第二話 天照さんってヒマなの?
二日連続投稿です。
これでストックが早くも尽きました。
明日更新できたらいいなぁ。
ではどうぞ。
「よし、話し合いも終わったことだし、お茶にしようか」
いやいやいや、天照さんさっきの話聞いてた?俺、これからあっちの世界のこと調べたり覚えなくちゃいけないことがたくさんあるんだけど!?
「あの天照さん、俺、グロリウスの世界の言葉とか文字とか他にもいろいろと覚えないといけないんですけど」
「へっ?ああっ!そうか。紅葉くんにまだ中級神の説明をしてなかったね」
ん?中級神の説明?それとこれに何の共通性が?
「おっと、そうだったな。アベル殿の話ですっかり忘れていた」
「あっ、すいません。そちらの都合を考えず急に押しかけてしまって」
「いやいや、忘れていたのはこちらの落ち度じゃ。アベル殿は気にしなくても良い」
「それでね、紅葉くん。中級神になると神としてできることがいろいろと増えるんだよ。詳しくは後で説明するけど、大きな違いというとまず世界記憶にアクセスすることができるようになるんだよ!」
「世界記憶って死神さんやハーデスさんたちが良く使ってる能力でしたよね」
「うん、確かに死神や冥府神は仕事柄よく使ってるね。後は閻魔大王も使ってるよ。彼は正確には神ではないけど、人を捌く立場にいるのは神たちと何ら変わらないからね」
「それが、中級神になったら使えるようになるんですか?」
「世界記憶はどちらかというとボクたち上級神や今の紅葉くんと同じ中級神がよく使う能力だよ。その能力の内容は名前の通り世界の記憶を読み取る能力だ。その世界の星の歴史や国の歴史、人の歴史、他にも世界にまつわるの全てのことが記載されている」
「なるほど。それで、グロリアスの歴史や言語、地理、文化などを学べばいいわけですね」
「その通りじゃ。流石に、呑み込みが早いのう」
「それでも、やはり時間はかかるんじゃないんですか?」
グロリアスの世界のことがわかっても、それは教科書のようなものをもらったことに過ぎない。それから覚えるのは自分でやらないといけない。
それなら、少しは時間の短縮につながるが、ある程度の時間はかかるだろう。
「ふっふっふ~、そう思うでしょ?それが違うんだな~」
そう思っていたが、どうやら違うらしい。その証拠に天照さんがこれでもかというように偉そうにしている。
「世界記憶はの、神の脳に直接知識を流し込むのじゃ。それも、超高速での」
「そのため、本来何年もかかって覚えることもほんの数秒で覚えることができる。だから、中間管理職のような仕事が多い中級神や世界規模の管理をしている上級神が頻繁に使っているのだ」
「ちょっと!オーディンもゼウスもボクが説明してる途中だったでしょ!なんで横入りするんだい!?」
「天照よ、少し浮かれ過ぎじゃ。お主が紅葉のことを気に入ってるのはわかったから、少し落ち着け」
「う゛っ!・・・・・・わかったよ。でも最後の締めは言わせておくれよ」
へぇ~、天照さんは俺のことを気に入ってくれてたんだな。よくわからんけど、期待してくれてるなら頑張らないとな。
「ということで!紅葉くんはグロリアスに関する知識を一瞬とは言わないが、数秒で覚えることができるんだよ!だから、ここはいったんお茶にしよう!それがいい、そうしよう!」
「はぁ、まぁ時間に余裕ができたんなら、別にいいですけど」
「やったぁー!」
あれ?そんなに喜ぶことかな?もしかして、天照さんって案外ヒマなの?
