も、悪友のジョージも、みんな意識していないようだった。

それとも俺が意識しすぎなのであろうか。

くだらない、くだらないと言っておきながら、結局一番気にしているじゃないか。

俺は少し深呼吸して、周りに溶け込むことにした。


「礼」


「さようならー」


そのうちクラス委員の号令でみんな帰っていく。

これもいつも通り。このクラスでの参加者は俺とレンだけなのだろうか。


「あれ?司、帰らないの?」


「あ、俺はちょっと先生に用事が…」


「ふーん。じゃ、私は帰るから」


寧々は俺とレンに手を振った。

まあ非参加者は巻き添えを食らわないうちに早く帰りたいところだろう。


「ああ。じゃあな。また明日」


「では気をつけてお帰りください、寧々様」


「あーはいはい」


寧々はうっとうしそうにしつつも、笑顔で帰っていった。

そして教室には俺とレンだけになった。


「…周りから人気が消えました」


「そうか」


レンはこれで話せる、みたいな風な口調だった。


「なあ、本当に残るのか?」


「はい、もし校門で待ち伏せされたら困りますからね」


レンは一度帰り、もう1度登校してくるところを狙われる可能性があると言っているようだ。

さすがにそこまでする奴は…いない気がするけど。

でもレンがうるさいから口には出さない。


「それで…どうするんだよ」


「まずは様子見です。この教室は隠れ家にも、基地にもなります」


「そうかそうか」


「?!」


そのとき、レンの顔つきが変わった。


「どうした?」


「しっ!誰か来ます」


俺の質問を速攻で打ち切り、扉に目をやるレン。

こいつの気配察知能力は尋常じゃない。

俺だってそこそこ優れている方だと思うが、レンは俺の3倍以上優れている。


「敵か?」


「分かりません…」


そして俺にも気配が伝わる。距離はこの教室まで60メートルほどの場所。

レンは気配が下の階にいるときから気づいていたので、やはり恐ろしい。

そして足音はどんどんと近づいてくる。

俺達は扉の方を向いて身構える。

そうして足音は…俺達のいる教室の前で止まった。


「?!」


俺達は身を固くする。


ガラガラ


「?」


しかし扉は平然と開けられ、立っていたのは単なるクラスメートだった。


「あれ?与那国君と西表さん。まだ帰ってなかったの?」


「あ、ああ…何だ歯舞はぼまいか…」


俺は安堵した。コイツは歯舞といい、気弱な性格のため、争いには向かない。

そして、同じ学年に双子の兄がいる。こっちは結構気性が荒いらしい。


「お前は何で戻ってきたんだ?」


「ちょっと忘れ物をね」


歯舞は自らの机の中を見る。

ちなみにグッチャグッチャだ。


「あった〜。これで今日の宿題はなんとかなりそうだよ〜」


歯舞は随分無防備だ。正直構えている必要は無い。

しかし、レンは構えを解こうとしなかった。


「歯舞様。SFのバッジが落ちているようですが」


「ええ?!どこに?!」


「!」


「引っ掛かりましたね」


「あ!」


歯舞の顔が青ざめる。

それもそのはず、レンのカマ掛けに歯舞は引っ掛かり、俺達に敵と認識されてしまった。


「歯舞様、あなたにうらみはありませんが…」


「ちょ!ちょっと待ってよ!僕は君たちと争いに来たわけじゃ…」


「信用できません」


歯舞は心から困っているようだ。

まあ俺としてはどうしてこんな気弱な奴がSFに参加しているのかと思った。


「わ、わかった!僕のバッジを1枚上げるから許してくれよ〜!」


歯舞はあろうことか、自分のバッジをレンに投げつけた。


「それで勘弁してください!」


「?!」


俺とレンが仰天した。

まさか自分から不利になるとは…


「本当に忘れ物だけなんです…」


「レン…」


歯舞が困った顔をしたので、俺はレンを見た。


「…分かりました。若様がそう言うなら」


「じゃあな。次は多分やられるぞ」


「はい…肝に銘じておきます」


歯舞は心底安堵した表情になった。

それにしてもまさかこいつが参加していたとは。

歯舞が出て行き、俺はレンからバッジを見せてもらう。


「25番…」


どうやら歯舞は25番の参加者らしい。


「でもどうしてアイツが…」


俺は疑問に思う。どうしてあんな気弱な奴が参加しているのだろう。

やっぱりおもしろ半分か?


