068.残念な娘、大地に立つ?
トクン、トクン、トクン、トクン、トクン
止まっていたと思われる心臓が動き出したです。
私にとってはほんの一瞬意識が飛んだだけですが、ただ、知識として、心臓を止められて、保管されている事を知っているんです。
ほんのついさっき、液体の入ったガラスケースの前に立たされたと思ったら、今はガラスケースの中にいるんです。
本当に不思議なんです。
体感で数秒しか経っていないのに、数年、数十年、数百年、どれだけの時間が経過しているのかは、分からないのです。
こんな事を、何百回と繰り返されているんです。
給仕者ギルドに加入していて、色々なお屋敷で・・・、そもそも、色々なお屋敷と言うのもおかしいんです。
普通は、1つなんです。
1つのお屋敷で、最後まで勤め上げるんです。
多くても。2つなんです。
3つなんて言ったら、運が悪いか、出来が悪い給仕者扱いです。
私は、色々なお屋敷です。
3つどころじゃないんです。
普通に仕事をしてるだけなら首にならなかったんです。
好奇心を抑えられなかったんです。
モノの仕組みに興味があって、珍しいモノがあると、分解しちゃうんです。
仕事をほったらかしで・・・、そして、首になってしまうんです。
そんな事を繰り返しすぎて、誰も契約をしてくれなくなり、借金を作り、借金のかたとして、外の世界の人に売られたんです。
プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
私を浸していた液体が、幻だったように消えていきますです。
目の前が明るくなりましたです。
キョロキョロすると、男性が1人と女性が4人いますです。
みんな、私のようにささやかな胸をした人ばかりです。
女性全員くっついていますですから、きっと仲良しさんだと思うのです。
これはきっとささやかな胸が好きなこの男性のハーレムです。
イケルです。
イケルです。
私と同じくらいのちっちゃい娘もいますです。
きっと私はこの男性の趣味に合ってると思うです。
挨拶をバッチリ決めて、ハーレムに入れて貰うです。
メイド服のスカートの裾を持ちながら、左足を斜め後ろの内側に下げて、背筋を伸ばし、右足の膝を軽く曲げて、挨拶をしますです。
「ヴァーマナと申しますです。よろしくお願いいたしますです」
完璧です。
これぞカーテシーのお手本と言わんばかりの出来です。
私は、やれば出来るんです。
残念な娘じゃないんです。