「実はねゼウスくんが自分でブレンドした紅茶があるんだよ。それがすっごく美味しいんだ!紅葉くんも気に入ると思うよ!」
「うむ。暇つぶしで作っておったんじゃが、思いのほか人気でのぅ。今は定期的に作っておるんじゃ」
って、ゼウスさんもヒマなんですか。いや、優秀すぎて仕事が早く終わるのかな?まぁいいか、ここは日本神らしく流れに身を任せよう。
「そうなんですか、楽しみです」
俺は愛想笑いしながら、ゼウスさんに頭を下げる。
よし、日本神の必殺技・愛想笑いが出たからには無難にここを乗り切ることができるだろう。
「そういえば、質問があるんですけどいいですか?」
「ん?なんだい、紅葉くん」
現在、俺たちは浮遊城にある中庭に来ていた。ここにいるのは俺たちだけで他の土地神や上級神たちはこの浮遊城の隣に浮いている城下町で宴をしている。
宴では土地神たちの意見交換などが行われ、普段自分の土地から離れられない土地神たちにとって貴重な交流の場である。
「先ほどそもそも俺を中級神に上げるつもりだったという話をしていたじゃないですか」
「うん、その通りだよ。異世界で土地とダンジョンを経営してもらうんだから流石に下級神のままにはしておけないからね」
「それがどうかしたのか?」
「いえ、でも、俺って今回ランキング一〇位以内に入ったのでそもそも中級神にはなれるんでしたよね?」
「むぅ、そういえばそうじゃな。そうなると、実質ランキングによる報酬がないということになるわけか」
「もしくはこの話を受けてくれた礼がなかったことになるな」
「えっ!それはマズいよ!紅葉くんにはこれから頑張ってもらわなきゃいけないんだから!」
あれ?なんでそんな大事になってるんだろう?俺は結局中級神に上がったのはどっちの理由なのか聞きたかっただけだったんだけど。
「ふむ。だからといって急に代わりとなるものが浮かぶわけでもないからのう。・・・・・・そうじゃのう、紅葉よ。なにか、異世界に行くことについて儂らに手伝えることはないか?」
「そうだな。ランキングの報酬の代わりが浮かばない以上、紅葉が欲しいものを用意するのが筋か」
「何でも言ってくれていいんだよ?なんなら、ボクが手伝いに行ってあげようか?」
「「それはやめろ」」
あれ~?本当になんでこんなことになったんだろう?いつの間にか俺が望む報酬を与えるって話になってるし。
え~っと、ダンジョンと土地の経営か。つまり、実質二つの土地の経営ってことだな。ああ、ってことは今までの倍は忙しくなるってことか。・・・・・・そうだ!
「え~と、それでは眷属が欲しいです」
「「「眷属?」」」
おぉう。この世界の創造神が揃って頭を傾げている。ついでにアベルさんも傾げている。・・・・・・なんでだ。
「はい。流石に異世界で土地とダンジョンの二つを経営するとなると大変そうなので手伝ってくれる眷族がいれば大分楽になると思うんです」
「なるほど。確かに紅葉くんが管理する予定の土地は紅葉くんが今管理している土地よりも広いからね。さらにダンジョンもとなると流石に手が回らないところも出てくるだろう」
ちょ、アベルさん?それ、初耳なんですけど?
