第一章 第4話 異世界No.1アイドルの護衛
「モカ、早く起きて」
誰か女の人の声が聞こえる。
「朝だよ」
俺を起こしに来たのは昨日俺達のギルドに入ってくれたカナだった。
「おはよ、う?」
「寝ぼけてないで早く来て。ご飯できてるから」
美味しそうないい匂いが漂ってきた。
俺は食事をする部屋へ入る。
「あっ、ココアさん!おはようございます!」
「あー、ミルクおはよう」
「ココアさん。カナさんが作ってくれたご飯、物凄く美味しいですよ!」
「モカ、早く食べて....。今日は護衛任務なんだから」
「ココアだ。あ、護衛...。今何時?」
「今は朝の8:00です!」
「何時に行くんだっけ?」
「9:00に挨拶。だから急いでモカ」
「にゃもっ!やべーじゃん!急がなきゃ!」
「やっと目が覚めた?」
そうだった。今日はアイリスさんの護衛をしないといけないのだ。急いでご飯を食べる。
「うわ、めっちゃ美味しい.....。」
「そりゃね。料理も師匠に教えてもらったんだから」
美味しかったけど、急がないと行けなかったので、あまり味わって食べる事が出来なかった。
朝8:35。家を出る。
外に出て思った事がある。
「いつもより人通り少なくない?」
「あー、確かに少ないですね」
「そりゃね。今日はバトルライブの日だから、みんなステージの準備とか、明るい時に彼女たちを人目見ようと会場に集まるからね」
「ライブは夜だろ?早すぎない?」
「それだけのイベントなの。今日は」
俺達はまずギルド協会に行った。
トワさんが待っていた。
「ギルド・ミルクココアさん、今日は年に一度のライブの日です。よろしくお願い致します。資料はこちらで用意致しました。」
トワさんに書類を貰い、そのままトワさんを通して『アイリス』さんのもとへ向かう。
その会場には、既に沢山の人達で溢れかえっていた。
「この中にアゲツネってのが紛れてるかもしれないのか.....」
「でも、何とかしないとです!」
「そうだよ。このライブが命って人も結構いるからね」
会場の裏側から中に入った。
そして、控え室であろう所に着いた。
トワさんがドアをノックする。
コンコンッ
「アイリス様、ギルド・ミルクココアを連れて参りました」
中から声が聞こえた。
「はーい!どうぞお入りください!」
明るい綺麗な声だった。
扉を開けて中に入る。
「こんにちは、アイリスです。今日はよろしくお願い致します」
その人は、まるでアニメの中から飛び出してきたかの様な美人だった。
その人はヒューマン。髪は桜の様なピンク色で、腰くらいまでの長さ。
瞳の色も癒される様なピンク色。
ツイ見とれてしまうほど綺麗な人だ。
「えっと、ギルドマスターさんはどなたですか?」
「あ、俺です!」
「まぁ、想像していた人と大分違いますね〜!」
「想像?」
「はい。あの極寒ダンジョンを素手でクリアしたと聞いていたので、てっきり大柄の男の人かと思っていました。でもこんなにかわいらしい人で良かったです!」
「ーーーー神っ!」
「ところでギルドマスターさん、あなたがたのお名前は?」
「あ、俺がココアって言います。そして、こっちの魔族の娘がミルク、冷静そうなエルフの娘がカナって言います」
「あ、あの、ミルクです」
「カナです。よろしくお願いします」
「私の名前はアイリスと言います。皆さんはご存知でしたか?」
「え、あっはい!」
「いや、モカ、あんたは昨日まで知らなかったでしょ?」
「おいっ!それは言っちゃだめ」
「私もまだまだ未熟という事ですね.....」
「あ、いやそんな事ないですよ!てか、美人過ぎてアイリスさんが眩しく見えます!」
「ふふっ。ありがとうございます」
「えっと、とりあえず俺達はアイリスさんの護衛と言う事で良かったですか?」
「はい。よろしくお願い致します。それと、私のギルドメンバーの娘達も紹介しますね。着いてきてください」
アイリスさんに言われて後を着いて行った。
少し歩いたところに扉があった。
