第13話 破られた神速!地獄への狂想曲!
まさか神速がもう効かないのか…?
それにしても、最近は特に眠いです。
日曜日の朝、俺とレンは急いで学校に行く準備をすることにした。
あの後、結局寧々は見つからずじまい。
つまり、寧々の消息はつかめず。
しかし、昨日の夜にはすでに帰宅していた。
なので、寧々にどこに行っていたのかを問いただしてみたのだが、はっきりしない答えしか言わなかった。
だから俺達は今回、朝早くに学校に行くことにした。
今日は1週間ルールの最終日である。つまり、今日が正念場となる人がたくさんいるかもしれない。
と、いうことは、今や学校は参加者が大量にいるかもしれない。それだけ勝算も上がる。
「若様、準備が整いましたか?」
「ああ」
レンに準備確認をされ、俺は頷く。
今日は俺の中でも大一番となりそうだ。
「じゃ、行こうぜ」
俺とレンは道場に一礼した後、道場を出、家からも出た。
早朝の学校にも関わらず、学校には妙に人気が多かった。
そこら中に例の男子生徒達が徘徊しており、隠れて行動しにくい。
さて、どうするべきか…
「どうする?」
「まずは塀から侵入しましょう」
俺達は昨日と同じく、塀から侵入をした。
「校内に入るか?」
「そうですね…ここよりは安全でしょう」
外にいるとどこからでも攻撃を仕掛けられてしまう。
俺達は自分達の教室に行くことにした。
ただ、監視の目をすり抜けるのは至難の業だったが。
「それで、どうする?寧々を探すか、バッジを獲るか…」
「もう時間はあまりありません。バッジを獲りにいくのが先決ですね」
「そうだな」
俺達は意見が合ったので、作戦を立てることにする。
「今日は1週間ルールの最終日。一度も勝てていない参加者は今日は絶対来る。まさか俺だけ…だったらどうすればいいんだろうな」
「それはまず無いでしょう。それに、うろうろしている男子生徒もいます」
最悪は奴らを倒すしかない。あ、バッジをつけている奴を探してな。
でもこれは骨が折れそうだ。
「じゃあ今日は例の如く、別行動だ」
「分かりました。私はギリギリの位置で若様を護衛します」
「あ、出来ればさ、俺の気配察知範囲内にいてくれるか?」
そうしないと、この間のような失敗をしてしまうかもしれない。
レンが襲われたとき、俺は察知できないから。
「分かりました。では気をつけて」
「ああ」
俺は先に廊下に出た。
そして、敵探しをスタートさせた。
「…意外とみんな慎重だな…」
校舎内をしばらうろついていたが、俺に対しての殺気などが全く感じられない。
わざと姿を見せているにもかかわらず、襲ってこない。
やはり罠だと思われているのか?作戦は失敗か?
しかし、まだ分からない。この学校はマンモス校だ。
つまり、校舎の大きさはものすごく広い。ドームよりも断然広いだろう。
「…ん?」
そんなとき、俺の視界の先に人が見えた。
「あれは…」
しかも倒れている。そして、女生徒みたいだ。
俺は罠だとは全く思わずに、駆け出した。
「おーい!…?!」
俺はその女生徒を見て驚いた。
「寧々…?!」
そう、倒れていた女性とは寧々であった。
「おい!しっかりしろ!寧々!」
「う…」
彼女は目をうっすらと開けた。
「よかった…」
「つかさ…?」
彼女は俺の名前を呼んだ。
「司!」
その後すぐに目を見開いて身を起こした。
「お前…やっぱり参加者だったのか…」
寧々の胸元にあるたった一つのバッジ。八番と刻まれているそのバッジ。
それが、彼女はSF参加者であることを証明していた。
「くっ…」
そのとき寧々が突然苦しんで倒れてしまった。
「寧々!寧々!」
寧々はその後、グッタリと倒れたままだった。
よく見ると体中のあちこちに痣のような跡があった。
残っちゃったらどうするつもりなんだよ…!
