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魔導師は高所恐怖症  作者: 不知火
第1章 始まりのプロローグ
5/8

授業

それから数日の時が流れた。


いつも通りの朝の風景を終えて学校へ登校してくると、今日も教室の奥、少々高い位置の机の周りが人で囲まれていた。


当然その机には件のシャルロットが座っている。


「今日も凄いね......」


「まぁ当然じゃないか? Sランクで貴族でおまけに美人ときた。 そりゃああなって当然だろ。アレ目当てに早起きして学校に来るから遅刻率が下がったみたいな話も聞くぜ」


「まぁね。」


「けどそろそろ飽きたりはしないもんなのかねぇ」


勿論物珍しさと言うのもあるだろうが、それよりも彼女が醸し出しているその雰囲気......カリスマ性、と言うのだろうか。 人が集まって当然といった雰囲気を漂わせている。あれがモノホンの貴族様か。


キーンコーンカーン......


チャイムの音と共に教室のドアが開き、東堂先生が入ってくる。


「お前ら席に座れ。 HR(ホームルーム)だ」


全員急いで座る。 自由席とは言え、初日に座った席が今後の基本席となる。


「今日も特に留意事項は無い。普通に授業だ。 気を引き締めて受講する様に。 1時限目は私の魔術史の時間だからな。 寝るような奴は覚悟しておく事だ」


眠気は今日も全開だがこの授業だけは寝るわけにはいかない......後で自販機でコーヒーでも買ってこよう。


HRが終わり、自販機に行って缶コーヒーを買い、その場で飲み干す。 これで次の授業くらいは大丈夫だろう。







「では今から授業を始める。 室長、挨拶」


室長となった宗一が号令をかける。


「起立。 気をつけ。お願いします」


「「「お願いします」」」


「では早速昨日の続きから内容に入っていこう。昨日は確か......ここまでか。 なら今日はここからだ」


と手元の空間に何か書き、それを教室前方の巨大モニターにヒョイと放る様にするとモニターに文字が表示される。科学の力ってすげー


『魔女狩り』


そう黒板には表示されていた。


「この単元は私とも少々関係あるんだが...その理由、答えられるか、林?」


「はい。 それは先生の黒属性の魔術に関係するからだと思います」


「見事だ。 座っていいぞ。 よく予習しているな」


黒属性...なるほどね。


「この時代、中世ヨーロッパでは魔女狩りが行われていた。 災害や不作などを誰か不特定多数の【魔女】が起こしている事だと決めつけて処刑を行なった、と言うものだ。 まぁ魔女とは奇妙な術を扱う者の総称で男も処刑の対象だったんだがな。 つまりはまぁ、疑わしきは罰せよ、だ」


言いながら手元に書いたものをモニターに投射していく。それを手元のノートに書き留める。


「そしてこれがなんで私と関係しているかと言えば、処刑された中には本当に魔女、今で言う魔導師が居たんだ。 そして魔導師が使う魔術の属性は概ね血縁で決まる。 そして私の得意としている黒属性の魔術だが、これは本来基本属性だったんだ」


「ならなんでレア属性になっちゃったんですか?」


「真純、いい質問だ。 それはこの魔女狩りが主に行われたヨーロッパは黒属性の遺伝子を持つ人が多かったんだ。 そしてその人達の殆どが処刑されてしまった。 それによって黒属性の遺伝子を持つ者が減ってしまい、今ではレア属性、と言うわけだ」


別の生徒が手を挙げる。


「ならなんで他の魔術属性は無くならなかったんですか?」


「黒属性の魔術の遺伝子を持っていた者がヨーロッパに集中していたからさ。 黒属性だけでは無い。 その他のレア属性と言われている物の一部もこの魔女狩りによってその因子を持つ者が次々と処刑された事でそう呼ばれる様になってしまった物もある」


「魔女狩りが起こった、その中に本当に魔導師が居たってことは災害とかも本当に彼らが起こしていたんですか?」


「それは無い......とは言い切れない。魔女狩りによって鬱憤の溜まった魔女が悪さをした事もあるのかも知れないしな。 だが、大元となったのは無知から起こる集団催眠だ。 民衆は度重なる災害や不作を誰かのせいにしなければやっていられなかったんだ。そして魔導師とは他の者とは違う。 それが全員が目を光らせることによって表面化し、どんどん処刑されていってしまった、と言うのが真相だろう」


するとシャルロットが手を上げた。


「なんだ、シャルロット」


「1つ疑問に思ったのですが、そもそもその時代、そのような大きな災害や天災、不作などを引き起こす様な魔術は存在していたのでしょうか?」


「ふむ。そこまで踏み込んだ内容になると今度は大学部の分野に踏み込んでしまうが...、まぁいいだろう。その当時、そこまで魔術が発展していたのかどうかは定かでは無い。が、現存しているその当時の文献では確認されていない。そもそも確認されているその文献の内容は至って原始的な物だ。【火球】(ファイアボール)とかの初級の物だな。この事から近代魔術史においてこの時代は魔術が始まった時、と考えられている。よってそういった大規模な魔術はまだ開発されてはいなかった、というのが現在の通説だ」


「ありがとうございます。また1つ疑問が解決しました」


「だが、だよ」


「え?」


「これは魔導考古学の分野になるが......遺失魔術(ロストマジック)なる物も存在しているんだよ。詳しくは魔導考古学の授業で習うといい」


「わかりました」


着席する。


中々に興味深い話だった。遺失魔術か......なんかこう言うのって男のロマンがあるよな。


それから本筋に戻り、しばらく進めたところで授業は終わった。


「じゃあこれで今日の授業は終わりだ。 よく頑張った。だが、まだ1時限目だからな。 気を引き締めていく様に」


と言って教室を出ていく。さて、次の授業は......っと。


時間割を確認する。するとそこに書いてあったのは【魔術機動】の科目。


「これは出なくても良い授業(・・・・・・・・・)、かな。」


俺はとある事情から飛行魔術が使用できないのだ。 そのため、飛行魔術を使用する授業には出席しない。


ので、そのまま私物の魔術教本を読むことにする。


タイトルは、『近代魔術史の矛盾を暴く』だ。面白そうだから買ってみた。


「悠、どうしたの?次は校庭に移動......って、あ......」


宗一が話しかけてくるが、途中で気がついたらしい。


「ごめん、悠」


「いいんだよ。俺が悪いんだ、早く行けよ。遅刻するぞ?」


「うん......。じゃあまた、後で」


「おう」


宗一はそのまま他の友人と教室を出て行った。


これで読書に集中出来るが...教室の中だとなんか一人ぼっちで寂しいな...... 全員出て行ったら図書館でも行くか。


そう思い読書に入ろうと思った時、団子になった集団が教室から出て行こうとしていた。


何気なくそちらを見るとその集団を形作っている者......シャルロット・アルトリウムと目があった......様な気がした。

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