「分かりません。何か事情があるのかもしれません」


「…そうかもな」


俺達は一応安堵して、気配が消えるのを待ってから、構えを解いた。


「レン、一応これは初勝利なのか?」


「…そのようですね」


レンはあんまり納得していないらしい。

まあ最初の戦いがこれでは不満にもなるかもしれない。レンには。


「じゃ、俺はちょっと出てくるわ」


「え?!待ってください!一緒にいるという約束は?!」


レンが俺に詰め寄ってくる。

しかし、俺にとっては少し困ったことだ。


「いやさ、トイレなんだよね…」


「そ、そうですか…」


レンは珍しく照れたように顔を赤らめる。

さすがのレンも、トイレまでは着いてこないらしい。

しかし、こういう風に照れるレンを見るのは珍しいな。


「何ずっと見ているんですか?」


「いや、何でもないよ」


しかし、すぐにいつものクールな表情のレンになった。

俺は軽くそれに答え、廊下に出て近くのトイレに向かおうとする。


「ふ〜」


俺は体を楽にする。正直俺は気が抜けていた。

この戦いを甘く見ていたのだと思う。いくら木刀を肌身離さず持っていたとしても。

俺はトイレを済ませ、外に出ようとしたとき、後ろから風が吹いた。


「?!」


俺は急いで横に跳ぶ。この風は自然に吹く風ではない。

いわゆる殺気というものが吹かす、不自然な風。

案の定俺がさっきまでいた場所には鎖が刺さっていた。正確に言えば、鎖の先に付けられている刃が床に刺さっていた。


「な?!」


誰だか知らないが、俺を確実に仕留める気でいた…


「今のを避けるなんて、思ったよりやるわね」


女の声が聞こえてきたのは外から、いや、上の階からか。

レンに気配を気づかせないところを見ると、相当な手練だ。

まさか宮島先輩であろうか?

いや、宮島先輩は薙刀を得意としている。こんな鎖なんて使わない。


「おい!お前は誰だ?!」


「随分と威勢がいいわね。それ!」


「何だと?!」


俺にはまだ敵の姿が見えない。しかし、鎖だけは窓から、俺の方へと飛んでくる。

何て慣れた戦い方だ…こんな奴がウチの学校にいるのか?!

俺は飛んでくる鎖を木刀で防いだり、ステップで避けているが、このままでは埒が明かない。

元々こんなところにずっといたら俺が不利だ。

俺は外へ逃げようとするが…


「無駄よ」


「と、扉が…」


いつの間に扉は鎖で固められ、しっかりと固定されていた。

つまり、逃げ道は完全になくなった。


「あなた、このSFを遊び半分に参加してた口でしょ?」


「何…?」


顔は見えないが、口調はすごく冷たかった。


「このSFを舐めてかかったら…死ぬわよ。私のように本気で参加している人はたくさんいるわ。今日の早朝に分かったけど」


「そ、そんなに…?!」


俺は甘く見ていた。この戦いに本気で参加している奴がいたなんて…

いや、レンがそうだ。何で俺は油断していた?!

俺は自分の甘さを後悔した。


「そうよ。さあ冥土の土産に教えてあげたんだから、ここで死になさい!」


「いや、殺すのはダメじゃ…」


しかし鎖は俺の心臓を直接狙ってきていた。

俺は木刀で、何とか鎖をはじく。


「くっ…」


「中々しぶといわね…」


向こうの声に苛立ちが出てきた。

そりゃあ俺だって一応、与那国道場の師範代だ。

それなりの反射神経はある。特に剣道は反射神経が重要な武道だ。

そして俺は冷静になって考える。今、逃げ道は扉だけだと思ったが、そうではないことに気づく。

俺はあいつの鎖が飛んでくる方向を見た。

そこには日が沈みそうな、夕焼けの景色が広がっていた。

そうだ。「窓」からも逃げられるのだ。

しかし、ここは5階であり、逃げるのは至難の業。

だが…


「一か八か…!」


俺は窓に向かって駆け出す。


「え?」


どうやって俺の動きを察知していたかは分からないが、多分アイツは鎖を撃ってくる。

それを何とか防げば…!


