第1話 イカした仲間を紹介するぜ!
この世界には伝説がある。
なんでも、かつて世界が危機に陥った時、勇者があらわれて世界を救ったという話だ。
勇者は歴史上三回現れ、その全員が"光魔法"と"四属性の剣"の使い手だったらしい。
「おおぉ……! その輝きは紛れもない"光魔法"!」
俺は村長の前で、自分の固有スキルを使ってみせた。
誰もが神によって授けられる才能、"固有スキル"。
7歳の誕生日に発現し、その種類は千差万別。
人生を左右する重要な才能が、俺の場合、勇者と同じものだという。
「村長、それだけではありません。
ウチの息子……ドラブはわずかながら、魔法剣も使えるのです!」
「何、魔法剣を!?
ならまさか、"四属性の剣"も……」
「使えるようになる可能性は、十分にあります。」
「おぉ! わが村から勇者が出るかもしれないのか……!」
「ねえ父さん、俺が勇者になれるの?」
「ああ。ここみたいな辺境は平和なものだが、なんでも西部ではモンスターが年々増え続けていると聞く。
もしかしたら世界は危機に向かっていて、ドラブはそれを救う宿命を持った勇者かもしれない。
怖いか?」
「ううん。俺にそんな力があるなら、みんなを助けるために使いたい!!」
「うぅ……! わが子ながら、なんて立派な志……
たとえ勇者になれなくても、お前ならきっと人々を守れる冒険者になれるぞ……!」
「うん!!」
●●●
という感じですくすくと育てられ、18歳になり、冒険者になるため村を出たのが1年前のことだ。
今の俺はというと……
「ヴァージニアはどうした?」
俺は酒場のドアを開け、先に来ていた仲間に声をかけた。
「彼奴なら酒代が尽きたとかで、小遣い稼ぎに出てござるよ。」
俺の仲間の一人。ござる口調のモンク僧、ハモン。
「何だ、またウリでもやってんのか。」
言い終わる前に背後から蹴り飛ばされた。
「痛ぇじゃねえか、ビッチニア。」
「誰が淫売だ! アタシはまだ処女だよ!!
あと、わざわざウリとか嫌な言い方すんな! "鑑定"スキル使っての骨董転がしだっての!!」
俺のもう一人の仲間。女|斥候<スカウト>、ヴァージニア。
「だってお前、その恰好でヴァージニアはネェよ。」
際どいローライズのホットパンツに、ギリギリ胸を隠す幅しかないチューブトップ。
どこに出しても恥ずかしくないんだか恥ずかしいんだか、立派な『そういう商売の女』にしか見えない。
「冒険者なんてだいたい似たような恰好だろうが!
Aランクの"聖女"だの"剣聖"だのだって大概だろうよ!!」
後ろで聞いていたスケベそうなオッサンが無言で頷いていた。
「そりゃ服装だけならそうかもしんないけど……
こう、雰囲気というか空気感というか……ぶっちゃけ顔も体つきもビッチっぽい。」
「言ってくれるじゃねえか『チンドン屋』!」
「あっ、テメッ、それ言うか!?」
「あぁ、言ってやるね、『ピカピカ光って派手なだけのトンチキ野郎』が!!」
「人が一番気にしてるトコ突きやがったなァァ!!?」
この女良心がねえのか!?
「まあまあ、ドラブ殿もヴァージニア殿も、それくらいにしておくでござるよ。
ゴロツキとアバズレが言い争っても見苦しいだけにござる。」
「ハモン! 何『自分だけマトモです』みたいな口きいてやがる!!
テメエが飲んでるそれは何だ!?」
「これは般若湯という煎じ薬でござるよー。」
「酒の隠語じゃねえか!」
「こないだの盗賊退治では、随分楽しそうにボコボコになるまで殴りまくってたよな?」
「殺してないからセーフでござるよー。」
「テメエがしょっちゅう女に金渡して宿に連れ込んでるのは?」
「あれは迷える者に説法しているだけにござるよー。」
「びっくりするほど破戒僧じゃねえか!!
もはや『生臭坊主』って概念に手足が生えて歩ってるようなもんじゃねえか!!」
「ていうかアンタ、いつも女とみりゃあフニャフニャしてるクセに、何でアタシには当たりが強いのさ!?」
「いや、拙僧、ヴァージニア殿では勃たぬというか……
アマンダちゃんみたいな清楚系じゃないと……」
「それアンタが入れ込んでる嬢だろうが!
商売女に清楚もクソもあるかァ!!」
「いや、アマンダちゃんは手を握るのも恥ずかしがるような初心な娘で……」
「最終的にはナニを握ってるんだろうがァ!!」
「お客さん、そういった話はせめて小声でしていただけませんかね?」
店主は、言葉遣いだけは穏やかながら、殺気だった目を向けている。
「「「あっハイ、スンマセン……」」」
ここの店主は元Bランク冒険者で、今でも鍛え続けている体は筋骨隆々。
俺たちのかなう相手ではない。
「……えーと、本題に入るか。」
「なんか良い仕事でもあったのかい?」
「ああ、これだ。」
黄ばんだ質の悪い紙に、かすれた文字。
低ランク冒険者用の読みにくい依頼書をテーブルに置いた。
「……E・Fランク合同、ゴブリン駆除作戦?」
「あまり割の良い仕事には思えんのでござるが?」
「贅沢言ってられるご身分かよ。
上のランクの奴らと合同な分、リスクが少ないんだから上等な方じゃねぇか。」
「まあ、アタシの小遣い稼ぎもたかが知れてるし、ここらで一仕事しとかないとヤバイかぁ……」
「ハモンもツケが溜まってんだろ?」
「ううむ……アマンダちゃんに会いに行くためにも、面倒だが我慢のしどころでござるか……」
「よし、決まりだな。
どうせ上のランクじゃ通用しない俺たちだ、適当にやって適当に稼ごうぜ。」
故郷の父さん、母さん。
村一番のツワモノだと、父さんの自慢の息子だった俺は……
残念ながら、クズい仲間とつるんでグダグダやってるような、Fランクが定着したダメ冒険者になってしまいました。




