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第一章 第7話 南東ダンジョン

日本とは違う、外から騒がしい声が聞こえてくる。

家の中からも俺を起こしに来る声が聞こえる。

異世界に来てから、もっとゆっくり寝たいと思う。




「モカ、起きて」



「ココアさん、起きてください!」




もはやこれが日課になっている。


今日は南東のダンジョン。

一体、どうしたものだろう。

俺は先日の洞窟探索で、既に2回も死んでいる。

カナの蘇生が無かったら、今頃どうなっていたのだろう?



そんな事を考えながら食事をする。



「あー、そう言えば、アイリスさん、アイドルギルド『海心(かいしん)』を卒業するんだって」



「あー、私もさっき外の人達が話してるのを聞きました!」



「にゃも?」



「モカ、あんたはもっと周りに興味や関心を持って」



「そーいうカナはそろそろ名前を覚えろ」



「まぁ、とにかく、近いうちに卒業ライブをやるって、今街はその事が話題になってる」



アイリスさんは、本当に凄い。

この国の有名人だ。




「あ、話変わって本題に入りますけど、今日のダンジョン、スライムが居るみたいですね」



「ブォッ!ゲホッゴホッ!」



「カナさん、今回もココアさん、ピンチになるかもです」



「しょうがない。またお姉さんが護ってあげる」



「いや、護れてねーよ!何かしてくれたとしたら蘇生だろ!」




なんだかんだ言いながら俺達は南東のダンジョンへ向かった。


その道中、アイリスさんが卒業するという話題が至る所で飛び交っていた。



ダンジョンに着く。


「これが、ダンジョン!?」



どう見ても普通のマンションだ。

看板にはこう書いてある。



『南東マンジョン』





「いや、誰か住んでそう....てかネーミング、マンションとダンジョンが合体してるようなネーミングだな...」


さすがに絶句した。

中を覗いてみると、横幅が思ったより狭い。車1台分の幅しかない。



「えっと、この本によると、5階建てのダンジョンで、1回は入って直ぐにスライムが2体現れるから、注意せよと!」



「いきなりスライム?」



「大丈夫。お姉さんが先に入るから」



カナが先に入る。

すると、ほんとに直ぐだった。



「ピュオーー!」「キュオーー!」




スライムが2体現れた。

カナが攻撃耐性に入る。



「抱いてあげる。 5秒の夢は2秒で終わる。水の斬撃(ウォータースラッシュ)



ザクッザクッ


「これが現実」



「ムニュ〜」「ムニュ〜」



あっという間に2体倒してくれた。


「カナさん、ココアさん、10歩くらい歩いたらイノシブシが5体現れるそうです!」



「次は俺がやりまーす!」



本当に10歩くらい歩くと、



「「「「「グオオーー!!!!!」」」」」



イノシブシが現れた。

俺はすかさずスキルで攻撃。


「氷柱!!」



ザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッザクッ!!!




ドタッ、「ギュオッ!」



もはやイノシブシは敵ではない。



「次はスライムが4体です!」




「スライムはお姉さんが倒すから、モカは他の魔物をお願い」



「YES!はい!喜んで!off course!あと、ココアだから!」



少し歩くとミルクの言う通り、スライムが4体現れた。



「精霊召喚!」



「「「ペガ〜〜〜!!!」」」



「おー、心強い精霊達!」



「ライ、フウ、スイ、スライムの足止めをお願い」



「ライ〜!」「フウ〜!」「スイ〜!」




「まず最初ね。抱いてあげる。 5秒の夢は2秒で終わる。水の斬撃(ウォータースラッシュ)


