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7 潜む者

 産まれながらにスパナを握り締めていた東野コウジは、期待されるのに逆らわず、優秀なエンジニアとなった。人は常に、自分の才能を手の中に握り締めて産まれてくる。

 生きるための才能とは別に、産まれた後培われる能力もある。

 東野コウジは、才能とは別に与えられた、美しい容貌と学習で学んだ話術を使い、エンジニアの副業として結婚詐欺を働いた。優秀なエンジニアであることを利用して、追われるたびに潜伏し、いずれ日本にはいられなくなった。

 テロリストへ転職したのはたまたまである。篭絡しようとした相手がテロ組織の一員であり、仲間に加わり、やがて幹部へと昇格した。

 当初華々しく活躍していたが、目立ちはじめると、組織に対して敵対する動きも活発になった。

 昔は対テロ組織が存在しないと言われていた平和の国、日本のゼロ課が、その最たるものだった。

『これからどうする?』

 飛行機に乗り込んだ五人の仲間から、東野コウジは格納庫で別の機体を整備しながら、連絡を受けていた。

航空機の轟音の中で整備をする整備士は、イヤホンをつけている者が多い。誰にも注目されず、東野は飛行機の内部に短い指示を出した。長く話し続けるのは危険だ。身をもって知っていた。

「読みどおり、ゼロ課が動き出した。給油が完了したら飛ばせろ。後は、予定通り」

『了解』

 通信が切れる。訓練されたテロリストだ。飲み込みが早い。

 日本帝国化法人で働く女を篭絡したが、残念ながら連絡がとれなくなった。

ゼロ課からの依頼があったことを把握したというのに、肝心のところで連絡がとれなくなるとは、役立たずにもほどがある。

 女には未練はなかった。

 大使館の人間を利用するために、東野と同じやり方で篭絡したと言っていた。利用できるだけ利用して、二度と会わないつもりだった。

 携帯電話を取り出し、画面を見つめた。

 『月形コマチ』という女を、誘拐すると言っていた。その女から情報を聞き出す算段らしい。

直接ゼロ課の職員に会いに行けと言ったが、怖くてできないと言っていたのに、同僚を誘拐することには抵抗がないようだ。その女のことは、昔から嫌っていたらしい。

 ゼロ課が動き出している。だが、どう動くのかがわからない。

 ――飛行機に乗り込んで、ゼロ課がスカウトしたという人間を救出するつもりなのか?

 誰がその人物か、東野も知らなかった。

 だが、航空機に乗ろうとすれば、手段は限られてくる。

 東野は工具箱を開けた。

 工具セットを取り出す。

 その下に、鉄色に輝く、金属の部品が隠されていた。

 周囲の視線を気にしながら、東野は頭の中で組み立て手順を確認した。

 二〇秒で組み立てられる。

 飛行機に近づく者を確認してからでも間に合うだろう。

 工具箱の底で、組み立てられるのを待つライフルが、鈍く光ったような気がした。


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