第2話 司参戦!エントリーナンバーは17番!
バトルは次回からですね。
この小説は普通の生活の学園パートと、道場内の特訓パート、そしてバトルパート、非主人公視点パートの4つに分かれています。
ああ…バトルなんて初めてだから不安でしょうがない…
「はぁ…」
ため息を吐きたくなるものだ。
今から俺はSF参加申込書を出しに行かなければならない。
「よっ司!どうした?ため息なんか吐いて」
ジョージが俺に話しかけてきた。
「いや…」
このことは秘密にしておいた方がいいのかな?
もしSFが始まってしまったら参加者と知られてしまうと不利になってしまうし。
「今日、下痢気味でさ…」
俺は誤魔化すことにした。
「ふーん、ところでお前、SF出るか?」
俺は一瞬ドキリとした。心を読まれたかと思った。
「どうしてだ?」
「だってお前ん家、道場だろ?それにお前も結構強いらしいじゃん」
「それは一般人と比べてだ。この学校には化け物みたいな強さの奴が何人かいるぞ」
俺は一人の女性を思い浮かべた。この学校で一番強いと思われる人…
「風紀委員長の宮島先輩とかか?」
「まあ…な」
ジョージも同じことを考えていたらしい。
しかしこれはバトルロワイアル。俺にも勝機はあるはずだ。
「ま、お前が出る出ないは俺には関係ないさ。俺は絶対出ない。あ、でもハーレムか〜…」
「まあこんなの下らなそうだしな」
「何がくだらないだって〜?!」
「え?」
俺の後ろに生徒会長が立っていた。
「私の考えた企画を下らないなんて、核兵器を無断で使用すること以上に許せないことだよぷんすか」
この人は何で「ぷんすか」を自分で言っているんだ?
発言がいちいち子供っぽい人だな…と頭を掻きつつ思った。
「こいつの無礼、失礼いたしました〜〜〜!!」
「おいジョージ」
ジョージが明るい調子で頭を下げた。
「そ、それから…自分は一条次郎と言うものでして…」
「知ってるよ」
「「なぬ?!」」
ジョージと声が被った。この人、ジョージのこと知っているのか?!
「それと君が与那国司くんでしょ?」
「お、俺の名前まで…」
俺の名前も知っているとは…この人は何者なんだろう?
「生徒会長なんだから全校生徒の名前ぐらいは覚えておかないとね。エヘ、偉い?」
「はい!!それはもちろん!」
ジョージが鼻息を荒くしながら答える。
興奮しすぎだ、アホ。
「とーにーかーく!司っちはさっきの発言を撤回すること!!」
「は、はあ…」
徐々にこの人のペースに巻き込まれる俺。
でも人気がある理由は分かる気がする。
「ま、いいや。じゃあね〜」
「はいっす!さようならっす!」
ジョージが興奮しながら挨拶し、俺は手を軽く振るだけで済ませた。
彼女は終始笑顔で、俺達に手を振っていた。
というか俺、撤回してないし。
「はぁ…マイエンジェルになっちまった…」
「…」
俺はうっとりとしているジョージを放って、目的を思い出す。
早くしないと受付が締め切られちゃうかもな…
俺は生徒会室に向かうことにした。
「あっれ〜?下らないって言ってた割に参加するんだ〜?」
「う…」
しっかりと生徒会長が俺に明るく嫌味を言ってくれた。
何だかとても居辛くなっている。
「ま、司っちは強いから大歓迎だけどね」
「俺が強いって…」
何をどう判断したんだ?この人は。
「司っちの家って道場でしょ?それに結構剣術が上手いって噂だよ〜」
「そ、そうなんですか…」
この人の情報量、情報収集能力が半端ないのは分かった。
「与那国司くん」
「あ、はい」
そして俺の前に生徒会長と瓜二つの顔の女性が現れた。
「申し込みは受理いたしました。参加が決定したらエントリーナンバーの書かれたバッジを送ります。それではよい運を」
「あ、はい!」
この真面目そうな女性は生徒会副会長の竹島千早といい、生徒会長の竹島千草の双子の妹だ。
明らかに妹の方が大人びているのだが。
「あ〜。今失礼なこと考えてたでしょ〜。だめだよ、れでぃーに失礼だよ」
「は、はぁ…」
俺はこの人に何かいろんなことを言われながら生徒会室を出た。
…やってしまった。
…申し込んでしまった。
…後には引けなくなってしまった。
…ま、なるようになるだろ。
俺はレンもいることだし、と気楽に考えた。
別に優勝賞品が欲しいわけでもないし。
俺はいつもの足取りで教室に戻る。その際、廊下がいつもより騒がしいのはSFのせいだろう。
「司ちゃん!」
「お、トモ姉」
俺に話しかけてきたのはトモ姉だった。
「一緒にお昼食べよっ?」
「いいけど…」
残念だが、昼ご飯は用意していない。
パンを買いに行かないと。
「俺、食堂にいかないと」
とはいえ、この時間に行ってももうパンはほとんど売り切れているだろう。
「大丈夫大丈夫!お姉ちゃんが二人分作ってきたんだよ!エッヘン」
「マジで?!」
トモ姉は料理がすごく上手い。
だから昔からトモ姉の料理は好きだった。
元々、早くに母親を亡くしたので、トモ姉は俺の母親代わりにもなってくれている。
そして父、レン、寧々は料理の腕が壊滅的なので、トモ姉がよく作りに来ていた。
ん?トモ姉がいないときはどうしたって?俺が作ってます、はい。
上手くないけど、他3人が作るより死者が出ないだけマシだ。
「レンや寧々も誘おうか?」
「もう誘ったんだけど、二人とも忙しいんだって〜」
「へぇ…」
レンはまあSFについてだろう。寧々は何だ?