ザクッ

「これが現実」



「ムニュ〜」



「カナさん、精霊さん達、私もやります!」



ミルクが珍しく自分から戦いに参加した。



「ひゃうんっ!魔法攻撃!魔法攻撃!魔法攻撃!」


ドンッドンッドンッ



「「「ムニュ〜〜〜」」」



ミルクがスライムを3体倒した。

すると、その奥に階段があった。



「この階段を上がると、2階です!ゴブリンという魔物が現れるそうです!」



「ゴブリン?緑色のヤツ?」



「えっ、モカ、あんたまさかゴブリン見た事ないの?」



「無いわ!」



「ゴブリンは、武器や格闘技とか、多彩な攻撃してくる魔物だよ?」



「この本によると、カナさんが言う通りで、1つ付け加えると、ゴブリンは集団で生活しているから、連携攻撃とかしてくるそうですよ!」



ゴブリンとはそこそこ知識がある魔物のようだ。

とりあえず階段を上がる。


階段を登る終わる少し手前でミルクが言った。



「カナさん、ココアさん。この本によると、だいたい20体くらいのゴブリンが居るそうなので、私が全属性攻撃(フルアタック)で一気に吹っ飛ばしちゃっても良いですか?」



「どうしたミルク。今日めっちゃ張り切ってるな」



「そうよミク、なんでそんなにやる気なの?」



「新しいスキルが楽しみすぎて!」



「「あーー」」



階段を上って右に曲がると少し奥に、ゴブリンであろう緑色の物体がうじゃうじゃ居た。


こちらには気付いていないようだ。



「後ろからでごめんなさい!ひゃうんっ!全属性攻撃(フルアタック)!!」



ドガーーーーン!!!



「「「「ギュオーーーーーー!!!」」」」



「なんかちょっと可哀想....」



「ミクさすが。お姉さんが褒めてあげる。ヨシヨシ」



「えへへっ!」



2階に居たゴブリンは全滅させた様で、なんなく次の階段に着いた。

ミルクが言う。



「この本によると、3階に敵は居ないみたいですよ!」



「敵が居ないダンジョンなんてあんのかよ....」



「まぁ、モカ、居ない方が楽だよ」



「そうだけど...。あと、ココアな!」



階段を上がって今度は左に曲がる。

3階を通っていて気付いた。

普通に部屋が沢山あった。

どう考えてもダンジョンというより、ただのマンションに魔物が住み着いた様に感じる。

なんなく次の階段に辿り着いた。

階段の途中でミルクが言った。


「この本によると、4階は死のエリア、沢山のイノシブシとゴブリン、スライムが居るって、書いてます!」




「マジか...。またミルクが一気に吹っ飛ばすのはどーなんだ?」



「階段を上がって直ぐに敵が居るそうなので、全属性攻撃(フルアタック)はできないと思います」



「となると、スライムに注意しながら戦わないとなー」



「大丈夫。お姉さんがあいつらを惹きつけるから、お姉さんごと吹っ飛ばして」



「何を言ってるんだ?」



「そーですよ!カナさん何言ってるんですか!」



「いや、お姉さんにはスキル・絶対防御がある。だから大丈夫」



そう言ってカナが飛び出して行った。



「カナさん!」



魔物達がカナに気付いた。



「スキル・威嚇、と、スキル・絶対防御」



魔物達がカナを見て後ずさった。

その隙にカナは真ん中くらいまで走って行った。

だが、数が多いからなのか、一瞬後ずさった魔物達が一気にカナへ襲いかかる。


「・・・位置がわるい....」


「カナさん....」



「考えてる暇はないな、ミルク!頼むぞ!」



「で、でも...」



ミルクは震えている。


「スキルの効果が切れたら、いくらカナに攻撃を3分の1にする特性があるとはいえ、やられるのも時間の問題だ!それにスライムも居る。だから頼むミルク!」



「嫌です!」


ミルクは涙目になっている。


すると、奥からカナが珍しく大きな声を出した。


「ミク、大丈夫だから、お姉さんごと吹っ飛ばして!」




「カナ、さん....」



「もうすぐスキル絶対防御が切れる、だからミクお願い」


カナがどんどん魔物の中に埋もれていく。


「ミク、早く!」




「カナさん......。ごめんなさい・・・・・・」



「頼むぞミルク!」




「ひゃうんっ!カナさんから離れて〜っ!全属性攻撃(フルアタック)!!」



トガーーーーーンッ!!!



カナも含め、魔物も全て吹き飛んだ。

ボス戦でもないのに厄介なフロアだった。

次の階段の前に着く。

魔物達が山のように倒れている。



「か、カナ...さん.....」



ミルクは腰が抜けたのかその場に座り込んでしまった。



「ゔゔゔゔゔぅぅぅ」



「ったく、お姉さんもさすがに焦ったよ」



魔物が山ずみになった所から声がした。

そして、魔物の下から手が出てきた。



「ひゃうんっ!」



「あたしだよ。後10秒で絶対防御の効果が切れるとこだった」



「カナお姉さん!!」



カナは無事だった。ミルクはすかさずカナに抱きつく。



「ヨシヨシ。次がボスでしょ?まだこのダンジョンは終わってないよ」



「ゔゔぅ、はい。次はキングゴブリンと呼ばれる、かなり物理攻撃力に特化した魔物だとか....」



「それなら俺1人でやるよ」



泣きじゃくるミルクをカナが背負って、何とか最上階に着いた。

扉を開ける。




緑色の少し大きめのゴブリンが現れた。


「2人はそこに座ってて」



すると、キングゴブリンが何か言った。


「ニンゲン、カ」



「喋った?」



「キングゴブリンには喋れる程の知識があるそうです」



その手には何か大きな木の棒を持っている。


「ドウホウ、タチヲ.....ユル、サン、ギャルーーー」



そう言い放った瞬間、キングゴブリン俺に棒を振り下ろす。



カーーーン!






