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第5話 密に秘められし秘密……!(重言)



「やれやれ、ジェミィも無茶を言ってくれる……」


 農村近くの遺跡に潜り、人の形をした泥の塊、"マッドゴーレム"を見つけた。

 マッドゴーレムはまだこちらに気付いていないようだ。


 マッドゴーレムとはその名の通り、体がマッドで構成されたゴーレムだ。

 物理的な攻撃がほとんど効かない一方、体が乾燥するか、逆に水で洗い流してしまえば死んでしまうという、わかりやすい弱点がある。

 力はあるが動きは遅く、Dランクのパーティなら大体安定して倒せると言われている。

 ちなみにDランクは、『冒険に慣れてきた』くらいの冒険者のレベルで、さほど才能がなくてもたどり着けるランクだと言われている。


「『やれやれ』なんて余裕ぶっこいてござるが、普通にキツイのでは?」


「まあ……何だかんだ、どうにかなるだろ。

 一応"四属性の剣"で弱点をつける相手だし。」


「アタシもハモンも戦闘向きじゃないんだから、アンタが頼りだからね?」


「まあ任せておけって。

 よし、行くぞ! 魔法剣"流水鞭りゅうすいべん"!!」


「グオ゛オ゛!?」


 水の流れを鞭のように剣にまとわせ、俺はマッドゴーレムに躍りかかった――!



●●●



「折れたぁぁぁぁぁ!!?」


 魔法剣は文字通り剣に魔法をまとわせる術。

 剣が折れては効果も激減する。


「ソッコーでやられてんじゃないよ!

 何かないの!? 奥の手とか!! 勇者の素質とかいうのがあるんでしょ!?」


「ンな都合よくいくわけ……いや……!?」


「おぉ!? ドラブ殿が右腕をおさえて……

 もしや、その右腕に秘められし力的なのがござるのか!?」


「すまねえ……!

 今まで秘密にしていたんだが……!!」


「リスクがある系の力でござるか!?

 今は非常時! 闇の力でも何でもかまわないから、解き放ってしまうのでござる……!!」


「肘関節に急に激痛が……!

 もともと違和感はあったんだ……!」


「肘に爆弾抱えてたの!?」


「え、何、普通に戦闘不能にござるか!?」


「幻滅しただろう、俺のこんな姿……」


「ホントにな!!」


「何で『怪物の姿になって敵を血祭りにあげた後』っぽいこと言ってござるか!?」


 当然、マッドゴーレムが茶番芝居に付き合ってくれるはずもなく、泥の拳を振り上げる。


「ええい、絶対使いたくなかったとっておきだけど……!

 2人ともどこかに掴まりな! "激流水晶"!!」


 ヴァージニアがポーチから取り出したマジックアイテムを地面に叩きつけた。


「オ゛オ゛オ゛オ”ッ……!!」


 アイテムの名前の通り、何処からか大量の水が湧き出して遺跡の中を流れていった。

 マッドゴーレムはその体を洗い流され、文字が刻み込まれた拳大の石だけが残っていた。


「ゴーレムなんぞ核だけになっちまえば何もできない。これで仕事は完了っと。

 しっかし……」


「使っちまったなあ、マジックアイテム。」


「大赤字でござるな。」


 マジックアイテムというものは、全般的に非常に高価だ。

 今回使った激流水晶は、マッドゴーレム退治の報酬の3倍はする代物。


「クソォ……転売してひと稼ぎしようと思ってたのに……!」


「無許可のマジックアイテム売買は違法だがな。」


遵法じゅんぽう意識が微塵もござらんな。今更でござるが。」


「法がアタシに何をしてくれた!?

 法がアタシを守ってくれないから、アタシも法を破るんだ!!」


「一聴すると『不幸な生い立ちゆえに悪に落ちた悲劇』っぽいセリフでござるが、ヴァージニア殿は普通に普通の犯罪者でござるな。」


「ただの違法売買だから、広義でダフ屋みたいなもんだしな。

 犯罪者の中でも、小者も小者だ。」


「……っていうかドラブ、何で肘爆弾なんて抱えてんだい!?

 普段酒場でくだ巻いてばっかで、ろくに訓練もしてないくせに……!」


「――ずいぶん前の話になる。」



●●●



 7年前。俺には親友がいた。

 そいつと共に遊び、時には互いに競い合いながら、日々を過ごしていた。

 しかし――


「あ、長くなりそうだからいいや。」


「回想キャンセル!?」


「聞くだけ聞いたけど、別にアンタの過去に興味があるわけでもないし……」


「何て言い草!!」


「それはともかく、肘は拙僧の"ヒーリングオーラ"で治療しておくでござるよ?」


「ああ、ありがとう。

 ただ、完治は微妙なとこなんだよな……」


「ううむ……

 普通こういう弱点は、強すぎるサブキャラが主人公の出番を食わないためにあるのでござるが……

 別に強くもないのに弱点持ちとは……」


「世の中、英雄譚ものがたりみたいなわけにはいかねえなぁ。」


「素質だけなら主人公っぽいのにねぇ。」



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