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男装令嬢の放課後のおつとめ

 放課後。授業が終わりおのおの自由になれる時間。

 大部分は寮へそのまま帰っている。寮内でのんびり過ごしていたりする。

 熱心な生徒は教師にさらに勉強を教えてもらっているものもいる。


 アレクシアも分からないことがあれば教師のところへ行くこともあるが、放課後は生徒会のお仕事として学院の見回りをしている。

 広い学院内を全て歩き回ることができないが、校舎とその周辺を見てまわる。


 校舎内を歩くと、女生徒たちからごきげんようとあいさつをされる。

 アレクシアもそれにならってごきげんようとかえす。

 昔なら目が合ったらそらされていたのに、今はアレクシアを見るなりよく微笑まれる。

 アレクシアでいるときよりも随分かわるものだと思う。


 アレクシアの男装は、長い黒髪をみつあみにしているだけだが、一部をのぞいて正体はばれていない。

 髪をほどけばもとの髪型に戻るので、そうなるとさすがに気づかれるとは思う。


 窓にうつる自分の姿を見る。

 父親によく似た顔がうつっていた。黒髪に切れ長の紫の瞳が。

 髪をまとめると父親によく似ている。長い髪はみつあみでまとめており、深い青色のリボンで結んである。

 アレクスの姿でいると父親によく似ていると言われるようになった。

 男であれば少し小柄な身長になるが、女ならば背が高い。


 なにもしなくても令嬢たちを威圧するような態度だった。

 父親ゆずりの目が上から見下されると、令嬢たちは声が上げられなくなるらしい。

 別にそのつもりではないのだが、おとなしい――いや、慎重に言葉をつむぐせいか恐怖を与えるらしい。

 男性がただと高嶺の花を見ているようだと遠巻きに見られていた。いつもそばにいるのは王子のエリウスだけだった。


 この顔に不満があるわけではないが、母親が非常に気に入っており、家では母親がべったりされていた。

 父親ゆずりの顔の娘。大好きな旦那さまとうりふたつなので、似合うかもといろんな服を着させられた。

 今まではドレスばかりだったが、今回男装するにあたり喜々として服を選んでいた。

 父親の一声で学院に通う服は制服になったので、アレクシアはきせかえ人形になることもなく指定の制服を着ている。そのかわり制服以外は母親の好みで揃えられた。


 学院は大部分の貴族が通っている。一部に平民が通っているので制服が定められているが、ネクタイかリボンを最低身につけていればあとは好きにしてもいいので、制服を着こなすのは平民と相場が決まっていた。

 アレクシアは公爵令嬢であるが、「アレクス」は平民出身という設定なのであえて制服を着ている。


 アレクス・ロイエル。ロイエル家に養子に入ることになった、父親の遠縁の子。

 父親によく似ているからということで引き取られたということになっている。

 アレクシアが学院を退学させられてしまったため、アレクスを跡取りにしようと養子にし、アレクシアと入れ替わりで学院に通うことになった――ということになっている。


 ***


 校舎内をひととおりまわり、校舎の外に足を踏み出す。

 ぐるりとまわったあとは、はなれの生徒会室へ行くことになっている。

 校舎内は特に問題はなく、すれ違う生徒たちとあいさつをかわしていった。


「ごきげんよう、アレクスさま」


 外でも何人かの女生徒とすれ違うのでそのたびにあいさつされる。

 男子生徒とは目を合わせて会釈してすれ違う。

 今はアレクシアは平民となっているが、特に言いがかりをつけられたことはない。

 家のこと考えればむしろよくやっているやつだと思われている。



 どこから女生徒の声が聞こえてきた。

 どこか言いがかりをつけているような、一方的に言い放つことばだ。

 声のほうはアレクシアが向かっているほうから聞こえている。

 聞き耳を立てるわけではないが、状況が飲み込めないうちから顔を出すのはいけない。

 生徒会のお仕事になりそうだ。


「あなたみたいな子がいるなんて不釣り合いなのよ」


 似つかわしくない、身分に合っていない。

 学院は将来国のために働いてくれるようにと貴族を中心に門戸が開かれているが、優秀ならば平民も入学することができる。

 費用の問題があるので資産がある家が後見人となって入学することが多い――優秀な平民の力を見込んだ側も周囲の目がよくなるので、積極的に優秀な若者たちを学院に通わせている。

 それゆえ後ろ指を指すことは場違いではあるが、ここに通える平民は優秀すぎるのもあり、特に能力が高くない貴族からはやっかみを受けるものだ。

 後見人の家やうまく貴族に取り入ることができれば、やっかみを言われることはなくなるのだが、相手の子はどうやらそうではないらしい。

 アレクシアはその相手に心当たりがある。

 学院に入学できるだけではなく、先生の特別授業にも受けられることができる優秀な平民の生徒に。

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