Part5 慰め、そして……
これも話の区切り上かなり短くなっております。
「…………え?」
ゆっくりと顔を上げるリゼニア。その顔は涙で乱れ、目は赤くなっていたが、それでもしっかりと私のことを見つめてきた。
「私達の部隊はこう見えて色々な分野に長けていてな、元経済学者や建築家、金物屋や戦術開発局の人間だっている。その気になれば国を興せるように訓練してきたからな」
実際、私が率いている部隊は実務部隊+諜報員+専門家、という異色混合を地で実践している世にも奇妙な部隊だ。そんな異色な部隊だからこそ革命には不可欠であるはずだ、と考え付いた。
「頼りなく見えるかもしれないが、私達は大方のことなら何でもできる。そんな私達が全面的に力を貸すと言っているんだ……まだ足りないか?」
ここで足りないなどと言われれば、目の前の少女を愚物と同等に蔑んだ後に各地を望まれるままに転戦する気でいた。
――気でいた、で済んでしまったが。
「……ううん、充分頼もしいよ」
そう言って体を離すリゼニア。まだ結構悲惨な顔をしていたが、その目に確かな光が灯っている気がした。これなら大丈夫だろう。
「……本当に良いの?」
確認なのか、それとも申し訳なさなのか。あるいはその両方か。だが、私とその隊員達には愚問だった。
「私達は自分が持ち得る能力を限界まで活かせればどこでも構わない。たとえそれが、虐殺テロだとしてもだ」
もちろん言われただけで従うほど従順ではないが、そこに世界の安定が見いだせるのならどんなことにだって手を染める。市民を皆殺しにしろと言われ、それに必要性を証明できたら、喜んで必要悪だと偽って殲滅する。
元々の世界にいては全く使える環境がなかった感情がここでは存分に振るえるのなら、今更元の世界に戻る気は起こらない。
「だから、私達を巧く使え。存分に能力が発揮されれば、世界を統一することさえ不可能ではなくなる」
これは誇張したものではない。実際に元の世界では、1部隊で世界に喧嘩を売れるレベルの強さを誇っていた。……CIA上層部から危険視され、FBIにブラックリストに載せられるほどには。
「……分かった。私ももっと上手く頑張らなきゃね」
そう言って微笑んだリゼニアは、安心しきった年相応の可愛らしい笑顔をしていた。
……リゼニアの年齢を、私は知らないが。