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魔導師は高所恐怖症  作者: 不知火
第1章 始まりのプロローグ
6/8

出ない授業

私の名前はシャルロット・アルトリウム。


この学校に転入して来て1週間が経過しました。学校の人は親切で、いい人ばかりです。


1時限目の魔術史の時間、担任の東堂先生がわかりやすく興味深い授業をしてくれて、また知識が増えた様な気がします。


新しくできた友達と談笑しながら次の授業の実施場所である校庭に行こうと席を立つと、友達も一緒に席を立ちました。


こうしてみんなと喋る時間はとても楽しいです。 翻訳魔術のお陰ですね。


教室の扉から出ようとすると、ふとまだ教室の中に人が残っていることに気がつきました。


いえ、別に残っている人は他にもいました。が、彼は本を読んでいたのです。


本を読んでいるせいで次の授業が移動教室だと気がついていないのでしょうか?


まだ残っている男の子グループも席を立ち、教室から出ようとしているのがわかりますが、彼は席を立とうともしません。 読んでいる本は...魔術教本、でしょうか。『近代魔術史の矛盾を暴く』? 中々興味深い本だと思いました。


誰が読んでいるのだろうと顔を見てみると、本を読んでいるはずの彼と目が合った......様な気がしました。


そのまま人の波に流される様に私は教室の外へ出ました。


目が合った......そんな筈ありませんね。 彼は移動教室にも気がつかないほど本に熱中していたのですから。


私は校庭へ歩を進めました。












んなわけ無いよな......。 彼女が俺のことを見る理由が無い。 本ならまだしも、顔なんてな。


少しすると教室から人気が無くなった。 授業に行ったのだろう。


この広い教室に1人は寂しいので図書館で読書をしようと思う。 授業中に資料を取りに来たり調べ物学習の際に使ったりする為に8:00~20:00までは常時開館しているのだ。


席を立って昇降口に向かい、靴を履き替える。


さてここで、だ。なぜ靴を履き替えるのか。俺は先ほど図書館と言った。 図書室ではなく。


その理由は...ちょっと歩いた先にある。


外に出て3分ほど歩くと見えて来る。 図書館だ。


市や県の図書館などにも引けを取らない程の蔵書量を誇る我が校自慢の図書館だ。


受付で学生証を見せ、入館する。


誰もいないがらんとした読書コーナーでは無く、狭い空間で読書ができる様にと誂えられた個室の様に仕切りがある読書コーナーの方へ向かう。気分は漫喫だ。


座って読書をする。 中々に興味深い本だ。 先程の先生の話にも通ずる所がある。 現存している書物には精々中級魔術までしか載っていないが、実際に起きたと言われている魔術的事件等ではそれより高ランクの魔術が行使された痕跡がある。とかその辺までは良かったのだが、そこから誰かが書物の抹消を命じた......とか言う陰謀論に話が進んでいったので本を閉じた。


陰謀論は確かに心をくすぐるが、今そういう気分ではないのだ。


先生の話に通ずるで思い出したが、遺失魔術(ロストマジック)について調べてみるのもいいかも知れない。


そう思い立ち、備え付けの検索用タブレットに遺失魔術と打ち込む。


すると数十件の本の情報が出て来る。


どのコーナーにあるかを確認し、本を漁り、お目当ての本を見つけて戻って読む。 その繰り返しだ。


確か次の時間も出席は必要ない授業の筈だからしばらくはここで本を読めるだろう。














校庭に出てしばらくすると授業が始まりました。2時限目の科目は、【魔術機動】の科目です。


周りを見渡しましたが、先程の彼の姿が見えません。体調でも悪いのでしょうか?


そういえば彼の実力の程はどんなものかと思い出そうとしましたが、全く思い出せません。今まで興味がなかったから?そんなはずはないです。見ていればぼんやりとでもこの生徒はこう、この生徒はこのくらい、というイメージはあるものです。


ですがからにはそれがない。と考えた時、彼の姿を見た事が殆ど無いと言うことに気がつきました。


正確には、移動教室。特に屋外やアリーナでの授業の時に見た事がありません。どう言うことなのでしょうか......


頭の中にある1つの単語が過ぎります。


サボタージュ


だとしたら......これはいけません。 同じクラスメイトとして、サボタージュを見過ごすわけにはいかないのです。


まぁ今は授業に集中しましょう。先生の注意事項などをよく聞き、それでは授業の開始です。


今日の授業はズバリ、空中に浮く5つのリングを順番に潜り、その正確性とタイムを競う、と言うものです。


早速男子からスタートしていきます。 皆さんお早い。 イギリスの子達にも引けはとりません。


そして私の番が来ました。


......正直周りの視線が痛いです。 Sランク魔導師、と言う肩書きから期待されているのでしょう。


ここはパフォーマンス代わりに本気の機動を見せて上げましょう。


「準備はいいか?」


「はい。いつでも」


「よーーーい、ドン!」


飛行フライ!!!」


起句と共に体が勢いよく浮かびます。そのまま魔力を全開にしてトップスピードです。


1、、2、34......どんどん加速します。そして最後の1つ...ッ


「5ぉ!!!」


全て潜りました。 さて結果は......?


「先生、結果は?」


「さ、3.26、だと......?」


一同 「3.26ゥ!?」


「平均ってどのくらいだっけ?」「確か...11.いくつくらいだったと思う」「その3倍速いってこと!?」「宗一の5.22でも別次元って思ったのにそれより2秒早いのか......」「流石Sランクってところだな......」


しょ、少々本気を出し過ぎてしまったみたいです。ですが手を抜くと言うことは私には出来ません......


業後、皆さんから凄いの嵐を頂きました。嬉しい限りです。


次は...アリーナでの授業ですね。科目は確か【魔術実技】だった気がします。


アリーナでの授業と言うことは【彼】はきっと来ないのでしょう。 次も来なかったら注意しなければ。















「ヘックショイ!」


くしゃみが出た。 なんだ?誰かに噂されてるのか?


時間を見るとちょうど2時限目が終わったくらいだった。一旦読書を中断して目を休めようと思い休憩室に向かう。そのには自販機があったので缶コーヒーを一本買ってベンチに座り、飲む。本に飲み物がかかるといけないので休憩室や談話室以外での飲食は禁止されている。


遺失魔術についての文献を読んでいるが、イマイチよくわかっていない、と言うことについてしかわからなかった。


痕跡と言われているものも少々根拠が薄いと感じるものが多かった。


姿を真似るだけではなく、記憶や魔術までコピーする、だとか大量の凶暴な魚人とそれを従える人間とか、過去から未来までの全てを見通す狂人とか、とにかく出典がどこなのかもわからないような物ばかり。この分野に関してはこの辺りでいいだろう。まだまだ発展途上の分野って事だ。


だがまぁもしもそんな物が実在するのなら......俺の役に立ってくれそうだ。


缶コーヒーを飲み干して次の本を漁りに行こうとベンチから立ち上がろうとすると、前のベンチに座っていた白衣を着た人物が話しかけてきた。

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