「じゃ、屋上へレッツゴー!」
「おー」
俺はトモ姉と一緒に屋上でお昼ご飯を食べた。
そのときSFの話は全く出なかった。
興味ないのだろうか?まあトモ姉には向かないかも。バトルロワイアルだし。
翌朝、俺の元にバッジが送られてきた。
「当選おめでとうございます。エントリーネーム与那国司。エントリーナンバーは17番です…」
俺は17と刻まれたバッジとともに届いた手紙を読み上げた。
「当選しちまったんだな…」
俺はぼんやりと自分のバッジを見つめる。
確かこれを3つつけて戦闘する。負けたら一つ渡さないといけないんだよな。
で、武器は相手を殺さなければ何でもOk…
俺は傍らにある木刀を見る。
「…とりあえず、これで良いかな?」
俺は結構素振りにも使っており、使いやすい木刀を選んだ。
これなら相手を骨折、脱臼とかに済ませられる。頭部を思いっきり殴らない限り。
「若様」
「ん?」
襖の向こう側からレンの声が聞こえた。
「開けてもよろしいですか?」
「ああ」
そして一礼してレンは入ってきた。
本当に礼儀正しい奴だ。
「SFのバッジは届きましたか?」
「まあな」
俺は17と彫られたバッジをレンに見せる。
「ちなみに私は20番です」
レンは俺に20と彫られたバッジを見せた。
「そうか」
「若様、勝負は明後日の月曜からです。今から作戦会議を開きましょう」
「え…」
何だこのやる気満々な人は…
別に遊び半分で出てる奴とかもいるだろ。
「何言ってるんですか!先手必勝です!まず、参加者を確認しますよ?」
そう言って彼女は紙に何かを書き出した。
17 若様
20 自分
「えーと…」
「まだこれしか分かっていませんね?つまりあと23人の参加者がいるってことです」
「そりゃそうだ」
俺は仕方ないので、聞くことにした。
「ですが、出そうな人はいますよね?」
「…風紀委員長の宮島先輩」
「そうです」
俺は強い人を思い浮かべて、彼女が真っ先に出た。
「彼女は優勝候補でかなりの強敵です。もし、出会ってしまったなら逃げるのが賢明でしょう」
「その前にこんなのに先輩が出るのか?」
「いえ、それは分かりません。しかし、様々な事態を想定するに越したことはありません」
レンはすごく真面目に言った。
正直レン一人で出ろよとか思った。けど…どうして彼女はこんなに出たがるのかとも思った。
「で、結局のところ、俺はどうすればいい?」
「そうですね。まずは情報収集からいきましょう。参加者の情報を集めることから始めましょう」
「わかった。で、言いたいことは以上で?」
俺はレンにそう言った。
「夜更かしはほどほどに」
「へーい」
この人、俺のお母さんみたいだ。
だからつい甘えることもあるんだよな…
「では、おやすみなさいませ」
「ああ。レンもおやすみ」
俺はレンとおやすみの挨拶で別れ、布団を被った。
全くレンの足音が聞こえなくなると同時に俺は布団から出た。
「さ、ミンテンドーTSでもやろう」
俺は密かに買ったTSを取り出し、ひっそりとプレイしたのだった…
―某所―
「この戦い、どう思う?」
「生徒会長の思い付きらしいが…どうかな」
部屋で二人の男が話をしている。
「実際、すでに戦いが始まっていることに気づいているのかな?参加者は」
「いるだろう。覚悟のある者は」
「副会長…」
そこに一人の女性が話に加わった。
「優勝予想など…下らない。予想外になるようにバトルロワイアルなのだ」
「案外半端な覚悟の奴が勝ったりしてなハハハ」
「安心しろ。そういう奴は真っ先にやられるようになっている」
その女はそう言いながら、冷たく月を見ていたのだった。
登場キャラ紹介
奄美寧々(ねね)
主人公の幼馴染で、与那国道場に通っている。
ただし、練習をサボることが多く、あまり強くはない。
彼女はSFには何も関係が無さそうだが…
身長は162センチほど。
屋久巴
主人公、レン、寧々の姉的存在の幼馴染。
料理の腕前がかなりのもので、与那国家によく作りに来ては一緒に食べている。
弓道をやっており、中々の腕前らしい。
身長は160センチほど。