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龍星群の観測日

作者: 藍紅 吹雪丸

占吹「では、これからヒョウさんの誕生日プレゼントに関する会議を開始したいと思います」

吹雪「ちょっとまって」

 普段は別の場所に住んでいるがSBR、他の面々が暮らす家へ遊びに来た占吹は、その日家にいた吹雪・麗子・雪符・藍希、そしてクロンをリビングに集めるとこう高らかに宣言した。

 話題に上がったヒョウは吹雪丸に従えられているドラゴンだ。しっかり者で倹約家、しかし必要な時には出し惜しみせずSBRの資金を出せるSBRの財政担当でもある。

 しかし、彼は自分のことを多く語らない。そのため、誕生日も吹雪たちは知らなかった。

吹雪「ヒョウくんが誕生日なら私たちもプレゼントは用意したいんだけど、ヒョウくんの誕生日いつなの? それによって用意できるものも変わってくるんだけど……」

占吹「今日です」

吹雪「今日!?」

占吹「はい。今日、2月27日がヒョウさんの誕生日です」

藍希「唐突〜……」

クロン『もう少し早く言いなさいよ……』

占吹「言い出すタイミングがわからなかったもので……」


麗子「……まぁ、日にちがないというかあと14時間36分29秒で誕生日が終わるので早く決めてしまいましょう!」

雪符「細けぇ! ……じゃなくて、占吹は何を渡すつもりで来たんだ? 何かしら考えがあったからここに来たんだろ?」

占吹「私は占いをしようとここに来たんですが……」

吹雪「今日、っていうか二日前から吹雪丸ちゃんのお仕事にヒョウくんはついて行ったんだよね……」

藍希「じゃあほぼアイデアなしに近いのか……どうする?」

クロン『まず、方向性を決めるべきよ。今日渡すために何か急いで準備するのか、帰って来た時に祝えるように用意をしておくか……そこから決めないといけないんじゃないかしら?』

麗子「なるほど……私は今日お祝いしたいですが、難しいですよね……やっぱり、何か用意するしかなさそうですかね?」


雪符「じゃあとりあえずその方向で考えていこうぜ。まず、喜ばれる……あいつが好きなもの、っていうと本と魚か?」

吹雪「そうなるね。ヒョウくんがいつ帰ってくるにしろ、豪勢な魚料理が出るようにしておく……! っていうのは喜ばれるんじゃないかな?」

麗子「そうですね、さすがマスター素晴らしいお考えです! でしたら、雪流魅さまに良さそうなお魚をお願いしましょう!」

藍希「うん、雪流魅さんならいい新鮮な魚を用意してくれそうだね。普段から釣りはするって言ってたし……前もってこられた、虹色の魚みたいなのが来ないことだけ祈っとこうか」

雪符「グエェ……アレを思い出すと吐き気が……」

吹雪「雪符ちゃん大丈夫!? 深呼吸、ヒッヒッフーだよ!!」

雪符「それ深呼吸じゃないだろ!」

クロン『そうね。とりあえず吸って〜』

雪符「すぅぅ……」

クロン『吸って〜〜』

雪符「すぅぅ…………」

クロン『吸って〜〜〜』

藍希「どんだけ吸わせる気ですか!! 吐いて吐いて!!」

雪符「ぐはぁぁぁ……じ、じぬがと思ったぜ……」

占吹「ここ、普段からこれだととっても騒がしそうですね……楽しそうではありますが」


麗子「だいぶ脱線しましたが、他どうします? 料理の準備はしておきますが、食べ物系じゃない、形に残るものもあると良さそうかと。例えばさっき話題に出た本などでしょうか?」

