表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF  作者: 霞川悠
21/27

第18話 司の日常、戦士の休息

やっとこさっとで更新

疲れも取れ、眠気も取れ、傷口も塞がり、俺は道場稽古を再開することにした。

ちなみに学校にも復帰するつもりだ。

長期間休むのはさすがにまずいからな。

さて、俺は今何しているかというと、レンと一緒に朝稽古である。


「あれぇ?」


俺は首を捻る。


「佐渡との戦いのときは確かに旋風が出来たのにな…」


「そうなのですか?」


俺は今、与那国流第二奥義、旋風の稽古をしている。

ちなみに旋風というのは、片足を軸に高速回転する攻撃。

特徴としては、全方位に対応している他、隙が少ないこと。

神速の後に放つことによって、神速の弱点もカバーできるのだ。


「ではやってみます」


レンは木刀を構えた。

彼女も周りに気が集まっている気がする。


「はぁ!!」


彼女は高速に回転した。

ちなみに、さっきの俺よりも速い。


パチパチパチ


「ん?」


俺とレンが道場の入り口に顔を向けるとそこに、父が立っていた。

どうやらレンの旋風を見て感心しているようだ。


「レン、ほぼ旋風を会得できているようだな。旋風は全包囲攻撃からの防御技であり、攻撃技でもある。風を起こして相手との距離を空けることも出来るし、神速の後に放つことによって神速の隙を無くすことが出来る」


やはりそうなのか。

俺は佐渡と戦ったとき、確かに旋風が使えた。

神速の隙を無くすことが出来たし、緊急離脱にも使えた。

でも何で今は出来ないんだ?


「で、司。お前も旋風の特訓をしているのか?」


「ま、まあ…」


今出来ないのに、前は出来たとか言ったら恥ずかしい。

何か自分はまだやれる、やれば出来る子なんだ…みたいなイタイ奴になりかねない。


「そうか。見せてみろ」


「あ、はい!」


俺は佐渡と戦ったときのことを思い出す。

軸足の左足に力を入れ…思いっきり回る!!