「ふむ。それで、具体的にはどんな眷族がいいのだ?戦闘ができる者か、知恵の回るものか?紅葉が眷属に何をしてほしいかによって役割は変わるからな」
「大丈夫だよ!紅葉くんはボクの部下だからね。バッチリ、ぴったりで優秀な眷族をつけてあげるよ!」
「天照よ。紅葉のことが気に入ったのはわかったが、お主だけで決めようとするな。儂らだっているのじゃぞ。なにより、肝心の紅葉の意見を聞いてからじゃ」
ゼウスさんは流石だな。いざ眷族を頼むとなると俺もいろいろと考えている。聞き入れてくれるかは分からないが、まずは要望だけ言ってみよう。
「そうですね。出来れば陸、海、空で各一体ずつ計三体ほど欲しいです。最初は人型である必要はありませんが、いつかは人型になれるといいですね。陸の眷族は他の眷族のまとめ役で俺の右腕として起用したいと思っています。海の眷族は戦闘面で空の眷族は情報収集面で起用したいですね」
「なるほどなるほど!なら、空の眷族は飛烏とかどうかな?普通の烏よりも一回り程大きくて頭もいいよ。それに、夜目が利くし進化すれば八咫烏になって人化もできるよ」
・・・・・・ふむ。確かに烏の姿をしているんなら、隠密性も高いし情報収集に最適だ。進化して八咫烏になるのなら、八咫烏と同じように烏たちを統率して情報収集もできるだろうし。
「うむ。儂も天空神と呼ばれるからには一枚かませてもらいたいんじゃがな。眷属とするのに適したものがおらんのじゃ。儂らの眷族はほとんどが天使じゃからのぅ。後は化け物や怪物と呼ばれる者しかおらんわい。情報収集として使うには目立って仕方がない」
「なら、日本の神々の眷族を使うほかないな。うちの神話もギリシャ神話と似たり寄ったりだからな」
あぁ、確かに。海外の神話は眷属といえば天使でそれ以外はメデューサをはじめとして怪物呼ばわりされる者ばかりだ。一応、メデューサも元々は神だったらしいけど。
「そうじゃな。それなら、海の眷族は水竜なんかどうじゃ?進化すれば水龍にもなるしの」
「水竜ですか?確かに戦闘面でサポートしてほしいので助かるには助かるんですけど、強すぎませんか?土地のレベルに合わせていかないと土地に悪影響を及ぼしたり、水竜本体も力が制限されたりしますよ?」
「ふむ。なら、水竜の幼体ならいいんじゃないか?成長すれば水竜、進化すれば水龍にもなるし紅葉の言ったように土地に影響を与えるようなことにもならんだろ」
確か水竜の幼体といったら、オオワシぐらいの大きさの竜だったはずだ。戦闘力に少し不安があるが、異世界に行ってすぐに戦闘をする予定もないし大丈夫だろう。
「そうですね。それなら何とかなりそうです。後は陸の眷族ですね」
「う~ん、陸の眷族か~。ボクの眷族にはいないかな?」
「天照さんは太陽神ですからね。陸の眷族がいないことは仕方のないことですよ」
「儂も似たようなものじゃ。オーディンは心当たりはないかのぅ」
「俺の眷族は天照と同じように烏がいるな。その他にスレイプニルと狼がいる。狼はともかくスレイプニルは眷属をまとめられるほど頭はよくないし、お前のサポートができるほど有能ではないな」
スレイプニル、確か八本足の馬だったかな。確かに細かい作業とかできなさそうだな。ってことは狼系の眷族になるのかな?・・・・・・う~ん、他の眷族が烏に竜だからなぁ。その二体をまとめるとなるとちょっと心もとないな。
せめて、他の眷族と明確な差があればいいんだけど。もう、腐れ縁だった天狐にでも頼んでみようかな?っていやいや、あいつは今宇迦さん―――|宇迦之御魂神≪ウカノミタマノカミ≫さんのところに遣えているって言ってたし無理か。
・・・・・・ん?天狐・・・・・・いや、狐か!
「すいません。陸の眷族なんですけど妖狐はどうでしょうか?」
「「「妖狐?」」」
三柱とも頭を傾げている。まぁ、仕方がないよな。他の眷族に比べて明らかに格が劣るし。そして、アベルさん。どうして、あなたも頭を傾げているんですか?
