プロローグ破
「おはようございます。■■■様。」
目が覚めると真っ白な部屋にいた。床から天井まで全てのものか白で統一されたその部屋はホコリひとつなく、影のみがコントラストとして色を与えている。置かれる家具は高さ、幅、奥行き、全てが綺麗に揃えられ直線か直角しかないように見える。
「前生はお疲れ様でした。」
その潔癖がすぎるまでに“完璧な”部屋の中央奥で唯一の曲線がゆるりと無駄のない礼をする。外見は20代後半だろうか、この世を憂いてでもいるようなおっとりとした中性的な顔立ちにやはり全て白で統一された服は医者や学者ぜんとした白衣のようにもなにか宗教的な聖衣のようにも見える。
「今回■■■様の転生召喚のサポートをさせていただきますイースと申します。」
「その…なま…名前…やめ…て…き…きら…い…」
口を開くと喉が異様にイガイガと痛む、唇がノリで貼り付けられていたかのように開く度にペリペリと音を立てる、顎に至っては筋肉がないかのようにちからがはいらない。というか顔だけでなく全身が痛む上に力が入らない。まるで二日酔いに全身筋肉痛を被せて砂漠に放り出されたような感覚だ。
「承知致しました、そのように取り計らっておきます。」
こちらの状態など意に介さずに一方的に喋り続けた後イースト名乗った“ソレ”はもう一度ゆらりと揺蕩うような礼をする。それと同時に私はまた気を失った。
それからは前生に嫌という程聞いた名前はついぞ思い出せていないでいる。