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土地神様のダンジョン経営  作者: 早見壮
プロローグ:土地神様と神無月のあれこれ
2/4

第一話 とりあえず状況を整理しよう

二話目です。

さて、すでにストックが半分を切りました。

ここで問題です。残りのストックは何話でしょう?

が、頑張って書くぞ~?


それでは、どうぞ。

「とはいっても、何せ初めての試みだ。ボクたちもできるだけサポートするよ」


 ・・・・・・嘘だろ?つーか、頼みどころか強制じゃないか。いや、三神たちに強制させる気はないんだろうけど。そもそも、日本の神って言うのは基本、縦社会。上司に逆らうことなんかできないっての。

 いくら天照さんたちがそんなことを気にしてなくても断れるわけないだろう!


「わ、わかりました。できるかどうかわかりませんがやってみます」


「そうかい?そう言ってくれると助かるよ!」


「でも、なんでダンジョンを経営しなければいけないんですか?」


「ああ、向こうは所謂、剣と魔法の世界でね。こっちにはない魔力ってものが存在しているんだ。その魔力を循環させるのがダンジョンや世界樹と呼ばれる者の役割なんだよ」


「じゃあ、世界樹に任せればいいんじゃ?」


 わざわざダンジョンを経営する意味はないんじゃないか?


「うん、それなんだけどね。ここから先は向こうの世界の主神に聞いてもらおうか。ボクたちもそこまで詳しい話は知らないからね」


 天照さんがそういうとドアが開き、一柱の神が入ってきた。どうやら、彼が異世界の主神のようだ。ただ、彼からは、ここにいる三柱の主神ほどの力を感じない。せいぜい、上級神ほどだ。それでも、俺よりも強いのだが力の差がわかる程度の差しかない。

 天照さんやゼウスさん、オーディンさんのように、実力が離れすぎて力の差がわからないというほどではない。


「あっ、どうもこんにちは。あなたが紅葉さんですね。僕は異世界グロリウスの主神アベルです」


「やぁアベル君、いきなりですまないが紅葉君に異世界で土地をそしてダンジョンを経営してもらう理由を説明してくれないかな。僕たちも詳しいことは聞いてなかったからね」


「わかりました!頼んでいるのは僕の方ですから構いませんよ。そうですね、まず紅葉さんも気になっていると思いますが、僕の力がこの世界の上級神くらいしかないことについて説明しましょうか」


 アベルさんの話によると、現在アベルさんの管理している世界は龍脈などの力の流れが正常に作用していなくて、天災と呼ばれる程の災害などが十数年単位で起こるらしい。それによって、人口は減り人口が減ったことにより、アベルさんたち異世界の神たちを信仰する絶対数が減っているらしい。


 そのため、アベルさんたちの力は年々弱まってきてしまい、力が弱くなった為に世界の管理を満足にすることができないという悪循環に陥ってしまったらしい。


 その上、人間たちは他の種族と戦争を繰り返し、世界の淀みが魔力溜まりというもの頻繁に作り、そこから強力な魔獣を生み出してしまうらしい。


「改めて聞くとかなりまずい状態だよねぇ~」


「神々は信仰心を糧に力を手にしているからな。紅葉のように、妖狐から神へと至った者なんかはその影響も少ないが、グロリウスの神はそういった存在がいないらしい」


「ええ、せめてこの世界ぐらい神がたくさんいれば、グロリウスの重要な場所や危険な状態になっている場所にも神の手が届くのですけど」


「現状ではそれもできないのですね」


 俺がそういうとアベルさんは落ち込んでしまった。


「・・・・・・はい」


「いやいや、アベルさんの所為ではありませんから、別に責めているわけではありませんよ」


「そういってもらえるとありがたいです」


「それで、力の流れが正常に流れていない原因ってわかってるんですか?」


「それはボクも聞いてないな」


 天照さんたちも原因までは聞いていないようだ。本当に現状しか聞いてなかったんだろう。逆に言えば、それだけアベルさんが切羽詰まっているということだ。


「はい。どうやら、原因は魔力によるものらしいんです」


 アベルさんの世界には魔力というものが存在しており、大体異世界ものの小説と同じものとのことだった。空気中に魔素という元素の一つみたいなものが漂っていて、それを体内、もしくは物体を通して変換されたものが魔力というそうだ。