「ここが、私達『海心の控え室です』」
アイリスさんが扉を開けて目に飛び込んで来たのは、それはまるで天国。夢のような癒しの世界だった。
「紹介します。この金髪エルフの娘が・・・」
「初めまして!キラリンことキララで〜す!」
「この赤髪魔族の娘が・・・」
「こんにちは、マナミンことマナミです」
この魔族の娘にはしっぽとツノがある。
「そして、緑髪の獣人の娘が・・・」
「エリシャことエリシヤです!よろしくね!」
俺と同じ種族のようだ。
「最後に、青髪魔族の娘が・・・」
「スイちゃんことスカイランです。お願いします!」
この娘にはしっぽとツノは無い。恐らくハーフ。
「以上、この5人で『海心』です!」
この光景はもうアニメの世界。テレビの中へ入ったみたいな感覚だった。
俺達はまたアイリスさんがいた部屋に戻り打ち合わせを始めた。
「では、改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
「今日のライブの順番は『秘めた力』、『Meisou』、『Masaka』、そして最後に私達『海心』です」
「ライブを辞めようとは思わなかったのですか?」
「年に一度のライブですし、ただの脅迫という可能性もありますので」
「まぁ、そうですけど....」
「会場警備は大丈夫でしょうか?」
「はい!俺とミルクで引き受けます!カナがアイリスさんの付き添いをします」
「ですが、毒蜂を100匹ちかく倒したと聞いていましたので、てっきり、人数が多いのかと思って依頼したのですが....」
「あ、こう見えて俺達、少数精鋭ですのでそこはご心配なく!」
「そうですか。頼りになりますね」
「あ、そうだモカ」
「ココアだ!」
「精霊達にも会場の警備をさせるよ」
「にゃも?精霊?」
「精霊召喚!」
パーッと辺りが光出した。すると、青、黄、緑の光が現れ、それぞれが小さいペガサスの姿になった。
「おー!」
「カナさん凄い!」
「紹介する。青色の子が『スイ』、黄色の子が『ライ』、緑の子が『フウ』。それぞれ水、雷、風属性の精霊達」
「「「よろしくペガ!!!」」」
「おお!喋った!可愛いじゃん!」
「もし不信な人を見かけたらこの子達が知らせてくれる。2人が見つけた時も直ぐに駆けつけてくれるから頼ってあげてね」
早速、3匹のペガサスには不審な人がいないか捜してもらうことにした。
3匹は各々飛んで行った。
俺とミルクも外の警備に行く事にした。
「それじゃあカナ、頼むぞ!」
「2人も気を付けて」
俺達3人は別行動になった。
今はまだ朝の10:00。まだまだ時間としては早い。だが、この人混みを利用して、今のうちからアイリスさんを攫う準備をしているかもしれない。
「・・・・・・今のとこ怪しいヤツは....」
特に何の気配も感じなかった。
だが、
「おー!兄貴〜」
「ココアの兄貴じゃないですか〜」
それは、カナをバカナと呼んでいた、変態ドM2人組、ガウンとゲインだった。
寄りにも寄って変態ドM2人組に遭遇するなんて....。
「兄貴もライブ見に来たんですか?」
「分かりますよ、ライブは夜だってのに朝来てしまうもんですよね〜」
「お前ら詳しいのか?」
「そりゃもちろん!年に一度のビックイベントですよ」
「みーんなこの為に生きてる様なもんですよ〜」
「そんなに、か.....?」
「中でも1推しはアイリス様ですよ!」
「そうそう、人間を通り越してもう神様ですよ〜」
確かに、変態ドMが言う通り、みんなもうライブの話や推しの話で盛り上がっている。
俺もゆっくり見てみたいが、今日はそれどころでは無い。アゲツネとか言うやつを捕まえなくてはならないから。
「じゃあな。変態ドM2人組!」
「はぁ〜最高ですぜ〜」
「ぐふふふふっ、たまりませんな〜」
変態ドM2人組を後にして、俺は捜索を続けた。
昼12:00。カナからリハーサルが始まるという連絡があった。
「今の所居ないんだよなー....」
「「「キャーーー!!!!」」」
