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SF  作者: 霞川悠
17/27

第15話 佐渡強し!暴走への円舞曲!

完全バトルモード!

熱い展開は好きです。


俺が佐渡を惹きつけている間に真理恵は動いた。


「今だっ!!」


「何ぃ?!」


俺の叫びと同時に上から真理恵が跳んでやって来た。


「覚悟しなさい!佐渡隼人!!」


彼女は十本全ての鎖を佐渡に放った。


「くっ!!」


佐渡の顔が歪む。

俺達の好機が今、到来した。


「はぁっ!!」


鎖の来る瞬間、俺は急いでバック転で退避した。


ズドーン!!


凄まじい音が屋上に鳴り響いた。

あんなのに直撃したら、普通は死ぬと思うのだが。

まあ死なない程度に手加減はしたはずだ、うん。きっとそうだよ。


「どうだ?」


俺は隣に降りてきた真理恵に訊いた。


「…手応えはあったはずよ…」


俺と二人で煙を見つめる彼女。

まさか鎖でこんなに煙が出るなんてな…


「まさか火薬でも括り付けたのか?」


「そんなところね」


…おっかない女というのは健在のようだ。

いや、健在であって欲しくはないんだけど。

そんなとき、煙が歪んだ。


「…まさか…」


「だってアイツ…ほぼ直撃だぞ?」


「…よね。そうよね」


俺達は不安そうに煙を見る。


「ぐあー。や・ら・れ・たー」


「「?!」」


そのとき、煙からそんな言葉が聞こえた。


「とでも言えば良かったかな?」


「何で?!」


「無事だと?!」


佐渡は周りの煙を吹き飛ばして平然とその姿を現した。


「クックック…いい作戦だったよ。正直危なかった」


「な…!!」


アイツにはまだ笑える余裕があるとでもいうのか?!