クロン『本ねぇ……早さだけなら電子書籍でもいいと思うけど』

吹雪「電子書籍かぁ……でも、」

占吹「彼は紙の本を愛する派の方のはずですよね」

藍希「紙の本だったら、本屋さんに見に行ってくるか、通販で良さそうなの買っておくかだね」

吹雪「……そうだ!」

 考えるようなポーズをしていた吹雪が顔を上げる。

吹雪「RAINスタンプはどうかな? ヒョウくん、倹約家だからスタンプ買ったりとは縁がないし……」

雪符「それ、いいんじゃないか? せっかく他人がものを上げるんだし、本人が買わなそうなものはいい案だと思うぜ!」

占吹「良い案だとは思いますが、問題は今あの方々が圏内にいるかでは? 別の世界まで行っていたら、送れませんよ」

クロン『いや、あんたたち運がいいわね。別の世界だけど、私の独自通信ネットワークをつかえばギリギリ送れる距離にいるわ」

麗子「ラッキーですね! それじゃあ、各々スタンプをプレゼントですか?」


吹雪「それでいいんじゃないかな! ……でも、本もプレゼントしたいから私本屋さん行きたいな。藍希、付いて来てもらってもいい?」

藍希「いいよ。街中で倒れられたら困るからね、最近暖房ガンガンのところ多いし……」

雪符「じゃあ俺車出してやるよ。近場のとこでいいか?」

吹雪「なら車お願い! えっと、ちょっと遠出して大きいとこ行きたいんだけどいいかな?」

雪符「構わないぜ。占吹はどうする? 帰るならついでに送るが」

占吹「それではお願いします。今日はエイル様を連れて来なかったので、心配で」

麗子「私もマスターと一緒に……! と言いたいところですが、料理の支度に取り掛かっておくことにします。クロンさま、今雪流魅さまと繋がりますか?」

クロン『いけるわよ。あと、スタンプは私のところに送っておいて。私が仲介してヒョウに送るから」


 そんなこんなで各自解散し、それぞれ選んだスタンプをクロンへ送ったのだった。

ヒョウ「……ん?」

 何やら、クロンからRAINが送られていることに気づいたヒョウは、座れそうな大きめの石を見つけ、それに腰掛けた。

 現在、吹雪丸とヒョウ、ついでについて来たプリマコスモスは山の中で野宿をしていた。

 テントと寝袋、魚を焼くための準備は終わったので、しばらくゆっくりしようと思っていたところだったが。

吹雪丸「ヒョウくんどした? ゲームの緊急メンテでも入った?」

ヒョウ「いや、なんかクロンさんから送られて来てました」

 吹雪丸が画面を覗き込んでいる中、ヒョウはクロンからのメッセージを見た。


クロン『アンタ、今日誕生日なんだってね。おめでと』

吹雪丸「えまじ? ヒョウくん誕生日今日!?」

ヒョウ「あー、そういえば……」

吹雪丸「言ってよ!! 具体的に言うと二週間前に!! 知らずに世界調査お出かけの予定入れちゃったじゃん!!」

ヒョウ「聞かれなかったので……」

吹雪丸「誕生日言わない奴の常套文句来たなこら!! 一ヶ月前から主張を始める私とは大違いじゃんね!!!」

 騒ぎ始めた吹雪丸を無視して、ヒョウは次のメッセージに目を向ける。


クロン『そんなわけで、各々からスタンプを送ることにしたから一個一個紹介しながら送るわね』

吹雪丸「へぇ〜、ヒョウくんスタンプ買わないからいいじゃん!!」

ヒョウ「これは無駄遣いとはいえませんね、自分じゃ買わないので嬉しいですし」

クロン『<青いドラゴンのごあいさつスタンプ>』

 一つ目に、可愛らしくデフォルメされた青いドラゴンがおはようとかこんにちはとかの挨拶をしているスタンプが送られてくる。

クロン『これは吹雪からね』

ヒョウ「汎用性高そうでいいですね……!」

吹雪丸「ヒョウくんっぽいのなんか可愛いねぇ……良いスタンプ!!」


 ヒョウは受け取りボタンを押して次のメッセージに目を向ける。

クロン『<いたずらっ子のスタンプ>』

吹雪丸「あっこれ見たことある」