「「「アイリン!!!」」」
「「「アリスちゃん!!!」」」
「「「アイリス様〜〜〜!!!」」」
リハーサルだと言うのに大盛況だ。
アイリスさんはファンによってはいろんなあだ名で呼ばれているらしい。
「ーーーこれは、攫われたら大惨事になるぞ....」
さすがに焦った。この人気は計り知れない。
攫われたりでもしたら、俺達がこのファン達に襲われるだろう。
あれから6時間以上経ったが、特に怪しい人は居ない。
夜19:00。ライブが始まる。
最初は『秘めた力』。
ヒューマン、魔族、エルフ、獣人(犬)の4人組男子アイドルギルド。
歓声が沸きあがる。
「「「キャーーー!!」」」
「「「ミナト様〜!!!」」」
ギルドマスターは獣人(犬)の様だ。
「それじゃあ行こうか!!『リミット解除』!」
「「「ワーーーー!!!」」」
「「「キャーーー!!!」」」
『秘めた力』のライブは無事終わった。
そして、次は『Meisou』。
エルフと獣人の女子2人組だ。
「「「キャーーー!!!!」」」
「それでは私達の歌を聞いてくだい! 『スキルアップ』」
「「「メイカちゃんーん!ムーシュちゃーーん!」」」
無事にライブが終わる。そして次は『Masaka』。
「「「キャーーー!!!」」」「「「ワーーーー!!」」」「「「待ってましたーーー!!!」」」
「「「「オルフ様〜〜〜!!!」」」」
アイリスさんと同じか、もしくはそれ以上の歓声が沸き起こった。
その男子3人組のギルドは獣人(狼)、魔族、エルフだった。
ギルドマスターは獣人(狼)オルフの様だ。
エルフの人は爽やかな人で
魔族の人はいかにも冷静って感じの人だった。
獣人(狼)が言う。
「待たせたな!」
「「「「きゃーー!」」」」「「「オオーーー!!!」」」
「俺達は何者だ?」
「「オルフ様〜!!」」「「「勇者様〜!!」」」
「俺達は3人で最強のギルド!」
「「「「「Masaka様!!!!」」」」」
「人気だな〜。というか勇者?」
「聞いてくれ!『Masakaのまさか』!」
「「「キャーーー!!!!」」」
とても熱い歌だった。
その『Masaka』のライブ中、走って舞台の裏側に行く何かが見えた。
俺はそいつを追いかける。
「まてー!」
走っていた人が止まった。
こちらを振り返る。
「私に何か用?」
それは女の狐の獣人だった。
「あんた何者?」
「私は盗賊アゲツネ!」
なんと犯人を見つけてしまった。
「アイリスさんからの依頼があってな。あんたを捕らえる!」
「ふっ、逆に捕らえるわ! 百年の孤独・・・」
何やら光るロープが現れた。
その光のロープが俺を縛る。
「うっ、なんだこれ.....?痺れる」
「それは雷で作ったロープ。動くと身体に電気が流れるわ」
「マジか、、、」
「そこで大人しくしてなさい」
アゲツネがこの場から離れようとしたその時、空から黄色い光が降ってきた。
「ペガーー!!」
それはカナが召喚した雷の精霊の『ライ』だった。
すると、ライが、俺に絡みついた雷のロープをかじりだした。
「ガブガブッ」
どんどん電流の威力が弱まってきた。
そして、
「はー、美味しかったライ!」
「にゃも!? 食べちゃったの?」
「僕達精霊は、自分の属性と同じ属性のものを食べると、それを吸収して、一時的に自分のエネルギーに変えることができるのライ!」
「・・・まさか精霊を使えるなんてね」
向こうも驚いている。
「あなたの事をあまく見ていたわ。こちらも精霊を召喚してあげる」
「コーン!!」
狐の精霊が現れた。
「キネ、影分身」
「任せるコーン!」
アゲツネが5人になった。
「ならこっちは、凍結!!」
俺は5人になったアゲツネの足元をすかさず凍らした。
すると、5人のうち、4人が消えた。
「キツネちゃん確保!」
「ッ!なんで邪魔をする!」
「あんたこそ。なんでアイリスさんを攫おうとした?」
「あの女は売ったら高値で売れるの。盗賊からしたらアイリスは宝の山なの!」
「そんな理由か....」
