プロローグ
神無月も中ごろとなり満月が綺麗な今日この頃。こんにちは、早見壮です。
初めての方は初めまして。すでに、私の作品を呼んだことがある方はお久しぶりです。
この作品は私の三作目となります。
書き溜めがほとんどないのでかなり不定期更新になります。ご了承ください。
のんびりまったりと進めていく予定です。よろしくお願いします。
空高く人には見えない場所にある大きな城の一室で俺は頭を抱えていた。
「どうしてこうなった・・・・・・!」
さかのぼること、数時間前。俺は出雲に来ていた。俺は、人ではなく神だ。神の中でも土地の管理をしている土地神と呼ばれる者だ。
月に一度、全ての神が集まる神無月。俺はそれに来ていた。土地神というのは所謂下級神のような存在で、神罰を下したり、天変地異を起こすような力はない。俺は、元は狐、それも力のある妖狐であった。
神格化して中級神に近い力を持っているとはいえ、それでも天変地異など起こせない。
そういうのは、それこそ上級神や最高神である主神ぐらいである。
だが、土地神の役割は重要だ。土地の管理とは、すなわち星の維持に欠かせない仕事である。それは、世界の維持の末端を担っているということでもあり、ここが崩れた場合世界に少なからぬ影響がある。
だが、日本以外の神はそこまで重要だと思っていないようで、割とその管理が杜撰だったりする。まぁ、日本神のように数が多くなくて、手が足りないと理由もあると思うが。
それに比べて日本神は、お国柄というかのめり込んでしまう神が多い。
海外と日本の土地の差をなくそうとした各神話の主神たち―――天照大神やゼウス、オーディンなど―――が、神無月に世界中の神を呼び、一年でどれだけ土地をよくしたのかを競うランキングを開催した。
二五位以上には特典があり、五〇位以内なら賞品が出る。そして、一〇位以上は神格を中級神に上げてもらえるという破格の報酬が用意されている。
当然、俺も出場していて去年は一一位、一昨年は一三位とかなり上位に食い込んでいたが、一〇位以内には一度も入ったことが無い。そのため、今年こそはと例年よりもさらに気合を入れこの一年やれることはすべてやってきた。
ちなみに、去年は賞品としてP〇3を特典として風神と雷神への依頼権を一枚ずつもらった。
そして、遂にランキングが発表された。周りの神たちがランキングを凝視している中、俺も自分の土地の名前を探す。
俺の土地は百数年前まで違う神が管理しており、そのときは一〇〇位を下回っていたが、俺がなんとかこの順位まで持ってきていたのだ。
焦る気持ちを押さえつつランキングを見ていく。
一三位・・・・・・ない。一一位・・・・・・ない。一〇位!・・・・・・な、い。
くそっ!あれだけがんばって一二位かよ!
一二位に目を向ける・・・・・・あれ?無いぞ?・・・・・・いやいや、でも一四位以下ってのは流石にありえないだろう。
そう思って、一四位、一五位と二〇位まで見てみるが一向に俺の管理している土地の名前は出てこない。
そこで、ふと思った。
まさかと思い、一位に目を向けてみる。・・・・・・ない。
なんなんだ!と思い大雑把に1位から下を見ていく。
・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
二位 嵐山近郊
三位 屋久島
『四位 北海道東部』
五位 白神山地
・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
あった。おいおい、嘘だろ!?四位!?四位って上から四番目ってことか!?