 魔力を動力源として魔法や魔術を使うことができ、体内にある魔力が減っても空気中の魔素を吸収して魔力を回復させられる。


 そして、その魔力がグロリウスの世界の危機の原因である。

 なんでもグロリウスには龍脈と同じように魔脈と言われる魔力の通り道があるらしい。

 その魔脈が乱れ、龍脈に魔力が流れ込んでしまったのが直接の原因だそうだ。間接的な原因は、魔脈の乱れが人間が人工的に造った魔獣によるものだということだ。


 その魔獣は魔力を喰らう魔獣で、元々は魔術師や魔法師などの魔力を使う者たちと戦うために造られた魔獣だったが、戦闘中に暴走。

 無作為に魔力を吸いだして、近くに在った魔脈の流れを変えてしまった。その魔脈が、主流とまではいかないが、なかなか大きな規模の魔脈でそれが乱れてしまったために、他の魔脈にも影響が出て最終的に龍脈にまで乱れが生じるに至ったようだ。


「原因となった魔獣についてはすぐに天使を派遣し、速攻で消し飛ばしましたがそのときにはすでに取り返しが付かないところまできていました」


「その魔獣を造ったって人はどうしたんだい?」


 天照さんの質問に俺も頷く。確かに、どちらかといえば魔獣を造ったという人間の方が罪は重いだろう。


「魔獣を作ったのは、所謂カルト集団でしてもちろん速攻で神罰を下して各教会に二度とこんなことが無いようにと神託はしました」


「それは、また・・・・・・」


 カルト集団というのは神にとって、一番厄介な存在だ。いや、神じゃなくても厄介だと思う人が多数だと思うが、神視点では特にそれが顕著だ。

 何が厄介かというと、生まれたばかりの神などはカルト集団の信仰心で半ば強制的に邪神になってしまうこともあるのだ。


「今回のカルト集団は、『魔力は悪魔の力だ!その魔力を扱う魔術師たちは悪魔と契約した背教者だ!』という考えの持ち主でして」


「儂らのところであった魔女狩りみたいなものかのぅ」


 確かに、ゼウスさんのところの魔女狩りと似ている点がある。たぶん、根底にあったのはどちらも同じで恐怖心だったのだろう。


「そうですね。でも、魔力があるってだけじゃそのカルト集団も同じなんですけどね」


「ははは、カルト集団相手に正論を言っても仕方がないよ」


 そういった天照さんの目には、諦めの色が浮かんでいた。ゼウスさん、オーディンさんも同じような目をしている。

 ・・・・・・主神には主神の悩みがあるんだ。きっとそうなんだ。


「・・・・・・少し、休憩にするか」


 オーディンさんの言葉に否を唱える神は、この場には居なかった。












「ふぅ、よし!それじゃあ再開しようか」


 一時間ほどお茶をして、先ほどのショックから立ち直った天照さんが改めて仕切りなおす。

 というか、この世界の主神である三柱が揃って全滅だったんだが。アベルさんも似たような顔してたし、カルト集団ってそんなになのか?

 俺はカルト集団から崇められたことはなかったし、俺の管理する土地の周辺にもそんな集団はいなかったからよくわからないのかもしれないが。


「ええと、どこまで話しましたっけ?」


「力の流れが正常に作用していない原因を教えてもらった所ですね」


「ああ、そうでしたね。じゃあ次は、なぜダンジョンを経営する必要があるかというところですね。これもやはり、魔力が関わっています」


 そういって、アベルさんは話し始める。お茶をしている間に、それなりに仲良くなったので説明してくれているときの雰囲気も少し柔らかい。


「先ほど乱れたといった魔脈ですが、実はまだ完全には元に戻っていません」


「そういえば、その魔脈が乱れた事件が起きたのはいつのことなんだい?」


 天照さんの質問に俺もそういえば、と思う。これまでの話から言って最近のことではないだろうが、いったいどれくらい前に事なのだろう。


「ああ、言い忘れてましたね。大体二百年前のことです。そして、そのことも先ほど言った魔脈の乱れが完全に戻っていないことと関係しています」


 アベルさんの話を簡単にまとめるとこんな感じだ。簡単にといっても結構な長さになるが。


 二百年ほど前に魔脈が乱れた。それによって、龍脈が乱れ大規模な災害や魔獣の異常発生などが頻繁に起きるようになった。

 アベルさんたち異世界の神は、魔脈の乱れを世界樹の機能を使って正常に戻そうとした。

 だが、世界樹の機能では数千年たたなければ魔脈が正常に戻らないことが判明した。そのため、ダンジョンを造り早いサイクルで魔力を循環させる計画に変更。


 しかし、ダンジョンは攻略する者がいないとその機能を発揮できない。ダンジョンに潜り攻略をするのは、主に冒険者だが強力な魔獣のいるダンジョンに進んで入っていく者はほとんどいなかった。