「早く離せ!」
「氷の芸術、氷の縄」
「何をする!」
「とりあえずアイリスさんの元に連れていく」
「離せ!」
俺は暴れるアゲツネをそっちのけで、ミルクとカナに連絡した。
「ミルク、カナ、アゲツネって人を捕まえた。今からそっちに連れていく」
「えー!ココアさん、捕まえたんですか?」
「捕まえた!」
「お姉さんの精霊、役に立ったでしょ?」
「ライが大活躍だったよ!」
ミルクとカナと合流した。
それと同時に、海心がステージに上がった。
「「「キャーーー!!!」」」「「「アイリス様〜〜〜!!!」」」
「「アイリン!!!」」「「アリスちゃーん!!」」
とてつもない声援だった。
「皆さん、今日は私達海心と盛り上がって行きましょう!」
「「「キャーーー!!!」」」「「「海心!!!」」」
「それでは聞いてください。『私達のステージ』!」
歌が始まった。観ている人達は完全に海心1色になっていた。
俺は思っていた事をカナに聞いてみた。
「カナ、さっき舞台にいたMasakaってギルド、勇者って呼ばれてるって事はそんなに凄いの?」
「モカ、本当になんにも知らないの?あのギルドはアイドルしてるけど、現役の勇者。今の最強ギルドだよ」
「にゃも!?」
今日1番の驚きだった。
そんな事を話していると、ステージが終わった。
観客からは、
「「「アンコール!!」」」「「「アンコール!!!」」」「「「アンコール!!!」」」
「それではもう一曲だけ、聞いてください。『貴方は誰を想っていますか?私は貴方を想っています』!」
「「「キャーーー!!!」」」
会場は大盛り上がりだった。
アイリスさん達がステージから降りても観客達は興奮していた。
アイリスさんとギルドメンバーがこちらに来た。
アゲツネを見る。
「アイリスさん、アゲツネを捕まえた」
「ありがとうございます!あなたがたに頼んで正解でした!」
そして、アイリスさんがアゲツネの前に立った。
「......アイリスっ!」
「やはりそうでしたか。アゲツネ先輩」
「「「先輩!?」」」
俺とミルク、そして、カナまで驚いている。
「どういう事ですか?」
俺はアイリスさんに質問した。
「この方は、3年前まで一緒だった先輩。アゲツネさんです。」
「じゃあ、なぜそんなに凄い人がアイリスさんを?」
アゲツネさんが話しだした。
「正直、羨ましかった。3年前、私がギルドマスターをしていた。なのに人気はアイリスばかり、そんな私はアイリスに嫉妬していた。そして私はギルドを辞めて、盗賊になった....。ギルド活動を辞めてから、私は行き場を失った。お金もどんどん減って、とうとう底が尽きてしまった。だからお金が欲しくなって....」
「アゲツネさん、私はもうすぐ、このギルドを辞めます。」
「「「「「えっ!?」」」」」
そこにいる誰もが驚いた。
「私はもう、このギルドには居られません。アイドルとしてのアイリスはもうすぐ終わります。その後、また一緒に過ごしませんか?アゲツネさん」
「っ!ゔぅぅ。ごめんねアイリス!」
アイリスさんはこちらを見て言った。
「詳しい事はまた後日お知らせ致します。今日は本当ににありがとうございました!」
その場は丸く納まった。
俺達は任務も終わったのでギルド協会に向かった。
トワさんが笑顔で、
「ギルド・ミルクココアさん、お疲れ様です。今回の報酬はアイリス様より、3000万ヨリ頂いております」
「あ、ありがとうございます」
後から聞いた話だと、アゲツネさんは一時的に海心のメンバーと暮らす事になったらしい。
今日はとにかく驚き満載のハチャメチャな1日だった。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。
番外編で、今まで登場したキャラのプロフィールなども描いていきます。
これからも張り切って描いていきますので、
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