ヒョウ「これ……」

 そのスタンプは、黄緑色のサイドテールの女の子がありがとう! とかの吹き出しにクレヨンで落書きしたりしているスタンプ。これは、麗子が常用しているものだった。

吹雪丸「この布教活動、どこぞの宗教勧誘とかよりもやってるんじゃないの? 面白すぎる」

ヒョウ「使うかなぁ……まぁせっかくですし、戴きます」


クロン『次はこれね』

クロン『<ふぁんしーすたんぷ>』

 パステルカラーの動物が、「今いく!」や「はーい」などの汎用性は高い言葉を喋っているスタンプだった。

吹雪丸「……え? これ誰から?」

クロン『雪符からよ。あいつかわいい趣味よね」

ヒョウ「なんか納得ですね……汎用性はたかそうですが可愛らしいのは使いにくい……」

吹雪丸「自分で使うのは恥ずかしいから他の奴に使わせたろみたいな魂胆が見え隠れしてるな……」


クロン『次は占吹からよ』

ヒョウ「あれ? 今度は送ってくれた人から紹介するんですね?」

吹雪丸「なんか嫌な予感がする」

クロン『<これを使えばあなたも黒魔術信者! 世界の暗黒スタンプ>』

ヒョウ「……主、これ送り返したりできないんですか?」

吹雪丸「……多分、受け取らないことはできるんだろうけど返すのは無理じゃあ……」

 このスタンプは16個、すべて魔法陣の怪しすぎるスタンプだった。

吹雪丸「スマホから悪魔出て来そう」

ヒョウ「受け取りはするけど使いたくない……!!」

クロン『占吹からの伝言で、このスタンプを送りつけた相手は体調不良になるから必要な時は使えって』

ヒョウ「主に送ります」

吹雪丸「やめてよ私のスマホから死神出て来そうじゃん!」


 冗談ですと笑いながら否定したのち、また次のメッセージを確認する。

クロン『<てってごスタンプ>』

ヒョウ「あ、これ!」

吹雪丸「てってごの公式スタンプじゃん! よかったね!」

 てってごとは、SBRのメンバーはほとんど(吹雪丸が熱狂的に勧めたため)プレイしている某非対称戦闘スマホゲームだ。

クロン『これは藍希からよ。割と他もこれを送りそうなものだけど、藍希以外これを送ってなかったわ』

ヒョウ「藍希さんとも久しぶりに一緒に行きたいなぁ……彼救助僕より上手いから安心して任せられますし」

吹雪丸「いつもお世話になってる側としては申し訳ない限りだけどね……」

ヒョウ「主はいつも解読とタゲ引きで助かってます」

吹雪丸「60秒は舞いたいからね……頑張らないと」


クロン『最後にアタシからはこれよ』

クロン『<漢字スタンプ>』

吹雪丸「予想はしてた」

ヒョウ「僕もです」

 納豆だの煮物だのほとんど日常会話で使わないような筆で書かれた漢字が詰め込まれたスタンプだった。

クロン「大切に使いなさい」

ヒョウ「使うタイミングを教えてください……」


プリマ「二人とも〜! お魚が焼けたわよ!」

 二人がクロンのメッセージを見終えた頃、魚の番をしてくれていたプリマコスモスから声が掛かる。

ヒョウ「あ! 今行きます! 主、行きましょう……ってあるじ?」

 吹雪丸はおもむろに自分のスマホを取り出し、素早く操作をした。すると、ヒョウのスマホに何やら通知が飛んでくる。

ヒョウ「? てってご……あ!」

 通知が来たてってごを開くと、吹雪丸からレア衣装が届いていた。

ヒョウ「これ、限定で欲しかったけど諦めてたやつ……!! これは課金を咎められませんね」

吹雪丸「いっつも私がもらうだけだから、恩返ししたいなと思って結構前に課金はしてあったんだよね! いやぁこのタイミングを逃したら次いつ来るかわかんない衣装だし、それ着て救助頼むよ〜!」

ヒョウ「任せてください! 主、ありがとうございます!」


「お誕生日おめでとう!」

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