「畜生…誰がこんなことを…」
SFだからやられるのは仕方がない、と思えないほど俺は冷静さを欠いていた。
ただ、今は寧々をこんな風にした奴が許せなかった。
「くっ!!」
気がつくと俺は駆け出していた。
レンの気配とかそんなものは全く考えずに走った。
司の気配が急に動き出したのを確認したレンは、自分も急いで彼を追うことにした。
戦闘になってしまったのかもしれない、と彼女はそう考えた。
しかし、そんな彼女の目に飛び込んできたのは一人の少女が倒れている姿。
「寧々…さん…?!」
そう、彼女も知っている寧々を発見したのだ。
司を追っているのであれば、遭遇するに決まっているが。
「寧々さん!!」
彼女は寧々を抱き上げる。
どうやら気絶しているみたいで安心する。
そして彼女も寧々の胸のバッジを見る。
そのときのレンの表情はやはりという感じの顔であった。
「?!」
そのとき、彼女は重大なミスに気がついた。
こんなことをしている間に司の気配を見失ってしまったのだ。
しかし寧々をこのままにはしておけない。
「…(くっ…若様、ご無事で…!)」
レンは寧々を置いて行こうとした。
彼女にとっての第一は常に司であるが故の行動だ。
「クックック…」
「?!」
そんなとき、彼女の後ろから笑い声が聞こえた。
もちろんレンは気配に気がつかなかった。
つまり、かなりの強さ。
「いやいやここまで俺の策に引っ掛かってくれるとは、愉快愉快」
「貴様は…」
後ろの男は口元に怪しい笑みを浮かべながら、冷たい目でレンを見下ろした。
そして傍らにある大鎌がとても特徴的であった。
「与那国道場の西表蓮香。与那国道場師範代の与那国司よりも強いらしいな」
「な…!!」
相手が自分達のことを調べ上げていることに驚愕するレン。
「早速キミのバッジを全ていただこう。と、言いたいところだけど」
彼は一旦そこで言葉を切った。
「もっと面白いことがあるんだ。君のことはノックアウトで済ませてあげるよ」
「…貴様、私を甘く見るな」
レンは負けじと相手を睨みつけ、威嚇した。
しかし彼は冷たい表情を崩さなかった。
そして自然と互いに構えの姿勢に入った。
「さて、そろそろ骨のある相手であることを願うよ!!」
「はあっ!!」
二人は戦闘をスタートした。
俺は校内を駆け回り、寧々をボコボコにした奴を捜したのだが、見つからなかった。
それどころか、人にすら遭遇をしていない。
これはおかしい。
さすがの俺も気がつき始めた。
少し冷静になって考えてみる。
「…レンの気配が感じられない!!」
今更俺はレンのことを思い出した。
まさか…また戦闘をしているのかもしれない。
それとも…いや、レンはそこらへんの奴に負けるわけがない。
俺は今まで来た道を引き返すことにした。
急いでレンを捜さないと。それに寧々…
「ちくしょう!!」
俺は叫び声を上げて校舎を疾走した。
幸い、俺の周りに気配が感じられない。
つまり、敵が襲ってくることはほぼないだろう。
こうして俺は寧々が倒れていた近くの場所まで走っていった。
「はぁ…はぁ…」
しかし、寧々が倒れていた場所には誰もいなかった。
寧々はどこかに連れていかれたのか?…レンあたりに。
「全力疾走ご苦労様」
「あ、どうも…!!」
そんなとき、急に後ろから来た声に俺はつい返事してしまったが、すぐに振り向いて相手を見た。
「やあ。与那国司君だね」
「お前は…誰だ?」
俺は睨みながら変な格好(9月なのに、コートを羽織っている)の男子生徒を見る。
なぜなら相手は2と彫られているバッジを胸につけているからだ。
つまり、彼はSF参加者だ。そんな男が俺に話しかける理由はただ一つ。
「喧嘩を売っているのか?」
「好きに解釈すればいいけど…」
「若…様…」
「?!」
そんなとき、男の後ろからレンの息絶え絶えの声が聞こえてきた。
胸のバッジは1個に減っていた…
「レン!!」
「逃げて…くださ…い…」
「なんだと…?」
男は俺を見てニヤリと笑った後、冷たい表情になった。
「勝手に会話に入ってくるな。死に損ない」
男はそう言って大鎌の柄の部分で倒れているレンの腹を思いっきり突いた。
「あああううっ!!」
「レン!!」
「主君の司君に向かって逃げろ?随分と情けないことを提案するんだなっ!!」
そう言って男はまたレンの腹を突いた。
「うぐぅあぅ!!!」
「やめろよ!!」
俺は思いっきり男を叫んだ。
こいつは…絶対に許せない。
「ああ…言い忘れてたよ。奄美寧々…骨のない奴だったよ」
「?!」
俺は次の瞬間、木刀を抜いて男に斬りかかった。
「そうこなくっちゃ」
男はニヤリと笑みを浮かべた後、大鎌を構えて俺の攻撃を防いだ。
「若…様…」
レンの声は前よりさらに弱弱しくなった。
ただ、司の心配だけで意識を保っていた。
「クックック…そんな柔い攻撃が通用するとでも?」
「まだだっ!!」
俺の攻撃は着実に防がれていた。
レンを倒した男だ。認めたくないが、かなり強い。
「クックック…さて、そろそろ諦めたらどうだい?」
「くっ…」
全ての攻撃を着実に読まれ、防がれていく。
しかも男はまだ一回も攻撃をしていない。
「こうなったら…」
俺が勝てる攻撃はあれしかない。
俺は男からある程度の距離を取った。
今回は足を怪我していない。だからいける。俺は神速の構えの態勢に入った。
「これで…!」
「ふん…」
男は面白そうに鼻を鳴らして俺を見る。
完全に舐められている。だが、それを後悔させてやる。
「ダ…メ…」
レンが弱弱しく叫ぶが、俺には聞こえない。
すでに神速に集中している。
「…行くぞ!」
与那国流第一奥義…!!
