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第一章 第8話 今日も討伐

朝、外からアイリスさんの話がうるさいくらいに聞こえてきた。



「モカ、起きて」



「ココアさん、起きてください!」



いつものように起こされ、食卓に向かう。




「今日は何の討伐?」



「今日は、蚊熱(モスヒート)の討伐です!」



「あの危険な蚊熱(モスヒート)?お姉さんは毒無効化とスキル・熱無効化が手に入ったから、どうってこと無いけど、2人には危険すぎるかも」




「どういう事?」




「この本によると、刺されると、激しい痛みと熱が出るらしいです。そして、適切な治療をしないと3時間後には死ぬ.....って」



「それ、かなり危険じゃね?」



「そう、しかも群れで生息していて、サイズも小さい。一気に吹っ飛ばすにしても無理がある」




「んー、どーするかなー」



「ココアさん、大丈夫ですよ!」



「どういう事?」



蚊熱(モスヒート)は寒さに弱いそうです!」



「お、なら手に入ったばかりのスキル・吹雪を試してみるか!」



という事で、早速蚊熱(モスヒート)の討伐に向かった。

その場所は、街を出てすぐの岩が多い所だった。



そこには、俺が良く知ってる『蚊』と同じ大きさの虫がうじゃうじゃいた。




「気を付けて、あのサイズがいつの間にか近付いて来てて、刺されたとかあるから」




確かにサイズが小さい分、目だけでは追うことができない。

すると、プーンと嫌な音が聞こえてきた。

これはまさに蚊。あの鬱陶しい音だ。



「あっ、そっか!俺は獣人(猫)だから、耳が良いのか!」



俺は今、全ての音を聞き分けられる。



「ミルク!後ろだ!」



「ひゃうんっ!」



何とかミルクは避けた。



「スキル・吹雪!!」


ビュゴーーッと音をたてながら、大量の蚊熱(モスヒート)に直撃した。


そして、凍りついた蚊熱(モスヒート)はパタパタ地面に落ちていった。



「やりましたね!ココアさん!1度凍らせたらもう動けなくなるそうです!」



「でもこの量、まだまだ居るんだけど・・・」



「お姉さんが1点に集めるから、モカ、さっきの吹雪で私ごと凍らして」



「......カナも動けなくなるぞ?」



「スキル・熱無効化、スキル・絶対防御!」



「おい、まさか!」



「これでミクが私を火で解凍して。じゃあ、よろしく」



カナはまた自分を身代わりにした。



カナの元に沢山の蚊熱(モスヒート)がまとわりついた。



「うわっキモち悪っ!モカ、ミク早くお願い」



躊躇しているひまはない。


「吹雪!!」



ビュゴーーッ




「ココアさん、カナさんが死んじゃう!」




「ミルク、カナに火を付けてくれ!カナは凍らせないよに!」



「.......は、はい!ごめんなさい、カナさん。極小魔法!(フレイム)!」



ボワッ



カナの周りにいる蚊熱(モスヒート)を凍らせながら、ミルクがカナにだけ火を当てている。



「カナ、死ぬなよ....」




これは本当にギリギリの戦いになる。

カナのスキル・絶対防御の効果が切れるとゲームオーバー。それに蚊熱(モスヒート)は熱に強く、活発になる。上手いことカナだけに炎を与えなくてはならない。





次々蚊熱(モスヒート)は落ちていく。

すると、カナが膝をついた。

「カナさん........」




「やばい、お姉さん、そろそろ限界かも」



「しまった!5分以上経ったのか!」



「まだ大丈夫、特性で攻撃を3分の1に抑えてるから、ちょっとチクチクするだけ。毒も効かないし」



「カナ、走ってこっちに来い!」



「どうする気?」



「良いから来い!」



カナが走って来た。俺は引き続き吹雪で蚊熱(モスヒート)を落とす。そして、



「凍結!」



蚊熱(モスヒート)を上手いこと凍らす事ができた。


「よし、これでほっといても戦闘不能になるはず!本当に無茶するな〜。カナ無事か?」



「......何とかね」



「ミルク、そのままカナをあっためて」



「はい!」



ゴゴゴゴゴッ

どこからともなく変な音が聞こえてきた。

地面が揺れている。



「地震か?」



「まずいね、モカ、ミク、これは岩岩岩(ガンガンイワ)が目覚めた時の音」



「にゃも?ガンガンイワ?」



すると、地面から何か大きな魔物が7体出てきた。

それは、分かりやすく言うと、岩の魔物、ゴーレムだ。




カナはとミルクは今動ける状態ではない。

1人で戦わなくてはならない状況だ。


岩岩岩(ガンガンイワ)という魔物の一体がこちらに向かってゆっくり歩いてくる。




「っ!冷たい斬撃(コールドスラッシュ)!」



ガーンッ!