「この防火、防水、防虫のコートを着てて正解だったよ」


そういえばあいつは今日、高そうなコートを着ていた…

だが…


「鎖はどうした!爆発は防げても、鎖は防げるわけが…」


「クックック…このコートが防いでくれたに決まっているだろう?」


「?!」


あのコートには鉄でも何か仕込んでいるのだろうか…


「さて、これで終わりかな?与那国司君。存外につまらない勝負だったよ」


「終わりではない!」


「ん?」


上方から別の声が聞こえてきた。


「何だ?」


その男は屋上の策のてっぺんにいた。


「貴様は…択捉えとろふ光世こうせい!!」


佐渡がその柵の上にいる男にそう叫んだ。


「わが親友、大樹の仇、今討たせてもらう!」


そう言って光世という人は投げナイフで総攻撃を開始した。


「ちっ…面倒な奴だ…」


佐渡はそれを一応全て捌いた。


「初めまして。与那国司君」


「あなたは…」


佐渡がそれに気をとられている間に、光世さんは俺に話しかけた。


「話は後回しにしよう。今はアイツを倒すのが先決だよ」


「…信用が出来ないわ」


真理恵は光世さんを疑っているようだ。

まあ確かにいきなり現れて、仲間面されても困るというものだ。


「そうだよね。戦いで証明…といいたいけれど…」


彼はそう言って二対の刀を取り出した。

いわゆる二刀流と言う奴だ。


「僕のバッジを預けよう」


彼は自分のバッジを一つ俺に渡した。

エントリーナンバーは13番らしい。


「あの、この23番は…?」


彼の胸に着けてあるもう一種類のバッジを指差すと、彼は少し俯いた。


「これは…親友の大樹のバッジさ…形見だよ」


「あ…」


そういえば最初にそんなことを言っていたような…


「お話は終わりか?」


「?!」


佐渡は楽しそうに俺達を眺めていた。

そうだ、夜が明けたら俺達の負けだ。

あいつは何もしなくてもいいんだ。


「ああ。第2ラウンド、いこうぜ!」


俺と真理恵と光世さんは構えた。

続いて佐渡が大きい鎌を構えた。

長さ的には優に2メートルを超える。


「さて、誰からかかってくるんだ?同時か?」


「はぁぁ!!」


「とう!!」


俺と光世さんが最初に走った。続いて、真理恵が鎖を放つ。

3人同時攻撃だ。一人ずつでは勝てないだろうという判断だ。


「面白い。さあ!」


俺と光世さんの攻撃をことごとく防ぐ佐渡。

さらに後から来る鎖も防ぐ佐渡。

こいつは人間か?かなり強いぞ。


「甘い!!」


「うぐっ!」


光世さんが鎌の柄で飛ばされる。


「光世さん!」


「よそ見している暇があるのか?」


「しまった!」


俺も柄の部分で突き飛ばされる。


「最後はお嬢さんといきますか!」


「はあっ!」


真理恵は鎖を放つが、簡単にかわされ、さらにコートによって、当たっても全くダメージがないという状態だった。


「そんな…!」


「悪いけど女性にも手加減しないんでね!」


「うぅぐう!!」


真理恵は腹を柄で突かれ、飛ばされた。


「真理恵!!」


俺は再び立ち上がり、佐渡の方へ駆けて行った。

俺の後ろからナイフが飛んでくるのが分かる。

俺の援護なのだろう。


「ふん!姑息な」


佐渡は飛んできたナイフを次々に弾いていく。

チャンスだ。俺は神速の構えをする。


「…」


俺はナイフに気を取られている佐渡を見る。

さらに、背後からの鎖の攻撃のおかげで俺には気がついていない。

そして俺は耐性を低くする。

与那国流第一奥義…


「神速!」


「何?!」


瞬時に佐渡は俺の方を見る。

だがしかし…遅い!


カキーン!!


鉄のようなものとぶつかった音がした。

しかし、後ろから回し蹴りが飛んでこない。


「どうだ…!!」


「…このコートを使用不可にするとは…」


「?!」


どうやら俺の攻撃は佐渡のコートを無効化させるだけに留まった。

俺の神速をまともに受けた部分からコート全体にヒビが入っているみたいだ。


「少し油断したな」


佐渡はコートを脱ぎ捨てた。


ガチャーン


「なんだよこの音…」


コートが屋上の地面に落ちたとき、ものすごい音と揺れを感じた。


「このコートは非常に重くてね…スピードが上手く出ないんだよ」


「ま…まさか…」


「そのまさか!」


佐渡は神速レベルのスピードで俺に近づいて俺を襲う。


「危ない司くん!!」


「え?」


そのとき、右から光世さんが俺を押した。

世界がスローモーションになったみたいにゆっくり回るというのはこのことか。

俺はゆっくりと左に倒れていく。

そして佐渡の攻撃は左にずれた俺には当たらず、光世さんを襲った。


「うあああああ!」


「光世さん!」


光世さんは佐渡の攻撃をまともにボディに食らい、20メートルくらい吹っ飛び、後ろの壁にぶつかった。

そして彼はガクッと頭を下げた。


「くっ…」


「一発でダウンか…予想外に俺の攻撃が強かったようだな…」


「くそっ…」


光世さんは俺を庇ってやられてしまった。

俺が不甲斐ないばかりに…


「司!気を強く持ちなさい!」


「はっ!」


そんなとき、真理恵から激励が飛んだ。

そうだ。こんなところで俺は負けてたまるか!!


