089.そういうお守りもあるらしい
セルシオさんが、そぉーっと、そぉーっと、白銀の野うさぎ、ロロロロに近付いています。
ロロロロも気付いてはいるんですが、逃げたいのを我慢しているようです。
捕まる事がクエストっぽいヤツの目的ですからね。
その辺を理解してくれてるんでしょう。
でも、見ることのできない死角から、知らないマッチョな人が近付いているのが分かれば逃げ出したくなりますよね?
徐々にセルシオさんとロロロロの距離が短くなり、手が、セルシオさんの手がロロロロのフワモコな脇の毛に触れつつ、水平線のようになだらかな曲線の胸の方に・・・・・・。
ドゲシッ
ラビットフットキックです。
ロロロロもさすがに耐えられなくなったのでしょう。
一応、手加減されたラビットフットキックです。
キックですから、当然、足を使いますよね?
ラビットキックでも、充分な気がするんですけど・・・。
はいはい。
キックだけでも、伝わりますね。
「良いの喰らっちまった。ふう、HP残り1って、やべぇけど、運が良かったな。死ぬとアヴァターラの作り直しだから、マジ、運が良いぜ。ほんと、ラビットフットはお守りになるだけはあるな。マジ、ギリだったから助かったぜ」
後ろから、いきなり胸を触ろうとするなんて、ロロロロが怒るのは当たり前です。
セルシオさんの自業自得です。
うさぎの抱き方を知らないんですか?
まぁ、耳を掴まなかったのは正解ですが、パルダリウムにいるうさぎですよ?
普通のうさぎな訳ないじゃないですか。
素直に前から近付いて、抱っこさせて欲しいと交渉するだけの簡単なクエストみたいなモノだったのに、背後から胸を触ろうとするなんて斜め上過ぎます。
「おい、セルシオ、大丈夫か?」
カシャッ
あー、抜いちゃいました。
レパードさんが、両手剣を抜きました。
セルシオさんのガードが目的で両手剣を構えて、ロロロロと向き合っています。
敵対行動をとらなくてはならなくなったロロロロが、『殺しちゃって良いの?』とこっちを見てます。
首を振っておきます。
さすがにダメでしょう。
殺すまではやりすぎです。
セルシオさんとレパードさんが諦めるまで、手加減しながら戦闘をしなくてはならないロロロロのため息が聞こえてくるようです。
「ああ、なんとかな。当たりどころ悪かったが、運がよかったぜ。もうちょいでアヴァターラを作り直しするとこだったぜ」
セルシオさんは、アイテム収納から、ポーションを取り出して、HPを全回復しました。
「みんなが、来るまでに、うさぎを確保しておくか。生死は問われていなかったしな。可哀想だが、俺たちの経験値とレベルアップの生け贄になりな」
セルシオさんも片手剣を抜きました。
「殺るなら、ドロップ品モードから死体の残るリアルモードに替えておくぞ」
「頼むわ」
見かねたシンが横槍を入れてきました。
「お前ら、無理だから、止めとけ」
ロロロロは、ちょっとホッとしたような表情を見せました。
「天使のようなラーマちゃんさまが、無理な事をやらせるわけないだろう」
「女神のようなラーマたんさまが、できねぇ事を言うわけないだろ」
天使でも、女神でもないですし。
駄天使なら、そこで2度寝をしてますよ。
カルキと一緒に、マナに膝枕をさせてね。
狩りに行く予定が、中断してますからね。
朝風呂もハードでしたし、ボクが寝てたいくらいです。
「みなさん、落ち着いて下さい。無条件で【神の加護:レベル50リミッター除去】をしますからね」
ボクが【神の加護:レベル50リミッター除去】を使えば、すぐに終わる話です。
条件を付けたのは、ほんの悪戯心だったんです。
僅かに残っている良心が痛みます。
違います。
悪戯心以外のほとんどは良心のはずですよ。
僅かなはずは、ないじゃないですか!
「ラーマちゃんさま。野うさぎを捕まえるくらいやらせて下さい。試練も無しにレベルアップ可能になるなんて、有り難みがないです」
「そうです。ラーマたんさま。さっきは不意をつかれて不覚をとりましたが、野うさぎを捕まえるくらい、冒険者として、楽勝な試練ですよ」
チクリチクリと胸が痛いです。
いえ、グサリグサリと痛いです。
シュンッ、シュンッ・・・・・・
50人近いアヴァターラが現れました。
ほとんどマッチョです。
1人・・・いえ、2人が魔法使いっぽい、いや、エンチャント魔法が使える戦士ですかね?
魔法が使える人は少ないです。
そして、使える魔法が使える人はさらに少ないです。
さらに、魔法だけで戦闘が出きるって人は希少価値です。
「「「「「レパードさん、レベルアップできるようになるって本当ですか?」」」」」
想像通りクラン脱兎山のメンバーでした。
「もちろんだとも。そこの野うさぎを捕まれば、【神の加護:レベル50リミッター除去】を使って貰えると確約している」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」
「セルシオ、クランのメンバーを呼ばないで、良いのか?」
「もちろん呼ぶぜ。先に準備しておいてくれ」
「分かった。てめぇら、適当にパーティーを組んでくれ。アライアンスを誘うから」
ロロロロは、戦闘をふっかける事なく、状況を見守っています。
そして、クラン挙母のメンバーも揃いました。
「「てめぇら、野うさぎを捕まえて、レベルアップするぜ」」
セルシオさんとレパードさんが音頭をとりました。
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」
レベル50の冒険者、約100人 VS ロロロロの先の見えた戦いが始まりました。