硬いが斬る事が出来た。

よしっと思ったのもつかの間、その斬ったはずの岩岩岩(ガンガンイワ)が再生した。



それでも俺はそいつに向かって、


冷たい斬撃(コールドスラッシュ)冷たい斬撃(コールドスラッシュ)冷たい斬撃(コールドスラッシュ)!!」




ザクッ!ボロボロボロボロ


粉砕した。が、それは一瞬。


直ぐに元の姿に戻ってしまう。




「不死身かよ...」



「ココアさん、岩岩岩(ガンガンイワ)は水に弱いそうです!」



「お姉さんがやらなくちゃ、ね」




「水か!了解!2人はそのままで良いよ!」



ここで思いついた。氷は溶ければ水。ならやることは1つ。敵を氷で囲んで後は放置。




「スキル・氷の芸術(アート)、かまくら!」



岩岩岩(ガンガンイワ)を閉じ込めることが出来た。

これを後6回。



「かまくら!かまくら!かまくら!かまくら!かまくら!かまくら!」




全て閉じ込めた。



「後は放置と」



「モカ、あんた考えたね。ココアホだと思ってた」



「いやいや、さすがに知能はあるよ?」



「ココアさん、さすがです!」



今日は依頼と関係ないものまで討伐する事になった。



「追加報酬とかないのかねー?」



「ある訳ないでしょ」



「ココアさん、お金に目がくらんでませんか?」



「何、その2人揃って冷たい目は.....」



そして、街に戻る途中、もはやお約束だ。

スライムが目の前に現れた。俺は避けきれない。


「はい、死にます」




〜〜〜〜※※※※※※※〜〜〜〜




どのくらい経っただろう。

もう散々だ。痛みを感じる前に死ぬ。

意識が戻ってきたら、2人の笑い声が聞こえてくる。



「あ、ココアさん、おはようございます!」



「そろそろ辞めてくんない?スライムの上に覆いかぶさって勝手に死ぬの」



「また、やっちゃった?」




「あんたって本当に変だよねー。どーやったらスライムの上で死ねるの?」




「・・・・・・そもそもスライム耐性がある人には分かんねーだろーよ!」



「まぁ、この世界でスライム耐性がない人は5本の指で数えられるくらいしか居ないらしく、珍しいみたいですよ?」




「変なのに選ばれたな....」




とりあえず仕切り直して俺達は街に帰る。


街では沢山の人がアイリスさんの事を話している。

お腹も空いてきたので、イートさんのお店へ向かった。

お店の中でもアイリスさんの話をしている人が多い。



「あ、イートさん、いつもの毒蜂(ポイズンハッチ)の毒ぬきサンドお願いします」



「ありがとさん!」




「ねぇモカ、明日のアイリスさんの卒業ライブ観に行くよね?」



「あー、そりゃまぁ、観に行かなきゃな!」



「今度はゆっくり観られるんですよね?」



そうだ、俺達は前回、ゆっくり観るどころか、護衛を任されていて、特に楽しむ事が出来なかった。

明日は楽しまなくてはならない。



「オタク魂燃える〜!!」



「はっ?オタク?」



「この本によると、オタクとは・・・・・・」



「ミルク、言わなくていいから!」



そんなくだらない事を話していると、ガウンとゲインが俺らに話かけてきた。



「兄貴も明日のライブ観に行くんですか!ぐへっ」



「行きますよね!ぐへへっ」



「出ちゃったよ、変態ドM2人組み」



「うひょ〜ん!褒め言葉です!」


「もっとください!」



「で、何の用?」



「いやー、アイリス様が辞める理由ですよ〜」


「まだ23歳なのになんで辞めるんですかね〜」



「・・・何か変なのか?」



「兄貴、変とかの問題じゃないですよ!」


「普通は、27歳まで続けて、早くても25歳までは続けるもんなんですよー」




「まぁ、人は人、自分は自分。好きにすれば良いよ」



「兄貴〜、寂しくないんですか〜?」


「あのアイリス様ですよ?」




変態ドM2人組みにそう言われても、俺は全然ライブ中の姿を観た事が無いので、何とも言えない。