「悪いな。物理攻撃は一切効かない」



「ナ、ヌ、ヌオオー!」



「氷の世界へようこそ。冷たい斬撃(コールドスラッシュ)!」



ザクッ



「グオオーー」



ドタッ



キングゴブリンを倒すと宝箱が現れた。


カナとミルクも宝箱の前まで来た。



「じゃ、開けるよ」



パカッ



すると、久々に見る、タブレット画面の様な物に文字が浮かび上がった。




『スキル・吹雪を獲得しました。』


『吹雪・強い雪の風を吹かせ、凍らせながら敵を吹っ飛ばす。』



「また妨害系のスキルか〜」



「あ、お姉も何か貰えた」


『スキル・熱無効化を獲得しました。』

『熱無効化・炎や熱による攻撃を無効化する。』



「それ、結構良いじゃん!」


「あの、私も何か貰えました!」


『スキル・魔法の鎖を獲得しました。』

『魔法の鎖・大きな敵の動きを少しの間止める事が可能。』



「よし、スキルが手に入った事だし帰ろっか!」



俺達は来た道を戻る。

戻りながらやはり思う。


「普通にここ、住めるんじゃない?」


「あー、確かここって、300年前まで人が住んでたけど、魔物に占領されてこうなったらしいよ」



「魔物のせいで、住めなくなるのか...」



「この本によると、魔物から発せられる邪気によって、少し建物の形や雰囲気が変わったりするみたいですよ!」



「なるほど。魔物の邪気によってダンジョン化したのかー」



という事は、ダンジョンになってしまった場所は全て魔物が住み着いたから。魔物が住み着か無かったらただの洞窟や、ただの家。

そう思うと、魔物はなかなかタチが悪い。



マンジョンを出る。

すると、カサカサッと茂みから音がした。

そして俺の目の前に1匹のスライムが現れた。


「あっ、あー」



俺はもう諦めた。次の瞬間、意識が完全に無くなった。



またやられてしまった。




〜〜〜〜※※※※※※※※※※〜〜〜〜




どのくらい経っただろうか。

また笑い声が聞こえてきた。


俺はゆっくり目を開けた。




「ココアさん起きた〜」



「またスライムの上に倒れるなんて、本当にココアホね」




「・・・・・・人がまた死んだのに心配してくれないのかよ....」




「あのね、ダンジョン内のスライムは凶暴だけど、野生のスライムは犬みたいな感覚だよ?」




「・・・どうゆう意味?」



「野生のスライムは基本的に敵意は無い。というか、戦わないように、静かに暮らしてるの」



「つまり?」



「あんたが覆いかぶさったさっきのスライムも、この前のスライムもめちゃくちゃ謝ってたよ」



「.....................」



俺は言葉が出てこなかった。

悪さをする為ではなく、ただ、たまたま出くわしただけという、スライムにも申し訳ない。



「まぁ、カナさんの蘇生のおかげで大丈夫そうですし、早くギルド協会に報告に行きましょう!」




カナに前を歩いてもらい、無事にギルド協会に着いた。

報告を終え報酬を貰う。

ギルド協会もなんだか騒がしい。

まぁ、話の内容は言うまでもなく、アイリスさんの卒業についてだった。



「なんで卒業するんだろう?こんなに人気なのに」



「確かに気になる。アイドルは、だいたいの人は25歳で辞めるのに、アイリスさんはまだ23歳だし・・・・・・」



すると、トワさんが話に入ってきた。



「アイリスさんの卒業の理由などは、卒業ライブの日に発表するらしいですよ」




「ちなみに卒業ライブはいつですか?」



「明後日だと伺っております」



「早っ!」





という事で、俺達3人は、明日は魔物討伐の依頼を引き受け、明後日は、アイリスさんの卒業ライブを観に行く事にした。



街は大盛り上がりだった。

今回も読んでいただき、ありがとうございます。


また、感想や、評価、ブックマークなどもよろしくお願い致します。

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