俺は全力で回転した。


「…」


しかし、父の目は冷めていた。


「ど、どうですか…?」


いや、ダメに決まってるだろ。

と思いながらも訊いてしまう自分がいた。


「お前はただ回転しているだけだ。攻撃ですらない」


父はそう言って自分の竹刀を取り出し、構えた。


「これが本当の旋風だ!!」


「何?!」


目の前に竜巻が起きた。

そんな感じ。


「何て風圧だ…!!」


回転と共に周りの空気が父へと誘い込まれる。

まさに竜巻。俺とレンはそれに巻き込まれないようにするのが精一杯だった。


「さすが…」


旋風が終わり、俺とレンは尻餅をついた。

ダメだ。核が違う。旋風はただの近距離攻撃じゃない。

近距離へと相手を誘い込む攻撃なのだ。


「まあこの域までに達しなくても良い。だが少なくとも、風が起きる程度までになっていろ」


父の言葉が道場に響く。

あのときの俺の旋風は確かに風も出ていた。

だから緊急離脱が出来た。


「何だ司。不服のようだな」


「いえ…」


やっぱり前に出来たことが出来ないのが悔しい。

悔しい? …随分と俺も変わったものだ。


「レンにも言えることだが、一歩ずつだ。初めから全てが出来る人間なんていない。だから、常に努力しろ」


「はい!」


「はい」


レンの返事に比べて、俺の返事はいまいち気合が入っていなかった。






















俺の木刀は佐渡によって折られてしまった。

だから俺は今、別の木刀を持っている。

弘法筆を選ばず、とは程遠い俺にとっては大きなハンデとなる。

今まで慣れていた木刀とはやはり少し違う。

何せ、俺の木刀を作っているのは人だ。それぞれ違う出来である。

同じ木刀など、この世に一つも存在しないのだ。

だが、それを言い訳に出来るほど、SFは甘くはない。


「いや、司も風邪が治って良かったな!」


昼休み、ジョージが俺の背中をバンバン叩く。

ジョージには風邪で休んだ、と言ってある。

まあジョージだけではない。表向きはそうしているだけ。


「まあな。寧々は少し苦戦しているみたいだが」


寧々は全身の痣がある。

痛々しいほどに。

だからまだもうちょっとだけ休んでいる。


「よし!それじゃ早く食堂に行こうぜ!」


「そうだな」


俺とジョージとレンは3人で食堂に行くことになった。


「混んでるな」


そして案の定食堂は混んでいた。

ここだけはいつまでたっても変わらないものだな。

そして俺はさり気なく真理恵を探してみる…が、いない。

まあいつもここに来ているわけじゃないだろう。何確認しているんだ俺は。


「席はどうする?」


「私は若様と一緒に行くので、一条様はお一人でどうぞ」


「レンちゃんヒドッ!!」


ジョージが涙目になるが、レンは首を傾げるだけ。

レンに悪気は無いのがなお、タチが悪い。


「ま、そういうことでジョージは一人な」


「チクショウ!絶対彼女を見つけてお前に自慢しまくってやる〜〜〜〜!!」


ジョージは涙を流しながら走り去っていった。

しかも俺に彼女の自慢をすることで気が晴れるのかよ。

…ん?

何か視線を感じるな…

俺は周囲に気を配り始めるが…


「若様はどこに座ります?」


俺はレンの言葉によってそれを気にすることをやめた。

ここを見張られても平気であろうということだ。


「空いたらそこに座ろうぜ」


そのとき、席が二つ、目の前で空いた。

まさかこれはチャンスなのでは?!

俺は席に座ろうとする。が、横からすさまじい速度で来て、俺の前の席を誰かが奪った。


「な…」


「よう。与那国司」


「種貸先輩!!」


超スピードで俺の席を掠め盗ったのは剣道部の種貸主将であった。

この人なら超スピードで来られても違和感が無いのがすごい。


「この席が欲しければ剣道部に入るんだな」


「それだけのために俺の席を…」


「だって試合近いのにみんなヤバイんだもん! 主力が怪我をしちゃって!! 団体戦は5人だろ?! 俺は必ず勝つとして…」


必ず勝つんかい。


「残り4人で2勝が絶望的なんだ! 次期主将の近藤は大丈夫だが、その他の3人が…だから頼むぜ!」


つまり、確実に勝てる3人が剣道部に欲しいということか。

でもな…俺の道場は実際の斬り合いに近い剣道を教えてるからな…。

ちょっとだけ毛並みが違うんだよな…。まあ剣道部にもいたから普通に剣道出来るけど。


「でも俺も道場の方が…」


「一回だけでいい!」


種貸先輩が俺に深く頭を下げた。


「ちょっ…」


おいおい…これはまさか参加しないと駄目な空気か?

…まあ一度なら良いかな?