「どうして妖狐なんだい?他にも陸の眷族ならたくさんいるだろう?まぁ、君が妖狐から神へと成ったのは知っているけど」
「だからこそです。眷属たちをまとめる存在として狼はかなりいい案だと思いました。狼の最上位、フェンリルになれるという点でも魅力的でした。でも、相手が烏と竜では話は別です。水竜はもちろん飛烏も最終的には八咫烏に進化することも可能なんですから、言ってしまえばフェンリルと同ランクです。まとめ役とするには少々心もと有りません」
「だから、自分と同じ妖狐にしたわけか」
オーディンさんは納得といった表情で頷いた。天照さんもゼウスさんも俺の言いたいことがわかったようだ。
「ええっと、つまりどういうことですか?」
・・・・・・どうやら、アベルさんはまだわかってなかったみたいだ。
「簡単に言うと力よりも俺と同じ狐系でさらに俺が神格化する前の妖狐だということで箔付けしようというわけです」
「なるほど。確かに竜に八咫烏と眷属の中でもトップクラスの強さを持っているからね。それに力で対抗するんじゃなくて、紅葉くん自身に近い妖狐という存在によってまとめようということだね?」
アベルさんの見解に俺は頷く。
「それで、飛烏と幼水竜のことは天照さんたちにお願いしてもいいでしょうか?妖狐については俺の方で心当たりがあるのでそちらに当たってみます」
「わかった。任せておいておくれよ。紅葉くんにふさわしい子たちを用意しよう!」
「・・・・・・ほどほどにな、天照よ」
「よろしくお願いします。・・・・・・?アベルさん?どうしたんですか?」
天照さんに頭を下げた後、ふとアベルさんを見るとなんだかアベルさんが落ち着かないようにソワソワとしていた。
「いえ、あの、天照さんや紅葉くんたちが頑張ってくれるのに僕は何もできなくて、僕にも何かできることが無いか考えていたところです」
・・・・・・ふむ。確かにアベルさんも当事者の一人だ。というより、アベルさんの世界の問題なのだしアベルさんが何もしないんじゃグロリウスの神々からアベルさんが軽んじられることにもなるな。
「それじゃあ、ダンジョンについて詳しく教えていただけますか?」
「ダンジョンですか?」
「はい。魔獣をどうやって配置するのか。あとはダンジョンの機能ですかね。細かいところは世界記憶を見て覚えるので大まかなところを教えてほしいです」
「そうですね。まず魔獣の件ですが、現在はダンジョンの中にある魔力溜りが一定以上の濃度になったときに自然発生する様になっています。発生する魔獣は魔力溜り周辺の自然環境によって作用されます。ただ、今回この世界の文化に触れて少し改善しようと思いました。紅葉くんには改善した仕様のダンジョンを使ってもらいたいと思います」
アベルさんの話したダンジョンの改善とは所謂地球の―――というより日本のゲームや漫画、アニメを基にしたものらしい。
メニューから召喚する魔獣を選びDPを使用して召喚するらしい。通路や階層、罠なんかもDPを消費することで設置することができるらしい。
DPは召喚した魔獣やダンジョン内に侵入した生物から漏れる微量な魔力を吸収するらしい。そして、魔獣や侵入した生物がダンジョン内で死ぬとその肉体や内包魔力をダンジョンが吸収するようだ。
そして、最終的に消費DPよりも取得DPが多くなるサイクルを作り上げることが目的だというわけだ。
なんだか、商売みたいだな。できるだけ早く赤字から脱却しないと。
これが大まかなダンジョンの機能らしい。他にも特定の魔獣や生物から魔力を吸収しないようにしたり、自動的に魔獣を作り出す魔力溜りを作る機能なんかもあるようだ。
「ふぅ、とりあえずこんなところかな。他にも細かい機能はまだまだあるけど、それは世界記憶で確認してよ」
「ありがとうございます。これなら、少し考えていたことが実行できそうです」
「話は終わったかい?それじゃあ、紅葉くんこれからよろしく頼むよ。まぁ、しばらくは知り合いの神々に会って別れの挨拶を済ませたり、宴を楽しんでおくれよ」
「お主の言っていた妖狐に事情を説明する時間も必要だろうしな。神無月の間はゆっくりするといい」
「もし何か相談があったら遠慮せずに言ってくれ。出来る限り力になろう」
「ありがとうございます!それでは、失礼します」
そういって、俺は天照さんたちと別れた。ここまでしてもらったんだ。準備は万全にしておかないとな。
さぁて、やることがいっぱいだ!
お読みいただきありがとうございます。
感想、アドバイスなどお待ちしております。