思わず二度見したよ。
そのまま、長い時間放心していたようで、気が付いたのは、すでに一位の人が報酬をもらいに行って帰ってきた時だった。
ここ、五百年ほどは一位から一〇位はほとんど変化がなく、周りの神たちもほとんど飽きていたようだったが、今回の俺の順位を見て大いに盛り上がっていた。
それを見て俺もようやく実感がわき、喜びが体から湧き上がってくる。
「よっしゃぁあああー!!」
思わず、大声で叫んでしまった。おっといかんいかん。剣道なら反則負けしていたところだ。
喜びに浸っていると、天照さんの使いである八咫烏さんが呼びに来た。
報酬は、各神話の主神たちとの面会の後、リストから選んで報酬をもらうといったスタイルだ。
顔がニヤけるのを押さえきれないが、何とか平静を取り繕って八咫烏さんの後をついていく。
やがて、天照さんたちがいる部屋までたどり着いた。
少し緊張するが、八咫烏さんにドアを開けてもらって部屋に入る。
「やぁ、よく来たね」
「まぁ、座ってくれ」
そこには、日本神話の主神・天照さん、ギリシャ神話の主神・ゼウスさん、北欧神話の主神・オーディンさんがいた。三柱共、テーブルを挟んだ向こう側に座っている。
オーディンさんに促されるままに座布団に座る。俺が座ったのを見て、天照さんが口を開く。
「さて、紅葉くん。第四位おめでとう!わずか百数年で順位一〇〇位以上も上げるなんて史上初だよ!」
「正確に言えば、百十二年で一四六位のランクアップだな。もちろん今まで成し遂げた者はいない」
「ありがとうございます。土地のために頑張りましたといえないことが辛いところですが」
「はははっ、それは仕方のないことだよ。それに君以外の土地神たちも同じだろう」
確かに、本当に土地のために管理しているものなどほとんどいないだろう。ほとんどが俺と同じ報酬目当てか慣れと惰性で続けている神だろう。
「時に紅葉よ。ここ五百年くらい一〇位以上に変動がなかった理由を知っておるか?」
「いえ、知りません。五百年前は神になってまだ数年ほどでしたから」
「そうだったかの。まぁいい。ランキング一〇位以上の神たちは、一〇位以内になる千年以上前から一〇位以内になる年まで準備していたんじゃ」
「つまり、五百年後に一〇位になるために千年以上も準備してきたんだ」
「作戦勝ちといってしまえばそれまでだがな。他の神たちは、一年後に一〇位以内に入ることを目標にしていたからな」
なるほど。一年後を目指すと急ピッチになるが、去年まで一〇位以内に入っていた神たちはその年をあきらめてじっくりと準備を進めていたのか。
それで、地盤が固まって五百年以上も順位に変動がなかったのか。
「それを紅葉くんは、百年ほどで崩した。はっきり言っちゃうとボクたちは君に期待してるんだよ」
「それじゃあ、報酬の受け渡しと行こうかのう。まずは、やはり中級神に神格を上げることからかの」
そういって、神格を上げる儀式をする部屋へと案内される。とはいっても、今居る部屋の部屋の奥の部屋なんだけどな。
「そうそう、儀式が終わったら君に頼みたいことがあるんだ」
部屋に入る直前、天照さんがそんなことを言ってきた。どういう意味か分からなかったが、俺は中級神になることに浮かれていて一先ずそのことを心の隅に置いといた。
「それでは儀式を始めようか。この陣の中央に立ってくれ。すぐに終わるからな」
言われた通りに陣の真ん中に立つ。そして、陣の周りを囲うように三柱の主神たちが立ち、呪文を唱えた。
『我、日ノ本の主神・天照。我が名の下に下級神・紅葉を中級神と認める』
その瞬間、陣が光る輝き部屋を照らす。光が収まると自分の神力がはるかに高くなったのを感じた。
「はい、これで君は今日から中級神になったよ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「さぁ、さっき言った頼みがあるから部屋に戻ろうか」
そういって、天照さんたちは先ほどの部屋に戻っていく。
部屋に戻ると三柱共すでに座布団に座っていた。ゼウスさんに進められて俺も座布団に座る。
「さて、改めて君の土地の管理の力を見込んで頼みがあるんだ」
「何でしょうか?中級神になったことですし、できる限り力になりたいと思いいますが」
「そうか!それはよかった。実はお主には異世界に行ってもらいたいのだ」
「・・・・・・はい?」
「異世界の主神からボクたちに相談が来てね。自分の管理している世界の土地がかなり不安定になっていてだれか良い神材はいないかと」
「それでお主に白羽の矢が立ったというわけじゃ」
「・・・・・・異世界、ですか?」
「うん、そこで土地の管理をしつつダンジョンを経営して欲しいんだ」
「はぁああああああ!?」
本当にどうしてこうなった!
お読みいただきありがとうございます。
もう一話ほど更新する予定です。
宣伝になりますが『チート問題児が異世界を行く』『超人なチート転生者は異世界で平穏に過ごす』もよろしくお願いします。
感想、アドバイスなどお待ちしております。