変態ドM2人組みはそれだけ言って帰って行った。



「良かったなカナ、バカナとか言われなくて」



「別に気にしないし、所詮、ガオーとゲヒンだよ?あんなの相手にしない」



「ガウンと、ゲインな。名前はそろそろ覚えようか」



「だから、お姉さん、2文字以上の名前の人、覚えらんないの」



「あー、よく考えたら、精霊さん達も全部2文字ですね!」





「「「「キャーーーーー!!!!」」」」



急に店の外が騒がしくなった。



「「「アイリス様〜〜〜!!!」」」



「「「辞めないでくださいー!!!」」」



外に出ると、そこにはアイリスさんが居た。

どうやら街を回っているようだ。




「皆さん、私のわがままを受け入れてください。こんな私を応援してくれて、ありがとうございました!明日のライブでまたお会いしましょう!」




「「「アイリス様〜〜〜〜!!!!」」」





沢山の人がアイリスさんの卒業を寂しがっている。

人間界で芸能人が凄い様に、異世界でも同じような事が起こっている。

皆の気持ちが何となく分かる。

俺も、好きなアニメが最終回を迎えると、終わらないでくれって思った。

それと一緒の事だろう。



アイリスさんの列が過ぎると、一気に街は静かになった。



「・・・こんなに違うの?通っただけなのに...」



「それほど、この世界では有名って事ですよ」



「魔法界にもこういう人居たの?」



「はい!それはもうカリス魔法の人がいました!」



どこの世界にも有名人や凡人はいる。

異世界に来てまで凡人で居たくはないと思った。



ギルド協会に報告を済ませ、家に帰る。


ゆっくり風呂に浸かる。


「ふぅー。広い風呂は最高だな〜」



ガラガラガラっと扉が開く音がした。

誰か人影が見えた。



「って!カナ!何してる!」



「別に、服着てるから良いじゃん」



「こっちが着てねーよ!」



「そんな事より・・・」



「そんな事って!」



「モカ、あなたは一体何者なの?たまに変な事言うし、やる事が普通の人と違う」



「・・・ただの獣人だよ。変なのはカナもだろ?無茶しすぎ」



「ただの獣人、ね。全然ただ者じゃ無いけど、まぁ、良いや」



「なんなんだよ?」



「いや、モカを本当に信用して良いのかと思って」



「あー、信用しなくても良いけど、信用してくれると嬉しいな〜」


カナが小声で何か言った。

「・・・信用してなかったら好きにならないのに」



「今なんて?」



「別に、ゆっくりしとる所邪魔してごめん。お姉さんが背中でも流してあげようか?」



「はぁっ!?」



バンッ!と音がした。また誰か人影が見える。



「あー!カナさん!抜け駆けずるいですよ〜!」



「ごめんごめん。じゃあ、ゆっくり浸かってて」




「・・・・・・なんだったんだ?」




風呂を上がって食卓へ向かう。

すると何故かミルクが頬を膨らませていた。



「何?」



「カナさんと何したんですか?」



「何もしてねーよ!」



ミルクはなんだか機嫌が悪い。カナは何故か顔がいつもより赤い。

少し気になるがご飯を食べる。

今日はオムライスのようだ。

カナが作る料理はどれも美味しい。

さすがはイートさんの弟子だ。



ご飯を食べ終わる。



「じゃ、おやすみ〜」



頭の中で俺は何回死んだのかを数えてみた。


「4回死んだのか.....。縁起悪っ!はよ寝よ寝よ!」



異世界だと言うのにまさか死ぬことになるなんて。

しかも理由が4分の3はスライムの上に倒れて死ぬという、訳の分からん状況。




今日はよく分からない事もあったが寝ることにした。

今回も読んでいただきありがとうございました。

今回はほんの少しだけですが、カナとミルクのココアに対する心情を描いて見ました。

今後もよろしくお願いします。


感想や、評価、ブックマークなど、よろしくお願い致します。

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