「いつですか?」


「おう!明後日だ!」


「早っ!」


「だから今、人生で一番頭を下げているんだ!」


「…」


俺は無言でレンを見た。

レンは仕方なしに頷く。彼女もこの熱意には負けたのかもしれない。


「分かりました。これっきりですよ?」


「助かった!!サンクス!」


種貸先輩は心底安心したような顔をした。


「それで、明後日のいつですか? 場所はどこですか?」


「明後日の放課後にここの体育館だ!」


「へえ。ここなんですか。分かりました」


俺は意外だな、と思いつつもそれを了承した。

まあ了承しない限り、この問答を繰り返すことになるかもしれない。

それにしてもウチの学校でやるなんてね…


「じゃあそれだけだ。約束破ったらどうなるか…」


「分かってますよ!」


種貸先輩は笑いながらそんなことを言いやがった。

さすがに俺は鬼畜じゃないから、約束は守る。


「ははは。じゃあ明後日」


種貸主将はそう言って去っていった。


「若様…」


気がついたら、レンが俺の方を心配そうな目で見ている。


「大丈夫だって。久しぶりの剣道の大会だからな。少しワクワクもある」


「いえ、そうでなくて、時間が…」


「は?」


キーンコーンカーンコーン♪


昼休み終了。俺は昼飯を食べ損ねた。

…最悪だ。

























放課後…

昼食を食べ損ねた俺は、レンとジョージと普通に帰ることにした。

さすがに昼を抜いてSFは戦えない。


「なあなあ。今日はお前、暇か?」


「いや、俺は道場の稽古が…」


ジョージに遊びに誘われた。

確かに、最近はめっきり遊んでいない。

少し、息抜きをしたいところだが…SFがあるしなぁ…


「たまにはいいだろ? 最近のお前、付き合い悪ぃぞ!」


「う〜ん…」


俺はチラリとレンを見る。

一体どういう反応をするのか…


「若様のお好きにどうぞ」


「え?!」


今信じられない言葉を聞いたんですけど?!

レンが許してくれた…?


「レン…?」


「若様…私を若様の保護者だと勘違いしてませんか?」


「え、そうじゃないの?」


レンは俺を見て複雑そうな顔をした。


「そんな風に私を見ていたんですか…私は若様の護衛であって保護者ではありませんよ」


「そ、そうだな…」


だが、行動の節々が保護者みたいだぞ。

最低でも俺はそういう風に感じていたが。


「なので、若様が遊びに行くのならば、私も着いて行きます」


「いいいい?!」


ジョージが奇妙な声を上げた。

レンが来るとまずい事でもあるのだろうか…いや、そうだな。あるに決まってるな。


「な、なあ司…」


「お前、アレしに行くのか?」


「ひ、久しぶりに…」


どうやら久しぶりにアレをするみたいだ。


「レン、お前は俺の新しい木刀でも探してくれ」


「若様…」


「頼むぜ」


「分かりました」


基本的にレンに何かを頼めば、それをやってくれる。

まあダメな時もあるけど。


「じゃあなレンちゃん」


「気をつけて」


俺たちはレンに別れの挨拶をし、繁華街へと歩き出す。


「それで、やっぱりナンパか?」


「当たり前だろ! つうかお前もナンパ乗り気?」


「いや、俺はお前が断られるのを陰で笑う」


「ひどっ! お前チョ→陰湿!!」


「お前はギャル男か!」


俺とジョージはそんなバカな会話をしながら、繁華街へと到着した。


「じゃあ俺はゲーセン行ってる。ナンパに成功したら呼べよ。期待してないけどな」


「チクショウ…絶対成功するぜ!」


俺は適当にジョージをあしらった。

まあコイツのことだ。成功なんてしないだろう。

…これって成功フラグ?






















4時間後…


「よっしゃあ! ナンパ成功したぜ!」


電話の向こうでジョージの元気な声が聞こえた。


「バカな…」


ジョージがナンパを成功させただと…?

ありえない…夢か? …いや、夢じゃない!

俺はわざわざ頬を引っ張って確認する。


「まあ相手は一人なんだけどさ…お前も…え?」


何か電話の向こうで話し声が聞こえた。

相手の女の子なのであろうか。


「あ、悪い! 俺一人がいいらしい。はっはっは、残念だったな司。俺は今日、大人の階段上るぜ!!」


「…はいはい」


俺は電話を切った。

ジョージがナンパを成功させるとはね〜…

少し複雑だ。アイツに先を越されたと考えると、すごく複雑だ。


プルルルル♪


「げっ!」


しかしその後、また電話が入った。相手は父親。


「も、もしもし…」


「バッカモン!!さっさと帰ってきやがれ!!」


「れ、連絡しなくてすいませんでした!!」


最近遊びに行くことがメッキリ減ったために、こういうことをするのを忘れてしまった。

今は…早く帰るべし!!

俺はゲーセンを出て、家へと歩き出す。

























―某所―


「クックック…佐渡隼人…私のためによく頑張ってくれた」


薄暗い部屋で、怪しげなクスリを調合している人物がいた。


「アイツのおかげで私は水面下でコトを運べた…」


その人物はクックックと笑いながら作業を続ける。

SFはまだ序盤だということを忘れてはいけない。




活動報告で予告プレビューを行ってます…


次回は「木刀対拳!司の捜し物!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