俺は態勢を低くする。距離は充分。いける!!
「神速!」
俺は男との距離を一瞬で詰めて横薙ぎを払った。
ガギン!!
すごい音が後ろから聞こえる。
防がれているが、手応えはある。最低でも手首にはかなりのダメージが…
「神速の弱点その1」
「?!」
男の声は普通だった。いつもどおりの声だった。
「それは…攻撃後が隙だらけ」
「なっ!!」
彼は振り返った俺に回し蹴りを繰り出した。
「ぐうっ!!」
神速後の隙のおかげでモロに顔にダメージを受けてしまった。
というか神速が全く効いていない…?!
「ダメだな。そんなものが与那国流?」
彼は俺を嘲り笑っていた。
「クズか…与那国道場も所詮はゴミか…」
「何だと…!」
俺の頭が沸騰した。
俺だけじゃなく、道場全体をバカにするなんて…!!
「道場まで悪く言うんじゃねぇ!!」
「何寝ぼけたことを言っている!!」
「?!」
男の俺を見る目が険しくなった。
何で俺が怒鳴られなきゃいけない?!
「貴様は与那国の看板を背負って参加してるんだろう?貴様が不甲斐なければ道場の名に傷がつくのは当たり前だ。貴様がゴミであることは、イコール道場がゴミである。だから道場がゴミと言われても文句は言えまい」
「くうっ…」
こいつ、嫌な奴なのに、正論を突いてきやがる…
「はっ!貴様も所詮は言われるがままに戦いに赴いた人形か!」
「くっ…」
俺はコイツを睨みつけることしかできない。
なんて無力なんだ。
「さて、そろそろ終わりにしよう。つまらんからな」
「?!」
男は一瞬で俺との距離を詰めてきた。
そして…
「神速の弱点その2」
「!!」
「近づかれると神速そのものが打てない」
男は鎌を俺の首筋を狙ってきた。
「ぐっ…!!」
木刀で何とか防ぐ。だが、あまりの威力に腕が痛い。
「そしてその3!」
今度は足元を狙ってきた。
「片方の足が負傷するだけで威力は半減」
「何…?!」
鎌は俺の防御をすり抜けて俺の左足にヒット。
「んぐあっ!!」
「クックック…。力の差は歴然だよ。でも可哀想だね…」
「?」
男は急に俺に哀れみの目を向けた。
「俺が何も手を見せないとさすがに可哀想だよ」
男は口元をゆがめる。
やっぱりこいつは嫌な奴だ。
「地獄への狂想曲を奏でてやる」
「?!」
男は大鎌を自分の前で1回転させた。
「逝け」
男は俺に大鎌を振りかぶる。
これは受けるしかない…
「う…受けては…ダ…」
レンの声は俺の耳に入らず、ぞのまま初撃を受けた。
しかし、グニャリと鎌の柄が曲がり、俺の右手首にヒット。
「あぐっ!!」
痛みで目を閉じてしまった俺は信じられない光景を目の当たりにする。
「刃が…曲がった…?!」
そして曲がった刃が俺の木刀を裁断した。
「な…!!」
「これで終わりだ。安らかに眠れ」
「くっ…」
目の前には鎌の刃。俺は丸腰。
万事休す…?
まんまるい月だけが俺達をしっかりと見ていたのだった。
<次回へ>
司以外の戦いは省かれる運命にあり…
ああ悲しき哉、レンよ。
次回「打倒佐渡隼人!奇跡のタッグ結成!」
誰と誰のタッグでしょうね…