 それもそのはずで、人口が減ったグロリウスには所謂、強者と呼ばれるような冒険者がほとんど存在しなかったのだ。

 その強者と呼ばれている者も国などの要請でダンジョンの外にあふれかえっている魔獣を倒すことで精一杯だった。

 だが、強力な魔獣でないと魔力の変換率は悪いし、魔力の循環にも長い年月がかかってしまう。すでに世界が崩壊しかけているため、数千年のような長い時間をかけることができない。


 そして、最後にどうして俺がダンジョンを経営することになったかの理由は、ダンジョンの経営は土地の管理とよく似ており、そのうえ土地管理の基準がとてつもなく高い日本の土地神で、しかも百数年で目覚ましい成果を上げた俺に白羽の矢が立ったそうだ。


 ちなみに、俺が今年四位に入らなくても俺に話を持ちかけることは決定していたらしい。そして、受けてくれたらお礼に中級神に神格を上げることも検討に入れていたらしい。

 ・・・・・・俺の一年間の努力は何だったんだ。いや、一応俺の頑張りが認められたのは確かなんだし、結果オーライか?


「それで、紅葉くん。改めて、異世界でダンジョンを経営してくれるかい」


 話が終わり、一息ついたところで天照さんが改めて俺に聞いてきた。アベルさんは不安そうな顔でこちらを見ている。

 まぁ、聞いた話では予想以上にまずい状態だからな。


 俺はお仕事モードに切り替えてアベルさんの方を向く。


「・・・・・・そうですね。アベルさんの世界の常識や知識を学ぶ時間とダンジョンを造るまで二年ほど時間をもらえるのなら引き受けたいと思います」


「あっ、ありがとうございます!これから、よろしくお願いします!何かあったら、遠慮なく頼ってください」


「わかりました。改めて確認しますが、最終的な目標は俺の管理する土地を安定させることとダンジョンに冒険者を呼び込み魔力の循環を促進させることでいいんですね?」


「は、はい!それさえしてくれれば、世界を修復でできるほどの力も集まるだろうし、後は僕やグロリウスの上級神総出でなんとかします」


 それではダメだ。アベルさんの考え方自体は間違ってないが、抜けているところがある。もしかしたら、アベルさん自身にも言えるのかもしれないな。基本的にはしっかりしてるけど、どこか抜けている。

 まぁ、その方が親しみがあっていいかもな。部下にとってはたまったもんじゃないけど。


「え~っと、どうかしましたか?」


 どうやら、俺が何も言わないのを不審に思ったらしい。アベルさんが心配そうに聞いてくる。

 まぁ、俺もしばらくこの神の世話になる身だ。抜けているところくらいカバーしよう。


「そうですね。ついでに、グロリウスの神々の信仰心の回復にも努めましょうか。信仰心が減ってきて力が落ちてきているのですよね?」


「えっ?あっ、・・・・・・そうですね。力が減っていては、世界の修復なんてできませんでした」


 アベルさんはとても良い神だ。神であっても自分の間違いを認められるものは少ない。その点、アベルさんはそのことをよく理解している。流石に、俺より長く生きている。神生経験が豊富だな。


 俺は、アベルさんに一礼して天照さんに向き直る。


「天照様。天照様の依頼、確かに承りました」


 そういって、俺は深く頭を下げる。これは、意思表示だ。俺はあくまでも天照さんの部下であるということの。


「・・・・・・・・・・・・」


 あれ?天照さん?結構決めにいったから、反応がないと恥ずかしんですけど。あの、聞いてます?


(・・・・・・紅葉くんのお仕事モード、・・・・・・カッコいい)


「あの、天照様?」


「・・・・・・はっ!?ななな、なんだい紅葉くん!?君の言葉は確かに聞き入れたよ!?」


「えっと、ありがとうございます」


 なんだろう、なんか天照さんの顔が赤いような?ってあれ?


「ゼウスさんとオーディンさん、なんで頭抱えてるんですか?アベルさんは顔色が悪いですよ。なんか吐き気を我慢している顔です。三柱とも体調が悪いなら休んだ方がいいじゃないですか?」


 ゼウスさんもオーディンさんもアベルさんもそういうことではないと否定してるが、ここで無理をする必要はないんじゃないか?特にアベルさんは、話を聞く限りかなりのハードワークだったようだし、今のうちに休んだ方がいいんじゃ?

 う~ん、主神ともなるとそんな些細なことは気にしてられないのか?・・・・・・よくわからんな。


お読みいただきありがとうございました。

明日も更新予定なのでお楽しみに!


感想、アドバイスなどお待ちしております。

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