「ほう。まだ諦めていないようだな。さ、楽しませろ!」


佐渡は再び俺の方へ超スピードで向かってくる。


「見えた!」


俺は攻撃を受けたかに見えた。


「いない?!」


「司!後ろ!」


「何?!」


「暴走への円舞曲ワルツ


俺が振り向いた途端に鎌の先が俺の胸に直撃した。


「ぐうっ!!」


幸い、刃は鋭くしていないらしく、血は出ない。

だが、殴られたような鈍い痛みがした。

そんな吹っ飛ばされた俺を真理恵は鎖で、プロレスリングのようにして助けた。


「サンキュ…ゴホッ!」


くっ…どうやら肺にかなりのダメージがきたらしい。

呼吸するのがいつもより格段に苦しい。


「大丈夫?!」


真理恵が再び俺を心配する。


「自慢じゃないが、あまり大丈夫じゃない」


「ちょっと…」


真理恵が心底心配そうな表情をする。


「こうなることは分かっていたさ」


俺は目の前の佐渡を睨む。

俺とアイツに圧倒的な力の差があるのは分かっていた。

だが、分かっていてもこの差は恐ろしい。


「真理恵…その鎖で時間を稼げるか…?」


「どうして?」


「あいつを倒せるのは神速しかないんだ」


「…」


真理恵が考える。


「だから…」


「しょうがないわね。でも、きっちりと決めるのよ」


「ああ」


俺は強い視線を佐渡に向ける。


「頼む、真理恵」


俺は耐性を低くする。それと同時に真理恵が前に駆け出して走る。

真理恵が鎖で佐渡を襲う。

しかし彼は楽々とそれを避ける。

ダメだ…あの鎖で動けなくさせないと…

俺はまた硬直状態だ。折角の神速もヒットしなければ意味がない。


「くっ…(こいつ…メチャクチャ強い…!!)」


佐渡の対応に真理恵も表情が苦しくなってきた。


「鎖使いごときに俺がてこずる筈が無い!」


「バカにして…!」


真理恵は言い返すも、劣勢であることに変わりは無い。

何とか鎖の数で持ちこたえているものの、段々と1本、2本と鎖が狩られていく。

このままでは作戦そのものが瓦解だ。


「仕方がない…」


俺は神速を諦め、佐渡に向かって駆け出した。


「ほう。2対1か。上等だ」


佐渡は大鎌一つで俺の木刀と真理恵の鎖をいなす。


「くっ…その武器を好きに使えなくさせてやる!」


真理恵が大鎌に鎖を巻きつけた。


「ふん。これでアンタは武器を…キャッ!」


そのとき、佐渡は鎌を思いっきり引っ張った。

もちろん鎌と鎖で繋がっている真理恵も引っ張られる。


「こういうことはもっと頭を使ってやろうなっ!!」


そして思いっきり鎌を高くあげた。

同時に真理恵も浮いてしまう。


「ハッハッハァ!!」


真理恵は佐渡を中心に円軌道を描き、佐渡の後ろの地面に思いっきり叩き付けられた。


「いやぁぁ!!」


ズドン!というものすごい音と同時に真理恵の悲鳴が屋上で木霊した。


「真理恵!!」


彼女はそのまま動けなくなってしまった。


「くっ…この野郎!!」


鎌はまだ鎖に繋がっており、身動きが出来ないはず。

俺はこの隙を狙って神速を放つ。


「甘いな」


「な…?!」


佐渡は鎌に巻かれていた鎖を一瞬で破壊し、俺の攻撃に備えた。


「くっ…」


俺は神速を放つも、佐渡に一蹴された。


「畜生…」


何が奥義だ…

全然効きやしねぇ…

こいつ、メチャクチャ強くないか?


「司…くん…」


光世さんが息絶え絶えに俺の名前を呼ぶ。

しかし、俺の耳には届かない。


「暴走への円舞曲ワルツを奏でてやろう」


「くっ…」


神速並みのスピードで佐渡に近づかれた俺は、何も出来ずに佐渡の攻撃を食らった。


「うああああ!!」


俺はかなりの距離を飛ばされ、屋上の柵に背中をぶつけた。


「あぐっ…」


俺は血を吐いた。

こんなこと、父とのスパルタ練習のとき以来だ。

肺に思いっきり当たったらしく、呼吸がしにくい。


「痛い…」


俺はその場に仰向けに倒れる。

まんまるい月はもうすぐ沈みそうだ。

つまり、夜が明ける。


「くぅ…」


俺は立ち上がろうとしても力が入らない。

佐渡がつまらなそうに倒れている俺を見る。

そして満月も俺を見ていた。


ドクン…


「?!」


な、なんだ…?

俺に流れている血が沸騰するように熱い。

この感覚はどこかで…


ドクン…


間違いない!真理恵との2度目の戦いのときの感覚だ。

自分の中に語りかけ、勝ちたいと願ったときの感覚だ。

でも今は何で…?

俺は自分に語りかけていない。


ドクン…


「うっ…」


俺は胸を押さえる。

心臓が無理矢理俺の体全体に血液を送っているみたいだ…


「さて、起き上がらないならもう俺は去るよ。バッジは貰うけどね」


佐渡が俺に近づいてくる。

俺は未だに立ち上がれない。


「さて、バッジは全てもらうよ。勉強代にしては安いぐらいだよ」


佐渡が俺の胸のバッジに手を伸ばした。

だが、俺はその手を掴んだ。


「何だ?」


「邪魔だ」


そしてそのまま俺は佐渡を思いっきり投げ飛ばした。

倒れたままで。


「何?!」


佐渡は思いっきり尻餅をついた。


「まだバトルは終わっちゃいねーぜ」


俺は立ち上がり、佐渡を見下ろす。

俺の中の何かが弾けた瞬間だった…





<次回へ>


次回「終わった演奏!終わらない希望!」


司たちは佐渡を倒すことが出来るのであろうか…


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