第7話 チート級スキルのデパートだ!(白目)
冒険者に限らず、この世界の人間は"スキル"と呼ばれる才能、技能を持つ。
スキルは大別して2種類。
7歳になると誰もが神から授けられる才能、"固有スキル"。
鍛錬したり、職業に就くことによって後天的に習得できる"ジョブスキル"。
俺の場合は"光魔法"が固有スキルで、"四属性の剣"は魔法剣士のジョブスキル。
ハモンの場合はモンク僧としての"ヒーリングオーラ"と"格闘術"がジョブスキル。
ヴァージニアの場合は斥候としての"索敵"や"遁法"の他に、個人的に鍛えて習得した"鑑定""開錠"のような盗賊のジョブスキルも持つ。
ジョブスキルは適正としての向き不向きはあるが、本人が望んだものを習得していくことになる。
しかし、どんな固有スキルが与えられるかは文字通り神のみぞ知ること。
当然、本人が望まないものを与えられることも珍しくない。
●●●
酒場で遅めの昼食を注文し、できるのを待つ昼下がり。
「そういえば、皆さんの固有スキルって何っすか?」
アーサーが、そんなことを言い出した。
この前の一件以来、俺たちのたむろす酒場にちょいちょい顔を出すようなったのだ。
客の反吐が床にしみこんでるような最低の酒場。爽やかな笑顔で清潔感あふれるアーサーはかなり浮いているが、本人は気にしていないようだ。
「ちなみに俺のは"指揮"っす。」
「自分の指示で戦う仲間を強化するスキルでござるな。」
「召喚士と相性の良い、便利なスキルだな。
俺は"光魔法"。」
俺が告げると、アーサーは目を丸くして身を乗り出した。
「え、滅茶苦茶すごいじゃないっすか!?
あれでしょ、傷を癒したりとか、味方を瞬間的に強化したり、極めれば多数の敵を光の彼方へ消し飛ばすこともできるっていう……!
確かドラブさん"四属性の剣"も使えるっすよね!? レア中のレア、"勇者の資質"ってやつじゃないすか!!」
「うん、俺もそうやって誉めそやされて育ったんだけどな……
致命的な問題があったんだよ……」
「問題っすか?」
「資質があるのはいいことだ。だけどな?
例えば、普通のスキルはどうやって磨いていく?」
「どうって……指南書を読んだり、誰かに師事したり?」
「『レア中のレア』なスキルを誰に習う?どんな本に書いてある?」
「あっ……」
アーサーが『悪いこと聞いてしまった』と言いたげな表情になった。
「世が乱れてる時代なら、逆に巡り合うこともありそうなものでござるが、今は魔王も邪神も流行ではござらんからなあ。
ちなみに拙僧の固有スキルは"無限成長"。」
「アリっすかそんなの!?
聞くだけで明らかにヤバイやつじゃないすか!!」
「そう思うでござろう?
拙僧も最初そう思っていたのでござる。ところがどっこい、そう旨い話はないもので……」
「?」
「肝心の成長速度が普通の半分なのでござる。」
「え、半分って……」
アーサーの目が尊敬から同情に切り替わった。
「常人であっても、上限目いっぱいまで成長できる者などそういないでござろう。
いわんや、半分の速度ではなぁ……」
「どう考えても無い方がマシだな。」
「え、えぇと……ヴァージニアさんはどうなんっすか?」
気まずげに矛先を変えるアーサー。
「アタシかい?
……あんまり言いたくないんだけどね……」
「? 言いたくないのならかまわないんっすが……」
「ヴァージニアの固有スキルは"神秘の舞踊"だ。」
「あっ、テメエ言うなよ!!」
「"神秘の舞踊"って、あの伝説のヤツっすか!?
荒ぶる魔神を鎮めたとか、勇者と共に戦った巫女が持っていたとかいう、光魔法以上のレアスキル!!
神に捧げる舞を踊ることで、強力なバフやデバフ、治癒効果を発揮するという……!
見せていただいても……」
「絶対嫌。」
アーサーがたじろぐほどの早さで拒絶した。
「ヴァージニアの場合は大した追加効果はないんだ。
ただ、神の舞だからか踊りとしての完成度はすさまじくてな。それこそ見世物として食っていけるだけの腕前なんだが……」
「どうしてか、すっごく下品な感じの踊りになるんでござるよなぁ……」
「下品?」
「だから言いたくなかったんだよ……」
「棒が立ってるステージが良く似合うというか……
多分童貞が見たらノーハンドで出すレベルでござるな。」
「ぶっちゃけ、冒険だの骨董だのよりこっちの方が稼げると思うぜ。
そりゃもう、おひねりガッポガッポ、パンツのゴムに挟んでもらえそうな……」
「それが嫌だから冒険者やってんだろうが!
あんな恥ずかしいモンそうそう見せられるか!!」
「す、すまないっす……」
「いや、アーサーはかまわないんだ。悪気があったわけじゃないし。
そこのロクデナシどもに言ってんだよ!!」
「ホントのことだし。」
「むしろ褒めてるのでござるよ?」
「まったくコイツらときたら……!」
くだらない話をしているうちに、店主が皿をもってやってきた。
「お待ちどうさん。注文の焼き飯だ。」
「お、来た来た。安い割には美味いんだよな、これ。」
「そういえば、店主殿との付き合いも長うござるが、聞いたことはなかったような。
店主殿の固有スキルは何でござるか?」
「"絆の力"。
一緒に戦う仲間との絆が深いほど強くなるスキルだ。」
「「「「……一番主人公っぽい!!」」」」