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追放と始まり

「お前みたいなお荷物はもう不要だ、ここに置いていく」


ダンジョン攻略中のことだった。

パーティーリーダーのグシャルドに僕はそう告げられた。


「え・・・?」


僕、ラプルは何を言われているか分からなかった。

ここはC級ダンジョンの中層。


「聞こえなかったのか、もう不要なんだよ、雑魚ラプル。」


僕はそう、戦闘スキルを一切持っていなかった。

持っていた唯一のスキルは<傍受>のみ。


<傍受>の効果は自分でもよく理解していないが、モンスターや人間が行動する前に何か暗号のような文字列を僕のみ見ることができる。

ただし意味は理解できず、ただモンスターが行動するタイミングをパーティーに共有して補助するためだけの役だった。


「2年間、面倒を見てやったがお前みたいな寄生虫は要らねーんだよ」


通常は8歳程度で剣や魔法のスキルを覚えるはずが、僕は14歳になっても<傍受>だけだ。

またステータスも平均よりかなり劣っており、剣や魔法のスキルを習得しないと武器を装備することもできないのでレベルも1のままだった。

なので一人でダンジョンに入ることもできず、補助役としてグシャルド率いるパーティーに入ることでなんとか生活できるだけのバイト代を稼ぐ暮らしをしていた。


「そんな、、僕はこのダンジョンをどうやって出ればいいんだ。。」


「知るか、勝手にしやがれ。あばよ」

「そんな、グシャルドさん、待ってく―」


言いかけている途中に僕はグシャルドに崖から蹴とばされ、突き落とされた。


急に突き落とされたため、何が起きたか分からなかった。体が転がり感覚だけだった。死ぬのかな。


ガラゴロガラゴロ、ドン


「いてて、、」

体を強打した、痛い。つらい。どうやら崖のそこまで来たようだ。

崖は斜面になっており、落ちた先は草原で、クッションになってなんとか助かったようだ。

しかし顔を上げた瞬間、C級モンスター邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)と目があった。


僕は絶望した。


到底僕が倒せる相手ではない。僕は最低ランクのE級モンスターですら倒せたことがないのだから。


「僕の人生もここで終わりか。。」


涙が出てきた。誰の役にも立てないつまらない人生だった。

恋人もできず、弱小スキルでなんでこの世に生きているのか分からなかった。


「クソ、クソ、、」


邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)が攻撃態勢に入ろうとしていた

相変わらず常時発動の<傍受>により邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)の真上には謎の文字列が表示されているが、意味が分からないので何の役にも立たない。


「クソオオオオオオオオオ」


僕は嗚咽した。死ぬと悟った瞬間、時間感覚が圧縮され、時が止まったかのように思えた。

死ぬ直前の前兆というやつだろうか。


そして急に、()()()()()()()()


そう、僕の前世はプログラマだった。

僕は前世で残業200時間を超える会社のプログラマをしていて、世の中のつまらなさに絶望し30歳で自殺した。


(前世もこれで、生まれ変わっても結局ダメなのか、、)


前世のことを思い出した瞬間、もう一つのことを思い出した。

それは、<傍受>で表示されている謎の文字列だ。この文字列は前世で見覚えがある。

そう、それは1()6()()()だ。

なぜこの世界の生物やモノの情報が1()6()()()で表示されるかは分からない。

ただ、今邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)に表示されている文字列は今まで見てきた文字列と前世の経験をもとに断片的に意味は理解できた。


〝右カマ〟〝遠距離攻撃〟〝直線〟〝ソニックブーム〟〝射程8m〟


次の瞬間邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)は右カマを振りかざした。


(やっぱりだ)


僕は必死に後方に走り8mを超える位置まで必死に走った。


シュッッ、ズサ


なんとか体を草原にダイビングし、ソニックブームを間一髪で避けることができた。


(なるほど。この謎の文字列は何かの命令を意味していたのか。)


次に邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)の上部に16進数文字列が表示され、断片的だが以下の意味が理解できた。

〝飛翔〟〝探索〟


なるほど。

どうやら攻撃時に草原に僕がダイビングしたことで敵が僕を見失ったらしい。


そして相手が飛翔すると。以下の意味の文字列が3秒ごとに表示されていた。

〝索敵〟〝範囲42C4DDF2〟〝面積25m^2〟

〝索敵〟〝座標42C4DE12〟〝面積25m^2〟

〝索敵〟〝座標42C4DE22〟〝面積25m^2〟


なるほど。なんとなく僕は頭の中で意味を理解した。

そう、邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)の探索は全体を見渡すのではなく。3秒毎に一定の面積を索敵しているようだ。

そして面積の範囲も頭の中で計算できた。僕はその間隔を見計らって、ちょうど3秒間の切り替えのタイミングで、僕のいた範囲が索敵される直前に、すでに邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)が探索した範囲へと草むらの中をほふく前進で移動した。

邪悪な昆虫戦士(デビルインセクト)は索敵を続けているが、そのまま遠くへ行った。どうやら僕を見失ったみたいだ。


「間一髪でなんとかなった。。。」


体中は汗だくで、一気に緊張が解けた。


(この世界についての構造については謎のままだが、<傍受>さえあれば世界を掌握できるかもしれない。)


そう、この<傍受>は人間に対しても有効なのである。

<傍受>にはフィルタレベルを設定でき、最低レベルのフィルタレベル〝デバッグ〟に設定すると、人間やモンスター、モノが行動しないときも常時大量の文字列が表示されていた。

邪魔なだけなのでフィルタレベルは〝公開アクション〟に設定し使用していたが、〝デバッグ〟に設定し解析をすれば相手の思考までも読めてしまうかもしれない。


だが今はもう考えるのが疲れた。


(とりあえず今はダンジョンを入口まで戻らなきゃな)


僕は敵に気づかれる前に<傍受>によって解析した情報で敵の認知範囲を潜り抜けながら、ダンジョンをなんとか入口まで戻った。


(疲れた。。)

<傍受>の意味は理解できたものの、ステータスはそのままだ。またソロでダンジョンに入ったことも一度もなかった。

集中力にを人生で一番使った。ただただ疲れた。疲れた。


僕はダンジョンを出ると、ボロの宿屋に帰り倒れるように眠りについた。


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ラプル

 歳:  14

 レベル:1


 HP: 50

 MP: 30

 攻撃力:10

 防御力:10

 知力: 50

 素早さ:50


 スキル:<傍受>

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