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095.空気読めよ

【文化ランク:1 発展ランク:1 人口:198人】


「シン~」


 大声を出すには発音しづらいです。

 でも、シンの獣耳がピクリと動きました。

 気付いてくれたようです。

 獣耳グッジョブです。


「おう、お嬢! それにマナも今朝ぶりだなぁ」


 そうです。

 朝に会っているんです。

 食堂に朝食を食べに来てたんですよ。

 宿屋をアクーパーラ家に任せたとはいえ、宿屋では料理が出せないんです。

 いや、出せるんですけど、出せたとしても、完全食なんですよ。

 食べたいですか?

 ボクはイヤです。

 そして、このパルダリウムで宿屋を使うような人も完全食を食べないんです。

 いいえ、完全食を食べたくないから、このパルダリウムに来ているんですね。

 宿屋の食堂は、需要に対して供給が全くない状態です。


 【神の加護:インダス】でレトルト商品なんかを準備したとしても、ボクがいなくなったら準備できなくなるので、供給していません。

 なにせ、美味しくないですからね。

 ですから、ボクの食堂にお客様が流れてくるんです。


 と言う事で、クールマとジィッタの父親のヘッダーさんが板前としてボクの食堂で修行しています。

 さっきの『いってらっしゃいませ』の中に男の人の声が混ざってたの気付きませんでした?

 その男性の声の主がヘッダーさんです。

 ヘッダー・アクーパーラさんですね。


「ところで、シンは何してるんですか? それにそっちの人は?」


 シンの横にいる青年を見ます。

 年は20歳いってるかどうか、武人というよりも文官の体格。

 服装はいかにも中世の村人って感じの服。

 あー、この感じは中の人はいないようです。

 魂がきっちり身体に定着してますからね。

 中の人がいる人は、魂と身体が少しズレている感じなんです。

 でも、中の人がベテランのアヴァターラはズレが少ないです。


「ああ、コイツはジャナカって言ってな、例の秘密結社の総本山で空気は読めないが、良い働きをしてたから、ここにも拠点を作って任せようと思って連れてきたんだ。拠点の許可のお願いは、クリス経由でいくからよろしくな。いや、よろしくヤってくれ」


 ドンッと、ジャナカさんの背中を押しました。

 で、ジャナカさんは、背中をど突かれたように、よろけながら前に進みました。

 チラッと、ジャナカさんはシンを見て、ボクの方に向き直しました。

 姿勢を直し、表情もキリッとし、頭を下げて・・・。


「ジャナカと申します。よろしくお願いいたします」


 良い表情をしてます。

 ヤる時はヤる感じの雰囲気のボクから見ても格好いい青年です。

 これは、普通にしてても目に付くような人物です。


【神の加護:鑑定眼】


 名前:ジャナカ

 種族:ヒューマン

 レベル:002

 HP:0044/0044 MP:0000/0000


 STR:006

 DEX:006

 VIT:007

 AGI:007

 INT:012

 MND:012

 CHR:050


 村人の長袖シャツ/村人のベスト/村人のズボン/村人の木靴


 戦闘能力は皆無ですね。

 いや、それよりも、カリスマ性がスゴいです。

 口先だけでも生きて行けそうな人物です。


 これは部下に欲しいくらいです。


「ラーマ・オトメです。よろしくお願いします」


 名乗り方をこの世界の流儀に直しました。

 郷に入っては郷に従えです。


「シンさん、ご神体にそっくりなこちらの方がもしかして、聖女様ですか?」


 興味津々ワクワクテカテカドキドキな表情で、そんな事を言ってきました。

 今度は、年齢相応の表情です。

 とっても楽しそうです。


 ボクは楽しくないです。

 気になる単語がありましたからね。


「ご神体? 聖女様?」


 【神の加護:レベル制限:001】を、解除します。

 普段は、必要な力さえあればいいんです。

 普段はですよ。


 ギロリとシンの方を見ます。

 めっちゃ、アタフタしてます。


「あれ? ご存知ないですか? 貧乳きょ・・・」

「おま、ちょ、ちょっとは、空気を読めよ・・・」


 シンが、ここ世の終わりのような表情で、ジャナカさんのセリフを遮りました。



     ズリズリズリズリズリズリズリズリ



「ジャナカ、てめぇ、拠点の責任者件は無し、クビだ、クビ。あー、お嬢に所有権を移動しとくから、コイツの事は、お嬢が好きなようにしてくれ」


 ヤられ役が、逃げ出す直前のように後退りしながら、そう言いました。


「あー、お嬢。夜に飯食いに行くからよろしくな」


 そう言って、ロビーに逃げ出しました。

 獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言いますが、シンは生け贄としてジャナカさんを置いていきました。


「さて、ジャナカさん、どうして欲しいですかね?」


 クビを傾げながら、笑っているけど笑っていない表情で、ジャナカさんに問いました。


 ジャナカさんは、膝をガクガクさせて、またなんかヤっちゃいました?って感じの表情をしてました。



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