「うりぁぁぁ!!!」


俺が叫び声を挙げて窓枠に足を掛けるのと、鎖が向かってくるのは同時だった。


「そんな…(ここは5階よ…怪我したらどうするの?!)」


俺は飛んでくる鎖を木刀のつばで捌く。

これさえ防げば何とかなるだろう。


「くっ…また…(コイツ…意外と強い…?!)」


俺はそのまま地面へと落ちていく。

普通の人間なら骨折は免れない。しかし残念ながら俺は普通の人間ではない。

俺は木刀を空中でプロペラのように超回転させ、浮力を多少作り、落下速度を弱める。

さらに、落ちる瞬間、地面に木刀を刺し、その上に見事着地をした。


「くっ…」


さすがに衝撃全ては和らげないが、足と右腕が痺れるだけで済んだ。


「そんな…?!」


俺が6階を見上げる。すると、俺のことを見下ろして驚いている女がいた。

あいつが鎖使いか。随分と綺麗な顔立ちだが、おっかない女だ。


「くっ!」


彼女も鎖を裏庭の木に打ち付け、その鎖をターザンロープのようにして俺の前にやってきた。

まさかやって来るとは思わず、少し動揺する。


「アンタ、中々やるようね」


「お前もな」


正直言って鎖使いなんて者とは戦ったことがないため、どう戦えば分からないのが現状である。

だって相手は常に竹刀や木刀を持っていたから。


「でも裏庭に逃げたのは失敗ね…」


「何だと?」


俺が驚きの声を上げたと同時に、俺の周りから何本もの鎖が飛んできた。

どうやらこの地面を踏んだときに発動するものらしい。


「え?!」


「悪いけど、ここは私のテリトリーなの」


トラップか…!

迫り来る鎖を避けつつも、俺はどんどん奥に追い詰められていく。

というかコイツ、10本ほどの鎖を同時に操れるとは…

俺は大量の鎖を軽々と操るそいつに正直驚き、恐れを持った。


「おしまいね!」


「ちっ!」


そしていつの間にか逃げ道がなくなった。


「さあ、言い残すことは?」


「若様!!」


「?!」


俺とそいつは声の聞こえた方へ顔を向ける。

レンが俺達のいる方へ駆けてきていた。


「ちっ!仲間がいたのね!!」


彼女は狙いをレンに向け、鎖を放つ。

しかしレンはそれを軽々避け、木刀で鎖を断ち切った。


バギン


「?!」


これには予想外だったのか、鎖使いもびっくりする。

もちろん俺にも衝撃的な光景だった。


「若様には指一本触れさせない!」


そしてそのまま鎖使いに突っ込むレン。

なんて強さだ…俺がここまで苦戦していたのに…


「くっ…」


押され気味になった鎖使いは冷や汗を掻きはじめた。


「これでも食らえ!」


レンの縦方向の斬撃を辛うじて鎖で塞ぐも、もう何本も鎖は切られてしまっていた。


「く…(悔しいけどここは退くしか…)アンタ達の顔、覚えておくわ!」


最後に俺達を一睨みした後、彼女はこの場から走り去った。


「追わないのか?」


「私は若様と一緒にいるという約束です。それに…何回もステップで避け、5階から飛び降りたんでは足はもう限界でしょう?」


「う…仰るとおり」


正直足には限界が来ていたのは確か。


「若様。お分かりになられましたか?」


「ああ。この戦いを俺は甘く見てた。これは本当に…命を懸けないといけないかもしれない」


「若様がそう反省してくれるなら何も言いません。だからこれからは…」


「ああ。お前と一緒に行動する」


「はい」


俺はレンに宣言した。レンには心配をかけてしまった。

もうこれ以上心配をかけさせたくない。

そして…


「強く…なりたい」


「若様、今日から猛特訓ですね」


「ああ」


俺は少しだけげんなりしたが、仕方がない。


「ところで若様、おんぶいたしましょうか?」


「結構です!!」


天然ボケなのは相変わらずだな、レンは。














―某所―


「今日は何回か戦いがあったようです」


男の冷静な声が響き渡る。


「それで?」


もう一人の男がこれまた冷静に聞き返した。


「未だ敗退者は出ていません。しかし、バッジのやり取りは行なわれていたようです」


「ふっ。初日から混戦になるか?」


「いえ…」


男は暗い表情となった。


「様子見をしている者が多いようで、戦闘をしているのは決まった人ばかり…」


「なるほど」


しかしそこに女の声が響く。


「しかし、すでにこの戦いの本質を突こうとしているものがいます」


「ほほう。この戦いを有利に運べる方法を見つけたのか?」


女が挑戦的な口調で告げる。


「そのようです。「ルールの裏返し」です」


「ふっ…面白くなりそうだ」


女と男達は無表情に近い笑みを浮かべたのだった。


次回は気剣体ですね。


登場人物紹介


竹島たけしま千草ちぐさ


国立ペロポネソス学園生徒会長。

端麗な容姿と明るい性格で、全校生徒の人気を欲しい侭にしている。

全校生徒の名前をきちんと覚えているところがとても恐ろしくもあり、すばらしい。(ペロポネソス学園はマンモス校です)

身長は156センチで、かなりの小柄である。



一条いちじょう次郎じろう


主人公、司の悪友。以上。


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